ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~   作:satokun

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第2章の最終話にはなりませんでした!
話を進めるのが下手で、中々進みません

―訂正―
フェニックスの涙を4つから3つに変更。


第14話 約束を果たすために・・・

ライザーとのレーティングゲームが終わってから3日が経った。

結果はリアスの敗北。

 

ゲーム終了後、翔は治療のため治療室に転移された。

そこには全身に包帯を巻いた朱乃と小猫、祐斗・・・・・・そして、意識を失ったリアスの姿があった。

アーシアの神器の力によって全員の傷は癒えたが、それでもリアスの意識は戻らなかった。

傷が癒えた翔達は、グレイフィアから詳しい事は後ほど連絡する、と伝えられ一旦各自の自宅へと帰ることになった。

 

そして現在、翔は独りで散歩していた。

時刻は夕方。買い物もすでに終えているので、家に居ても特にやることがないため、久しぶりに1人で散歩をすることにした。

 

『相棒、どうするつもりだ?』

 

何がだ?

 

『何がだって・・・リアス・グレモリーの婚約式だ。あの女悪魔が招待状を持ってきたじゃないか?』

 

ああ、そうだな・・・

 

『そうだな・・・って、相棒』

 

翔の言葉に呆れた声を漏らすドライグ。

ドライグの言葉通り、今日の昼ごろに突然、翔の家にグレイフィアが転移してきた。

理由としてはリアスとライザーの婚約式についてだ。

人間界の時間だと今日の21時頃から婚約式が始まるようだ。

おそらく朱乃達はリアスの付き添いに、とすでに冥界にいるだろう。後から行くのは翔とアーシアの2人だけ・・・。

 

「何時頃に行けばいいんだろうな・・・」

 

そう呑気に漏らしていると―――

 

「・・・・・・何だ?」

 

空気が変わった。

周辺の場所のみが切り取られた感覚・・・。

そして、全身に襲い掛かる圧力―――圧倒的な力。

 

『まさか・・・いや、ありえん! だが、この波動は奴以外・・・ッ!!』

 

ドライグが驚愕の声を上げる。

 

「―――見つけた」

 

不意に翔の後ろから声が聞こえる。

翔がゆっくりと後ろに振りかえると、そこには少女がいた。

 

ゴスロリの黒い服を身に纏い、無を現すかのような真っ黒な髪に、何も籠っていない空虚の瞳。

そして、何の感情も持ち合わせていないというほどの無表情・・・。全身から放たれる龍の波動は明らかにドライグより格上・・・。

だが、それよりも驚いたのは―――

 

「何故、前が全開なんだ・・・?」

 

それだ。少女の服はゴスロリと普段はあまり見ることのないものだが、まだそれはいい。

だが、そのゴスロリは前が全開なのだ。症状の胸にある大事な部分には黒いテープのようなものがクロスして貼られているだけで、他は全て露出しているのだ。

少女は翔の言葉に首を傾げるだけ。どうやら翔が自身の身なりで驚いていることに気がついていないようだ。流石に春先とはいえ、この時間帯にTシャツだけでは少しばかり寒いが、この少女がこのような服装で出歩くのは駄目だろう、と思い自身の上着を着させる。

 

「で、君は誰なんだ? 俺に何の用だ?」

 

少女に着させた上着の裾を捲り上げながら問いかける。

 

「我、君じゃない。我、オーフィス。グレートレッド倒す」

 

翔の行動に不思議そうな表情を浮かべながらも、されるがままにしている少女は素直に問いかけに答える。

 

「オーフィスって言うのか・・・。それでグレートレッドって奴を倒して欲しいのか・・・」

 

コクン、と翔の言葉に頷くオーフィス。

すると、翔の左腕にある赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宝玉が点滅し、ドライグが呆れた声を漏らす。

 

『相棒・・・何を呑気に話しているんだ。相手は無限の体現者・・・『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』だぞ』

 

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィス

無限の体現者と呼ばれる存在。二天龍より強いドラゴン。

次元の狭間と呼ばれる場所で生まれた存在。

 

「やっぱり伝説のドラゴンか・・・。で、なんで俺にグレートレッドを倒して欲しんだ? あいつは次元の狭間とやら場所にいるんだろ? それに不動の存在・・・それを俺に倒して欲しいなんて流石に無茶があるだろ」

 

真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッド

『真龍』『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』と称されるドラゴン。

オーフィスと同じく、次元の狭間から生まれた存在である。

普段は次元の狭間に棲んでおり、たまに実相世界に姿を現すことはあるが、基本的に実相世界の生物や事柄には関心を示さない

 

「うん。我、グレートレッド倒して、次元の狭間で静寂を得たい」

 

次元の狭間って何だ・・・?

 

『冥界、天界、人間界・・・様々な世界の隙間にある『無の世界』だ。そこには何も存在せず、ただ静寂の身が支配する場所だ。相棒には言ってなかったな』

 

翔が内心で疑問に思っていると、ご丁寧にドライグが説明してくれる。

 

「つまり次元の狭間はオーフィスの故郷みたいなもんだな・・・」

 

コクン、と頷くオーフィス。

どうやら自身の生まれた場所に帰りたいわけだ。

 

「何故帰れないんだ? 別にグレートレッドがいても問題ないだろ?」

 

「我、静寂を得たい。故にグレートレッド、邪魔」

 

つまり独りで静かに暮らしたいと・・・・・・でも、本当にこの子はそれを望んでいるのか?

 

『どういうことだ?』

 

ただの勘違いのかもしれないが、この子はただ帰る場所が欲しいだけじゃないのか?

