ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~ 作:satokun
翔とライザーは会場の外に急遽作られたバトルフィールドで対峙していた。
『それでは始めてくれたまえ』
サーゼクスが開始の合図を行う。
「小僧・・・確かに貴様の実力は上級悪魔をも凌いでいる。・・・・・・だが、それは
開始早々、背中から炎の翼を展開させ、宙に飛び上がるライザー。
周りにはゲームで見せた炎の弾丸を幾つも生み出し、地上にいる翔に容赦なく放つ。
『あの三男坊は何を勘違いしているのだろうな。相棒は倍加など殆どせずに追い込んだというのに・・・』
ライザーの言葉にドライグが呆れた声を漏らす。
どうやら彼の中では、翔の実力が神器によるものだと思っているらしい・・・。
勿論、そんなことを思っているのはライザーだけで、ライザーの眷属達やリアス達、そしてあのゲームを観戦していた者達からすれば、翔は人間でありながら、上級悪魔を同等、または近い存在だと認識されている。
―――だが、その認識はこの戦いで崩れることになる。
翔はコートに隠れている腰の部分に両手を入れて、あるものを取りだす。
それは刀身のない柄だけの不出来な剣であった。血で塗られたような赤をしている。
柄の長さは片手で持つ程度の短さだ。
それを両手に一本ずつ持ちながら、迫りくる炎の弾丸を見据える。
「ハッ! そのようなもので我が炎を防ごうなど、血迷ったか!!」
嘲笑を浮かべるライザー。
それを無視し、翔は両手に持つ柄に魔力を巡らす。
スゥ、と静かに柄の部分から銀色の刀身が生じる。
柄の数倍は長い1mほどの刀身であり、その形状は十字架を彷彿させるものだ。
それでもって、迫りくる炎の弾丸を容易く斬り裂く。
次々と迫りくる弾丸を斬り裂きながら隙を縫って左手に持つ、それをライザーに向けて投擲する。
銀色の弾丸は一直線にライザーへと向かう。
だが、ライザーは避ける素振りも見せない。それがどれだけ愚かな行為だとも知らずに・・・。
「ふん。その程度で俺を倒せ―――がっ!?」
銀色の弾丸はライザーの腹部に深々と刺さる。
普通ならばそれだけで終わるのだが、ライザーは痛みに悶えながら血を吐き出す。
「なっ何なんだッ!?」
震える手で刺さったものを抜こうと触れた瞬間、全身に嫌な汗が滲み出す。
そしてある感覚が胸の奥から全身に駆け巡る。
「ッ!? あぁあああああああ!!!!!!」
絶叫を上げる。
苦しみに襲われながらも、無理やり引き抜き地面に捨てる。
だが、貫かれた傷口はすぐには再生せずに、非常にゆっくりと再生していった。
「どうだ? かなり効いただろ?」
炎の弾丸全てを斬り裂き終えた翔は、不敵な笑みを浮かべんがらライザーに話しかける。
「きっ貴様! 俺に何をしたッ!!」
完全に傷を再生させたライザーは、今まで以上に怒りの形相を浮かべて翔を睨みつける。
「これは『
懐からさらに黒鍵を取り出す。両手に三本ずつ、それぞれ指に挟んで持つと同時に刀身が生じる。
「だが、こんなものは初めて見るぞ!」
ライザーの言葉は最もだ。
悪魔祓いの護符の一種と言うのならば、冥界に知られているはずだ。
「それはそうだろうな。これは剣と呼ぶにはあまりにも不出来な上に、もの凄く扱いづらい・・・・・・愛用する者など居るはずもなく、存在を知られる前にその存在を消した」
もっともそれはこの世界の話じゃないがな・・・
一番重要な事は言わず、内心で付け足すように言う。
翔が並行世界から来たことを知っているのは、リアスとその眷属のみ・・・。何故なら、翔がリアス達に口封じをしたからだ。信じる者などいないだろうが、仮にいたとしたら?並行世界に興味を持ち、行こうとする者が出てしまったら?
