東方蒼瞳覡 ー博麗の守護者ー   作:トライダー

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第三話 紅い廃館

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 血のように紅い部屋、一見大聖堂のようにも見えるが、その姿はあまりにも禍々しく『聖』とは真逆の空間であった。

 家が軽く一つは入りそうなその部屋の奥に、大きな玉座に座る小さな影とその影を囲う四つの人影が見える。

 

「お嬢様、お体の方は?」

 

「ええ、完治したわ。これで忌々しい幻想郷の妖怪共に復讐が出来る」

 

「では、ついに計画を始めるのでございますね?」

 

「ええ、その為にも……パチェ、準備を進めて頂戴」

 

「………なら結界を解くわよ? ()()を発生させるにはかなりの魔力がいるから、暫くは館を隠せないわ」

 

「構わないわ。奴らもいきなり仕掛けて来るほどお馬鹿さんじゃ無いでしょうし、暫くは廃館とでも思わせておけば誰も来ないでしょう。貴女達も外を見張る必要は無いわ、侵入者の排除だけに集中しなさい」

 

「「かしこまりました」」

 

「さぁどんな運命になるのか、楽しみね……」

 

 玉座の影が大きく広がる、その形はまるでコウモリの翼のようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「「紅い廃館?」」

 

「ええ、一週間ほど前から《霧の湖》の近くに出現したらしいんですよ」

 

 博麗神社の縁側に霊夢と魔理沙と一人の少女が話をしている。

 そんな三人の元に、四つの湯飲みと急須を乗せたお盆を持った八雲が近づく。

 

「はい、お茶が入りましたよ。文さんもどうぞ」

 

「あやや!これはどうも」

 

「こんなのにお茶なんて出す必要無いわよ」

 

「ちょ、酷いですよ霊夢さん〜」

 

「もう、失礼だよ霊夢」

 

 霊夢達と話していたのは白いシャツと黒いスカート姿の少女、その背中には特徴的な真っ黒な羽と小さな赤い帽子を被っている。

 彼女の名は《射命丸 文》、妖怪の山に住む《鴉天狗》であり、幻想郷の新聞記者を自称する変わった妖怪。

 

 ……なのだが彼女の作る新聞は捏造や誇張が多く、霊夢や魔理沙もその被害になった事は少なくない。

 そのせいかそこそこ偉い立場の妖怪にも関わらず霊夢達には辛辣に扱われることが多い。

 

「それで何の話をしてたんですか?」

 

「なんか文が言うには霧の湖に館が出来たんだと」

 

「館?」

 

「はい、趣味が悪いぐらい真っ赤でボロボロな館なんですけど……」

 

 霧の湖とは文字通り常に霧に覆われた大きな湖。

 海の無い幻想郷では最も大きな水場となっており、自然も多く妖精達の溜まり場にもなっている。

 

「それって何処かの廃館が幻想入りしただけじゃ無いの?」

 

「んー確かに住民の気配も感じませんし、その可能性は高いんですが……我々天狗としては見逃すわけにもいかなくて」

 

「どうしてだ?」

 

 意味の分からない魔理沙が首が傾げるのに対して、八雲には心当たりがあった。

 

「湖……紅い……館……それってもしかして《吸血鬼異変》の時のですか?」

 

「おおっ! ご明察ですよ八雲さん」

 

「ん?……何だっけそれ?」

 

「もう魔理沙忘れたの? 数年前に幻想郷に西洋の妖怪が進出してきたって言う大きな異変だよ」

 

 数年前、突如幻想郷に血のように紅い館が出現した。

 首謀者は西洋に住む《吸血鬼》と呼ばれる妖怪であり、外の世界を窮屈に思った彼らによる侵略。

 鬼のようなの力と天狗のような速さを持ち強力な魔力も備えている、種族としての力は妖怪達の中でも最上級である。

 

