そのうち改稿するかも
※2022/2/7 少し文章の修正や加筆
☆1
〈出会い〉
春。
それは新しいことを始めたり、新たな友達を作ったりするためのいい機会に巡り会える季節。
入学式、クラス替え、入社といった一つの区切りとなる行事やらなんやらがかなり多い季節でもあるね。
まあ、実際はこのことがうまくいかなくてそのまま五月病へ、などということもありうるが。それはともかく。
俺自身はもう新しい人間関係の構築という点では慣れたものだったりする。
今まで俺が通っていた中学、そして今通っている高校ともにマンモス校であるため、クラス替えになるとそれまでの友達と離ればなれになるということはしばしばあった。
だからこそそのたびに新しい人間関係を構築してきたのだ。
結局何が言いたいかというと、今日は進級後のクラス分けの発表日であり、俺の目の前にはそのクラス分けが書かれているボードがあるということである。
見た限りじゃ俺の去年のクラスの奴らは一人もいないなぁ……おっ、よく見知ったやつが一人いる。
“泉こなた”という名前が、そこにはあった。
彼女との付き合いは、それこそ生まれたときまで遡る。
彼女の両親とうちの母親が知り合いであり、かつ誕生日が同じであったのですごく親しくさせていただいている。まあ、一種の幼なじみというやつだろう。
このような関係は二人とも大人になるにつれて変わっていくことが多いが、俺とこなたは不思議とそういうことはなかった。
というかむしろ仲が深まって、二人で泊まりがけでコミケに行ったりしたものだ。
互いにオタクだからだろう、話がとにかく合うのだ。
譲れない一線というものはあるが、それについての議論も楽しい。
まあ俺としてはそろそろ次の一歩にすすm「あれー、ゆうやじゃん!」
後ろからよく知っている声がした。
振り向くとそこには見知った顔が一人と、見知らぬ顔が三人いた。
「えっ、こなたに男子の知り合いがいたの!?」
「むぅ、その反応はいくら私でも傷つくよかがみん……かがみやつかさ、みゆきさんは知らなかったね、この人は若瀬ゆうや、私の幼なじみだよ!」
「えっと、ご紹介にあずかりました、こなたの幼なじみやってる若瀬ゆうやです。去年は一年F組でした。ゆうやって呼んでくれると嬉しいかな」
「ああ、あんたがあの……柊かがみよ、よろしくねゆうや君」
「泉さんからお話は伺っています、高良みゆきです、よろしくお願いしますね」
「柊つかさだよー、よろしくね、ゆう君」
「ゆ、ゆう君? 珍しい呼び方だね……」
というかここまで高レベルな子たちに来られるとちょっとどぎまぎしてしまうな。
てかこなたは俺のことどんなふうに話してるんだ一体。
「下の名前がゆうやでしょ? だからゆう君!」
「なるほど、いいあだ名の付け方だと思うよ」
「ついでに言っておくと、かがみとつかさは姉妹で、かがみが姉でつかさが妹だよー」
「……まあそんな気はうすうすしてた」
「ちょっと、それどういうことよ」
「どんだけ~」
だって、どう見ても柊つかささんの方が妹じゃん?
この二人見てると勝気な姉と穏やかな妹という組み合わせからか、双子ではないとはいえ、姫松のあの姉妹思い出すな……。
それはさておき。
「三人ともこれから本当によろしくね」
新しい生活初日から新しい友人に恵まれたのは本当に嬉しいモノである。
〈身体測定〉
「またこの季節が来てしまった…」
「何言ってんだこいつ」
いや、まあ今日の行事から大体の事情は察せられるけれども。
この行事は色々な人の心を打ち砕くからなぁ。
…俺も、伸びているといいなぁとは思うし。
「ゆうやは身長平均あるから羨ましいよねぇ」
「平均しかないのは微妙な気分だけどね」
男としてやはり身長は平均以上欲しいものである。中学時代、部活やってる際にも身長あるほうが有利だから身長すっごく欲しかったもんね。実際高身長の相手だと苦戦することも多くてさ。
「こなちゃん、ゆう君。そろそろ私たちの組の番だって~」
「もうそんな時間か。ほら、こなた。いつまでもいじけてないで行くよ」
「ううぅ……世界はこんなことじゃないこと、ばっかりだよ…」
「リリなのネタはいいから、ほら」
リリなの一期ももう三年前かぁ、二期(A's)も面白かったなって。
三期(StrikerS)も始まったしリリなのやっぱり最高やな!