最悪の可能性を考えた結果、翔はリアスに冥界に報告するのを止めてもらうように頼んだ。
最初はその頼みを断ったリアスであったが、翔の話を聞いていくうちに、翔の意見も可能性は低くはないと考え、報告をするのを止めたのだ。
「なっならば、何故貴様が持っているッ!?」
「だから言っただろ? 知り合いが使っているのを思い出して作ったって・・・。もっともその知り合いはもう会えないがな・・・。まぁその話はどうでもいい、続きを続けよう」
そう言って、腕を交差させ、獣の爪の如く持ち、黒鍵を一気に投擲する。
同時に放たれたというのに、その6つの銀色の弾丸はライザーを正確に捉えている。
だが、ライザーもそれらを見逃すほど馬鹿ではない。
迫りくる弾丸に炎の弾丸を放つ。
だが―――
「なっ何だと!?」
銀色の弾丸は炎の弾丸では破壊されずに逆に貫き、勢いは衰えることもなくライザーに直進し続けたのだ。
破壊は出来ないと悟ったライザーは慌てて、黒鍵を避ける。だが―――
「本当にお前は戦いと言うものをまるで知らないな」
ライザーが避けた先にはすでに翔が先回りしていた。
呆れた声を聞いて、翔の存在に気づくライザーだが、すでに遅い。
その両手にはすでに刀身が生じている黒鍵が握られている。
ギョっとした表情を浮かべたライザーは脇目も振らずに、翔から逃げようとするが、翔は右手に持つ黒鍵を容赦なく振るう。
「がっ!?」
袈裟斬りに振るわれた黒鍵はライザーの左肩から右腰に一直線の傷を作り出す。
だが、そこで翔の攻撃は止まらず、右腰に構えた左手に持つ黒鍵を斬り上げる。
丁度、ライザーの傷はクロスしたようになった。
痛みに苦しむライザーに翔は宙で前方回転を行い、その勢いを乗せた踵落としをライザーの頭に決める。
そして、最後に左手に持つ黒鍵を落下していくライザーに投擲する。
「ぐぁあああああ!!!」
頭に踵落としを喰らった影響で意識を失っていたライザーであったが、黒鍵の刺さる痛みと護符の効果による痛みによって意識が強制的に戻され―――
ドォオオオオオオオオオオオオンッ!!!!
轟音を立てて地面に激突する。
翔は上空から落下したライザーを注意深く見据える。
「来るか・・・」
呟いたと同時に右手に持つ黒鍵を力強く握る。
「人間風情がぁあああ!!!!」
砂煙から勢いよく何かが飛び出してきた。
それは怒りの形相を浮かべながら、翔に迫ってくるライザーであった。
怒りの感情に身を任せ、ライザーは極大の炎を翔に放つ。
だが、それは翔の右手に持つ黒鍵によって斬り裂かれる。
「クソクソクソクソクソッ!!!」
同じ言葉を連呼しながら、ライザーは同じように炎を放ち続けるが、翔は無言で迫りくる炎を次々と斬り裂いていく。
そして翔は隙を見て、ライザーの懐へ一気に肉迫する。
「ッ!? 何時の間にッ!?」
驚愕の表情を浮かべるライザーを余所に、翔は上段、中段、下段と言った順にライザーに蹴りを喰らわせ、そして最後に回し蹴りでライザーを吹き飛ばす。
「アーシアから貰ったものを使うか」
懐から透明な液体が入った小瓶を取り出して、神器である
『Boost!』
『Transfer!!』
小瓶の中身に倍加した力を譲渡する。
吹き飛ばしたライザーに肉迫しながら、翔は小瓶の中身を黒鍵の刀身に流す。
「くそが!!」
悪態をつきながらライザーは宙で体勢を整えると―――
「何ッ!?」
すでに目の前には翔がいた。
そして、手に持つ黒鍵をライザーの胸に深々と突き刺す。
「がぁああああああああああああああああ!!!」
先ほど黒鍵が刺さった以上の絶叫を上げるライザー。
翔は突き刺した黒鍵を抜き放つと、ライザーは背にある炎の翼は弱々しくなり、宙に浮いていられなくなったようで地面へと落下していった。
『やはり効いたようだな』
ドライグがライザーの様子を見て言う。
「そうだな」
翔は地面に降り立ち、ライザーを見据えながら答える。
「きっ貴様・・・俺に、俺に何をしたぁあああ!!!」
