五河士道に憑依した   作:山羊次郎

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カエルというデアラだと割と不穏なワード。一体誰のせいなんだ……。
あっ、今回はいつもより短いです。導入なんでね。あとギャグ回です、苦手な人はブラウザバック推奨です


俺はある日、カエルと出会った

「なんだこれ?」

 

 それは、俺が中学二年生に進級した時のことだった。

 あの事件……というか、バカ騒ぎから一年が経過していた。

 二亜とはあのキスの後ちょっとだけ気まずくなったけど、今では取りあえず普通の生活に落ち着いている。

 えっ、据え膳食わぬは男の恥? いや、だってさ……あれだよ、俺もいきなり告られると思ってなかったし……その、嬉しかったけど、さ……?

 いやいやいや! 別に俺はそう言うの目的でデレさせてる訳じゃないし! た、ただ! ただだよ⁉ 俺はそのぅ……ほら、えっと……そうだ!

 二亜が心配だったし! えっ、そう言うのいいからさっさとやること済ませろ? なんてこと言うんだ! 俺は中学二年生だぞ‼

 ……何やってんだろ、俺……。

 

「……ハァ」

「ゲコ」

「……お前もお前で何なんだよ……ハァ」

 

 カエルだった。

 緑色に体色。つぶらな瞳。時たま口からはみ出る長い舌。

 何処をどう見ても、カエルだった。

 

「……えっ、怖っ。なんでこいつ野生なのにこんなに大人しいの? 怖いんだけど……」

 

 どう見ても普通のカエルじゃないのは一目瞭然だった。

 しかし、どうしたものか。

 いつの間にかカエルは俺の腕を伝い、肩に上り、まるでそこが定位置であると主張しているかのように俺の脳天に上った。

 ……うん、普通じゃない。このカエルは絶対に普通じゃない!

 

「……やってみるか」

 

 天使の力を使う時が来た。

 無論、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉ではない。そんなもの出しても全く意味がない。

 俺が呼び出すのは、もう一つの天使。

 即ち。

 

「来い、〈囁告篇帙(ラジエル)〉」

 

 途端、俺の右手に光が溢れる。

 僅か数秒で止んだ光の中には、一冊の書物があった。

 これが〈囁告篇帙(ラジエル)〉。その能力は至って単純、超々々高性能検索エンジン。この世界で知りたいことはすべて知ることが出来るというアカシックレコードそのもの。

 無論、俺はこれを悪用することはない。それは二亜に対する侮辱だ。なので、こうやってどうしようもない時だけ使うことにしている。

 

「ええっと、何々……は?」

 

 そのカエルについて書かれた項目を見て、俺は言葉を失った。

 

「……最悪」

 

 俺は途方に暮れた。

 とんでもない厄ネタを拾ってしまった。こんなのは即刻処分したい……けど。

 

「……正体を知ると下手に手を打てないんだよなぁ」

 

 存在するだけでここまで厄介となると、流石の俺も辟易する。

 いや、マジでどうしようかコイツ……放置したいけど、マジでそのままにするのは不味いよなぁ。

 

「……仕方ねえ。探すか」

 

 覚悟を決め、俺はカエルを連れて立ち上がった。

 目的地は〈囁告篇帙(カーナビ)〉が教えてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっと、多分この辺だよな」

 

 ナビに従ってやってきたのは、寂れた遊園地だった。

 もうすぐ閉園することが決まったせいか、人っ子一人いない。きっと、こんなとこに来る物好きは俺くらいだろう。

 俺はこの場所で、目的の人物を探す。

 

「あのー! すいまっせん-! 誰かいらっしゃいませんかー?」

「あらぁ? 珍しいわね、こんな寂れた場所に来る物好きさんは」

 