クロノ君の名台詞をぶつぶつと呟いているこなたを引き摺りながら保健室へ移動する。
なお、体格差があるからか簡単にずるずる運べた模様。
しかし軽いなこなた。ゲームやアニメとかに夢中になってるあまりご飯食べてないんじゃないのかね、少し心配である。
〈結果はいかほど?〉
(なんか伸びが昔に比べて落ちてきてるような……)
あんまり良い結果とはならなかったけれども、まあこんなもんだろうかと一人納得する。
身体測定は男子が先にやって、女子が後にやるというもの。うちの高校県内でも…というか関東圏内でもか? まあともかく有数のマンモス校なので、身体測定の場所自体は多めだ。
それでも午前中丸々身体測定で消えるけれど。
さて、外に出ている人を見る限り今は柊さんの姉の方のクラスがやってるらしい。
柊さんはまだ出てこないから、今やってるのかな…?
「おっ出てきた。……あれ?」
なんともまあ落ち込んだ顔で出てきたもんだ。
そのまま考え込むようにしてこちらへ来る柊さん。
「間食が悪かったのかしら……」
「……触れないようにしよう」
間食のこと呟いてて落ち込んでるってことは…まあ体重関係だろうか。でもそこまで気にするような体型ではないと思うんだけどなぁ。うん、普通にすらっとしてるしいいと思いますヨ? 1年の頃から美人姉妹でそれなりに有名だったしそういうことですねうん。
女子はやっぱり気にするものなのだろうか。
「縦も前も伸びてない……」
そんなことを考えてると、次はこなたが出てきた。やはりこなたも落ち込んでいる。
まあこいつの場合は毎年毎年身体測定のたびに身長が伸びないとか胸が出てこないとか俺に愚痴ってくるから今年もそうなんだろうなという確信がある。
「ねぇゆうや、なんで人ってこんなに格差が生まれるんだろうね……?」
「坊やだからじゃない?」
「流石に返しが適当すぎない?」
「だって毎年のことじゃん」
「ううぅ、世界は「それ二度ネタだからな」先に封じられた!」
こなたは今日も絶好調である。でも二度ネタは許されない。
……でも二度ネタで返してくるあたり実は絶不調なのか? こいつの好調不調はたまに分からん。
「(今日身体測定って忘れててキャラ物の下着着てきちゃったよ~。恥ずかしいよぅ)」
あれ、柊さん(妹)も落ち込んでるし……理由がわかんない。
でも雰囲気から察すると体型関係ではなさそうな気がするけど。追求するのもあれだから深く考えないようにしよう。
結果としてここには4人の身体検査によって心が折られた男女が集った。さて、最後は高良さんを残すのみとなったのだが。……高良さんの事だし、心が折られることはないと思うが。
そんなこと思ってたら高良さんが出てきた。余裕そうな顔をしている。流石容姿端麗な完璧超人として一年生の頃から有名だった高良さんだ。身体測定でもその雰囲気があふれ出ている。
「ちくしょう! 一人だけ余裕な顔しおってぇ!」
「ずるい……」
「羨ましい……」
「ええっ!?」
心折られた人たちの余裕そうな人に対しての憤りが凄い。
「でもゆうやも割と余裕な顔してるよねー」
「なに……? ゆうや君もそっち側だったの……?」
「い、いや俺も身長の伸び具合とか減速してきてるし、部活やめて筋肉量減ってきて体重も少し落ちてきたから!」
「ふぅん。体重が、落ちてきたと?」
「般若が!? 般若が後ろに見えるよ!? 助けてこなた、柊さん、高良さん!」
しまった、失言だった! 一応助けを求めてみる。意味ないような気がするけどさ。
「「あはははは…」」
「諦めたら?もう試合終了だよ?」
「そんな全てを悟った安西先生みたいに!? ってそんなこと言ってる場合じゃ般若がすぐそこになんか鬼に進化してアッーーーーー!!」
〈進路希望〉
「ひどい目にあった」
「でも割と自業自得なところあるからしょうがないよゆうやー?」
「いやでも体重減ったとはいえ体脂肪率増えてんだよなぁ……」
筋肉に憧れるのは男として当然だと思う。もうちょい鍛えなおさないとだめかなぁ。