おそらくずっと孤独に生きてきたのだろう・・・

その強さ故に誰からも共にいようとはせずに、ずっと独りで・・・・・・

 

『まぁ、そうだろうな。オーフィスの力は魔王や神クラスを越えている。そう易々と関われる存在ではない』

 

そうか・・・

 

ドライグの言葉を聞いて、翔は自然と拳を握る。

想うのは目の前にいる少女のこと・・・・・・。

 

その強大な力故に誰もが避け、歩み寄ろうとはせずに、ずっと孤独に生きてきた

故に残っているのは次元の狭間という生まれ故郷のみ・・・それを求めるしか残っていなかった・・・

 

「何故、悲しそうな眼をする?」

 

不思議そうに翔を見上げるオーフィス。

それに対して翔は、何時も通りの優しい微笑みを浮かべながら言う。

 

「何でもないさ・・・。さて、話を戻すが、グレートレッドを倒すのは出来ないな」

 

「何故?」

 

「何故って・・・・・・不動の存在を如何にかできるほど俺は強くないさ。現にこの場でオーフィスに挑んでも負けるだろうな」

 

『まぁそうだろうな・・・。いくら相棒が普通の人間を逸脱しているといってもオーフィス相手だと話が変わるな。流石に勝つのは無理だろう』

 

「ほら、ドライグも言っているだろ?」

 

翔の言葉に同意するようにドライグが言葉を続ける。

だが、それにオーフィスは首を横に振る。

 

「我、感じた。今まで感じたことがない赤龍帝の波動・・・今までのどの赤龍帝とも違う」

 

そうなのか・・・?

 

『さぁ、俺もよく分からんな』

 

「ドライグは何故戦う?」

 

『オーフィス・・・そんなものは決まっているだろう? 俺は―――』

 

「我、ドラゴンのドライグには訊いていない。我、人間の方のドライグに訊いている」

 

『う、うむ・・・』

 

ドライグの言葉を遮るオーフィス。

心なしか宝玉が悲しそうに点滅した気がする。

 

「人間のドライグってのは俺のことか・・・・・・そういえばまだ名前言ってなかったな。

俺は御剣翔。翔って呼んでくれ」

 

「じゃあ、翔。何故戦う?」

 

空虚な瞳を真っ直ぐと翔の瞳に向けるオーフィス。

そんなオーフィスに翔は困ったような表情を浮かべる。

 

「何故戦うか、か・・・・・・」

 

『それは俺も気になるな。相棒はこちらに来る前に何をしていたんだ? 相棒の戦闘を見る限り並大抵の生活をしていたとは思えん』

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ドライグが話している時も視線を逸らすことなくじっと翔を見続けるオーフィス。

 

「俺はさ・・・なりたいものがあるんだ」

 

「なりたいもの?」

 

可愛く首を傾げるオーフィス。

それに翔は、ああ・・・ と言葉を続ける。

 

「全てを救う正義の味方になりたいんだ・・・」

 

「それは不可能。全てを救うことはできない」

 

自身の夢を否定する言葉を受けても、翔はただ苦笑するだけ・・・。

それにオーフィスは首を傾げる。

 

「ああ、そうだな・・・。全てを救うなんてできなかった・・・・・・。俺は結局、より少数斬り捨てることでしか、誰かを救うことも、護ることも出来なかった・・・。でも、最初から諦めてたら何も出来ない。0.001%でも可能性があるのなら俺はその可能性を縋る・・・・・・そんな大馬鹿野郎だよ」

 

「じゃあ、何故目指す?」

 

「誓ったからだ」

 

オーフィスの問いかけに確固たる意志を持って答える。

 

「全てを救い、護ると・・・・・・誓ったからだ」

 

静かな瞳の奥には、爛々と輝く不屈の意志が宿っている。

例えどのような事になろうとも、それは決して消えることはなく永遠に輝き続けるであろう。

 

「我、翔に興味持った。もっと一緒にいたい」

 

空虚だった瞳には、僅かに光が灯されている。

 

「それは構わないが・・・・・・今日のところはそろそろ無理そうだな」

 

何故? と疑問の声を漏らすオーフィス。

 

「これからやることがあるからな・・・・・・大事な約束を果たしに行かないといけないんだ。

だから、今日のところはこれでお別れだ。でも、また何時でも会いに来てくれ。

俺はお前を歓迎するよ―――オーフィス」

 

「何故、我を受け入れる?」

 

「いや、何故って言われてもな・・・・・・まぁ、こうして話したことだし、折角知り合えたんだ。

この出会いを無駄にするのは勿体ないだろ?」

 

そう言いながら、翔は目の前にあるオーフィスの頭を優しく撫でる。

 

『相棒は本当に色々と普通の者とは違うな。人間だけじゃなく、悪魔や天使と言った存在達は力の塊であるドラゴンを畏怖するというのに・・・』

 

呆れたような声色で言うドライグであるが、その声には面白そうに感じられた。

ドラゴンは昔からその強さ上に、恐れられ、避けられ、対峙すべく存在であった。

だが、ドラゴンであっても普段と変わらず接する翔に対して無意識のうちではあるが嬉しく感じているのだろう。

 

オーフィスとは言うと、翔にされるがままに頭を撫で続けられている。

最初は不思議そうな表情をしたが、心なしか段々と気持ち良さそうな表情になっている気がする。

 

「これは何をしている?」

 

「ん? ああ、頭を撫でてるだけさ。悪いな、癖みたいなもんだ」

 

そう言って、撫でるのを止めようとするが、それをオーフィスが制止する。

 

