〈この時期特有のアレ〉
連休明けて数日。休み明けの実力テストも終わり、平穏な日々に戻った感じがするなぁ。
まああと一か月もすれば中間テストなんだけども。
そんな日の朝のHR。こなたが来ていません。……遅刻か?
「泉ー、泉ー。なんや、来てへんのか」
うちの学校は朝礼の際に担任の先生が点呼を取って出欠の確認を行うんだけど、この時間になってもこなたは未だに来ず。確定遅刻か欠席か……。
「若瀬、なんか聞いてへんか?」
「いや特になにも……というか黒井先生なんで俺に聞くんですか」
最近だけど、こなた関連はなぜか俺に聞かれることが多い。幼馴染で仲がいいから色々と知っているとでも思われているのだろうか。
「だって幼馴染やろ?」
「だからってなんでも知ってると思うなよォ!?」
なんでも知ってたら逆に怖いわ! 某推理漫画(真実はいつも一つの方)の幼馴染だって知らないことの方が多いでしょ!?
「ま、ええわ。今野ー」
「はーい」
「流した!?」
黒井先生も割と適当なとこありますよね……いや、だからこそ好かれてるんだろうけども。
今日はこなたいないのか……いや、寝坊とかじゃないよね。HR終わり次第連絡してみるか。
でもこなたの携帯って繋がらないことのが多いんだよな、繋がってくれよ?
~☆~
「----おっ、つながった。こなたー。学校始まってるけど、どうした?」
『あ、ゆうや……いやね、今日病欠なの……』
「マジでか。大丈夫か? 風邪か?」
こいつが病欠するとは……なんだかんだで病欠が少ないのよなこなたって。かなたさんの体の弱さを感じさせない健康っぷりが特徴の一つなのに。
風邪とかだったら帰りにいつものメンツ誘って見舞いにでも行くか。
『いや、五月病で……すっごくだるいの……』
「は?」
『いや五月……』
「は?(威圧)」
『……じゃねー』
そして切れる電話。こなたェ……五月病で学校休む人初めて見たぞ……。怒るとか呆れるより先にある意味尊敬の感情が出てきたわ……。
「ゆうくん、こなちゃんどうだった?」
「あ、つかささん。こなたってば五月病だってさ」
まあ、確かにこの季節は特有のだるさあるけどなぁ。学校休むほどではないよね……。
社会人になったらもっとだるくなるのだろうか。むしろ社会に出てからのがだるくても出勤とかしなければならないから辛いだろうなぁ。
「ゆきちゃんゆきちゃん。五月病ってなーに?」
「五月病ですね。病とは付いていますけど、正式な病名ではありません。ゴールデンウィークを過ぎた頃、進級や進学など環境変化のあった方が新しい環境に慣れず、体調が悪くなったりやる気が出ないなど、心身に不調が表れる状況のことを『五月病』と一般的に呼んでいます」
「ゆきちゃんありがと~。流石ゆきちゃん、詳しいね~」
「いやホントにな」
五月病って正式名称じゃないって初めて知ったぞ。流石知識の宝庫みゆきさん。これからも多分お世話になります。
「みゆきさん、逆に知らないことがなさそうだよな」
「なんでも知ってそうだよね」
「なんでもは知ってませんね、知っていることだけです」
「……それ、素で言ってます?」
「え?」
「素か。流石みゆきさん、そういうところが萌え要素の塊とか言われる所以なんだネ」
某物語シリーズのセリフが飛び出てくるとは思わなんだ。
こなたがみゆきさんに萌えているのも納得ですわ。
「こりゃあ確かにクラスどころか学年中の男子がほっとかないわな」
「??」
だからそういうとこなんですってみゆきさん。
〈瞬間回復。もしくはイグニッションキー〉
で、放課後。なおこなたは黒井先生に怒られたとのことで二時間目から登校してきた。
まあ授業中はずっとだるそうに過ごしてはいたんだが。ちゃんとノート取ってんのだろうか。
「だるー。やる気おきないー」
「めっちゃだるそうね。垂れてるわよ?」
所謂たれキャラってやつだな。たれこなた……うん、なんかグッズでありそうですネ。あと窓XPの背景にいそう。
「毎年5月はたれこなた化するよなぁ。グッズ化希望で」
「ああいうのは元がよくないとダメでしょー……」
言いながらもグデーとしておる。本当にだるさがひどいのネ。
元が良くないとって顔面偏差値の話ですかね。それなら相当高いんじゃないかな。
「ゆうや君、欲しいの?」
「いや、癒しグッズになるかなと」
「ふーん……」
なんですかがみさんその目は。なんか色々混ざってて怖いんですが。
「しかしこなた凄いわね。私、五月病で病欠しようとする奴なんて初めて見たわよ」
「2ちゃんなんかではたまに見かけるけどネ」
「世の中にはいるのね……」
まあ2ちゃんのカキコなんて信用度はあんまり高くはないんだけどさ。でもいそうって思わせるのは2ちゃんの魔力なのか魅力なのか。それとも住人の性質なのか。
「でもGW明けのこの時期は妙に気分が重くなったりだるくなったりするわよねぇ」
「俺もこの時期は体が重くてなぁ」
「そうそう、宿題なんかもやる気おこんなくてさ」
「あ、それ私もー」
……あの、こなたさん? そういうのは毎回宿題をちゃんとやっている人のセリフでは……?