 数十体の吸血鬼と幻想郷の妖怪達の戦争は半年にも及び、最後は数の利と弱点をついた事で幻想郷側が勝利した。

 敗北した吸血鬼達は元の世界へと逃走し、拠点となった館も消滅した事で異変は終わりを告げる。

 

「……って言う話。自分達はまだ修行の途中だったから参加してなかったけど、あの異変はそれ以降幻想郷が大きく変わるきっかけになったんだよね」

 

「あーそう言えばそんなのあったわね」

 

「いや霊夢は覚えててよ……」

 

 霊夢自身もその変化に大きく関わった人物である。

 幻想郷の賢者はその一件でいかに幻想郷の妖怪達が闘争に鈍くなっていたかを嘆いた。

 そこで彼女らは博麗の巫女と話し合い、闘争を忘れない為に幻想郷での決闘、《スペルカードルール》を成立したのだ。

 

 ……当の本人は忘れていたようだが

 

「でも確かにそれなら天狗の皆さんは警戒しないわけにはいきませんよね」

 

「そうなんですよ。いま妖怪の山では『吸血鬼が再び攻めてきたっ!』って大騒ぎなんですよ。いや〜殺伐としちゃって嫌になりますよ〜」

 

 と言うのも前回の異変で最も被害を出したのは天狗達であった。

 組織と体裁を大切にしている彼らにとって吸血鬼の二度目の進行など見過ごせる訳がなかった。

 

「そこで私が率先して調査に躍り出たって訳です、良い記事になりそうですし!」

 

「そっちが本音でしょ?」

 

「てか、それならこんな所でのんびりしてて良いのか?」

 

「こんな所で悪かったわね」

 

「いやそれが……調査には行ったのですが、思った以上に良い成果が得られなくてですね……」

 

「何でだ? 中に入って軽く調べるだけじゃ無いか」

 

「それが、あの館変なんですよ」

 

「「変?」」

 

 八雲も魔理沙は同時に聞き返す。

 霊夢は興味の薄そうにお茶を飲んでいる。

 

「はい、門を越えて窓に近づこうとすると飛んでも飛んでも辿り着かなかったりして。いざ窓を開けて入ろうとすると、いつの間にか湖に落ちていたり」

 

「……あんた遂に頭おかしくなったんじゃないの?」

 

「いやいや!本当なんですって! ありのまま起こった事なんですよ、何を言ってるのか分からないと思いますが私にだって分からないんですよ!」

 

「あー、分かった分かったわよ、うるさいわね」

 

 テンションの高い文に対して鬱陶しそうに耳を押さえる霊夢。

 少しからかってみただけだったが思った以上の反応が返ってくる、嘘をついている様子には見えない。

 

「と、いうわけで御三方にも是非調査に協力して貰いたいのですよ」

 

「何がというわけよ」

 

「私は構わないぜ。面白そうだしな! 八雲も一緒に行こうぜ」

 

「えっと……霊夢、どうするの?」

 

「放っておけば。別に異変が起きてるわけでも無いし、今動く必要も無いでしょ?」

 

「…………分かったよ。すみません文さん」

 

「え〜、八雲さんも来ないんですか〜?」

 

「申し訳ありません。博麗の巫女の決定ですから……」

 

 八雲は心苦しそうに断る。

 幻想郷のルールとしてこう言った時の判断は博麗の巫女に一任されている、八雲の立場として今霊夢の側を離れるわけにはいかない。

 

「仕方ありません、魔理沙さんで我慢しますか……」

 

「おい!どういう意味だぜ!」

 

「あははっ!冗談ですよ」

 

「まったく! んじゃな、もし異変だったら手柄は私が貰うぜ?」

 

「はいはい」

 

「二人とも気を付けて下さいね」

 

 軽く挨拶を済ませると文と魔理沙は霧の湖の方角へと飛んで行った。

 

「……良いの?行かなくて」

 