弱々しく立ち上がったライザーは苦悶と怒りを混ぜた顔で問いかける。
「どうやらかなり効いたみたいだな。聖水がついた黒鍵は・・・」
「聖水だとッ!! だが、聖水如きで俺がこれほどダメージを受けるはずが・・・」
「ただの聖水じゃない。神器によって倍加させた力を譲渡させたものだ」
「神滅具め・・・」
翔の言葉を受け、忌々しそうに翔の左腕にある
「4つもあるんだ、さっさとフェニックスの涙を飲め」
「くっ!」
翔にフェニックスの涙を飲むように促され、葛藤するライザーであるが、痛みには勝てなかったようで、懐からフェニックスの涙を取り出し、飲み干す。
すると、弱々しかった、炎の翼が一気に勢いを取り戻し、全身から炎を噴き出させる。
「こんな屈辱は生まれて初めてだ・・・人間如きがッ!!」
呪いをかけるかのようにもの凄い形相で翔を睨みつけるライザー。
だが、それを見ている翔の視線を鋭く冷たいものであった。
「・・・俺はあのゲームは、全力で挑んだ。だが―――本気ではなかった」
「何を言っているんだ?」
怪訝な表情を浮かべるライザーを余所に、翔は言葉を続ける。
「俺があの時、間に合えば、リアスは傷つくことも・・・泣くこともなかった。
―――あんな顔をさせることもなかった・・・ッ!」
黒鍵が壊れるんではないかと言うほど強く拳を握り締める。
思い出すのはゲームの最期―――リアスが炎に包まれる瞬間に浮かべていた顔・・・。
涙を目元に溜めながらも、笑っていた・・・。
「俺はあいつのあんな笑顔を見たくはなかった・・・ッ!! あいつを護ると誓っておきながら、
俺は護ることは出来なかった・・・ッ!!」
感情に呼応するように全身から赤黒い魔力が迸る。
翔から放たれる威圧によって、フィールド全体の地面には亀裂が奔り、建物には罅が出来る。
「だから、俺は貴様を殺す勢いでやらせてもらう―――精々足掻くことだな」
口調が変わる。
より鋭く、より冷たいものへと変化する。
『Boost!』
話している間にも倍加は続けられており、すでに10回は溜まっている。
今の俺なら―――
『Explosion!!』
―――耐えられる
放つ魔力の質が変わる。
強化によって上げられた力は刀身のように鋭く、無駄がなくなる。
ゾクッ!!!!????
翔が見据えただけで、ライザーは全身に襲い掛かる圧力。
そして―――
「なっ何故体が震える!!」
突然、全身が震えだしたことに、疑問の声を上げるライザー。
何故、震えているのか理解できていないからだ。
それは今まで不死故に感じたことがないもの・・・。だから彼は分からないのだ、その正体に・・・。
だが、頭で理解できなくとも、体は―――本能が理解したのだ。
翔から放たれている静かな殺気により、今まで感じたことのないもの―――『死』という恐怖に・・・。
「おっ俺はライザー・フェニックスだぞ!! 上級悪魔で、フェニックスである俺が、貴様なんぞに!!」
怯えを払うかのように大声を上げ、全身から炎を噴き出させる。
「・・・・・・・・・・・・」
だが、翔はそんなライザーの姿を見ても、動揺することなく龍のように鋭い眼でライザーを見据える。
「クソォオオオオオオッ!!!」
ライザーは虚勢を張り、炎の弾丸を翔に向けて放つ。
どうやらフェニックスの涙を飲んで、いくらか冷静さが戻ったようだ。
ゲームで翔に有効だった攻撃方法を繰り出してくる。
だが―――
「芸のない奴だ・・・」
迫りくる炎の弾丸の群れに向けて、無造作に左腕を薙ぎ払うと、赤黒い波動が炎の弾丸らを容易に消し去る、
「ばっ馬鹿な・・・」
絶句するライザー。
自慢の炎をゴミでも薙ぎ払うように消されたのだ。それは仕方がない事だろう。
「余所見するなよ」
「ッ!?」
不意に後ろから聞こえる声に振り変えり、ライザーは驚愕の表情を浮かべる。
そこには先ほどまで、自身から離れた位置にいた翔が少し目を離した瞬間に己の後ろにいたのだ。
「いっ何時の間―――ぐふっ!?」
「貴様はまるで分かっていない」
