ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~   作:satokun

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第17話 聖剣計画と教会からの訪問者

パンッ!

 

時刻は放課後。

休むことなく降り続ける雨とは違う音が部室に響く。

鋭く乾いた音・・・頬を叩かれた音だ。叩かれたのは祐斗であり、叩いたのはリアス。

 

「これで少しは眼が覚めたかしら?」

 

静かに、だが冷たく告げるリアス。

視線は鋭く、怒りを隠そうともしていない。

対して祐斗は何時もの爽やかな笑みではなく、不気味なほど無表情を浮かべ感情を感じさせず、赤くなった頬にも気にも留めずにいる。

部室には嫌な空気が蔓延しており、朱乃とアーシア、小猫は心配する表情を浮かべている。

唯一、この場で平然と過ごしているのは翔くらいだろう。

腕を組んで壁にもたれかかり、事の成り行きを眺めている。

 

こうなった原因は本日、駒王学園で行われた球技大会にある。

クラス対抗だけではなく、部活対抗の競技もあるため、リアスは球技大会が始まる1週間ほど前から悪魔の仕事を始める前に球技大会に向けての練習を開始した。どのような競技になるかは本番にならないとわからないため、1週間の内に様々な球技の練習を行ったのだが、丁度練習を始めた頃から祐斗の様子が可笑しくなったのだ。何をやっても上の空。練習や部活にも参加しているのだが、ただいるだけと言った具合だったのだ。最初は体調でも悪いのかとリアス達は心配したのだが、そういうわけでもなかった。

そして、球技大会本番も祐斗はほとんど動くこともなくただ立っているだけだったので、ついにリアスが我慢の限界を超え、祐斗を叱っているのだ。

 

「もういいですか? 大会も終わりました。球技の練習もしなくていいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらってもいいですよね?少し疲れたので。あと、昼間はどうにも調子が悪かったみたいです」

 

途端に祐斗は何時ものように笑みを浮かべて言う。

だが、その笑みは誰が見ても作り物だとわかるものだ。

祐斗は言うだけ言って、部室から出ていこうとするときに、今まで黙っていった翔がその口を開いた。

 

「・・・祐斗、お前はどうしたいんだ?」

 

静かに問いかける翔に祐斗は止まって翔へと振り返る。

祐斗の瞳には憎悪の炎が燃え上がっていた。

 

「僕は復讐の為に生きている。聖剣エクスカリバー・・・それを破壊するのが僕の生きる意味だ」

 

「聖剣計画、か・・・」

 

「そう、祐斗はその計画の生き残りなのよ」

 

悪魔の仕事も終わり、翔とリアス、アーシアの3人は家に帰って夕食を食べた後、リアスから祐斗の過去を聞いていた。

 

「数年前までキリスト教内で聖剣エクスカリバーが扱える者を人工的に育てる計画が存在したの」

 

「・・・・・・初めて知りました」

 

リアスの話を聞いて、教会にいたアーシアは信じられないといった表情を浮かべている。

 

人間が悪魔に最も有効なダメージを与えられる武器―――聖剣。

有名なのは、アーサー王が持っていた最強の聖剣、エクスカリバー。『決して折れない』という逸話を持つ不滅の聖剣、デュランダル。日本には神霊剣と称される日本神話の聖剣、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)が存在する。

 

そして、悪魔に絶対的な力を誇る聖剣を扱う者を人工的に造り出そうとしたのが、聖剣計画。

悪魔を悪とする教会にとっては究極の武器である聖剣であるが、その力は絶大故に使い手もそう易々とは現れない。そのため、教会は人工的に聖剣を使える者を生み出そうとした。聞こえはいいが、実際行われたのは残酷で非人道的なものであった。孤児の子供達を使って、行われたそれは結局失敗に終わった。そのため、計画を実行した者達は、被験者を・・・子供達を『不良品』として『処分』したのだ。

 

リアスから語られた聖剣計画の内容を知った翔は拳を白くなるほど強く握り締める。

湧き上がる怒気と殺気をさらに血が滲み出すほど拳を握り締めることで抑える。

 

「祐斗を含む被験者の多くは殺されたそうよ。ただ『聖剣に適応できなかった』という理由だけで、ね・・・」

 

悲しい表情を浮かべて言うリアス。

 

「・・・そ、そんな、主に仕える者がそのようなことをしていいはずがありません」

 

教会出身者であり、神を信じるアーシアにとっては、ショックな話だろう。

 

「私が祐斗を悪魔に転生させたとき、あの子は瀕死のなかでも強烈な復讐を誓っていたわ。

生まれた時から聖剣に狂わされた才能だったからこそ、悪魔としての生で有意義に使ってもらいたかった。祐斗の持つ剣の才能は、聖剣にこだわるには勿体ないものね。でも、あの子は忘れられなかった。聖剣を、聖剣に関わった者達を、教会の者達を・・・」

 

それは強迫概念に近いものだろう。

自分1人だけが、『生き残ってしまった』と心に刻まれてしまっている。

 

「兎に角、しばらくは見守るわ。今はぶり返した聖剣への想いで頭がいっぱいでしょうから。

普段のあの子に戻ってくれるといいのだけれど・・・」

 

