ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~ 作:satokun
パン!と乾いた鋭い音がオカルト研究部部室に響いた。音の発生源は翔の頬、それとリアスの平手だ。
険しい顔でリアスは翔に告げる。
「何度言えば分かるの? 駄目なものは駄目よ、あのシスターの救出は認められないわ」
部室に戻ってくるなり、開口一番翔はアーシアを助けに行くと全員に告げた。
当然、主であるリアスは怒り、こうして翔は平手を受けることと相成った。
「そうか。報告も終わったから俺は教会に行って来る」
「・・・冷静になりなさい、翔。今の貴方は頭に血が上って酷く短絡的になっているわ。
行けば確実に殺される・・・。それが分からない貴方じゃ無いわよね?」
諭すようなリアスの口調に翔は何の感情ものせずに淡々と機械的に返す。
「殺されないさ、絶対に・・・。俺の行動が皆に影響するというのなら、今すぐに俺を眷属から外してくれてかまわない」
「そんなこと出来る訳ないでしょう! 何で分かってくれないの・・・ッ!?」
リアスの叫ぶような声。
そして、漸く翔は部室に入ってきてから感情の籠った声を発した。
「・・・・・・悪魔だとか、堕天使だとか、そんな理由で目の前で苦しんでいる者を助けてはいけないなんて、分かるつもりもないし分かりたくも無い! 誰かが苦しんでると分かっていながら、それを見て見ぬふりなど俺には出来ないッ! 例えそれが偽善だと分かっていても、それだけは譲れないッ!!」
瞳には決意の炎が燃え上がり、覇気の籠った声で吼える。
一瞬、翔の放つ迫力に圧され全員が黙り込む。
「迷惑だと言うなら、俺を眷属から外すか、この場で消し飛ばせて止めて見ろ」
そう言う翔にリアスは再び翔の頬に平手打ちをしようとするが―――
「部長!」
朱乃がリアスを止め、何か耳打ちをする。
リアスはそれを聞いて、若干顔を歪めるがすぐに戻し、翔に話しかける。
「・・・大事な用ができたわ、私と朱乃は少し出かけるわね。
その前に、翔に話しておく事があるわ。貴方は《兵士》を弱い駒だと思っているわね?
それは間違いよ。《兵士》には他の駒にはない特殊な能力があるの。それが『プロモーション』」
チェスでポーンが相手の一番奥で他の駒に変わる事だな・・・
「翔、つまり貴方は私が敵の陣地と認めた場所の一番重要なところへ足を踏み入れたとき《王》以外にプロモーションできるわ。例えば教会は私達にとって敵の陣地の最たる例よ。そうよね?」
「あっ、はい!」
リアスの言葉に直ぐに答える祐斗。
目を合わせリアスを見ている。
「なるほど、教会に入れば俺も駒の特性を使えるのか・・・」
「そうね、それともう一つ。
「想いの力、か・・・」
「それと最後に、これだけは覚えておきなさい。《兵士》でも《王》は取れる。
これはチェスの基本よ。貴方は強いんだから。それじゃあ祐斗、後は頼んだわ」
「はい」
リアスは出ていった。
翔は何も言わずに部室に置いてあるチェス盤の《兵士》の駒を奥に置く。
「翔くん、行くのかい? 本当に死ぬかもしれないよ」
「ああ、行くが死ぬ気なんか欠片もないがな」
「無謀だね。 向こうは敵の本陣だよ」
「それで?」
「はぁ~・・・僕も行くよ。 君は僕の仲間だ、死に行く仲間を放っておけないし、
それに・・・・・・個人的に堕天使や神父は好きじゃない。 憎いほどにね」
最後の呟きには憎悪が籠らせながら言う祐斗。
そして、祐斗も《騎士》の駒をチェス盤の奥、《兵士》の隣に置いた。
リアスの眷属は何かしらの闇を抱えてるな・・・
そう内心で思いながらも、翔は今は触れないでおく。
「ありがとな、やっぱり数が多い方が楽だ」
「全く、君は現金だね。それに部長は仰っていただろう? 教会は私達にとっての敵の陣地最たる例・・・・・・つまり教会の最深部」
「プロモーションの条件だろ?」
「気付いていたんだ」
「あんな強引な話題転換で気付かないわけないだろ?」
「部長は認めたんだよ。もちろん、僕にフォローしろって意味も含めてだろうけど」