 あれま。呼んだら割とすぐに出てきてくれた。よっぽど暇だったのだろうか。

 俺に声を掛けたのは、まるで魔女のような女性だった。

 艶やかな緑色の髪に翠玉の瞳をしたグラマラスな二十代の容姿に、整った顔に浮かぶ妖艶の笑みは、まさしく魔性の女と言った風貌だった。

 彼女の名は七罪。本名鏡野七罪(きょうのなつみ)で、識別名〈ウィッチ〉。つまり、精霊だ。

 カエルの正体を知った時点でまさかとは思っていたが、やはりもうこの時点では精霊だったらしい。

 

「坊やみたいな子供が一人で何をしに来たのかしらぁ?」

「あー、そのですねー」

「? 歯切れが悪いわね、何か隠し事?」

「あー……はい、決心しました。……届け物にきました」

「は? 届け物……?」

 

 ………………うん、凄い気が引ける。

 ストレスで反転するんじゃあないかこれ? もしかしたら、俺ヤバいことしてるかもしれないぞぅ……。

 

「はい、これ……」

「これは……蛙? これが届け物……?」

「えっと、その……言い難いんですけど、これ……()()()()()です」

「――――ッッッ‼⁉⁇」

 

 ボンッ、と俺の言葉に心底仰天した七罪は、反動で変身が解けてしまった。

 本来の姿である、手入れのされていないボリューム感のある緑色のロングヘアに、翡翠の色の瞳を持つ細見の少女が姿を現した。

 自分が元の姿に戻ったことすら忘れ、ガタガタと震えながら七罪がカエルにゆっくりと手を伸ばす。

 

「か、カエルが母親……? は、はは……そう。言われてみれば納得ね、道理で私みたいな汚くてみすぼらしい女が存在してるはずだわ……」

「いや、そう言う意味じゃなくて……」

「あ、ありがとうね……ちょっと衝撃だったけど、十分に納得のいく展開だわ。うん……流石にビックリしたけど――」

「いやそうじゃなくて! これは元人間なんです!」

「へ?」

 

 そう。このカエルについて調べた結果、彼女の母親であることが分かった。

 尤も、その経歴はあまりにも劣悪。とても同じ人間とは思えない所業を繰り返していた。

 自分の娘には一切の教育を行わず、夫からは金を毟り取り、金蔓が死んだら娘に売春させようとする。まさしく吐き気を催す邪悪だ。

 それでも、だ。

 七罪は心の何処で望んでいたのだ。母親に愛される自分を……当たり前のように、子どもとして愛される自分の姿を……当然のように愛してくれる母の姿を。

 だから、連れてきた。

 もしかしたら、このカエルは何も変わっていないのかもしれない。正直、その可能性か、カエルになったショックで人間の人格を失ったか、記憶を失ったかだ。

 これは俺の立てた推測で、〈囁告篇帙(ラジエル)〉で実際に確認したわけではないので分からない。

 なので、かなり分の悪い賭けだ。下手をしたら、七罪が反転してしまう可能性すらある。

 

「……君の天使の力でカエルに変えられた、君のお母さんなんだ」

「……嘘」

 

 呆然と、信じられないとばかりに七罪が目を見開いて言う。

 そりゃあそうだろう。自分が母親をカエルにしたなんて、とても信じられるものじゃないし、信じたくもない。

 けど、事実だ。もう事実なんだ。

 

「君の天使の力で変身させられたなら、元に戻せるはずだ」

「……そもそもよ」

 

 七罪は肩を震わせながら俺を指差し、

 

「そもそも! なんでアンタがそんなこと知ってんのよ⁉ おかしいでしょ⁉」

「俺も天使を持ってる」

「なっ――⁉」

 

 あっけらかんと言い放った俺に、七罪は言葉を失った。

 畳みかけるように、俺は次々と捲し立てる。

 

「お前がこの人にどんな感情を抱くのかなんて分からないし、無責任だと思う。だから、もし心が傷ついたら俺を殺せ! カエルだろうが何だろうが、好きなものに変えて踏みつぶせ! 俺はそれを甘んじて受け入れる。だから頼む! この人を……元に戻してやってくれないか?」

「……なんで、アンタがそこまでするのよ……? 意味わかんない……私の姿を見ても何も言わないし」

 

 えっ、あっ、知ってたから普通に忘れてた。

 