というかこなたの場合いつも宿題に関してはやる気自体あんまりないよね?
ほら、かがみさんも『何言ってんだコイツ』って目で見てるぞ。
「あー……五月病でだるいから突っ込まなくてもいいか?」
「こなちゃん……」
~☆~
そんな会話の後、かがみさんが書店に行くとのことで、俺、こなたが付いてきた。
付いてこなかったつかささんは家で料理の下準備をするとのことで先に帰っていった。やっぱり本格的に料理をする人は下準備にもそれ相応の時間をかけるのだろうか。
「しかしこなた、だるいだるい言ってるけど、寄り道にはしっかり付いてくるのね」
「なんだかんだで友達付き合いは大切にする奴だしな」
こなたが書店で何か買うとすると、大体文房具か漫画、漫画雑誌なんだけど、漫画雑誌や漫画はとら〇あなかメロンブ〇クスかアニ〇イトで買ってるからなぁ。
だから、そういうことよね。買うものなくても付いてくるってことは。
そのこなたは到着そうそう漫画雑誌を色々と立ち読みしている。
「ゆうや君も付いてきたってことは何か欲しい本でもあるの?」
「新しく出た麻雀の牌譜集が欲しくてな。高校のインハイからプロのリーグ戦までの名局が載ってるから情報が出た時から欲しかったんよ」
まあ予約可能になった瞬間に限定版予約したんだけどさ。ただ使用用と保存用の二冊欲しかったんよね。そしてできればバイト先に置くようにもう一冊。予約だと一冊しか予約できなくてね……。ちなみに限定版特典はネトマの名局が載ったブックレットと名局のハイライト集DVD(三時間分)である。
「おっ、あったあった」
「結構どころかかなり分厚いわね、牌譜集ってそんなに厚いのが一般的なの?」
「いや、こいつが特別なのよ」
なにせ去年のインハイとかコクマ、プロリーグとか凄く名局が多くてな。特にインハイ。男子も女子も良い戦いが多かった……。で、名局集ってなるとなぁ。そりゃ収録牌譜も増えますって。
なおお値段3800円。内容から考えると凄く安いんだけどネ。
「で、二冊買うのね……」
「これはマジで二冊買うだけの価値があるからな」
何だったら予備でもう一冊欲しいくらいです。この牌譜集シリーズは全年度の揃えてるからこそ、価値も良く分かってるのさ。
そんなことを話しながらこなたの所に戻る。
「なんかこなた震えてるんだけど」
「まるでだるさから解放されたようなって、目が光ってらっしゃってますネ」
こなたの目が光ってるってことはテンション高めな証拠だから。
だるさから解放されるとは、なにか面白い漫画でもあったのか?
「こなt「ゆうやかがみ、祭が始まるよ!」……祭とな?」
「この時期に祭りなんてやるところあったかしら」
祭だと? この時期、そして読んでたのは漫画雑誌・コン〇ティーク……あっ。
「そう、QUOカード全員サービス──―コン〇ティークのお祭り──コンプ祭!」
「うっわすっげ一発でエンジンかかったよ」
「趣味の力って凄いのね……というかこなたが単純なだけな気もするけど」
しかしコンプ祭のQUOカード全種そろえるには結構な金額かかったはずだ。揃えられなくはないだろうけど、その先にある夏コミの軍資金に影響が出そうな気もするが……?