「これ心地良い。故に、さらに所望する」

 

「それは構わないが・・・さっきも言ったが、これから大事な約束があるからな。

今日のところは我慢してくれ。また今度来た時にでも、言ってくれればやるからさ」

 

翔は片膝を地面につけて、優しい眼差しをオーフィスに向け、頭を撫でながら子供にお願い事をするように優しく語りかける。

それに対して、オーフィスはやや唇を尖らせて、不満そうな表情を見せる。

だが、翔の言葉に納得したようで、コクン、と頷く。

それを見て、満足そうな表情を浮かべた翔は、オーフィスに片手を差し出す。

? と疑問符を浮かべて、差し出された翔の手を不思議そうに眺めるオーフィス。

 

「ああ、握手だよ。これから俺達は友達だ。何時でも遊びに来てくれて構わないさ。

それで、この握手は友達になる印みたいなもんだ。・・・いや、一応悪魔の眷属だから、ここは『契約』とでも言っとくべきか?」

 

翔は現在、自身が悪魔の眷属であるという事を思い出して、苦笑いを浮かべながら言葉を付け足す。

 

「是非、契約する」

 

差し出された手にオーフィスの小さな手が重なり、握られる。

翔も自身の手をしっかりと、だが優しく握る。

 

「じゃあ、今日はこれでさよならだ。―――また会おうな」

 

「うん」

 

頷いたオーフィスは、翔から手を放して、背中を見せた瞬間、翔の視界から消え失せる。

そして、閉ざされた空間も同時に無くなり、元の街並みに戻っていた。

すでに空は暗くなっており、時刻は夕方ではなく、夜へと変わっていた。

 

翔はオーフィスと握手した手を見つめて、ゆっくりと握りしめる。

そして、振り向き家に帰るために、足を動かそうとするが―――

 

「あっ、オーフィスに上着着せたままだったな・・・」

 

すっかり自身の上着を貸していたことを忘れていた。

まぁいいか、とすぐに思い、翔は月が浮かぶ夜空を眺めながら自宅へと帰って行った。

 

―――約束を果たすために・・・。

 

「さてと、準備は整ったな」

 

翔は自身の部屋でそう呟く。

現在の時刻は午後8時半頃・・・あと30分もすればリアスろライザーの婚約式が始まる予定だ。

服装は先ほど散歩のときに着ていたものではなく、黒いロングコートのような独特の着物を身に纏っている。

だが、それはこれから婚約式に行く者の恰好ではない。

身に纏う雰囲気は刀身のように鋭く、静かなものだ。

 

「以前着ていたものほど、機能はよくないが・・・まぁ仕方ないか」

 

翔がこの世界に来る前に着ていたやつと同じものを以前から少しずつ作っていたのだが、昨日の夜に完成した。見た目は同じでも、機能までは再現できなかった。あれは翔の知り合いから貰ったものであり、色々な加護があったのだ。

だが、現在着ているものにはそういったものは殆どない。あるとしたら、多少の対魔力や多少の自己修復機能といったものくらいだ。

 

この着物をこれからどう改造していくべきか考えていると、不意に何かを感じ取る。

翔は自身の部屋の窓際に視線を向けると、タイミングを計ったかのように銀色の魔方陣が展開される。

 

「3日ぶりですね・・・・・・翔様」

 

銀色の魔方陣から現れたのは翔の予想通り、メイド服を着た銀髪の女性―――グレイフィアであった。

 

「そうだな・・・。だが、この時間に貴方がここにいるのはまずいのではないんですか?」

 

「ええ、そうですね。ですが、何時に経っても来る気配を見せない貴方がいけないのですよ。

まぁ、それも杞憂に終わったのですが・・・・・・」

 

グレイフィアは翔の姿を見て、僅かに安心したような表情を見せる。

それを見逃す翔ではない。

 

「やっぱり、リアスの兄である魔王の差し金か・・・」

 

「・・・・・・気づいてたのですか?」

 

僅かに目を見開いて驚きを示すフレイフィア。

 

「サーゼクス様も本来、このような婚約は望んではいません。彼は妹を誰よりも大切に思う。

ですが魔王である身・・・。魔王という権限を持つ彼は、実家といえ、グレモリー家だけに肩入れをすることはできない・・・」

 

 

「・・・そうだとは思っていたさ」

 

ゲームが始まる10日前のライザーとの会談の際、無表情で中立であったグレイフィアだが、ライザーを見る目は僅かに・・・ほんの僅かにではあるが、冷たいものがあった。

最初は翔も、女性としてライザーの態度に思うところがあるのだろうな・・・、と思っていたのだが、それは違った。翔とライザーが一触即発の事態になった際に、グレイフィアはライザ―のみを咎めた。

確かにあのときは、ライザーが自身の《兵士》に命令をしたのだが、翔も手を出してはいないと言え、ライザーを挑発したことには変わりがないため、翔も咎められても可笑しくはなかったのだ。

だが、グレイフィアが咎めたのは、ライザーのみ・・・・・・無意識のうちにリアスを大切に思う気持ちが出てしまったのだろう。

しっかりと公私を分けそうな人なのだが、身内になるとそういった一面を見せるものなんだ、と内心で思った翔は、思わず口元を緩めてしまう。勿論、グレイフィアに見られたら面倒なので、彼女に悟られないように・・・。

 

「これはサーゼクス様からの一言です。『妹を救いたくば、会場に殴りこんできなさい』・・・そして、これが転移用魔方陣です」

 

