思いついて20分くらい。
え?セキロ安くなってるって?
買おうか(ダイマ)
ライスシャワーが目を覚ますとそこは妙な御堂の中だった。
トレセン学園の寮で寝たはずだが…はて?
以前のライスならば怯えまくっていたであろうが、トレーナーさんからいささか悪影響を受けすぎて順応性つよつよライスちゃんモードなのであまり気にしなかった。
ウマ娘の中でも小柄な方の自分が体を丸めてギリギリ入るぐらいの広さ。意外と居心地は良い。
小窓からうんしょうんしょと顔を出してみると、こちらを見て固まっている時代錯誤な格好をした人物が3名。
1人はまさに落ち武者とも呼ぶべきか、胴鎧はヒビ割れ、草履も藁がちぎれかけ、といういかにもな格好をしていた。
夜道ならば一目で悲鳴を上げそうな風体の怖ろしい武者であった。
だが、不思議とこちらにむける哀しそうなその目はとても優しげだった。
もう1人は片腕が義手の忍であった。眉間のシワが深く、背には大太刀。腰鞘にも頑丈そうな刀。
睨まれているとも思えるが、気難しそうな様子がどこかいつも何かに悩んでいる自身のトレーナーを彷彿とさせ、怯えはしなかった。
最後の1人は黒い着物を着た、自分で言うのもなんだが、幸薄そうな美人であった。
もしも時代劇の撮影だとすれば他2人と比べると配役は戦わない町娘のように思える。
が、場も道も畑も違えども、レースで文字通り命をかけて身を削る争いをするウマ娘である自分にも伝わる。
彼女は強い。それもとてつもなく。
しかし、やはりどこか儚げで、そして何よりぴょこぴょこと動くウマ耳に目を輝かせる姿は子猫を見つけた少女のようであった。
御堂から出てペコリと一礼。アイサツは大事。古事記にもトレーナー白書にもきっとそう書いてある。
荒れ果てた廃寺。
それが一番似合う場所であった。
薬師と教えてもらった着物のお姉さんに撫でられつつお話を聞いた。
曰く、朧気に混じり縁によって流れ着いた、と。
意味は分からなかったが、名前を聞かれたのでライスシャワーと名乗ると、『いい名前ですね』と褒めてくれた。
忍の人がどこかへ急いで向かったので、残ったお姉さんとお侍さんにも名前を聞いたのだが、困ったように笑い、教えてはくれなかった。
時が末路わないようにーーーーと。
お侍さんは哀しげに一度頭を撫でて、どこか遠くを観たようにした後、安堵したように笑っていた。
『良き友と師がおるのだな』と。
うん!と、我がことのように嬉しくて、学園のことやトレーナーさんのこともたくさん話をした。とても嬉しそうに喜ばしいようにお侍さんはお話を聞いてくれた。
でもお侍さんのことは寂しそうにして言葉をつぐんで答えは聞かなかった。気を悪くしてしまったと思い謝ろうと思うと、笑って気にするなーーと言ってくれた。
どうしてか分からないけれど、
トレーナーさんや皆へ伝えるように言いたくて、
でも疲れきってしまっているようなお侍さんにそれでも何か伝えたくて、でも言葉が見つからず、トレーナーさんにされた時に嬉しかったことをした。
ギュッと抱きついて背中をさすると、お侍さんは泣きそうに、でもほっとしたように笑ってくれた。
感極まったお姉さんがギュッとしてくれた。
本堂の中には片腕のおじいさんがずっと木彫りの仏を彫っていた。
『お前さん…炎が…いや……そうか。ふん…まぁ、大丈夫じゃろうて。直にあやつが戻ってくる。早めに帰れ…。儂には触れん方が良い。』
おじいさんが言ってお姉さんが注意しつつも持ってきたきつめのお酒を煽っていた。私には少し匂いがきつかったので、ぴぃ!と涙目で飛ぶと、呵呵大笑と笑っていた。
その後戻ってきた忍びの人と一緒に出発することになった。
お寺にあった仏様ーー鬼仏からは三女神様と同じ気配がしたけれど、ここの鬼仏からでは無いらしい。
よく分からなかったけれど、お姉さんもお侍さんもおじいさんも優しく微笑んで見送ってくれた。
忍びの人の背中に掴まってアトラクションみたいに崖を越えたのは二度と忘れられないと思う。
忍の人はやっぱり無口だったけれど、何故か似ていると思った。
ピリピリしたおっきな刀も背負われている間は真っ赤なオーラが引っ込んでいた気がした。
どれくらい進んだか分からないけれど(目を開けていられなかった)やがて霧がかかったおっきなお寺にような場所につき、
『中に入れば縁を辿れる。……これを』
と、おはぎをくれた。
忍びの人の主人さんが、餞別にと、喜んで作ってくれたそうだった。
お礼を言うと、
『為すべきことを為せ…』
と、頭を撫でてスッとまるで神隠しにでもあったかのように消えてしまった。
………。
お猿さんの石像や鶯張りの廊下?を進むと、両開きの扉が開いていた。
中では白い着物のお姉さんとおばあさんが居た。
凛としたような声で、
『お名前を…お聞かせ願えますか?』
と言われたので、ライスシャワーと答えた。
上品に着物を口に添えてコロコロと笑うと、
『そうですね、お米は大事。…ふふふ。そんな縁もありましょう。』
『ええ、そうですね…今はただの、巫女とお呼びください。』おこめちゃん…そんなあだ名で呼びたくなるような?
だからあえてトレーナーさん直伝の(滑り散らかす)トークスキルで、
「ライスね、朝はパン派です!」というとまたカラコロと笑ってくれた。
巫女様とおばあさんと一緒に忍びの人から貰ったおはぎを一つずつ食べた。
とても美味しかった。
『外もまた愉快なのですね。ふふ。これを持ってトレーナーさん?に振りかけて差し上げなさい。ナイショのイタズラですよ。』
巫女様がひんやりとしたお米を渡してくれた。
『もう、あんまり喧嘩しちゃダメですよ?』と小声で。
おばあさんが『あっちじゃあ〜』と指差してくれた方の鬼仏を見ると自然と意識が吸い寄せられて。
…おこめは大事。
よく味わってくださいね?
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ふと気づくと部室の前にいた。
半開きの扉の奥には机に突っ伏して寝ているトレーナーさんが見えた。
中に入って近づくと、レース名簿の欄に《古代米(笑)》と書いてあった。
あぁ、そっか。思い出した。
ぐへへ…寝言を溢すトレーナーさんを見やりつつ、手の中に握っていたお米をトレーナーさんの頭にパラパラと振りかけた。
すると、一瞬で飛び起きて、冷や汗をかきながら名前の欄を書き直し、それはもう大袈裟に謝っていた。
あまりにもな様子に目をパチクリしながら許すよぅ、と答えるとまだ若干震えながら、
幽鬼みたいな人達から睨まれて生きた心地がしなかったーーーと答えたそうな。
迷えば敗れる。
だから夜勤で地獄を見るのだ(寝ます)
回生と虫憑き…うーん。信仰も捉え方によってはファンタジック。