ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~   作:satokun

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第13話 決戦!そして・・・

『翔さん! 部長さんが相手の《王》と!』

 

「ああ、わかっている。新校舎の屋上で一騎打ちしてるんだろ」

 

通信器から聞こえたアーシアの声を聞いて、翔は視線を新校舎の屋上に向ける。

そこには黒い魔力と不死鳥の炎がぶつかり合っていた。

 

「まったく・・・・・・おおかたライザーの挑発に乗ったんだろうな」

 

呆れた声を漏らす翔。

リアスは自分の眷属を大切にし過ぎるところがある。

別にそれが悪いとは言わないが、大切にし過ぎるために眷属を馬鹿にされた時はすぐに我慢の限界を迎え、冷静な判断が出来なくなる。

 

「今から行く。アーシアはあまり前に出るな。リアス達に教えられた防御障壁を展開させるんだ」

 

『はい!』

 

翔はアーシアに指示を送り、翔は屋上へと急いだ。

 

新校舎の屋上で互いの魔力を衝突させるリアスとライザー。

 

「リアス・・・。いい加減諦めたらどうだ? 今の君では俺を倒すことはできない。確かに君の眷属は俺の下僕達を半分も削った。だが、君の下僕達のところに我が《女王》を送った。もうじき決着もつくだろう。

ここまでやればもう十分だ。投了(リザイン)しろ、リアス」

 

「誰がッ!」

 

キッ!と鋭い視線をライザーに向けるリアス。

リアスの制服はボロボロであり、体のいたるところに火傷が目立つ。

それに対して、ライザーはリアスの滅びの魔力を受けても、すぐに再生する。

誰が見てもリアスが劣勢だ。

だが、リアスは諦めない。

立ち上がり両手に滅びの魔力を集中させ、それをライザーに向けて放つ。

ライザーは避けもせずにそれを受ける。

上半身が丸ごと消えてなくなるが、残った下半身から炎が生じ、瞬く間に上半身を再生させた。

時たまライザーが炎で反撃をしてリアスにダメージを与える。

その度に後方で控えているアーシアが傷を癒す。

先ほどからその繰り返しを続けている。

 

「リアス・・・言っておくが今の君では俺に何度やっても勝てない。確かに君は将来有望だ。

だが、今の君はまだまだ未熟だ」

 

「・・・ええ、確かに私は未熟よ。それは認めるわ・・・・・・それでも!私が諦めるわけにはいかないわ!《王》である私が最初に諦めてはいけない!まだ私の下僕は戦っている。なら!!」

 

リアスは全身に力を込めて立ち上がる。

そして、その思いを魔力に籠める。今までとは質の違う滅びの魔力がリアスの手元に収束される。

それを見たライザーの表情を変える。

 

「・・・やはり君の将来性は凄まじい。だが―――」

 

ライザーの言葉を遮るようにリアスは収束させた滅びの魔力を解き放つが、ライザーが手元から放った炎に相殺されてしまう。

 

「―――初心者が経験者に勝負を挑んではいけない!」

 

ライザーは炎を続けて放つ。

リアスは咄嗟に防御障壁を展開するが、完全には防げず体の至る所に軽い火傷を負ってしまう。

思わず膝を付くリアス。

呼吸は荒くなっており、疲労が限界に近いようだ。

それでも―――

 

「ッ!? 言ったでしょ・・・・・・私は諦めない。翔が諦めない限り、私も立ち向かい続ける!」

 

疲れた体に喝を入れて、立ち上る。

その瞳にはまだ闘志が残っており、諦めの色はない。

それを見たライザーは不愉快そうに顔を歪める。

 

「翔、翔と・・・・・・それほどまでにあの男が気になるのか?」

 

「可愛い下僕よ、当たり前じゃない!」

 

ライザーの言葉にリアスは迷わず答える。

だが、リアスの感情にはそれ以上の思いが感じられる。

ライザーもそれが感じられるのか、気に入らないといったように眉を吊り上げ、舌打ちをする。

 

「チッ!・・・・・・まぁいい。君を倒せば、俺の花嫁となるんだ!」

 

ライザーは今までのが、比じゃないほどの炎をリアスに向けて放つ。

すでにリアスにそれを避けるほどの力は残っていない。仮に避けたとしても背後にいるアーシアにまで被害がいく。いくらアーシアが防御障壁を展開しているからと言って、今の彼女にあれを防ぐほどの力はない。

そのためリアスに避けるという選択肢はない。だが、このままでは直撃をし、リタイアになるってしまう。

 

助けを求めたら貴方は来てくれる?

