五河士道に憑依した   作:山羊次郎

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デート・ア・ライブアニメ見てハマったけどコロナのせいで書店いけない。
むしゃくしゃして書いた、反省も後悔もしている


プロローグ

「えーっと……落ち着け、素数を数えるんだ……1,3,5,7……って、1は素数じゃねーじゃん」

 

 混乱から、俺は自分でも訳の分からないことを口走りまくっていた。

 俺が何故そこまで混乱しているのか。

 その理由は極めてシンプル。

 

「鏡を見るとそこには別人が……こんなの誰だってビビるだろ? 俺がおかしいわけじゃないよな?」

 

 俺の容姿は、世間的には平凡と言う奴だったと思う。

 黒い髪に黒い瞳。平々凡々とした男……それが俺だったはず……ん?

 あれ? そもそも、()()()()()()()……?

 

「おかしい……名前だけが分からねえ……え、あ、え……? いや、待って……なんだよ、それ……?」

 

 顔も一致しない、名前も分からない。だったら、俺は一体なんだというんだ……?

 

「あ、あああ……っ!」

 

 …………………………………………………………落ち着け。

 まだ、……いや、十分慌てる時かもしれないが、ここで慌てても何も解決しないんだ……落ち着け、俺……。

 ゆっくりでいいんだ。ゆっくりで。自分を証明するものを探すんだ……!

 そう、自分に言い聞かせ、俺は体の隅々まで、自分を証明するものがないかをチェックする。

 

「……ない。いや待て……この部屋に何かあるかもしれない……!」

 

 半ば焦り気味に、早口に捲し立て、誰に言い訳するでもなく部屋を捜索する。

 

「……ダメだ、何一つ分かんねえ。よく考えりゃ、部屋に名前の分かるモン何て……」

 

 あるわけない、と。

 諦めながら呟きそうになった……その時だった。

 

『おにーちゃーん。いるかー?』

「――ッ⁉」

 

 お兄ちゃん。

 つまり、俺には妹が……?

 ――いや、いなかった、はずだ。ああ、殆どない家族の記憶を漁ったが……確か、家族構成は……父、母、俺、そして……弟だ。妹じゃない。

 ていうか、家族構成についても忘れてるとか……俺、相当やばいんじゃ。

 そんな風に頭を悩ませていると、ガチャリ、とドアノブが音を立てた。

 まさか、入ってくるのか……? 妹よ、ここはお兄ちゃんの個室だぞ? いや、知らないけど。

 

「おいおにーちゃん、何やってんだ、そんなトコに蹲って」

「………………………………ぃ、つか……()()?」

「ん? そうだぞ。当たり前のことだぞ?」

「……そ、か」

 

 炎……というより、薄紅色に近い、しかし薄くない……そんな濃さの赤い髪を、ツインテールの形にまとめ、白いリボンを装飾した少女が首を傾げる。

 俺は彼女の名前を本能的に察していた。そう、自分の名前も、家族の名前も分からないのに、だ。

 そして、名前を確認して確信した。やはり、俺は……別人になっている、と。

 それならば、自分の顔が記憶と一致しないのも納得だ。いや、自分の身に何が起きているのか理解できたわけじゃないけどさ。

 とにかく、今は怪しまれないように演じ切るしかない。

 そう、

 

「ああ、心配するな妹よ。で、なんか用か?」

「えっ……」

 

 至って普通に、自然に、記憶にある()()()()を演じたと思った。

 五河士道(いつかしどう)

『デート・ア・ライブ』と言うラノベの主人公だ。キスで精霊の持つ霊力を封印する能力を持っている。

 どう言う訳か、俺はこの士道に成っているらしい。もしや、これが憑依とかいう奴か……?

 俺がこの結論に至ったのにはもちろん理由がある。士道には、五河琴里(ことり)という妹がいる。そう、俺の目の前でキョトンとしている……あれ?

 そこで、俺は何かがおかしいことに気づいた。

 琴里の身長が、やけに()()のだ。おかしい、原作では彼女は中学二年生のはずだ。しかし、今の彼女は小学生くらい……。

 

「おかーさん! おとーさん! おにーちゃんが元気になってる‼」

 

 ………………………………………………えっ?