優しく心配性な主様だね・・・
「何か考えがあるんだろうね。じゃなければ縛ってでも君を止めたと思うよ」
爽やかな笑顔を浮かべながら、拘束道具を取りだす祐斗。
それを見て、いつの間に用意してんだよ・・・ と翔は呆れた表情を浮かべる。
「・・・・・・私も行きます」
小猫も祐斗同様に《戦車》の駒の一つを《騎士》に並んで置いてある《兵士》のところに置く。
「やっぱり来るんだ、小猫ちゃんも」
「・・・・・・はい」
「さて、それじゃあ行くか」
堕天使を潰して、アーシアを助けにな・・・
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翔、祐斗、小猫の三人はは共に教会の前にある茂みのところまでやって来た。
そして、中の様子を窺いながら作戦会議を始めようとする祐斗だが、それを無視して翔は教会の前まで歩く。
「どうせ、向こうは俺が来ることは予想してる。なら堂々と行ったほうが楽だ。
それにこの教会はそこまで大きくない。地下室がある可能性がある。儀式をやるとしたら、そこだろう」
「・・・・・・翔先輩は探偵なんですか?」
すらすらと自身の考えを述べる翔に、祐斗と小猫は驚きと呆れを混ぜた表情を浮かべる。
「ま、兎に角・・・正面突破だ」
そう言って、軽く勢いをつけて扉へと回し蹴りを放つ。
すると、扉は大きな音を立てながら、中へと吹き飛んで行った。
「よし、行くぞ」
「ははは・・・」
「・・・・・・翔先輩は馬鹿なんですか?」
祐斗は苦笑し、小猫は呆れている。
「誰もいない・・・。気配はあったんだが・・・・・・いや、いた。って完全に気絶してんな」
翔は蹴った扉に下敷きにされている男を取り出した。
それをその辺にあったロープで手足を結び、さらに柱にまた結びつけた。
「さっさとアーシアのもとに―――」
途中で言葉を止めた翔は、後ろに振り返った。
そして、翔は自身の蹴りによって壊れ、扉が無くなった入口の外を凝視した。
その行動に首を傾げる祐斗と小猫。
「突然どうしたんだい?」
「・・・・・・いや、なんでもない。俺の勘違いだったようだ。行くぞ」
何でもなかったかのように翔はどんどん先に行ってしまう。
それに祐斗と小猫は慌てて後に続く。
祭壇の所に扉を見つけ、扉を開けると、中には機械に固定されているアーシア。
大勢の悪魔祓いと堕天使であるレイナーレがいた。
「ようこそ、悪魔の皆さん」
「アーシア」
「翔・・・さん」
「感動の対面だけれど―――え?」
翔は相手が言い終わる前にアーシアの前に移動する。
「遅れて、すまないな」
アーシアが固定されている機械を強引に破壊し、アーシアを助け出す。
「迎えに来たぞ」
「あり、がとう・・・ござい、ます」
「今はゆっくり眠れ」
アーシアの顔の前に手をかざし、眠らせる。
そして、先ほどと同じように祐斗と小猫の元に一瞬で戻った。
「くっ! かかれ! もう一度アーシアを捕獲し儀式を続けるのよ!」
「翔くん、退くよ! 目的は達しただろう」
敵の数が多いため一時撤退を進言する祐斗だが、翔はそれを首を振って拒否する。
「駄目だ。 あいつらがいる限りアーシアが狙われ続ける。二人とも少し下がっててくれ。・・・・・・すぐに終わらせる」
翔は二人を扉の外まで下がらせる。
その際に、小猫にアーシアを預ける。
「悪魔め!」
「滅ぼしてくれるわ!」
神父達は光の剣や銃などを取り出し、襲いかかろうとするが―――
「―――失せろ」
一言。たった一言で口から泡を吹きだしながら次々と気絶していった。
「な、なんなのよ!!」
突然の出来事に思考がついていかない上に
翔から放たれる威圧感に怯えた様子を見せるレイナーレ。
「「凄い!」」
祐斗と小猫の声が重なる。
「後はレイナーレ、貴様だけだ」
静かに言葉を紡ぎながら、
残っているのは正真正銘レイナーレ一人だけだ。
地下室という特性から出口も入り口も翔達の後ろの扉だけ。
「詰みだな」
「ふざけるなッ! その神器を手に入れる為に上層部まで騙してこの計画を進めたのよ!