お願い―――

 

「―――助けて、翔」

 

消えそうな声で呟くリアス。

すぐそこに迫ってくる炎・・・・・・だが、それ突然リアスの前に人影が現れた。

そして、続けざまに七枚の花弁で形成された光の花が咲き、その花がライザーの炎からリアスとアーシアを護る。

 

「え・・・?」

 

呆然と声を漏らすリアス。

 

「助けるさ・・・・・・後は任せろ」

 

不意に優しい声が耳に届き、心に暖かさが満ちていく。

リアスの視線にあるのは大きな背中・・・・・・それを見るだけで自然と体が軽くなり、安心してしまう。

どんな相手にも屈することなく。弱き者を背に目の前の敵へと立ち向かうその姿は、まさに『正義の味方』ともいえるものであった。

 

・・・・・・結構ギリギリだったな

あと少し、盾の展開が遅れていたら終わりだった・・・

 

翔は内心で少し冷や汗を掻く。

 

『これは・・・アイアスの盾か?』

 

いや、それを魔力で模倣したに過ぎない。概念もない、ただの盾だ

 

ドライグは翔が展開させた盾に見覚えがあった。

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)

翔が使った盾の正体。

ギリシャの英雄アイアスの盾であり、投擲武器や、使い手から離れた武器に対して無敵という概念を持つ概念武装。光で出来た七枚の花弁が展開し、一枚一枚が城壁と同等の防御力を持っているとされる。

 

だが、今回翔が使ったのはこれとは全く関係ない。

形こそは同じだが、中身はなくただ相手の攻撃を防ぐだけのもの。

 

「レイヴェルの奴、見逃したな・・・。まぁいい、貴様は俺直々に焼き尽くすと言ったからな・・・」

 

ライザーは背に悪魔の羽ではなく、炎で出来た翼で空へと飛ぶ。

 

「・・・・・・翔」

 

後ろから心配するリアスの声が聞こえる。

 

「大丈夫だ・・・」

 

一言そう言って、翔はライザーと同じ高さまで跳び上がり、宙に立つ。

以前レイナーレとの戦闘の際に見せたものであり、空気中にある魔力を足裏部分に固定化して足場にしているのだ。

 

「ライザー・・・・・・もう終わりにしよう」

 

「神滅具である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を宿しているからと言って調子に乗るのも大概にしろよ・・・・・・人間である貴様が不死鳥を司る悪魔の俺に勝てるわけないだろう!!」

 

ライザーはリアスの時に見せていたものとは、勢いも質も全く違うと言えるほどの炎を放った。

明らかに受ければリタイアどころではなく、人間である翔は痛みや熱さを感じることもなく消し炭になるほどのものだ。

だが―――

 

『Boost!』

 

これで5回分だ・・・・・・

 

左腕にある赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を前へと突き出し―――

 

『Explosion!!』

 

―――解放をする。

翔から莫大な赤黒い魔力が解き放たれる。

 

突きだした左手に魔力を集中させて、迫りくる炎を龍が爪で切り裂くかのように薙ぎ払う。

すると、ライザーの炎は呆気なく霧散する。

 

『相棒、制限時間は短いぞ!』

 

分かっているさ!