そんなことは露知らず、グレイフィアは魔方陣が描かれた1枚の紙を取り出し、翔に差し出す。

翔はそれを受け取って一瞥してから、勢いよく破り捨てる。

それに驚くグレイフィアを余所に翔は力強く言葉を言い放つ。

 

「ご好意はありがたいが、これからやるのは殴り込みだ。態々、魔王様の手を煩わせるわけにはいかないだろう? それにすでに会場の座標は以前貰ったものから、割り出している。自身の力で行かせてもらうさ」

 

不敵な笑みを浮かべる翔に、最初は驚きの表情を浮かべていたグレイフィアであるが、表情を微笑みに変えて言う。

 

「・・・貴方は本当に面白い方です。では、一足先に会場に戻ら―――」

 

「ああ、ちょっと頼みたいことがあるのだが、いいか?」

 

「何か?」

 

「気になることがあってな・・・」

 

そう言って、翔はグレイフィアにあることをお願いする。

最初は驚いた表情を浮かべるグレイフィアであるが、話を聞くうちに納得した表情を見せる。

 

「わかりました。戻り次第確認させていただきます。それでは、今度こそ失礼します」

 

一礼したグレイフィアの足元に再び銀色の魔方陣が展開された。

魔方陣が輝き、翔の視界を光で満たすとグレイフィアの姿は消えていた。

 

「・・・・・・話は聞いていたんだろ?」

 

翔はグレイフィアがいなくなってから少しの沈黙後、唐突に障子へと語りかける。

障子に視線を向けると、月の光によってできた人影が浮かんでいた。

その影は、突然声をかけられたことにビクッ!?と驚きを示した後に、ゆっくりと障子を開き、姿を見せる。

金髪の女の子―――アーシアだ。

 

「すみません。盗み聞きなんてしてしまい」

 

申し訳なさそうに言うアーシアに、翔は気にするな、と言ってポンポンと頭を撫でる。

 

「それで、アーシアはどうしたい?」

 

優しく語りかける。

 

「わっ私も翔さんと一緒に行きたいです! 私はあの時何もできませんでした・・・翔さんが闘っている時も、部長さんが炎に包まれた時も・・・・・・私は戦うことはできません。だから、自分にできることを背一杯やろうと思いました。・・・・・・ですが、それすらまともに出来ませんでした」

 

涙を流しながら語るアーシア。

 

「それで、アーシアはどうしたい?」

 

再度、同じ言葉で問いかける。

それにアーシアは流していた涙を手で拭い、力強い眼差しをを翔に向けて言う。

 

「私も連れて行ってください! 戦うことが出来ない私が行っても、翔さんの足手纏いになるかもしれない・・・・・・。それでも! 私は部長さんを助けたいんです!!」

 

アーシアの瞳には確固たる意志が宿っている。

例え、どのような事になろうとも、その意志は消えはしないものだ。

 

「そうか・・・。なら一緒に行くとするか。その前に、アーシアも着替えてこいよ」

 

翔は優しく微笑みを浮かべてアーシアの頭を撫でる。

 

「はい!」

 

元気よく返事をしたアーシアは急いで自分の部屋へと戻って、シスター服に着替える。

シスター服に着替えたアーシアと共に翔は家の庭に転移用の魔方陣を構築する。

 

『相棒、何時の間に転移用の魔方陣の構築が出来るようになったんだ?』

 

いや、出来るようにはなってないぞ?

俺が事前に調べたのは会場の座標くらいだ

 

『おいおい・・・じゃあ、この魔方陣は何だ?』

 

これは昔、知り合いが使っていた魔方陣を見よう見真似で作ったやつだ

多分、転移は出来ると思う・・・

昔に1回だけ使って一応成功したから、まぁ大丈夫だろう・・・

 

『グレイフィアから貰った転移魔法陣の紙を素直に使えばいいものを・・・・・・』

 

翔の言葉に呆れた声を漏らすドライグ。

 

「何とかなるだろ・・・。さて、アーシア。準備は良いか? これから冥界に殴り込みだ」

 

「はい!」

 

「じゃあ、往くぞ」

 

2人の足元に展開された魔方陣が強く輝き、光が2人を包むと、2人の姿をこの場から消え去った。

 

「・・・婚約パーティなのに、これじゃあウェディングドレスだわ」

 

溜め息と共に憂いを帯びた表情で呟くリアス。

鮮やかな紅い髪をアップにして、薄く化粧をしたその姿は美しいの一言。

派手すぎず、質素すぎない純白のドレスに身を包み、悪魔という種族でありながら、清楚な少女な雰囲気を放ちつつ、彼女が持つ魔性の魅力を損なわってはいなく、まさに絶世の美女と言っても良いほど美しい存在へとなっている。

そんな彼女がいるのは、これから行われる婚約式の控え室。部屋には複数の侍女がおり、先程までリアスを着飾っていたのだ。

目の前にある鏡に映り込む自信を見て、リアスは複雑な感情を抱いていた。

 

『その通りさ』

 

部屋に軽薄そうな男の声が響く。

リアスが振り返ると、床に炎で描かれた魔法陣が展開され、炎が吹き出すと共にその中から1人の男が現れる。―――ライザー・フェニックスだ。

フェニックス家三男であり、先のレーティングゲームでグレモリー眷属に勝利した事で、リアスとの婚約を確定させた男である。だか、勝利の仕方に問題があるのだが、今はそれには触れないでおこう。

 

「ライザー様いけません! ここは男子禁制です!」

 

「固いことを言うな、俺は今日の主役なんだぞ? あぁ・・・主役は花嫁だよな。失敬失敬」

 

突然現れたライザーに室内に待機していた侍女が言うが、ライザーは聞く耳を持たず、苛立つような軽薄な笑みを浮かべながら純白のドレスを身に纏うリアスに近寄る。

リアスは先程まで浮かべていた儚げな表情を消して、腕を組み、何時もの凛とした表情でライザーに言い放つ。

 

「まだ花嫁になったつもりはないわ。何なのこの衣装?」

 

「それでいいんだよ。グレモリー家とフェニックス家が繋がるのを冥界によりアピール出来るだろう?