「えっと、可愛いよ?」

「はぁ⁉ 嘘ついてんじゃないわよ‼」

 

 疑問形になったことにはツッコまないんだな。

 

「わ、私が可愛いわけないでしょ! さっきの大人の姿ならともかく、こんなチビッ子がそんな……‼」

「まあ俺もチビッ子だしな。ストライクゾーンもばっちり入ってるぞ」

「……そういやそうだったわね」

 

 俺の見た目が自分と同じくらいであることに納得したのか、七罪は呆れ顔で納得した。

 

「……でも、信じられないわ。私が母親を……その、カエルに変えるなんて」

「ダジャレ?」

「〈贋造魔女(ハニエル)〉‼」

「すみません」

 

 神をも射殺さんばかりの鋭利な殺気を向けられ、俺は流れるようにスリッピング土下座を繰り出す。

 あ、スリッピング土下座と言うのは、空中で高速回転し、額両膝両手を地面につけ、心身深く謝罪する俺の奥義だ。最近編み出した。

 

「……とりあえず、戻してみるわ。言われてみれば、僅かだけど私の霊力の残り香を感じるし」

 

 ……さて、と。

 ここからが本題だ。

 ポン、と言う軽快な音とともに、俺の頭に乗っていたカエルが煙に包まれる。

 その瞬間、俺は頭に凄まじい圧力を感じ、顔面が地面に埋まった。

 

「なっ……」

 

 何となく、七罪が言葉を失っているのは分かった……というか。

 

ほげ(どけ)て! ほげぼべで(これどけて)!」

「あ、ああ……悪いわね、今退かすわ」

 

 頭から重りが無くなるのを感じ、俺は地面から顔を上げる。

 ……いた。

 七罪によく似た緑色の髪。少し瘦せこけた顔は、病気を患っているのではと思わせるほど顔色が悪い。

 身長は平均の成人女性より幾分か小さめ……しかし、最も衝撃だったのは。

 

 

 何故か、この人は全裸だった。

 

 

 ……………………………………………………………………………???

 

「アイエエエ⁉」

「ちょ、何見てんのよ変態‼」

「ブべッ⁉」

 

 なんでさ。

 思いっきり殴り飛ばされた頬を擦りながら、俺は壁を支えに起き上がる。

 

「……ってか、何で全裸なんだ?」

「何でもう動揺一つしてないわけ⁉」

 

 いやー……コイツの経歴知ってるとどうにも興奮出来ないというか……。

 凄いな、ガチクズキャラって抜かれることもないのか。

 って、やばいな、下ネタ多いぞ今日。

 自重自重。

 

「……まあいいわ。……多分、カエルになった時、衣服は含まれなかったんじゃない? だから――」

「あー、なるほどな。大体わかった」

 

 よくあるやつだな。

 俺はこんなこともあろうかと着ていたジャケットを脱ぎ、母親に着せる。

 にしても、こいつマジでどうしようか……流石に家に連れ帰ったら両親が殺しに来るかもしれないな。いや、ワンチャン琴里や真那、下手すれば二亜も混ざるかも……。

 

「というか、この人の名前は……ふむ」

 

 鏡野……死名(しいな)……これでどうやって『しいな』って呼ぶんだよ……。

 明らかに考えたやつは中二病だな。それか痛い妄想から抜けられないおっさんみたいな奴だ。

 ……なんか、次元を超えた場所で誰かが傷ついてる気がする。

 

死名(しいな)……とりあえず、この人を家まで届けるか」

「家? 知ってんのアンタ……?」

「お前の家でもあるんだが……とりあえず検索エンジン掛ければ一発だ」

 

 俺の話の内容が理解できないのか、七罪は小首を傾げるだけだった。

 

 




前回までとの温度差ェ……。
あ、七罪の母の名前はオリジナル設定です。独自解釈です。……士道君のツッコミが心に刺さる。

もうこの後は原作に突入させる?

  • 他の精霊攻略しろ。きょうぞうちゃんとか
  • イッテイーヨ!
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