中学OB戦とかあったりするし、せめて現役時代の筋肉量は維持しときたい。
まあそれはともかく。
身体測定が終わり、教室に戻ってきた俺らの手にはそれぞれ一枚の紙が。
本日の日程はこれを提出して終了である。こんなんでいいのか進学校。
まあ新学期初日ではあるし、これぐらい緩い方が生徒達のやる気も出るのだろうか。
「ふぅむ進路希望か……」
「進路なぁ。2年最初に言われてもって感じはある」
まあ先生達もそれはわかっているのか、大まかな学部学科とかで良いっぽいので気は少し楽だなーって感じだ。
「夢とかはあるけど、こうして実際に考えてみると難しいよねぇ」
「そうねぇ、私も曖昧な感じだし」
と柊姉妹の言。流石にこの時期に自分の進路をしっかりと決めてる人は少なさそうなイメージはある。というか周りを見回してみると、やっぱり書くのをためらっているクラスメイトは多い。
「何か自分の特技で活かせるものとかで考えてみるといいんじゃないの?」
「ほー、そういうこなたさんは何か特技をお持ちでいらっしゃる?」
こなたの特技だと料理とかサブカルチャー関係だろうか。あと運動関係とかが考えられる。
もしくは父親と同じ道をたどって作家とかかもね。
「ん~、とりあえず某小学生探偵アニメのOPのパラパラは全部踊れるよ?」
「そ、それは素で凄いっ」
「……小学校の運動会で踊ったなそういえば。まだ覚えてたのね」
「……でもそれ直接進路とは関係ないわよね?」
「それは言わない約束だよかがみん」
妙なところでスペックが高いのが泉家の特徴だよなと。でもそれが進路とか就職とかで活かされないのがなんともらしいよね。
とりあえず特技とか関係無しに、夢とも呼べないような漠然とした目標のようなものを思い浮かべつつ、進路調査に書く。
1年と半年後、自分の進路に大きな影響のある出来事を知らないままに。
〈頭とお尻〉
身体測定の次の日。本日から通常授業がスタートしている。まあ初回だし授業のガイダンスが多いんだけどさ。本格的な授業開始はそれが終わったらだな。
そんな日の昼休み。こなた、柊さん、俺の三人で卓を囲み昼食を食べることに。
クラスに元クラスメイトとかいないから飯を一緒に食う友達とかいないのよね。
「はむっ」
「こなた、料理できるのになぜにチョココロネ……?」
「だって朝の時間は貴重じゃん?」
「いや、まあそうだけどさ」
「うんうん分かるよ。朝は寝てたいよね~」
「……朝練してたから朝の時間が貴重ってのは分かるけど」
朝については睡眠時間削ってオタ活も運動も色々やっている俺と、睡眠時間を削ってないけど寝ておきたい柊さん。そして限界まで睡眠時間を削ってオタ活するこなたとで三者三様に分かれているらしい。
バラエティー豊かだな本当に……。
「そういえばつかさ、ゆうや。チョココロネってどこから食べる?」
話をぶった切って唐突に食べているコロネについてしゃべり出すこなた。ふむ、チョココロネをどこから食べるか、か。
「私は『頭』からかなぁ。ゆう君は?」
「んー……そのときの気分で適当に食べてるから考えたこともないや」
「ゆうやってその辺り本当に適当だよネ……で、つかさ。チョココロネの『頭』って細い方と太い方どっち?」
「ふえっ!?」
俺も適当なところはあるけど、こいつもこいつで適当なところを気にするよな…。
「うーん、私はこっちの細い方が頭だと思うけど」
こなたの持っているチョココロネの先端部分を指差しながらそう答える柊さん。
「なんで?」
「だってチョココロネって巻き貝みたいじゃない?」
巻き貝の形を両手で表しながら笑顔で答える柊さんを見ていると、確かにチョココロネが巻き貝に見えてくる。ふむ、でも巻き貝なら頭は太い方ではないだろうか。ボブはいぶかしんだ。
「こなちゃんはどっちが頭だと思うの?」
「うーん、私は太い方が頭だと思うなぁ。だって芋虫みたいじゃん」
「いもっ!?」
「いや、芋虫はねーだろこなた」
柊さんは凄いショックを受けたような顔をした!