君だってそれを着る事でより諦めがつくだろ? フハハハッ!!」

 

リアスの態度などものともせず、肩に手を回して口説くような甘い声で語りかける。

すぐにその手を払い除けたいリアスだったが、ここで今更拒絶してみても何もならない。手をきつく握り締めて耐える。そんな彼女をよそにライザーはウザったいほど機嫌の良い声色で言葉を続ける。

 

「安心しろ、本番の結婚式にはそれとは比べ物にならない程の豪華なドレスを用意してやるからな。

我がフェニクス家伝統の炎の羽を全身にあしらった、冥界一ゴージャスな服をな!」

 

言いたいことが言い終わったのか、ライザーは満足気な表情で床に炎の魔方陣を展開させ、どこかに転移していった。

リアスはライザーが部屋から消え去った後、再び憂いを帯びた表情を浮かべる。

 

時刻は午後9時近く・・・。

リアスとライザーの婚約式が行われる会場には、多くの貴族悪魔が集まっていた。全員が着飾っている。

グレモリー家を懇意する者達、フェニックス家を懇意にする者達と、今回のパーティーで両機にパイプを持とうと邪な考えを持つ者達と様々な悪魔がいる。

その大勢の悪魔達の中に、祐斗と朱乃、小猫の姿があった。

3人ともパーティー用に正装をしている。祐斗はスーツを身に纏い、小猫は可愛らしいドレス、朱乃は大和撫子を体現するかのように和服を身に纏っている。

 

「それにしても凄い数だね」

 

片手にグラスを持った祐斗が周りを軽く見合わせて言う。

 

「それはそうですわ。魔王の一角、サーゼクス様の妹の婚約式・・・・・・出ないわけにはいきませんわ」

 

「・・・・・・貴族として当然の義務」

 

祐斗の言葉に朱乃と小猫が反応する。

すると―――

 

「・・・この前のゲーム、拝見させていただきました」

 

3人に声をかける人物がいた。

視線を向けると、そこには同じ駒王学園の生徒で生徒会長、そしてシトリ―眷族の《王》ソーナ・シトリーの姿があった。彼女はリアスの幼馴染であり、現魔王の一角、セラフォルー・レヴィアタンの妹でもある。

 

「・・・正直、納得できない部分も多いです。ですが負けは負け。それはおそらく、誰よりもリアスが分かっているでしょう」

 

「あらあら・・・流石は幼馴染が言うことは違いますわね」

 

朱乃は何時も通り、ニコニコと笑みを浮かべて言う。

 

「・・・あのゲーム、私は素晴らしいものだと評価します」

 

「・・・・・・お気遣いはありがたいんですが、でも大丈夫です」

 

ソーナの言葉に小猫が返す。

すると、そんな4人に近づいてくる人影があった。

 

「・・・グレモリ―眷族の皆様、少し宜しいでしょうか?」

 

「確か貴方は・・・」

 

僅かに驚いた表情を浮かべる朱乃。

彼女の言葉に続くように現れた人影が自身の名を言う。

 

「兄であるライザー・フェニックスの眷族で《僧侶》のレイヴェル・フェニックスですわ」

 

金髪のツインロールの髪型で、紫色のドレスを纏った女の子―――レイヴェル・フェニックスだ。

 

「それで、どうしたのですか?」

 

朱乃が僅かに警戒しながら、レイヴェルに問いかけると、予想外の言葉が返ってきた。

 

「・・・その、この前のゲームのことを謝りたくて―――申し訳ありません」

 

謝罪の言葉と共に深々と頭を下げるレイヴェル。

いきなりの行動に朱乃達は警戒を止め、驚愕の表情を浮かべる。

突然の出来事で固まっている朱乃達にレイヴェルは頭を上げ、事情を話す。

 

「・・・確かにお兄様があのゲームでは勝利しました。・・・・・・ですが、私はあの勝利を、最後にした行為を許せません。《王》として、あの判断は間違いとは言いません。けれども、ゲームに勝つために自身の花嫁にあのような事をする兄がどうしても許せません。ですので、兄に代わって謝罪を・・・」

 

悔しそうに、申し訳なさそうに、と言った感情で顔を歪めながら語るレイヴェル。

 

「あらあら、別に気にしておりません。ですので、頭を下げる必要はありません」

 

「・・・・・・ゲームはゲーム。仕方がない」

 

朱乃と小猫の言葉を聞き、レイヴェルは僅かに安堵した表情を浮かべる。

よほど緊張していたのだろう。

正直、あのライザ―・フェニックスの妹とは思えない朱乃達。

すると、先ほどまでの態度とは打って変わって、頬を紅く染めて、もじもじと言った態度を見せる。

 

「そっそれで、御剣様はいらっしゃらないのですか?」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

そんな彼女を見て、朱乃達は内心で唖然とする。

何時の間に、翔は彼女に好意を抱かせることをしたのだろう、と・・・。

だが、思い当たる節はある。

ゲームで見せた圧倒的な実力。ライザーの眷属達を歯牙にもかけないほどの技量・・・。不死であるライザーを圧倒する力・・・。そして、どのような事にも屈する事はなく、ただ前を見続ける瞳。