ライザーが口を開いて何かを喋ろうとした瞬間を見計らって、翔はライザーの腹部に寸勁による強烈な掌底を喰らわせる。
そして、至近距離で次々と連撃を喰らわせる。
両手での突き上げと左膝蹴りを同時に行う、中国拳法の心意六合拳の一手、
「がぁ・・・・・・」
二枚目のような顔をしていたライザーの顔は、ボコボコになっており、口と鼻から止めどなく血が流れている。
だが、翔はそこで攻撃の手を緩めず、ライザーの体勢を崩し、彼の頭を自身の膝に乗せ、そこに裏拳を振り降ろし、ライザーの頭を砕く。中国拳法の一つ、太極拳の一手、
そして、頭の無くなったライザーの体を蹴り飛ばし、近くにある建物にぶつける。
音を立てて崩れ落ちる建物を見ながら、翔は残心を行い、呼吸を整える。
『随分と容赦のない攻撃だな』
翔のあまりの容赦のない攻撃にドライグが戦慄したように言葉を漏らす。
そうか?
元々人を殺すために作られた技だからな・・・だが、どうせ再生するのだろう?
なら、これくらいやらないとな・・・
翔とドライグが話していると、ライザーがいる残骸から極大の炎が放たれ、残骸を塵と化す。
炎の中から完全に再生を終えたライザーが、視線で人を殺せるのではないかと言うほど、翔を睨みつける。
「完全に再生しているな・・・。魔力も戻っているようだし、2つ目の涙を飲んだのか」
翔はライザーの姿を見て、冷静に状況を把握する。
その姿には、不死鳥のように炎を噴き出させているライザーに恐怖はない。
「力の開放はどれくらい残っている?」
『あと1分といったところだな。だが、今の相棒ならあと1回は確実に涙を使わせられることが出来る』
「そうだな・・・。スゥ・・・・・・ハァ・・・・・・」
瞳を閉じて、翔は深く呼吸を繰り返す。
内にあるリミッターをゆっくりと外していく・・・。
そして内側にある気を一気に爆発、解放する。
全身の筋肉が僅かに膨れ上がり、獣の如く、暴力的な気が翔から解き放たれる。
ゆっくりと開かれる瞳は先ほどの静かさは消え去り、荒々しいものが迸っている。
先ほどまでの静かな殺気から剥き出しの殺気へと変わる。―――『動の気』を解放したのだ。
武術家には大きく分けて2種類ある。
常に心を落ち着かせ、闘争心を内に凝縮させ、冷静さを武器に戦う“静”の者。
感情を爆発させ、本能的に戦う“動”の者。
これらの属性に優劣の差があるわけではなく、一長一短ではあるが、“静”の者は如何なる時でも自身の実力を発揮することができ、安定している。対して、“動”の者はその時のテンション次第で実力以上の力を発揮できる場合もある。
だが、“動”の者は、1つ間違えると精神のリミッターが外れっぱなしになり、人格が豹変して元には戻らなくなってしまう危険がある。完全に己を律することが出来れば問題はないが、完全に暴走させて“動”の氣に呑まれてしまうと破壊と殺戮のみを求める修羅道・・・・・・すなわち“闇”に堕ちることになる。
だが、翔は相容れぬ“静”の気と“動”の気を2つとも修めている。
つまり、どちらのタイプでも戦うことが出来るのだ。
だが、翔の本質は“静”の者のため、普段は“静”の気を練るのだが、状況によって“動”の気に転化することも出来るのだ。
「―――往くぞ」
一息で翔はライザーと距離を詰める。
ライザーが翔から離れようとするが、それよりも速く一撃を決める。
何時の間にか、赤黒い魔力が収束している右手によって、正拳突きの要領で放たれた突きは、ライザーを一切動かさず、内部のみを破壊させる。
「―――
「ぐふっ!?」
重要な内臓器官にダメージが直接送られ、口から血を吐き出すライザー。
だが、翔は次の動作に移っていた。
左足で震脚を行い、さらに一歩ライザーの懐へと入り、次の一撃を決める。
「―――
拳が接触状態から行われる拳撃。
まるで銃弾のようにライザーの体を貫く一撃。
さらに、収束させた力の全てを開放する。
ライザーは避けることも防ぐことも出来ずに赤黒い閃光に呑み込まれる。
ドォオオオオオオオオオオオオンッ!!