「あの鴉天狗の口車に乗るなんてごめんよ。それに、その館が何なのか分からないのに動いたってしょうがないわよ。まぁ何とかなるでしょ」

 

「毎度毎度、何処からその自信がくるんだか……」

 

「勘よ勘。それよりお茶のお代わり、それと茶菓子もちょうだい」

 

「はいはい、かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

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「あ〜れ〜!」

 

「チルノちゃーん!」

 

 霧のかかった巨大な湖の上、氷の羽のような物を生やした水色の少女が目を回しながら落ちて行くのを緑色の少女が追いかける。

 そんな二人を見つめる魔理沙と文。

 

「ったく、邪魔しやがって」

 

「お見事! いや〜流石魔理沙さん!頼りになりますね〜」

 

「妖精倒して褒められても嬉しくないぜ」

 

 今落ちて行った二人は《妖精》、幻想郷の自然から生まれた存在であり力が弱く頭も良くない。

 いくら先程の妖精が妖精の中でも最上級の強さの者であったとしても、魔理沙からすれば嫌味にしか聞こえない

 

「それよりも……アレか?噂の廃館ってのは?」

 

 魔理沙が指を刺した方向にあったのは大きな館。

 赤と言うよりはより濃く染まった紅色、その存在感は湖の周りの濃い霧の中でも目立つほど。

 

「確かに趣味の悪い館だな、いかにも吸血鬼が住んでいそうではあるが」

 

 血のように染まった館、その門や壁には所々ヒビが入っており、幾つかの蔦のようなものも巻き付いている。

 文の言う通り人の住んでいる気配はまるで感じない、しかし魔理沙は僅かな違和感をおぼえる。

 

「……この館、僅かだが魔力のようなものを感じるな」

 

「魔力……ですか?」

 

 魔理沙は館のヒビやツタから微量の魔力を感じる、まるで()()()()()()()()()()()()()()かのように。

 魔法の専門家である魔理沙でなければ気付かなかっただろう、それだけ巧みに隠されている。

 

「とは言えここまで見事なカモフラージュをしておきながら微量にしか感じさせ無いところを見るに、相当魔法に精通した奴がかけたんだろうな」

 

「おおー!流石魔理沙さん! いや〜貴女に来てもらって良かった〜」

 

「よく言うぜ、まったく」

 

 調子のいいことを言う文に呆れる魔理沙。

 

「しかしと言う事はやはり中に誰か居るのでしょうか?」

 

「もしくは居なくなった後、誰にも取られたく無いお宝を隠す為とか……へへっ!面白くなってきやがったぜ!」

 

 魔理沙の中のトレジャー魂に火が付いたのか、楽しそうな笑顔を見せ箒を握る力を強くする。

 

「それじゃあ私はここで待ってますから。お気を付けて〜」

 

「おう……って!、お前は来ないのかよ」

 

「いや〜宝とかには興味ありませんし、荒っぽい事は苦手なんで、ここで大人しくスクープを待ってますよ」

 

「………まぁいいか」

 

 いいように使われている気もしない事はないが、魔理沙自身興味がある以上もう止まる気はない。

 魔理沙は箒に魔力を込め、全速力で窓へと飛んで行く。

 

(文の奴がたどり着けないって事は、何らかの力で空間を操ってるって事だ。だったら空間に変化があった時、瞬間的に思いっきり加速すれば……)

 

 魔理沙は八卦炉を箒の後ろにつけ、いつでも加速できるように準備する。

 

「……って、あれ?」

 

 しかし何の障害もなく窓へと到着する、恐る恐る窓に触れてみるがおかしな反応は無い、別に罠と言うわけでは無いようだ。

 

「……なんだ、普通に入れるじゃないか。あの鴉やっぱり幻覚でも見たんじゃないのか?」

 

 窓を魔法で開き中へと入る。

 真っ赤な絨毯に両足を着地させるが、文が言っていたようなおかしな変化は無い。

 魔理沙は文特有の誇張だと判断し、館の中を歩か始める。

 