 

ドライグの言葉に頷いた翔は宙を力強く蹴り、ライザーへと肉迫する。

自身の炎を容易に霧散されたことに呆然としていたライザーであったが、すぐに意識を切り替える。

だが、遅すぎた。

すでにライザーの目の前へと迫った翔は勢いを殺さずに、そのまま先ほど猫耳を生やした双子の

《兵士》の片割れに行ったように正拳突きを繰り出した。

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で上げられた力に加え、全身を魔力で強化しているのだ。

その威力は先ほどとは比べられないほどのものだ。

 

「かっ!?」

 

腹部に強烈な痛みに襲い掛かれるライザー。

正拳突きの衝撃はライザーを突き抜け、後方の空気すらも振動させた。

だが、翔の攻撃はそこで終わらずに、翔はライザーの頭を両手で掴み、容赦のない膝蹴りを顔面へと喰らわせた。ムエタイのカウ・ロイだ。

そして最後に痛みで悶えているライザーの片手を掴み、運動場へと背負い投げの要領で投げ飛ばす。

 

ドォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

 

投げ飛ばされたライザーが地面へと激突し、大きいな轟音と共に大量の砂煙を舞い上がらせる。

 

「これでやられてくれるとありがたいんだが・・・・・・」

 

翔がそう呟くが、期待とは裏腹に運動場に舞い上がっていた砂煙の中から大量の炎が燃え上がり

砂煙がなくなる。

 

「そうはいかないか」

 

燃え上がった炎も消えるとそこには怒りの形相を浮かべたライザーがいた。

 

「人間如きがぁあああ!」

 

ライザーは極大な炎を宙にいる翔に放つ。

翔はその場から動かずに、迫りくる炎を見据える。

そして、翔に炎が直撃した。

 

「ハハハッ!! どうだ! これが不死鳥の業火だ!! もっとも貴様には聞こえてないがな!!」

 

自身の炎が当たったことにライザーは嘲る表情で大きな笑い声をあげる。

だが―――

 

「勝手に喜ぶのはいいが、当たってないぞ」

 

「ッ!? きっ貴様・・・!」

 

「そんな単調な攻めでやられるほど、お人好しではないんだ」

 

笑い声をあげていたライザーであったが背後から声が聞こえ、振り返るとそこには無傷の翔が立っていた。驚愕の表情を浮かべるライザーにやれやれといった風に肩を竦める翔。

 

「どうやって俺の炎から逃れたというのだ!?」

 

「ただ単に動いて避けただけだが?」

 

ライザーの言葉に翔は、やれやれ・・・ と言った風に答える。

 

『そんな悠長にしている暇はないぞ?』

 

それもそうだな・・・

 

内心でドライグの言葉に同意し、翔は一気に勝負を仕掛ける。

 

翔が勝負を急いでいるのには理由がある。

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で倍加した力は『Explosion!!』で開放が出来るが・・・その開放時間には制限がある。

戦い方によるが、普通に戦えば5分以上は持つのだが、全力で戦った場合その制限時間は3分でしかないのだ。普通ならば決め技の時のみに力を籠めればいいが、今回は相手が相手だ。

常に全力の一撃を決めなければならない。そのため、力の開放時間が短くなってしまったのだ。

 

「悪いな・・・お前に付き合っていられる時間はあまりなさそうだ・・・」

 

そう言って、ライザーへと接近した翔は、流れるような拳と蹴りの連撃を繰り出す。

的確に急所に攻撃をして、ライザーの精神を少しずつではあるが、確実にすり減らしていく。

だが、ライザーもただやられ続けているわけではない。自身が不死の身なので翔の攻撃に対して

捨て身の攻撃を行ってくる。

 

不死の能力をいいことに無理やり攻めてくるのは理解できるが・・・・・・攻め方が稚拙だな

生まれながら受け継がれた魔力の高さに、不死身の力・・・大抵の相手はこれで諦めるのだろうな・・・

それにしても―――

 

「破ッ!!」

 

気合いを籠めた声と共に、翔はライザーの顎に強烈な前蹴りを喰らわせる。

そして振り上げた足をライザーの頭へと踵落としを決める。

一旦間合いをあけ、翔は地面に沈んでいるライザーを見据えながら思考する。

 

常に全力で戦い続けるのは流石に厳しいな・・・

残り時間はどのくらいだ?