「よし」
「よし?」
「バイトでもするか!」
「いきなりだな……」
てかマジで全種揃えた上で夏コミでも散財する気か。こいつのオタクとしての収集欲というかコレクター魂というか、そういう系のは本当に頭が上がらんなぁ。
「本当に分かりやすい奴だな……」
「こなたって目的のためには結構王道的なやり方すること多いから……」
ただし苦手なものはできるだけ避けようとするんだけどネ。
〈アルバイト・こなたの希望〉
こなたがコンプ祭の影響で、バイトをしようと決心した次の日。バイト先の麻雀喫茶に出勤しています。ただまあド平日の夕方ということもあってか、セットで来られている常連のお客様ぐらいしかおられない状態だ。
あの方たちって飲み物しか頼まないし、4人で来られているからウェイターとしても代走要員としてもあまり出番ないんだよなぁ。
「若瀬君、彼女が来ているよ?」
「やっほーゆうや来たよー」
「こなたか。だから店長、こなたは彼女じゃないですって」
こなたがうちの店に来るのは珍しくはない。ここには元々客として俺とこなたとでよく来てたし、俺が働き始めてからもこなたは秋葉原に来る際には大体立ち寄っているしね。
「で、今日も二人麻雀でもやるのか?」
「いやいや、今日は店長さんに相談があってネ」
こなたが店長に相談だと? 珍しいこともあるもんだ。
「なんだい泉君。僕に相談って珍しいこともあるもんだ」
「(あ、店長も同じことを思ってる)」
「この店の下の階にコスプレ喫茶ってあるじゃないですか」
「ああ、あるね」
確かにこの下の階はコスプレ喫茶だ。前に話したように自店と同グループの系列店で、うちとも提携してるので、結構なやり取りがある。たまにヘルプで駆り出されたりするしね。
「確かアルバイト募集してましたよね?」
「うん。ウェイターの女の子を募集してたね。高校生可で」
「まだ募集ってしてますか?」
こなた、まさかコスプレ喫茶で働く気なのか!? 確かにこなたならコスプレも楽しめるだろうし、案外天職なのかもしれない。
というか昨日の今日で聞きに来るってどんな行動力してるんだよ。やっぱり趣味へのエネルギーの使い方はすさまじいものがあるな。
「泉君、もしかして働いてくれるのかい!? いや、関係ない。働いてくれ!」
「えっ、あっ」
「よぅし、早速下で面接DA☆ 若瀬君ここは任せたよ!」
「ちょっゆうや助け────」
そうして店長に下の店に連行されていったこなた。1人取り残される俺。あと先ほどのやり取りを見て唖然とされている常連のお客様4人組。……うん、嵐が過ぎ去ったあとってこういう感じなのかナー?
しかしこなたが勢いに負けるなんて久々に見たな。なんの準備もしてないだろうけど大丈夫かね。
~☆~
バイトが終わって帰り道。同じ町内で帰る方向一緒だからこなたと帰宅中。
「しかしこなた、今日は災難だったな」
「ホントにネ。店長ってはっちゃけるとああなるんだ……」
「普段は穏やかで気のいい人なんだけどな」
あの後。一時間ほどしたらツヤツヤした顔をした店長とゲッソリした顔をしたこなたが帰ってきた。で、来週から働くようになったそうな。
というか下の店舗の店長は、うちの店長とは別人だよな。確か夫婦とか言ってたけど、それでも面接中まさかずっといたのか……? どんだけ期待してんだよ。
「いやー、コスプレに抵抗がない娘でアニメの知識もあるってことで救世主扱いされちゃってネ」
「マジか。てかどんだけ人手不足だったんだあの店」
最近よくヘルプ要請来るなーとは思ってたんだよ。特にGW。バイトの日はインカム付けてずっと上の階と下の階行き来してたしなぁ。その分給料は二倍になったからいいんだけどさ。
「そういえばシフトはどうしたん? 来週から働くってことはもう初月のシフトは決めたんだろ?」
「んー、それがね」
そしてちょっと溜めを入れるこなた。何か次のセリフを言うのを戸惑っている様子だ。
思ったことを結構ズバズバ話すこなたにしては珍しい。……なんだろ、これは……照れてる?
「……ゆうやと全く同じシフトにしてもらったから」
「……え?」
「……来週から、一緒に帰ろうね?」
そう言って笑うこなたの顔は、夕焼けのせいか、頬に赤みが差していた。
自分には恋愛描写を書く能力がないみたいですネ…