 いや待て。まさか今って……士道が拾われて一年の間の時系列なのか……⁉

 うっわメンドクセェ……あり得ねえだろ。いや、憑依した身で文句言うのもダメだろうけどさ。いや、マジで失礼だわ俺。反省しよう。

 つか、これまた面倒なことになるんじゃ……。

 

 だが、意外なことにそんな俺の懸念は外れ……。

 この後両親(ということになっている)五河両親と普通に会話をした。

 なんていうか、物凄い申し訳ない気持ちが溢れてくるんだが……やっぱり憑依って良くないよ。士道にも申し訳ないし……よし。当面の目標は、五河士道に体を返すこと、かな? 今は無理だろうけど、精霊とか魔術師関係ならこういうの何とか出来るかもしれないし……。

 

「それで士道に許してもらえるのかは別問題だけど……うん」

 

 何だろう、今は落ち着いてきたけど……。

 もの凄い異物感がある。俺が今いる場所は、本来なら『五河士道』がいる場所であって『俺』のいる場所じゃないからな。

 どうせなら原作にも出てないキャラっていうか、人物に憑依したかった。それなら誰にも迷惑なんて掛けることもなかったのにさ。

 しかし、どれだけ悩んでも嘆いても、俺が士道の中から出ていくなんてことはない。

 

「……つか、俺がここにいるってことは”始原の精霊”は知ってんのか? 気付いた上で見過ごしてるのか、それとも本当に気づいてないのか……分かんねえな」

 

 分からないことが多い。

 しかし、それを知ることは俺には出来ない。それこそ、アカシックレコードでもない限り……。

 

 いや待った、それっぽい能力の奴がいたな……名前なんだっけ? 確か、えっと……二亜だっけ? アニメしか知らねーからほとんど覚えてねーけど……ソイツの天使が知りたいこと知れるアカシックレコードだって聞いたことがあるぞ。だったら、それで俺の情報を知れるかも……。いや、そのためには二亜とかいう奴に接触する必要がある上に、俺が精霊との対話を行うということでもある。正直に言うと、俺はこれについては反対だ。確かに精霊は救われるが、始原の精霊の思うつぼな上、下手に力が失われれば『DEM社』がちょっかい掛けるかも……それは流石に心配しすぎか。

 

 というか、あくまでもギャルゲーっぽいやり方である以上、ヒロインを自分に惚れさせないといけなくなるというシステムが非常によくない。原作を知っている俺からすれば、それは酷い寝取られを視ているようで非常に気分が悪い。俺は美少女精霊が五河士道とイチャイチャしているのが見たいのであって、自分がイチャイチャしたいわけではないのだ。

 

「……誰か何とかしてくれよマジで……」

 

 そう、泣き言を漏らして頭から布団を被った。

 俺は自分を証明できるものが、その物的証拠がない。その癖、他人に成り代わったという証拠だけはゴロゴロと出てくる。

 辛い。憑依がこんなにも精神的に疲弊するものだとは思わなかった。いや、多分俺の場合は余計なことを考えて勝手に自滅してるだけなのかもしれないけど……。

 それでも、考えてしまうから仕方ないのだ。

 俺はこれからどうなる? 原作通りの日々を過ごすのか? それでいいのか? それは本当に俺の人生なのか? そもそも、俺の人生って何なんだ? 他人の人生を奪った奴が自分の人生を求めていいのか?

 疑問が湯水のように溢れ出てくる。自己嫌悪が頭を埋め尽くす。心の中には後悔と疑問しか残っておらず、現状への不満とやり場のない怒りが沸き上がる。

 どうしてこうなった? 俺が……いや、五河士道が何をしたんだ? 俺に人生を奪われなければいけないようなことをしたのか?

 

「答えろよ……誰か。……ちくしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 気が付けば俺は、自室のベッドの上で目を覚ましていた。

 よく見れば、頭を支える枕は僅かに湿気ており、涙を流していたことが容易に想像できた。

 

「……結構前の夢だったな。つか、この年になって泣いてんじゃねえよ情けねえ……」

 

 先程の夢は、過去の記憶だ。

 俺が五河士道になった日の出来事を、偶然思い出していたらしい。

 目元の雫を拭い、欠伸をしながら布団を蹴っ飛ばす。俺は今年に入り、気の抜けない日々を送っていた。

 何故なら、今年は原作開始の五年前。つまり、琴里が精霊になり、鳶一折紙が両親を失い、記憶を頑張って掘り起こして思い出した限りでは、本条二亜も本編開始五年前にDEMに捕まっていたはずだ。

 最近『SILVER・BREAD』を読んだが、まだ休載はしていなかったので囚われてはいないと思われる……多分。いや、原作知らないから分からんですハイ。

 

「一応、他の精霊と出会えるか試す為に歩き回ったが、そう都合よく会えるわけでもなかったしな」

 

 しかし、ここで寝ていてどうにかなるわけでもない。

 

「今日は休みだし、いつも通り見回りするか。何もないといいけどな」

 

 そう呟いて、俺は自室を出た。

 

 

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