あれらを見ていたのならレイヴェルの反応も可笑しくはないだろう。

実際、リタイア後、治療室で朱乃達は、翔の戦闘を見ていたのだが、その姿を見て朱乃と小猫は頬を紅く染めながら見惚れていた。

 

「・・・・・・今はまだいない」

 

「でも、心配いらないさ」

 

「ええ、彼はきっと来ます」

 

小猫、祐斗、朱乃の順でレイヴェルの問いに答える。

3人には、確信がある。―――翔は必ず来る、と・・・。

すると、会場に炎の魔方陣が展開されたと思ったら、派手な炎と共にライザーが姿を現した。

 

「冥界に連なる貴族の皆様!お集まりいただき、大変嬉しく思います!・・・この度、皆様に集まっていただいたのは名門、グレモリー家の次期当主、リアス・グレモリーと、私ライザー・フェニックスの婚約という、歴史的瞬間を共有していただきたいからでございます!」

 

高々に言うライザーであるが、一体この会場内に、ゲームでライザーが行った行為を見たものは何人いるだろうか・・・。

そして、何も知らずに不用心に触れた龍の逆鱗の代償がどれほどのものか理解をしているのだろうか・・・。

 

「ではご紹介しましょう!我が妃!リアス・グレモリ―!」

 

ライザーの隣に紅い魔方陣が展開され、純白のドレスを身に纏ったリアスが姿を現した。

その瞬間、会場は大きな拍手と共に、リアスの美しさを称賛する声が響く。

そのような光景を他人事のように見つめるリアス。

ふと、リアスが視線を動かすと、自身の愛すべき眷属達と、幼い頃からの友人のソーナの姿が視界に入る。だが、その中には翔とアーシアの姿が見えない。そのことに心の内で安堵する自分がいることに気づくリアス。

 

翔はいないみたいね・・・・・・

きっと翔のことだから、自分を責めているのでしょうね

貴方は心の底からお人好し・・・背負わなくていいものまで、自ら進んで背負ってしまう・・・

 

初めて貴方と会ったのは、はぐれ悪魔の討伐の時だったわね?

最初は貴方の後ろ姿しか見なかったけど、貴方と視線を交わしたときの感覚は今でも忘れないわ・・・

得体のしれないというのに、貴方の瞳を見ていたら、警戒心なんて持てなかった

強い眼をしているのに、奥には計り知れないほどの悲しみを無理やり押し込んでいるように見えた・・・

 

それから色々と話して、気がついたら貴方を眷属に誘っていたわ

確かに、神滅具である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を宿していることを知って、貴方が欲しいと思った・・・・・・

でも、それ以上に貴方を独りにしてはいけないと思った・・・

このまま貴方を独りにしてしまったら、私は絶対後悔する・・・そう感じてしまった

 

アーシアを救いだすといった時の貴方は本当にカッコ良かった

それと同時にまだ会ってもいなかったアーシアを羨ましいと思ってしまったわ

レイナーレを貴方が殺す時に見せた表情は今でも鮮明に思い出せる・・・

 

まるで、零れ落ちる涙を必死に堪えながら親を探し歩く幼子のように・・・

まるで、罪を犯した罪人が、取り返しのない事をしてしまった事に後悔するかのように・・・

 

私が知る翔の姿とは、かけ離れていた・・・

その強靭な体からは想像もできないほど、酷く脆く、触れてしまったら儚く崩れ去ってしまう・・・そんな姿が私の瞳には映った

 

あの時からでしょうね・・・。気がつけば、翔へと視線を送るようになったのは・・・

彼の背中を見ると、独りで勝手にどこか行ってしまうんではないかと錯覚するようになった

目を離してはいけない・・・。目を離したら彼はきっと離れていってしまう

 

それから少し経ってから、ライザーとの婚約が早まったと知ったのは・・・

私はそれがどうしても嫌で、破談にするために貴方に無茶なお願いをしたわね?

 

あの時のデコピンは痛かったわ

でも、それと貴方の言葉で私は冷静になれた・・・

そして、気づいたわ・・・。自分がどれだけ愚かな真似をしようとしていたかを・・・

冷静じゃなかったのは認める。でもね? 私は本気で貴方になら初めてを捧げてもいいと思っていたのよ

 

あの後、ライザーが部室に来て、婚約について話し合った結果、レーティングゲームで決めることになった。貰った10日間。貴方が教えてくれた戦いに対する覚悟・・・それは今でも心に刻んである

 

そして、貴方と言葉を交わしたあの夜・・・・・・

打ち明けた私の夢・・・

貴方が最初、否定したように言った時、私は泣きそうになった・・・

貴方なら分かってくれると思っていたのに・・・ってね・・・

でも、違った。貴方は言ってくれたわ

 

『リアスの小さい夢・・・でも、大切な夢。自分をちゃんと愛してくれている者と結婚したい・・・。

いいじゃないか。女性なら誰でも思うことじゃないか?』

 

その言葉にどれだけ私が救われただろう・・・

 

『俺には貴族の家事情も、悪魔の事情も知らない。

俺が知っているとすれば、普段は威風堂々と自信家だが、実は甘えん坊で、優しくて、情が深い・・・―――リアスって言う、ただの1人の女の子ってとだけだ』

 

そして、部屋に戻る際に優しく頭を撫でられた時に全身に感じた暖かさ・・・

 

ああ・・・私、翔のことが好きなんだ・・・

 