 

『1分しか残ってないぞ。今のところダメージは通っているだろうが、精神を折るほどではないな』

 

ドライグの言葉に翔は内心で舌打ちをしてしまう。

 

一気に決める・・・。それで駄目なら“例の能力”をぶっつけ本番で使う・・・

 

『確かに出来ないことはないだろうが・・・・・・まぁこの場合仕方ないか』

 

ドライグと会話を終えた翔は今まで以上に全身から魔力を迸らせる。

 

「いい加減に死ねぇええええええ!!」

 

激しい炎と共に沈んでいたライザーは立ち上がり、凄い怒りの形相を浮かべながら極大な炎を放つ。

向かってくる炎に対して翔は、全身に魔力を迸らせながら、一直線に進んでいく。

 

「血迷ったか! 我が不死鳥の業火で跡形もなく燃やし尽くしてやるッ!!」

 

その言葉と共に炎の勢いがさらに上がり、翔は炎に包まれた。

 

「どうだ!これが我が炎! 人間如きが図に乗るからだッ!!」

 

炎に包まれた翔を見てライザーは勝ち誇ったような笑い声をあげる。

だが、翔を包んでいた炎が突然、掻き消される。

そして―――

 

「なっ!?」

 

ライザーは驚愕の表情を浮かべる。

掻き消された炎から左手に赤黒い魔力を収束させている翔の姿が現れる。

服の所々は焦げているが、翔自身には火傷の跡は見えず、ライザーの炎によるダメージは皆無と言っていいだろう。驚愕の表情を浮かべるライザーを余所に、翔は魔力を収束させている左手をライザーへと向ける。それを見て、驚きで固まっていたライザーは、すぐに意識を切り替えて炎の翼を羽ばたかせ上空へと逃げようとするが、それは遅かった。

 

「―――往くぞ」

 

静かに・・・だが力強い呟きと共に翔の左手から赤黒い閃光が放たれる。

 

「くそがぁああああああああああああ!!」

 

ライザーの叫び声をあげるが、閃光に呑み込まれフィールドの端へとぶつかったことによる轟音で掻き消される。

 

『Reset』

 

籠手から流れる音声と共に、全身に満ちていた力が一気に消失したかのようになる。

それと同時に体に襲い掛かる負担。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

だが、それを気にも留めずに、翔はライザーがいるであろう場所を油断なく見据える。

翔が放った閃光の影響で大量の砂煙が舞い上がっており、ライザーの姿が見えないのだが―――

 

「・・・・・・やはり駄目だったか」

 

そう呟くと、先ほどと同じように砂煙の中から大質量の炎が姿を現し、砂煙を掻き消す。

全身を炎に包まれ、傷が再生していくライザーが姿を見せた。

その手にはユーベルーナが翔に見せたフェニックスの小瓶と同じものが握られていた。

すでに蓋は開けられ中身もない。ライザーは翔の攻撃を受けた時に懐に仕舞っていたこれを飲んでリタイアを免れたのだ。

 

「危なかったぞ・・・。ユーベルーナに一つ持たせておけば事足りると思っていたが・・・・・・人間如きが俺にこれを使わせるとは、不愉快だ!!」

 

怒りに呼応するようにライザーの背にある炎の翼がより一層大きくなり、運動場全体が強い熱気に包まれる。普通の者ならば息をするだけでも辛いはずなのだが、翔は特に辛い様子も見せずにただ自然体でライザーを見据えている。

 

「何だ、その目は! あれだけのことをしたんだ、何の反動もないとも思えん。なのに何故、まだそのような目をするんだ!!」

 

「戦いとは常に二手三手先を読んで行うものさ。・・・・・・つまり、切り札はまだ残っているということだ。往くぞ、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!」

 

『Boost!』

 

籠手から流れる音声と共に、翔がライザーに向けて駆け出す。

 