フィールドが赤黒い閃光で染まった瞬間に轟音が響く。
『Reset』
力の開放が終えたことを意味する音声が籠手から流れる。
それと同時に襲い掛かる負担と消失感・・・。だが、それを気にすることもなく、翔は突きだした拳を納め、残心を行う。そして、荒々しい気を静めて、内側に凝縮させていく。“動”の気ではなく、“静”の気を練り始める。
“静”の気を練りながら見据える先は自身の放った閃光によって破壊された大地。
一直線に出来た窪みの中にゆっくりと動く存在がいた。―――ライザーだ。
ライザーは地面を這うように動きながら、窪みから抜け出し、弱々しい動きで懐から最後のフェニックスの涙を取り出し、飲み干す。
「貴様だけは絶対に殺してやる!! 俺に許しを乞うまで、じわじわと燃やしてやる。嬲り殺しだ!!」
もはや言葉で表すことの出来ないほどの怒りの形相を浮かべたライザーは、翔をどう殺すかを妄想して厭らしい笑みを浮かべる。
『相棒、どうやら先ほどの一撃で相手は頭が可笑しくなったようだ』
呆れた声を漏らすドライグ。
ライザーの言葉は全くと言っていいほど実現はされないだろう。
誰が見てもライザーが劣勢であるのは、火を見るよりも明らか・・・・・・だというのに、ライザー本人は自分が負けることを微塵も考えていないようだ。
ドライグがそう思うのも仕方ないと言えるだろう。
「これで涙はもうない・・・。意外とすぐなくなったな」
『ああ、これならばもう2つくらい持たせればよかったのではないか?』
「そうかもしれないな・・・」
「・・・どれだけ俺を馬鹿にすれば気が済むのだッ!!」
翔とドライグのやり取りを聞いて、ライザーはその感情を表すかのように背にある炎の翼を大きくさせ、全身から炎を溢れださせる。
「馬鹿にしてはいないさ。ただ事実を言っているだけだ」
「それを馬鹿にしているというのだッ!!」
一直線に突っ込んでくるライザー。
両手と両脚には高密度な炎を纏わせている。
どうやら、遠距離では攻撃が通らないと悟ったようで接近戦を翔に挑むようだ。
「この下等な存在が!!」
無駄が多く、大振りなライザーの拳を容易に弾く。
ライザーは諦めず次々と拳、蹴りと繰り出すが、全てが翔の間合いに入った瞬間に叩き落としていく。
自身の間合いに入ったものを確実に撃ち落とす空間を作る技、その名を―――
「―――
最初は纏わせた炎の熱により、ダメージを与えようと考えていたライザーであったが、全く攻撃は当たらず、
ダメージも受けている様子を見せない翔に焦りを隠せずに、唯でさえ単調で大雑把な動きが、さらに酷くなっていく。翔にダメージが通らない理由は、ゲームの時とは桁違いの密度の魔力を全身に迸らせているからだ。
「クソッ! 何故だ! 何故当たらん!! 当たりさえすれば・・・ッ!!」
「・・・・・・当ててみろよ」
一旦、翔から離れたライザーは苛立ちを隠そうともせずに、翔を睨みつけながら言う。
それを聞いた翔は、何を思ったのか、当てるように言う。
構えを解き、完全な無防備な状態になる。
「ッ!? ばっ馬鹿にしやがってぇえええええええ!!!!!!」
その姿をライザーは怒りの叫び声を上げながら、翔に突っ込む。
ドンッ!と音が響く。
ライザーの炎を纏わせた拳が翔の頬に容赦なく突き刺さる。
完璧に決まったことにライザーは笑みを隠せずにはいられない。