こんな・・・こんなところで終わりにはさせない。私は至高の堕天使になるのよ!」
往生際が悪いレイナーレは。この期に及んでまだ翔に光の槍を放ってくる。
翔はレイナーレが放ってくる槍を素手の右手で容易く払う。
「嘘ッ!? 嘘、嘘よ! なんでただの人間が効かないの!!」
「貴様の力など効くわけがないだろ」
『Boost!』
機会の掛け声が響く。
ゆっくりとレイナーレに近づく翔にレイナーレは後ずさる。
「止めろ! 止めて・・・」
「―――終わりだ」
左手の籠手に赤いオーラが纏う。
そして、渾身とまではいかないが、それなりの一撃がレイナーレに叩き込まれる。
レイナーレは避ける事も、防ぐ事も出来ずに腹部に強烈な攻撃を受け、吹っ飛んで行った。
「・・・終わったな。 悪いな、祐斗、小猫。出番がなくて」
「いや、君の規格外さがよくわかったよ」
「・・・・・・何か奢ってください」
そんぐらいなら軽いもんだな・・・
小猫の言葉に軽く苦笑していると―――
「よくやったわね、翔!!」
「やっと出てきたか。もっと、気配の消し方を上手くしろ」
「あら、気づいていたの? さすがは私の下僕くん♪」
物陰からリアスと朱乃が姿を現した。
そしてリアスは笑みを浮かべながら翔の頭を撫でる。
「・・・部長、持ってきました」
小猫がレイナーレを引きずってきた。
「とりあえず彼女に起きてもらいましょうか。朱乃」
「はい、部長」
朱乃が魔力で水の塊を作り出してレイナーレにかける。
「・・・起きないな」
「朱乃、起きるまで続けていいわよ」
「はい、部長♪」
朱乃は顔を活き活きとさせながらレイナーレに水をかけ続ける。
「プハッ・・・!!」
1分ほど水をかけられ、漸く目を覚ますレイナーレ。
顔だけでなく全身がずぶ濡れ状態だ。
「ごきげんよう」
「リアス・グレモリー・・・」
忌々しい視線をリアスに向けるレイナーレ。
「一部の堕天使がこの街でこそこそ企み事をしていると耳にしたの、それで少し、調べてみたの」
「簡単に貴女の独断専行だと分かりましたわ。」
どうやら翔達が教会に乗り込んでいる間に、リアスと朱乃はこの件が堕天使全体の意思でないことを調べていたようだ。
「部長は滅亡の力を有した公爵家のご令嬢。 若手悪魔の中でも天才と呼ばれる実力の持ち主だからね」
「別名『
祐斗がリアスについて翔に言うと、それに続くように朱乃も言う。
「貴女の敗因は翔の実力を見誤った事ね。分からなかったの? 翔の
「
まだ気づいてなかったのかよ・・・
『馬鹿だな、この堕天使』
まだ翔の
「言い伝え通りなら人間界の時間で10秒ごとに持ち主の力を倍にしていくのが
極めれば神すらも屠れる
ま、倍加するにも時間がかかるからな。それに過度な強化は肉体を滅ぼす・・・
『そうだ。自身の限界を超えた強化は意味がない』
「でも、どんなに強力でも倍加されるのに時間がかかるのが欠点ね。でも、それは倍加となる元の力が低い場合・・・。元の力が強ければ強いほど倍加の時間も短くて済む。・・・本当にに面白いわ、流石は私の下僕くん。もっともっと可愛がってあげるから♪」
そう言いながらまた翔の頭を撫で始めるリアス。
次ぎ来たら避けよう・・・
翔は密かにそう決意する。
「さてと、貴方には何をしたら良いのかしら?」
冷めた目でリアスは、レイナーレを見下ろす。
殺されることに怯えたレイナーレはあろうことか先ほどまで嘲笑っていた翔に助けを乞う。
「ひぃ!・・・助けて! あ、貴方人間なのよね?お願い!本当はこんなことしたくなかったの!
堕天使の仕事で仕方なく・・・!」
「・・・って言ってるけどどうする?」
「・・・・・・・・・・」
祐斗の問いかけには答えずに、黙ってレイナーレに近づく翔。
レイナーレは歓喜したかのような表情を浮かべる。
「レイナーレ、アーシアに謝って二度と己の欲望のために誰にも危害を加えないと誓うか?」
「誓うわ!」
迷わずにレイナーレはそう口にする。
だが、翔はそんな彼女を見て悲しそうな表情を一瞬作るが、レイナーレにはそれが気づけなかった。
「そうか・・・」
そう言って、レイナーレの前に居る翔は、眼を閉じる。
そんな翔にレイナーレは―――
「馬鹿な奴ね!」
最小限の光だけを手に集め、それを翔に突き立てるレイナーレ。
だが、レイナーレの手は容易く掴まれてしまう。
「・・・じゃあな」
掴んでいない手でレイナーレの頬を優しく撫でた後、赤黒い魔力を右手に収束させてレイナーレに解き放つ。
恐怖で顔を歪めたレイナーレが閃光に包まれる、その瞬間見てしまったのだ。
翔が悲しい表情をしながら自分を見ていることを・・・。まるで救えなかったことを悔いるように、謝るかのように自身のことを見ていることに・・・。
その表情を見たら、先ほど感じていた恐怖は消え去り、自然と頬が緩くなった。
そして、彼女は最後に―――
『ごめんなさい・・・―――ありがとう』
「ッ!?・・・・・・ああ」
レイナーレの言葉を聞いた翔は、唇を噛み締め、泣きそうな表情を浮かべるが、すぐに止め、今できる背一杯の笑みを浮かべて言った。
翔の言葉を聞いたレイナーレは今までの表情が嘘のように穏やかで満ち足りたような表情を浮かべていた。
赤黒い閃光が消え去るとそこには何もなかった。・・・ただ、何枚かの黒い羽根が翔の頬を優しく撫でるように宙に舞った・・・。
・
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「・・・で、どういうことだ?リアス」
昨夜の騒動から一夜明け、現在部室で各自がくつろいでいる中、翔とリアスが対峙中。
何故かというと―――
「なんでアーシアが悪魔になってんだ」
昨日は解散となり、俺は家に帰った。アーシアはリアスが預かるというから任せたのだが・・・・・・失敗した
リアスのことだから、治癒能力が高いアーシアを悪魔に勧誘することくらい予測できたじゃないか
内心で自身の考えの甘さに呆れてしまう。
「簡単よ、私がアーシアをスカウトして、アーシアがそれを受けた。それだけよ?」
デスクの上に組んだ手の甲の上に顔を乗せながらにこやかに答えるリアス。
「一体なにアーシアに吹き込んで誘導したんだ」
「あら、人聞きが悪いわね。ただ私は『悪魔になればこれからずっと一緒にいられるわよ?