 

 

 

 

 

「随分と広いな……」

 

 歩き始めて数十分、魔理沙は道に迷っていた。

 彼女は決して方向音痴では無い、寧ろ森に住んでいる以上こういった入り組んだ道には慣れている。

 では何故彼女が迷っているのかと言うと、()()()()()()()()()()()()のだ。

 明らかに外で見た館と今歩いている道の長さが一致しない、やはりここも魔法によって空間を弄られているのだと魔理沙は悟った。

 

「こう言うのは縦横無尽に動き回るより、一階から手堅く探索した方が確実だな……」

 

 そう考えて見つけた階段を下り、一階へと足を伸ばした瞬間。

 

 凄まじい魔力を感じる。

 

「……っ!?」

 

 バッと首を動かし辺りを見回す、しかし誰の姿も見当たらない。

 魔理沙はいつの間にか溢れ出ていた汗を拭い息を整える。

 

「はぁ……はぁ……今のは?」

 

 初めて感じるタイプの魔力、しかしそれ以上に恐ろしかったのはその中に混ざったドス黒い狂気と殺気。

 冷静さを取り戻し始めた魔理沙は、その感覚が足下から流れてくる物だと察した。

 改めて辺りを見回すと、彼女を招くかの如く地下への階段を見つける。

 

「……………(ゴクリ)」

 

 やはり魔力は地下から感じたものだ、魔理沙には未知の存在への恐怖はあった、しかしそれ以上に好奇心が上回る。

 好奇心は猫をも殺すと言う、しかし魔法使いにとって好奇心とは命、特に魔法の研究を第一とする魔理沙とっては尚更だ。

 魔理沙は心臓を高鳴らせながらも階段を下っていく。

 

 コッコッ……心臓の音とリズムを取るかのように足が動く。

 長い、ニ階から一階に降りる時とは比べ物にならないほどの長さ、それだけでも地下に眠る物の重要さが分かる。

 地下へと進むたびに鼓動が強くなる、果たして恐怖か、それとも宝への期待か。

 

「こいつは……部屋か?」

 

 長い階段を下りた魔理沙が見つけたのは小さな扉、何かを隠すならもっと厳重な扉が用意されているものだと予想していた魔理沙は気が抜けてしまう。

 魔法で鍵を開け中に入る、中は女の子らしく可愛らしい部屋。

 ベットは絵本で見たお姫様が眠るような装飾をしており、部屋の隅に高そうな人形やぬいぐるみが見られる、しかし一番魔理沙の目を引いたのはベットの真ん中。

 

 黒い棺であった。

 

「…………」

 

 魔理沙はゆっくりと棺に近づき、その蓋に両手を添える。

 一度深呼吸をし、何が出てきても大丈夫なように警戒しながら蓋をずらしていく。

 棺は見た目ほど重くは無く魔理沙の細腕でも動く、ズズズッと言う音と共にずらされ中身があらわになる。

 

「…………あれ?」

 

 しかし棺の中には何も入ってはおらず真っ黒な底が見えるだけ。

 

 その瞬間、薄暗い部屋が光に照らされる。

 

「っ!? な、何だ?!」

 

 突然の光を腕で遮りながら辺りを見回す。

 やはり来た方には誰も居ない、いや視界の隅に赤い布が目に入る。

 顔を上に上げると、そこにはぬいぐるみ抱きしめた赤いドレスの女の子が宙に浮いていた。

 

「……あなたは誰?」

 

「私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」

 

「魔法使い? あなたは人間なの?」

 

「おう、『普通の』だからな……って、うわっ!」

 

「ふーん……咲夜以外で初めて見た……」

 

 あまりにも無警戒で距離を詰めて来た少女に驚く魔理沙。

 魔理沙と同じ金髪の女の子……と言えば普通だが、その背中には細い骨に宝石のような羽(?)を付けている。

 魔理沙の知ってるどの妖怪にも当てはまらないが、吸血鬼の館にいるのだから吸血鬼なのだろうと切り替え警戒する。

 そんな魔理沙を気にせず物珍しそうに全身を見回していた少女は、不意に興味を失ったように魔理沙から離れる。

 

(?)