だが―――
「・・・・・・この程度か」
「なっ何だと!?」
吹き飛ぶことも痛みに悶えることもなく、翔はライザーの拳を受けたその場で立っていた。
ライザーが思わず後ずり、突き刺さった拳が離れる。
翔の頬には少し火傷の跡があるが、それ以外は何ともない。
いくら魔力を迸らせているからと言って、ダイレクトに当たれば無事である筈がない、と思っていたライザーの予想は裏切られた。
絶望したような表情を浮かべるライザーに翔は鋭い眼を向けながら言い放つ。
「軽い。ペラペラで軟弱なんだよ、貴様の拳は・・・。
貴様の拳は何を握る? 何を以て、その拳を作る?
地位のためか? 名誉のためか? 家の看板のためか? くだらない自尊心を護るためか?」
翔の言葉を受け、ライザーは思わず、自身の手を見つめる。
―――俺は・・・・・・何もない
「今の貴様には何も籠っていない」
―――ああ、あいつの言うとおりだ
「じゃあ、お前は何を握る? 何が残っている?」
―――俺に残っているのは・・・・・・
「―――誇りだ。上級悪魔として、フェニックス家として・・・この誇りだけは捨てたくはない」
ライザーの瞳に強い意志の炎が燃え上がる。
誇りを握り締めて、拳を作る。
「強さとは想いを貫く力だ。気高い想いも貫く力がなければ戯言と変わらず、想いなき力もまた無意味―――貫くんだ。胸に宿る想いを、拳に握る想いを」
「そうだな!」
立ち上がるライザー。
その瞳は爛々と輝きを放つ。奥に燃え上がる意志の炎は勢いを増す。
それに呼応するかのように背にある炎の翼が巨大なものへと変わる。
放つ雰囲気も変わり、翔を見据えるその眼には、人間だからと言って、翔を嘲る感情はない。
「俺はお前と会えて良かった、御剣翔! だが、この勝負は負けるわけにはいかない!
初めてだ・・・生まれて初めて、勝ちたいと心が、体が渇望する!」
ライザーの感情を表すかのように炎の勢いが増していく。
それは怒りに反応していたのとは違い純粋な闘志によるもの・・・質も規模も違う。
「そうか・・・。だが、俺も負けるわけにはいかない! ライザー・フェニックス!」
翔も今まで以上に魔力を迸らせる。
そして、互いに申し合わせたように次の一撃で決めるために、己の最高の攻撃を放つために力を籠める。
ライザーは全身から噴き出し、ライザーを包み込むほどの炎の柱を作り出す。
それはやがて、形を作り始める。
巨大な炎の翼を持つ、巨大な鳥・・・その姿は、まさにフェニックス。
対する翔も、右手を左腰に左手は右手に添えるように置き、腰を落としある構えをとる。
以前、ゲームで見せた抜刀術の構えだ。
『Blast!』
左腰に添えられた右手に赤黒い魔力が収束していく。
その力は前回とは比べ物にならないもの・・・。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
互いに黙って相手を見据える。
そして、数十秒後―――動き出す。
「
「これで最後だ!!」
「―――
ライザーは炎の鳥と化した己自身で襲い掛かり、翔は迫りくる炎の鳥を静かに見据えながら、右手を振り抜く。放たれるのは巨大な赤黒い斬撃。
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!