やっと気づけた・・・・・・この想いだけは一生忘れない

これからライザーのものになるとしても、この想いだけは決して捨てない

 

リアスは溢れだしそうになる涙を必死に堪える。

 

ここで泣くわけにはいかない・・・

彼が居ても居なくても関係ない・・・彼が見惚れたって言ってくれた笑顔でいなきゃ駄目だ

それが最後まで戦ってくれた彼に、私が出来る唯一の事・・・

ここで笑顔でいないと彼は一生自身を責め続ける・・・だから―――

 

心で泣き、顔は笑顔を見せるリアス。

その姿を見た朱乃、小猫、祐斗、ソーナは自然と拳に力が入る。

 

「それでは改めてご紹介しましょう! 私の隣にいる女性こそ、我が最愛の妻とな―――」

 

ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

ライザーの言葉を遮り、突然室内に響く轟音。

誰もがその音源に視線を向ける。

会場の天井から赤黒い閃光が貫かれている。

だが、それは絶妙な力加減で床までは貫かずにいた。

 

「なっ何事だ!?」

 

「敵襲か!?」

 

あちらこちらで騒ぐ悪魔達。

そんな彼らを尻目に、リアス、そして、朱乃達は驚きの表情を浮かべる。

何故なら、その閃光に見覚えがあるからだ。

 

閃光が消え、影響で生まれた爆煙の中に人影が現れる。

誰もが目を凝らして、その人物を見ようとした瞬間、その者は片腕を横に薙ぎ払い、爆煙を消し去る。

爆煙が晴れ、現れたのは、黒いロングコートのような着物を身に纏い、龍のような鋭い眼をしている男―――翔だ。その隣にはシスター服を身に纏うアーシアがいる。

 

「きっ貴様っ!!」

 

翔の姿を確認すると、ライザーが怒りの声を上げる。

だが、そんなライザーに翔は、龍を彷彿させるような鋭い視線を向ける。

 

「リアスの《兵士》ではなく・・・赤龍帝、御剣翔として言わせてもらう―――リアスを返してもらおうか、ライザー・フェニックス」

 

その言葉と同時に、翔から圧倒的な威圧が放たれる。

 

「けっ警備員は何をやっている!! さっさとこの無礼者を黙らせろッ!!」

 

翔の放つ威圧に臆しながらも、ライザーは警備員を呼び、翔を会場から排除しようとする。

ライザーの言葉に従うように、甲冑を着た悪魔が翔を囲うように複数現れる。

 

「悪いが、今回は急いでいるんだ―――失せろッ!!」

 

覇気が籠った声で吼える翔。

すると、甲冑を着た悪魔達は一斉に泡を吹いて倒れる。

周りにいた貴族悪魔達は何が起きたのか理解できず動揺する。

そして、翔はゆっくりとリアスがいる方へと歩き出す。

 

「こっこれはいったい何事か!?」

 

「リアス殿これはどういうことですか!?」

 

比較的リアスの近くにいた貴族悪魔達が、リアスに詰め寄るが、リアスの視線は一点に注がれていた。

ゆっくりと自身に近づいてくる翔に・・・。

 

誰もが翔の歩みを止めようと口を開こうとするが、誰も出来なかった。

翔が放つ圧倒的な威圧。上級悪魔を凌駕し、最上級悪魔にすらも超えそうなほどの威圧。

リアスとの距離が5mほどになり、翔はその歩みを止める。

そして、静かに、だが力強く告げる。

 

「―――約束を果たしに来た」

 

「ッ!?」

 

一言。その一言でリアスは今まで我慢していた涙が溢れだす。

自身の両手で体を抱きしめるようにして、我慢をしようとするが、

一度流れ出した涙は止まることはない。

 

「ようやく来たようだね」

 

すると、今まで奥に控えていた紅髪の男が、静かに、だが会場全体に響くように声を発する。

その男の後ろにはグレイフィアが付き従うように控えている。

 

「・・・・・・『紅髪の魔王(グリムゾン・サタン)』サーゼクス・ルシファー」

 

ぼそり、と呟くように言う翔。

どうやら、その声は男―――サーゼクスには聞こえたようで、笑みを浮かべて翔に視線を向ける。

 

「サーゼクス様! これはどういうことです!?」

 

前に出てきたサーゼクスにライザーは強く問いかける。

そんな彼を見ても、サーゼクスは笑みを崩さずに言う。

 

「これは余興だよ。・・・それに先日のレーティングゲーム。非常に興味深かったよ。

しかしながら、妹のほうは戦力は半分、そもそもゲーム経験もなしの上に、最後のあれはね・・・」

 

深い笑みをライザーに向けるサーゼクス。

 

「さっサーゼクス様はあのゲームにごっご不満でもあるのですか!?」

 

「いやいや、私が口を挟めば、レーティングゲーム自体が存在意義を失う。それに事情が事情だ。

旧家の顔も立たないだろう?」

 

「ッ!?」

 

ライザーの様子が明らかに可笑しい。

魔王を前にしての緊張にしても、態度が可笑しすぎる。

まるで、何かを恐れているように感じられる。

 

やはり・・・そういう事か

 

そんなライザーの様子を見て、翔は内心で疑問に思っていたことが確信に変わる。

 

「可愛い妹の婚約パーティーだ。派手にやりたいと思ってね。

グレイフィアに少々段取りをお願いしたんだ。

それにこの少年は今代の赤龍帝・・・・・・是非ともドラゴンとフェニックスの戦いを見たいのですよ。ゲームだと中途半端に終わってしまったのでね」

 