こなたは無表情でチョココロネを食べ進める。……おおいこなたー?
「で、ゆうやはどっちが頭だと思うの?」
「スルーかい。俺も太い方かな。巻き貝だと中身の方が頭っぽいし」
「ふーん」
「こなちゃん、あんまり興味ないんだね……」
「まあそういうやつだし」
「でもそう考えると芋虫より巻き貝の方がイメージは良いよね」
そう言いつつコロネを頬張ることに集中するこなた。
しかし、コロネの細い方から食べるんだな……っと。
「こなたこなた、コロネのチョコが垂れてるよ」
「むっ、本当だ」
細い方から食べるとこんな感じでコロネのチョコって垂れるから太い方からのがいいのかもしれない。
そしてぺろぺろと垂れてきているチョコを舐めるこなた。なんか少しエロいな。
舐めきったあと、もう一回細い方をぱくり。そしてまたチョコが垂れる。舐める、食べる、垂れる、舐める。を繰り返していくこなた。
いやもういっそのこと太い方から食べろよと思わないでもないけど。
「しかし、こなたさんこなたさん。高良さんが何か言いたそうにこっちを見てるぞ?」
「?」
さっきからチョコをぺろぺろしているこなたを見て、クラス一の巨乳にして知識の宝庫こと高良さんが何か言いたげにこっちを見ていた。
その豊富な知識をもってこなたにチョコが垂れない食べ方を教えるのだろうか。
「チョココロネのチョコが垂れてきたら、コロネの余ってる部分をチョコに付けて食べるという……食べ方も……」
「!?」
目から鱗みたいな感じで驚くこなた。そんな単純な解決方法を気づかなかった自分が自分で悲しいのだろうか。
「(´=ω=.`)」
その後こなたはしょぼんとしながらコロネを頬張っていたのだった。
〈開幕〉
新学期が始まっておよそ二週間が経過し、新しいクラスにも慣れてきた頃。
まあ主にこなたとか柊さん姉妹とか高良さんとかとしゃべることが多いんだけどもそれは置いておいて。
登校してきたこなたが死んでる顔をしていた。
「どうしたこなた、朝っぱらから暗い顔をして……」
「いやぁ、またこの季節がきちゃったなぁって」
この季節とな。まだ4月だから五月病には早いような気もするけど。
というかそれ二度ネタじゃね?
「こなちゃん、一体何がきたの?」
そこに柊さん妹が来た。柊さんもこなたの言っている季節が気になるようだ。
俺も気になるのでこなたに目線を送り、話すように促す。
長い付き合いだし、アイコンタクトぐらいはできる。
「いやほら、プロ野球が開幕したなって」
「「プロ野球?」」
柊さんと二人、疑問符をこぼす。
プロ野球か。K1とかは別としてこなたはスポーツ観戦とかするタイプじゃないのだが……こいつになんかそれ関連で関係していることとかあったっけ?
あっ、もしかしなくても。
「でもこなちゃん運動得意だし、スポーツ観戦とか好きそうに見えるけど」
「いや、スポーツ観戦は好きでも嫌いでもないんだけどね……プロ野球だけは別なんだよ」
「なるほど、延長か」
「そう! 予定は狂うし、あまつさえ深夜アニメは潰れるしさ……」
プロ野球はわりかし延長することが多いから深夜番組が遅れたり潰れたりするんだよね。
深夜アニメもそうだけど、深夜にやってる麻雀番組とかも流れることがあるから俺にも実害があったりする。
自分の家だとケーブルTV引いてるからアニメは問題ないことが多いんだけど、こなたの家はケーブルTV引けなかったとかなんとかでもろに被害を被っているとのこと。
「というわけでゆうや、昨日のアニメの録画ビデオ貸して~!」
「分かった! 分かったから教室でくっつくな!」
やっぱり昨日のアニメ録画失敗してたのね。
録画ビデオの貸し借りはよくやってるから別にかまわないんだけども。
こなたはボディタッチ多いからこういうときは役得なんだけど、流石に教室で抱きつかれるのは恥ずかしい。
「ありがとゆうや~!」
「だからくっつくなってー!」
「(本当にこなちゃんとゆうくんって仲良いんだね……)」
まあこいつの笑顔が見られたから、それで良しとするか。