赤黒い斬撃と炎の鳥がぶつかり合った瞬間、フィールドは強烈な光に包まれ、轟音が響き渡る。
光が止んでも、大量に舞い上がる砂煙でフィールド内が確認できずに、しばらくの間、観戦していた者達に緊張が走り続ける。
やがて、砂煙が晴れだすと、バトルフィールドの中央に対峙する翔とライザーの姿が見えた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
互いに黙って視線を交わす。
すると、不意に笑みを浮かべるライザー。
それを見て、観戦していた者達の殆どがライザーが勝ったと思ったが―――
ドサッ、と音を立てて地面に崩れ落ちるライザー。
―――勝負が終わった。
『勝者、御剣翔』
サーゼクスの声が静かに響く。
・
・
・
・
戦いが終わり、翔とライザーが転移魔方陣によって会場に戻された。
ライザーにフェニックスの涙を飲ませるが、意識は戻らず、そのまま寝続けた。
だが、その顔は子供のように無邪気で晴れやかなものであった。
「リアス。迎えに来たぞ」
治療を受けずに転移されて、真っ先に向かったのはリアスの元。
「翔・・・貴方は・・・っ!!」
翔の姿を、言葉を聞いたリアスは目元に涙を溜める。
それは悲しみによるものではない。
「約束通り、勝ったのでリアスは返してもらう」
近くにいるサーゼクスに、臆することもなく堂々と言い放つ。
サーゼクスは笑みを浮かべたまま、頷くだけだった。
「ほら、リアス。帰るぞ・・・―――今度は一緒にな」
「ッ!? ・・・ええ!!」
満面の笑みを浮かべて、差し出された翔の手を掴み、歩き出すリアス。
翔とリアスが会場の出口に向けて歩き出すと、扉近くには、朱乃と小猫、祐斗、ソーナ、そしてレイヴェルの姿があった。
「悪いな、お前の兄貴のことを」
「いえ、むしろ良かったです。兄もこれでいい方向へと向かうでしょう」
「お前の兄貴・・・ライザーが目を覚ましたら、また会おうって伝えてくれ」
「はい!」
レイヴェルと短いやり取りを終えると、翔は次に朱乃達に視線を向ける。
「お疲れ様、翔くん。でも・・・・・・」
「・・・・・・私達はいいです。お供は先輩だけで十分」
「うふふふ、帰りはこれを使ってください、とグレイフィアさんから貰いましたわ」
朱乃から魔方陣が書かれた紙を受け取る。
そして、全員から意味深な視線に観念したかのように翔は、肩を竦める。
「わかったよ・・・俺とリアスで先に帰ってるぞ」
リアスと手を繋いだまま、翔は会場の扉を開けようとするが―――
「ああ、言い忘れるところだった」
途中で止める。
振り返り、大勢の悪魔が翔達に様々な視線を送るなか、翔はある事を言い放つ。
「勝手な振る舞いをしてしまい申し訳ない。―――だが、この先くだらない政略やしきたりで、誰かが涙を流すというのならば、俺は全力でそれを壊しに来る。それだけは忘れないでいただきたい」
全身から覇気を放ちながら言い放つ翔。
言いたいことは、それだけだ、と言って今度こそリアスを連れて会場から出ていく。
会場から出た翔は朱乃から渡された魔方陣に魔力を籠める。
すると、転移ではなく一匹の生物が召喚される。
鷲の上半身に、獅子の下半身で出来ている伝説上の生き物―――グリフォン。
「これに乗って帰れってことか。じゃあ、ちょっと失礼」
「えっ? きゃあ!?」
翔は手を繋いでいた手を放し、リアスの膝裏と肩を持ち、横抱きにする―――所謂、お姫様抱っこだ。
抱えたリアスごと、軽く跳躍しグリフォンの背に乗り、片手でグリフォンについていた手綱を握り、グリフォンを飛ばす。
その光景を見つめる人影があった。
「あのグリフォンは最悪の事態を想定して、逃げ足ようにと準備したのにな・・・」
「・・・そうなっていたら、大変でしたよ」
ワインを片手に去っていくグリフォンを見つめながら言うサーゼクスに、彼の隣にいたグレイフィアが呆れたような声で返す。