ライザーに笑みを浮かべながらも、その眼は全くと言っていいほど笑ってはいない。

有無言わさずに、笑顔で威圧するサーゼクス。

 

「・・・・・・サーゼクス様の頼みなら断れません。このライザー、身を固める前の最後の炎をお見せしましょう!」

 

「さて、翔くん。君が勝った場合の対価は何がいい?」

 

「サーゼクス様!?」

 

「なんということを!? たかが人間如きに、そのような・・・・・・」

 

「―――黙れ」

 

何人かの悪魔が非難の声を上げるが、サーゼクスは今まで浮かべていた笑みを消して眼を鋭くさせ、低い一言で黙らせる。

 

「悪魔だろうと人間だろうと関係はない。こちらから何かをさせるのですから、相応の対価は必要だ。さぁ、何が欲しい? 地位かい? 金かい? それとも絶世の美女?」

 

「魔王様、俺の答えなのどすでにお聞きになられたでしょう?」

 

「ならば、君が勝ったのなら、連れて行くがいい。我が妹、リアスを!」

 

翔の言葉に満足そうに頷いたサーゼクスは高らかと言う。

 

「ああ、それとライザー。貴様はフェニックスの涙を3つ持って戦いに臨め」

 

「なっ!?」

 

翔の言葉にライザーは言葉を失う。

 

「・・・・・・それはどういうことだい?」

 

流石のサーゼクスも翔がそのような事を言うとは予測しておらず、驚きの表情を浮かべながら問いかける。それに対して、翔は特に気にすることもなく答える。

 

「なに、この前のゲームで同じ条件で戦おうと思っているだけだ・・・・・・なぁ、ライザー・フェニックス?」

 

「ッ!? なっ何出鱈目な事を言っているんだ!! そっその言い方ではまるで俺が不正を働いたような物言いだな!!」

 

言葉を詰まらせながらも、ライザーは反論の声を上げる。

 

「そうだが?」

 

ライザーの言葉を受け、何を言っているんだ? といった風に返す。

 

「まず可笑しいとは思わないか? こっちはゲーム初心者で眷属の人数は貴様の半分・・・。

その上、貴様らはフェニックスの涙を使った。いくらこちらに聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を持つ者がいるとしても、回復役は1人だけ・・・・・・フェニックス家側がこちらにフェニックスの涙を渡さない理由にはならない。婚約がかかったゲームだ。より公正に行わなければならない。ならば、フェニックス家はこちらに渡すはずだ。だが、実際はどうだ。貴様らはフェニックスの涙を使ったが、こちらには渡されていない・・・。グレイフィアさん、確認はとれましたか?」

 

翔の話を聞いて、全身から冷や汗を流しながら、否定するライザーを無視し、翔はサーゼクスの後ろに控えているグレイフィアに話しかける。

 

「はい。翔様の予想通りでした。フェニックス卿はリアス様にフェニックスの涙を2つ用意したと仰いました。そして、それをライザー様が渡すと言って受け取ったことも確認が取れました」

 

「ッ!?」

 

グレイフィアの言葉にライザーは顔色をどんどん悪くさせていく。

それに追い打ちをかけるように翔は語りを続ける。

 

「どうせ貴様のことだ。最初は余裕で勝つと高を括っていたのだろう? リアスにフェニックスの涙を渡したところで結果は変わらない。無駄に長引かせるのも酷だろう、と勝手に思い込み、渡すはずだったフェニックスの涙を渡さなかった。

だが、実際は追い詰められたのは貴様で、使うはずのなかったフェニックスの涙まで使ってしまった。まぁ、それはまだいい。ルール上使っても問題ないのだからな・・・・・・2つまでは。

だが、俺に追い詰められた貴様はリアスに渡すはずだったフェニックスの涙を使ってしまった。

だから、途中で逆ギレしたのだろう。―――ライザー・フェニックス」

 

「でっ出鱈目だ!! まっまず証拠がないだろ! かっ勝手な憶測で随分と無礼にもほどがあるぞ!! 人間風情がぁああ!!」

 

「そういうと思って、グレイフィアさんにもう1つ頼んでいたさ・・・・・・先のゲームの映像はあるかとな?」

 

「ッ!?」

 

翔の言葉に絶句するライザー。

もはや言い逃れは出来ない。幸い、周りに当事者である、翔とリアス、ライザー、そして、サーゼクスとグレイフィアしかおらず、さらにサーゼクスの配慮で防音の結界が展開されていたため、ライザーが不正をしたことを聞いている者はいない。

 

「これが知られたら、貴様どころか、フェニックス家は終わるな・・・・・・神聖なゲームを穢してまで、魔王との繋がりを得おうとした、と思われるだろう。

だが、俺もそんなことであのゲームをなかったことにはしたくない・・・・・・だから、あの時の続きをしよう」

 

「ああ・・・・・・今度こそ、貴様を我が業火で燃やし尽くしてやるッ!!」

 

ライザーはもの凄い形相を浮かべながら、翔を睨みつける。

 

「じゃあ、すぐに場を設けようではないか」

 

話が終わったのを見計らって、サーゼクスが翔とライザーに声をかける。

急遽、会場の外に戦闘の場が設けられることとなった。

 

 

龍の逆鱗に触れた愚か者に、代償を支払わせる時が来た。

 

 




感想、意見等受付中!

無駄に書きたいことを書いてしまいだらだらとなってしまいました。

オーフィスの口調ってあれで大丈夫ですかね?
あれが何気に一番苦労知ったと思います。

続きはできるだけ早く更新したいと思っています!
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