「調子に乗るなよ!! 人間風情がぁああああ!!!」

 

自身に向かってくる翔にライザーは全身から炎を噴き出しながら激昂する。

そして、全身から噴き出した炎を突きだす両手に集中させ放つ。今までの炎とは違い、拳程度に集中された炎は、さながら炎の弾丸ともいえる。

だが、翔は走っている速度を減速させずに、半身になって紙一重で躱すが―――

 

「ッ!? 熱量が今までのとは比べ物にならんな・・・」

 

完全に避けたはずなのだが、翔の胸の部分は服が解け、火傷している肌が露出してしまっている。

 

一応、全身に魔力を迸らせて防いでいるんだが、紙一重で避けたら炎の熱で火傷か・・・

流石は上級悪魔と言ったところか・・・

未成熟なリアスとは経験も実力も違う・・・・・・これが本来のライザーの実力

 

翔は一旦、足を止めて今のライザーを注意深く見据える。

 

「どうした! ほらほら! 足を止めているといい的だぞ!!」

 

翔に初めてダメージを与えたことで気分を良くしたライザーは、先ほどと同じような炎の弾丸を間隔はあまり開けずに、壁のように次々と放ち続ける。

これにより紙一重で避けたとしても、熱量でダメージを与えるつもりなのだ。

如何に翔が普通の人間とは比べられないほど鍛えられているからと言っても、その体は人間のものに変わりはない。人間の体は体表が50%以上の火傷で生命の危険に陥ってしまい、20%でもショックを起こしてしまう。人の身である以上、翔もそれは例外ではない。ライザーはそれを狙っているのだ。

翔もそれに気づいているため、迂闊にライザーに近づけないでいる。ある程度の熱は自身の魔力を迸らせて防げるが、あそこまで集中させた炎から放たれる熱を防ぐのは、()の翔では難しい。

 

『どうするんだ? このままだと相手に近づけないぞ?』

 

分かっているさ・・・

 

『すでに倍加は5回分溜まっているぞ。例のあれを使うか?』

 

いや、あれは最後の一撃用だ・・・。ここで使うのは愚策だ

 

『ならばどうする?』

 

「こうするんだ」

 

ドライグの問いかけに声に出して答えた翔は、両手に魔力を集中させる。

スゥ・・・・・・、と息を吸い込み、そして息を止めて、迫りくる炎へと駆け出した。

 

「自ら炎に突っ込んで自滅でもする気か!」

 

翔の行動にライザーは馬鹿にする表情で言う。

迫りくる炎の弾丸に対して翔が行った行動は、驚きのものであった。

魔力を集中させた手で、時には手刀で切り裂いたり、時には拳で殴り消したりと、無呼吸による一息の隙もない動きで迫りくる炎を着実にライザーへと近づいていく。

 

―――しかしそれだけではない。

 

ライザーの攻撃は大雑把だ。狙って当てるのではなく、量で攻めているのだ。

所謂、下手な鉄砲も数打ちゃ当たる、という事。それ故に、翔は『進行方向に邪魔なもの』『自身の身に致命的なダメージを与えるもの』以外は全て無視して進んで行っている。

なので、翔の体には先ほどではないが、所々にかすり傷程度の火傷を負っていくが、気にせずに前へと進んでいく。

ライザーは慌てて、弾丸の量を増やすが、翔の動きは止められずに遂に5mほどまで接近を許してしまった。

 

「ッ!? だが、これで終わりだ!」

 

迫ってきた翔に対して、ライザーは顔面と胸、腹部を集中して狙った炎の弾丸を複数放つ。

だが、炎の弾丸が迫った瞬間、翔は姿を消した。

 

「何ッ!? 奴はどこだ!?」

 

突然、姿を消した翔にライザーは驚きに声を上げる。

すぐに翔の姿を探す。

左右に避けたわけではない、上でもあり得ない。ならば―――

 

「この一撃で沈め」

 