「だが、そうはならなかったわけだ。父上もフェニックス卿も反省していたよ。残念ながらこの縁談は破談が決定したよ」
「そういう割には、残念そうに見えませんが?」
グレイフィアの言うとおり、サーゼクスは笑みを浮かべていた。
「まさかこちら側に『
「対の存在・・・『
「でも、彼なら大丈夫だろう・・・。多くの人間を見てきたが、彼のような人間は初めて見る。
彼は歴代最強の赤龍帝になるかもしれないな・・・」
子供のような笑みを浮かべながらそういうサーゼクスであるが、グレイフィアは首を振ってそれを否定する。
「いえ、歴代最強ではなく、歴代最高ですよ・・・。私はそう信じています。
彼ほど優しいく、強い者はそうはいない。ですが・・・・・・」
「どうしたんだい?」
「・・・彼が抱える絶望が、何時の日か彼を殺してしまうかもしれないことが不安ですね」
心配そうな表情を浮かべて、グレイフィアはグリフォンが去って行った冥界の空を見つめる。
その顔は子を思う母親のものであった。
・
・
・
・
顔に触れる冥界に流れる風と目の前に広がる景色を眺めていると、突然、頬に温かい感触を感じる。
「馬鹿ね・・・。私なんかのために、こんな事をして。冥界の悪魔を敵に回すかもしれないことをしたのよ」
リアスが翔の頬を触れているのだ。
彼女の暗い表情を浮かべている。
「なんかじゃないさ・・・。俺はあの夜に誓ったんだ。お前の笑顔を護ると」
「ッ!?////」
「だから――」
気にするな、とは続けられなかった。
何故なら、リアスの唇が、翔の唇を塞いでいるからだ。
「んっ・・・」
数秒のキス・・・。
翔は突然のことで、体を硬直させたままだ。
そんな翔を見て、リアスは顔を紅く染めながら言う。
「私のファーストキスよ。日本では、女の子が大切にするものよね?」
「ま、まぁそうだろうが・・・・・・何故俺に?」
「貴方がそれだけのことをしてくれたのよ」
まぁいいか・・・・・・。今回のお礼みたいなもんか・・・
曇りのない満面の笑みを浮かべるリアスを見ている翔も自然と微笑みを浮かべる。
今回は護れたよ・・・・・・祈
お前を護ることも救うことも出来なかった俺だが・・・こんな俺でも救える、護れるものが、まだたくさんある
俺はこれからも『全てを救い護る正義の味方』を目指すだろう・・・
そのために、どのような代償を払うことになろうと、俺は歩き続ける
―――それが俺の誓いだ
感想、意見受付中!
本当に戦闘描写は難しい!
何度書いても同じような文章になってしまうから大変でした。
多分、これからも戦闘描写の書き方は迷走するので、修正と加筆があると思います。
最後に見せた翔の一撃はBLEACHの一護の技を真似たものです。
まんま同じ名前では流石に芸がないかな、と思ったので変えさせていただきました。
あの技は一応、翔が前の世界でも使っていたという設定なので、
これからも使っていくつもりです。
そして最後のほうに起きたよく分からないライザーの変化・・・
自分でも書いてて何を書いているんだろうって思ったんですけど、
とりあえず、書けたのでそのまま投稿することに・・・・・・。
不評だったら、あの部分は書き直すつもりです。
すでに書き直せるように違う描写を考えていいますが、なかなかいいのが浮かばないんで
書き直すことになった場合は、更新が結構遅れるかもしれません。そこはご了承ください。
三章に入る前に何かしらの閑話を入れるかもしれませんので、不評じゃなくても、
三章に入るのは来月になるかも知れません。
そして、今さらプリズマイリヤにハマり始めているので、もしかしたらそっちに翔を突っ込んだのを書いてしまうかも・・・(あくまでも、もしかしたらなので期待はしないでください)
長々と後書きを書いてしまいましたが、
これからも地道に頑張っていくので応援よろしくお願いします。