何より翔も悪魔ではないけれど、オカルト研究部の部員で私の眷属だから、もれなくついてくるわよ?』って言っただけよ?ちなみに即決だったわ♪」
「誘導してんじゃないか・・・。それに勝手に人を餌みたいに使うな」
呆れと疲れが混じったような声でリアスに文句を言う翔に対して、横にいたアーシアが訴える。
「しょ、翔さん!私ちゃんと自分で決めて悪魔になったんです。ですからリアス部長は悪くありません!」
リアスのことを庇いながら、自身の意志で悪魔になったことを告げるアーシア。
それを見て、翔は一旦溜め息を吐いてから、アーシアと視線を合わせて問いかける。
「・・・いいか、アーシア。シスターである君が悪魔になるってなんてどんな喜劇だ?」
「大丈夫です!きっと悪魔になってもシスターでいられます!これも主のお導きなんです!」
そう言って両手を胸の前で握り、祈りの姿勢をとるアーシアだったが―――
「ああ、主よ、どうかお導くあうぅぅうう!!」
突然叫びを上げて頭を抱えうずくまるアーシア。
「きゅ、急に頭痛が・・・」
涙目で答えるアーシア。
「当たり前よ、貴方は悪魔になったのよ? 神に祈ればダメージくらいくらうわよ」
「そ、そうなんですか?」
「おいおい、やっぱり早まったんじゃないか・・・?」
「悪魔になったこと、後悔してる?」
「・・・いいえ、ありがとうございます。こうして翔さんや皆さんと一緒にいられて、私は幸せです」
そう言ってアーシアは翔に微笑みかける。
まったく、そんなことしなくても一緒にいるってのに・・・
ま、本人が納得してるんならこれ以上は無粋だな
翔はそう思い、アーシアの頭を撫でる。
「はうぅぅぅ//// 翔さん?」
「アーシアが納得してるならいいんだ。それと制服、似合ってるぞ」
「ありがとうございます////」
アーシアはこの学園に通うこととなった。何でもグレモリー家がこの学園の経営に関わっているらしく、このくらいは造作も無いらしい・・・
何より驚いたのがアーシアが同学年だということだ。てっきり下の学年だとばかり思っていた
しかも俺や祐斗と同じクラス。どんだけ根回しが良いんだよ・・・
ん? リアスが不機嫌な顔してんな・・・。どうしてだ?
「どうした?リアス」
「別に・・・」
リアスの態度に疑問符を浮かべる翔。
「そういえば、翔くんが教会で神父達を気絶させたけど、あれは何をしたんだい?」
翔とリアスの会話が終わったのを見計らって祐斗が質問をする。
「あれか? あれはただ相手を威圧しただけだ。誰にでもできる」
なんでもなさそうに言う翔に、質問した祐斗だけでなく
聞いていたリアス達も呆れたような表情を浮かべる
俺は歩き続きるさ・・・
最後まで頑張ったお前みたいに・・・
この命ある限り・・・
正義の味方を目指す彼はこの世界で何をするのか・・・
だが、何をするにしても彼は、きっと・・・自分以外のためにしか頑張れない
そんな者の物語が、今―――始まりを告げた
これでとりあえずは投稿が終わりました!
ここまで見てくださった皆様には感謝の気持ちでいっぱいです!
続きを書くかどうか悩んでいますが、できれば書いていきたいです。
また書いてて思ったのですが、これ以外にも小説を書きたいと思ってしまいました!
それで活動報告のところに詳しいことを書くつもりなので、もしよかったら見てください。