 

 少女のマイペースぶりに魔理沙が首を傾げていると、突然少女が振り向き腕を掲げる。

 その瞬間彼女の背後に魔法陣のようなものが展開される。

 

「なっ!?」

 

 それが攻撃である事は簡単に分かった、突然の不意打ちに魔理沙は転がるように回避する。

 魔法陣から放たれた弾幕は魔理沙の後方にあったベットをズタズタに破壊した。

 

「おー!すごいすごい!」

 

 余波で部屋の中がボロボロになったにも関わらず少女は嬉しそうに手を叩く、今の彼女には魔理沙(獲物)しか目に入っていないようだ。

 

「いきなり何するんだぜ!」

 

 突然の攻撃に当然の怒りを見せる魔理沙。

 しかし少女は今度は寂しそうにぬいぐるみを抱きしめる。

 

「私の部屋はね、誰も入ってくれないんだ。だから誰も遊んでくれない相手はいつもお人形だけ、でもお人形って簡単に壊れちゃうんだ。だから退屈で、寂しくて……」

 

 一見大人しくなったように見えるが魔理沙は警戒を解かない、何故なら彼女から溢れる殺気とは収まっていないからだ。

 

「だから私!魔理沙で遊ぶ!! ふふふ!はははははっ!!あっはははははははははははぁっ!!!」

 

 抱きしめていたぬいぐるみの頭が風船のように破裂した、用無しとばかりにぬいぐるみを投げ捨てると狂気じみた笑い声を響かせる。

 

「ふん、良いぜ。そっちがその気なら相手してやるぜ!」

 

 箒を杖にして意気揚々と立ち上がる魔理沙、しかし彼女が返事をする頃には既に攻撃の準備は完了している。

 部屋全体に魔法陣が出現し壁や天井を沿うようにして移動する、そして通過した地点から青と紫の弾幕を放つ。

 

 《禁忌・クランベリートラップ》

 

「やべっ!」

 

「かんたんに壊れちゃったらやだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 魔理沙が館に入り込んだ頃、館の奥の紅い聖堂のような部屋に五つの影が集まっていた。

 

「全員揃ったようね」

 

「お嬢様、皆を集めたと言う事は」

 

「ええ、ついに魔力が溜まったわ。すぐにでも始めるつもりよ」

 

「おお、ではついに!」

 

「これより幻想郷の制圧を始める」

 

 玉座に座った少女の宣言に紫色の少女が頷くと腕を掲げる、すると館を覆うほどの巨大な魔法陣が出現する。

 その瞬間、館全体に変化が現れた。

 門や壁に巻き付いていたツタが消滅し、ヒビだらけになっていた部分が何も無かったかのように元に戻る。

 そして数秒もしない内に今にも崩れそうな廃館は真新しい真紅の館へと様変わりする。

 

 その瞬間、館の壁から紅い霧が溢れ出す。

 溢れ出した霧はモクモクと雲のように空へと昇っていき、太陽を覆い隠すとその範囲を広げていく。

 

「さぁこの緑の世界を我らが美しき紅魔の色に染め上げるのよ」

 

 彼女のその言葉は比喩では無い、風に流された霧は瞬く間に幻想郷全土へと広がる。

 青い空は赤く霧に包まれ、緑の森や山は光を失い黒く濁り、湖は空を映し出し血の池の如く染まる。

 彼女の言葉通り幻想郷全体が『紅く』染まったのだ。

 

 

 

 これは後に《紅魔異変》と呼ばれる異変の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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