下から聞こえる声。

咄嗟に視線を下げるライザーの目に、仰向けに寝るような体制でいる翔の姿が映った。

翔はスライディングをして、目前に迫った炎を避けたのだ。

そのため、ライザーは自身の放った炎の群れが目隠しとなってしまい、もともと追いつけなかった翔の動きがさらに反応できなかったのだ。

 

「きっ貴様ぁあああああああ!!!!!」

 

吼えるライザーであるが、翔は動きを止めない。

 

『Blast!』

 

新しい音声が籠手から流れる。

それに伴い、翔の右手に先ほどライザーに放った閃光が、比ではないほどの力が収束される。

目前に迫ったライザーに対して、翔は今、己が放つことが出来る最強の一撃を決める。

 

密着状態、つまり至近距離から放つ攻撃と言えば、小猫が使っていた寸勁があるが、今から放つのは()()()()のものではない。

柔術の体捌きによる重心移動、中国拳法での気の運用、空手とムエタイからなる突きの動きなど、全ての要訣をまとめて、一つの技とした突き。

 

「―――無拍子(むびょうし)!!」

 

ノーモーションからの強烈な一撃がライザーに襲い掛かる。

内臓だけではなく、全身に痛みが響き渡るほどの一撃。

さらにダメ押しとばかりに、翔は右拳から残りの力の全てを籠めた赤黒い閃光を放つ。

閃光に呑み込まれたライザーは、そのまま閃光に押され、新校舎の壁に激突するが、勢いはそれでは止まらずにそのまま直進し続ける。やがてフィールド全体に途轍もない轟音が響き渡った。どうやら翔の放った一撃はフィールドの端に当たったようだ。

 

絶句の一言。

 

今の一撃は神や魔王クラスとまでは言わないが、それでも最上級悪魔に匹敵、もしかしたら超えるかもしれないほどのものだ。いくらフェニックスの涙で回復しているとはいえ、今のライザーには到底耐えられるはずもない・・・・・・。誰もがそう思ったに違いない。だが―――

 

ドォオオオオオオオオオオオオンッ!!

 

突如響き渡る轟音。

それに伴い、崩れた新校舎の場所から莫大な炎が噴き出す。

 

「人間如きが! よくも、よくもッ!!」

 

喚きながら一直線に翔へと迫り、怒りに任せた右拳を放つ。

それに翔は冷静に対応する。ライザーの拳を僅かな動作で躱して、ライザーの顔面へと突きを放つ。

ライザー自身の勢いが乗せられた突きは、容易にライザーの顎を砕くが、炎と共に再生する。

一旦、間合いを開ける翔は、ライザーを鋭い目で見据えながら思考する。

 

・・・・・・可笑しい

『Blast!』での一撃を受けて、消耗がないってことは、流石にはあり得ない・・・

あれだけの手応え、絶命は無理だとしても、リタイアまでは追い込んだはずだ

『Blast!』が上手くいかなかったのか?

 

『いや、それはない。ちゃんと正常に溜めた分の倍加はあの一撃に全て使われたぞ』

 

翔の疑念にドライグが答える。

やはり先ほどの一撃は完全に決まっているようだ。なのだが、今のライザーの姿を見る限り、効いている様子はない。

腑に落ちない・・・、翔の心境はまさにそれだ。

だが―――

 

「色々と腑に落ちないが、お前が倒れないなら倒れるまで戦うだけだ」

 

ライザーが何故、あの一撃を耐えられたのかなどは、翔にとってはどうでもいい事。

翔がやることは目の前の敵をただ倒すこと・・・・・・ただそれだけだ。

 

全身から炎を放ちながら、怒りを露わにしているライザー。

すると―――

 

『リアス・グレモリー様の《騎士》1名、《戦車》1名、リタイア』

 

グレイフィアからの放送が流れる。

 

「フハハハッ! あとはこれで貴様だけとなった! 時期にここに来る俺の《女王》が貴様に引導をくれてやる!!」

 

祐斗と小猫がリタイアしたことに喜びを見せるライザーであるが、グレイフィアの放送はまだ終わっていなかった。

 