そこで話は終わりとして、リアスとアーシアは部屋に戻り就寝した。

だが、翔は1人縁側で夜空に浮かぶ月を眺めながら思う。

 

「復讐か・・・。俺は別に復讐は否定しないし、する権利もない。

だけどな、復讐を終えたお前は何を目指すんだ? 復讐を終えて伽藍堂になってしまったその穴を何で埋めるんだ? それがないならお前はきっと何者にもなれない・・・って、俺が言えた事じゃないか」

 

言葉を言い終えてから翔は自嘲の笑みを浮かべる。

そして、夜空を浮かぶ月を眺めて呟く。

 

「ああ、憎いくらい綺麗な月だな・・・」

 

生徒会室。現在、翔がいる場所である。

リアスから聖剣計画の話を聞いた翌日、何時も通り授業を終え、部活を終えた翔は帰宅しようとしたところをリアスと朱乃に引き留められ、連れて行かれたのだ。

生徒会室には、翔とリアスに朱乃の他に、この部屋の主である生徒会長のソーナと彼女の後ろに控えるように《女王》の真羅椿姫がいる。

ソーナと対面に座るリアス。後ろには朱乃が控えており、翔は近くの壁に腕を組んで寄りかかる。

 

「それで話って何かしら?」

 

「明日、教会関係者が交渉のためにこの学園に来ます」

 

「「ッ!?」」

 

答えられた内容にリアスと朱乃が驚愕の表情を浮かべる。

それもそうだろう。悪魔の根城にわざわざ敵対する者達が来るのだから。

 

「・・・・・・それで何の用で来るの?」

 

真剣な表情で問いかけるリアスに、ソーナは静かに答える。

 

「わかりません。ただその者達は聖剣を所持しています。だから、気を付けてください」

 

随分とタイミングが悪いな。面倒なことにならなければいいが・・・・・・それは無理な話か

 

あまりのタイミングの悪さに思わず翔は溜め息を吐いてしまう。

 

時刻は放課後。授業を終えた生徒達は家に帰る者もいれば、部活に精を出す者もいる。

そして、オカルト研究部も何時も通り部活動を始めたかったのだが、そうはいかなかった。

部室には何時ものメンバー以外に白いローブを纏った者が2人いる。

リアスが座るソファーに対面するように座る2人。

眷属である朱乃とアーシア、小猫はリアスの後ろで控えており、翔と祐斗はそれぞれ違う位置で腕を組んで壁に寄りかかっている。翔はリアス達の近く、祐斗は誰からも離れた位置だ。

 

「この度は会談を受けていただき感謝する。私はゼノヴィア」

 

「紫藤イリナよ」

 

青髪に緑のメッシュが入った女性が口を開き、隣にいる栗毛の髪をツインテールにした女性もそれに続くように己の名を言う。

 

「・・・それで神の使徒で悪魔の敵である貴方達が何の用かしら? 態々、交渉を持ちかけたのだから、相当込みあった事情があるようね」

 

問いかけるリアスに、イリナが答える。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 

『ッ!?』

 

リアスと後ろに控えていた3人と祐斗が驚愕の表情を浮かべる。

壁に寄りかかっていた翔も僅かにだが驚愕の表情を浮かべる。だが、それはエクスカリバーが盗まれたことではなく、イリナの言葉にだ。

 

・・・まるでエクスカリバーが複数ある言い方だな

 

『ああ、相棒は知らないのか・・・。聖剣エクスカリバーはすでに存在しない。昔の大戦で折れたのだ。それを教会の最高位の錬金術師が折れたエクスカリバーを七つに分け再構築したのが現代に残っているエクスカリバーの姿だ』

 

折れた、だとッ!?

あの聖剣が―――彼女の剣が折れただと!?

 

『彼女? 誰のことを言っているのだ?』

 

ッ!?・・・・・・なんでもない

ただな、あの剣だけにはそれなりの思い入れがあるだけだ

 

エクスカリバーが折れたことに対して、怒気が溢れだしそうになるが、ドライグの言葉で頭が冷やされ、話の続きに耳を傾ける。

 

「今、教会側が持っている3本のエクスカリバーの内、2本を私達が所有している。

これがその一つ、破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)

 

「それでこれが擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)よ」

 

ゼノヴィアが抱えている布にまかれた長い物体を指し、イリナはローブから左腕をだし、腕に巻かれている紐を指さした。

それらを見た瞬間、祐斗の瞳に憎悪が浮かび上がる。

 

「私の持つ擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)は、こんな風にカタチを自由自在にできるから、持ち運びにすっごく便利なんだから。エクスカリバーはそれぞれ特殊な力を有しているの」

 

イリナは腕に巻かれた紐に手をかざすと、紐に意思があるかのように動き出し、腕から離れ形を変えていき、やがて紐だったそれは、一振りの刀へと姿を変えた。

イリナはそれを手に取りながら、自慢げに語る。

 

「・・・イリナ、悪魔にわざわざエクスカリバーの能力を喋る必要もないだろう?」

 