『並びにライザー・フェニックス様の《女王》、リタイア』

 

「ッ!? ユーベルーナがやられただと!? ありえない!!」

 

今の放送が信じられないといった表情を浮かべるライザー。

 

祐斗と小猫が《女王》をやったんだ・・・・・・俺も気張らないとな

 

放送を聞いて、再び前進に気合いを入れる翔。

 

「気に入らないな・・・ドラゴン如きが、上級悪魔でフェニックスの俺に勝てると思うなよ!!」

 

上空へと移動したライザーは怒りによって噴き出した炎を両手に収束させる。

それはまるで縮小された太陽そのもの。

 

「ハハハッ!! これを受けたら貴様は簡単に燃え尽くすだろう! 人間如きの貴様は避けるしか能がないからな! 好きなだけ避けるがいいさ!!」

 

『随分と安い挑発だな・・・』

 

ライザーの言葉にドライグが呆れた声を漏らす。

無駄にプライドの高い者ならば、ライザーの挑発に乗るだろうが、翔にはそんなものはない。

譲れない想いはあるが、翔にそのような無駄なプライドは持っていない。

 

『どうするんだ?』

 

「そうだな・・・。避けるのは簡単だが・・・・・・俺にも男としての矜持がある。

今はどれくらい溜まっているんだ?」

 

『Boost!』

 

『今ので丁度10回分だな』

 

10回分か・・・・・・。『Explosion!!』での力の開放は無理だが、『Blast!』なら大丈夫そうだな

 

『だが、相棒。確かに『Blast!』は負担は少ないが、それはあくまでも『Explosion!!』に比べてだ。新しく作った機能故に、まだ完全には安定していない。現段階ではあと一回使えるか使えないかだ』

 

「神器は想いに応えるんだろ? ならこのくらい乗り越えていこうじゃないか。赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)?」

 

不敵な笑みを浮かべて、籠手に語りかける。

 

『フ・・・フハハハッ!! ああ、そうだな! フェニックス如きを越えなくて何が赤き帝王だ!!

いいだろう、相棒。最後までお前についていこうじゃないか!!』

 

高揚した声を上げるドライグ。

それに呼応するかのように籠手から放たれる力が強くなる。

 

「これで終りだぁああああああ!!!」

 

上空からライザーは作り出した縮小された太陽を翔へと落とす。

ゆっくりと翔へと降りていく太陽。

落ちていく途中で、周りにある木や建物を燃やして、跡形もなく消し去っていく。

 

それを見据えながら、翔は腰を深く落とし、右手を左腰に持っていき、そこに添えるように左手を置く。まるで抜刀術のような構えだ。

 

『Blast!』

 

出来ないことはない・・・。今までどおりにすればいい・・・

 

「スゥ・・・・・・ハァ・・・・・・」

 

目を閉じ呼吸を整えて、次の一撃に全神経を集中させる。

 

「ハァアアアアアアア!!」

 

気合いと共に目を開き、腰に置いていた右手を思いっきり振り抜く。

それで放たれるは赤黒い巨大な斬撃。

斬撃は容易にライザーの太陽を呑み込むだけではなく、後方にいたライザーすらも呑み込んだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

荒い呼吸を繰り返す翔。この試合、始めて呼吸を乱す。

それほどまでに今の一撃は消耗したのだ。

 

かなりのダメージは与えられただろう

これで倒れなかったら、流石に可笑しい・・・

 

「・・・ッ!?」

 

不意に何かを感じた翔は、その場から離れる。

 

炎の弾丸・・・つまり―――

 

視線を上空へと向ける。

するとそこには、全身の服はボロボロであるが、ダメージを受けている様子を見せないライザーの姿があった。

 

ありえない、まず翔が思ったのはそれだ。

あれだけの一撃を受けたのだ。無事であるはずがない。例え再生できたとしても、確実にリタイア、もしくは寸前までは追い込んだはずだ。だというのにライザーの姿を見る限り、それはない。

明らかに可笑しすぎる。

 

「実に・・・実に不愉快だ! だが、認めてやろう。まともに戦えば俺は負けていた」

 

まともに戦えば・・・だと?

 

不気味な笑みを浮かべるライザーに翔は怪訝な表情を浮かべる。

 

「だが! このゲームは俺の勝ちだ!!」

 

上空にいたライザーはある方向へと巨大な炎の塊を放った。

そこには―――

 

「ッ!? ライザー、貴様!!」

 

新校舎の屋上で動けないほど消耗しているリアスに放たれた。

翔はすぐにリアスのところへと行こうとするが、意識をリアスへと移してしまった翔に今日初めて致命的な油断を見せてしまった。ライザーもそれを見逃すほど馬鹿ではなく、翔にも巨大な炎を放つ。

 

「ッ!?」

 

何時もの翔なら簡単にそれらを躱し、リアスのところへと行くのは簡単なのだが、『Explosion!!』での力の開放による負担、新機能である『Blast!』の連発による負担で体は思うように動かない。

目の前に来る炎の弾丸を避けるだけで精一杯。それでもリアスの元へと向かおうとする。

手を伸ばす翔の目には、迫りくる炎には目もくれずに、翔のことを見つめるリアスが映った。

目元に涙を溜めながらも、笑顔を浮かべて口を開く。

 

「――――――、・・・・・・―――――」

 

「ッ!? リアスッ!!」

 

翔がリアスの名を呼んだ瞬間、炎に包まれるリアス。

 

『リアル・グレモリー様、リタイア。《王》であるリアス様がリタイアなされましたので、このゲームはライザー・フェニックス様の勝利です』

 

無情にもグレイフィアの放送が流れる。

 

間に合わなかった翔は、運動場に降り立つ。

そして、きつく拳を握りしめる。

 

何が・・・何が、ごめんなさいだ。何が、ありがとうだ・・・

俺は・・・俺は、お前を護れなかったッ!!

 

握りしめられた拳からは赤い血が地面へと垂れる。

 

上空にいたライザーが地面へと降り立つと、そこにレイヴェルが駆け寄る。

その表情は自身の兄の勝利を喜ぶものではなく、純粋な怒りが浮かんでいた。

 

「どうして、リアス様にあんなことをしたのです!」

 

「黙れ! 俺は《王》として正しいことをしたんだ! 眷属であるお前がとやかく言う権利はない!!」

 

そうだな・・・。お前が言っていることは正しいさ

だがな―――

 

「ライザー・フェニックス」

 

酷く冷たい声が響く。

 

「「ッ!?」」

 

言い合っていたライザーとレイヴェルはビクッ!と体を震わせてから、声が下方向へと視線を向ける。

視線の先には―――

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

無言でライザーに鋭い視線を向けている翔の姿があった。

全身からは言いようのない威圧が放たれている。

ライザーは恐怖で顔は蒼白になり、膝はガクガクと震えている。

隣にいるレイヴェルは何ともなく、急に震えている兄に怪訝な表情を向ける。

理由としては、翔はライザーのみを威圧しており、隣にいるレイヴェルには一切、何も感じられないようにしている。

 

「なっ何の用だ! しょ勝負はすでに決まったのだ!!」

 

「ああ、そうだな・・・。だが、覚えていろ。―――貴様を許しはしない」

 

翔は龍のような鋭い視線をライザーに向ける。

すると、翔がいる場所に転移用の魔方陣が展開される。

 

ライザーは触れてはならないものに触れたのだ。

そう―――龍の逆鱗に・・・・・・。

だが、その代償は身を以て償うことになるだろう。

 

リアスの夢を護ると誓ったんだ・・・

―――絶対助ける

 

パキンッ・・・

 

翔が転移魔方陣の光に包まれているとき、何か枷のようなものが外れる音が聞こえた気がした。

 

 

 

 




感想、意見受付中!

ケンイチでてくる無拍子って技を名前を覇天にして出しましたが、
やはり変えないほうがいいですかね?
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