「あら、ゼノヴィア。いくら悪魔だからといっても信頼関係を築かなければこの場ではしょうがないでしょう?それに私の剣の能力を知られたからといって、この悪魔の皆さんに後れをとるなんてことはないわ」

 

イリナの見下した言葉を受け、リアスの米神に青筋が現れる。

後ろに控えている朱乃と小猫も顔には出さないが、明らかに苛立ちの雰囲気である。

祐斗は相変わらずゼノヴィアとイリナが見せたエクスカリバーを憎悪の籠った眼で睨みつける。

 

破壊と擬態か・・・

能力の力は言葉通りなのだろうが、あまりにも脆いな・・・

七つに分けた影響で、あの剣本来の力の殆どが発揮できていない

俺の知っている約束された勝利の剣(エクスカリバー)とは雲泥・・・いや、それ以上の差だな

折れた時点ですでにエクスカリバーと呼ばれる存在ではないな・・・

あの聖剣は人ではなく星に鍛えられた神造兵装であり、人々の願いが星の内部で結晶・精製された『最強の幻想(ラスト・ファンタズム)』。聖剣というカテゴリーの中で頂点に位置し、『空想の身でありながら最強』とも称される『宝具』だ・・・

 

『確かにそうかもしれないな・・・。だが、教会の奴らにはエクスカリバーと言う名で残す必要があったのだろう。あれは悪魔に対して絶大な力を発揮するだけではなく、信者にとっては重要な物でもあるからな』

 

内心でドライグと話している間にもリアスとゼノヴィア、イリナの会談は続いている。

 

「それで奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国にある地方都市に関係あるのかしら?」

 

イリナの物言いに怒りを覚えるリアスだが、それを抑え込み毅然とした態度で話の続けを促す。

 

「簡単な話だ。奪った者達が日本に来たというだけだ」

 

「私の縄張りは出来事が豊富ね。それでエクスカリバーを奪ったのは?」

 

「奪ったのは『神の子を見張る者(グリゴリ)』だよ」

 

ゼノヴィアの言葉に、驚きを隠せないリアス。それは後ろにいた朱乃達も同じであった。

 

神の子を見張る者(グリゴリ)

悪魔、天使と並ぶ三大陣営の一角である堕天使の組織。多くの堕天使はこの組織に入っている。

 

「堕天使の組織に聖剣を奪われたの? 失態どころではないわね。でも、確かに奪うとしたら堕天使ぐらいなものかしら。悪魔の上層部は聖剣に関心はないもの。それに悪魔にとって危険な存在だからね」

 

「奪った主な連中は把握している。堕天使幹部―――コカビエルだ」

 

「コカビエルですって!?・・・・・・古の戦いから生き残る堕天使の幹部。

聖書にも記された者の名前が出されるとはね」

 

「先日からこの町に神父―――エクソシストを秘密裏に潜り込ませていたんだが、悉く始末されている」

 

それはすでにリアスとソーナも把握している。

 

「私達の交渉・・・いや、注文とは私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣食う悪魔が一切介入しないこと―――つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いにきた」

 

ゼノヴィアの物言いにリアスの眉が吊り上がり、今まで抑えていた怒気が放たれる。

 

「随分な言い方ね。それは牽制かしら? もしかして、私達がその堕天使と関わりを持つかもしれないと思っているの? ―――手を組んで聖剣をどうにかするとでも?」

 

「本部は可能性がないわけではないと思っているのでね。上は悪魔と堕天使を信用していない。

聖剣を神側から取り払うことができれば、悪魔も万々歳だろう? 堕天使どもと同様に利益がある。それゆえ、手を組んでもおかしくない。だから、先に牽制球を放つ。『堕天使コカビエルと手を組めば、我々は貴方達を完全に消滅させる。例え、そちらが魔王の妹でもだよ』と私達の上司より・・・」

 

ゼノヴィアはリアスの睨みに臆することなく淡々と用件を続ける。

 

「・・・・・・私が魔王の妹だと知っているということは、貴方達も相当上に通じている者達のようね。ならば、言わせてもらうわ。私は堕天使などと手を組まない、絶対によ。グレモリーの名にかけて。魔王の顔に泥を塗るような真似はしない」

 

リアスの言葉を受け、ゼノヴィアは不敵な笑みを浮かべて言う。

 

「それが聞けただけでもいいさ。一応、この町にコカビエルがエクスカリバーを3本持って潜んでいることをそちらに伝えておかねば何か起こったときに、教会本部が様々なものに恨まれる。

協力は仰がない。そちらも神側と一時期的にでも手を組んだら、各勢力に影響を与えるだろう。

特に魔王の妹ならば尚更だよ」

 

随分と強気で言うゼノヴィアに翔は視線を向けるが、すぐに外す。

 

「私達が今回の事に介入しなければ、貴方達は私達に関わろうとはしないってことでいいのかしら?」

 

「ああ、神に誓って約束しよう」

 

「・・・了解したわ」

 

緊張していた空気が霧散する。

だが、1人だけは違った。祐斗は未だに殺意と憎悪の籠った視線をゼノヴィア達に向けている。

正確に言うならば、彼女達が持っている聖剣にだ。

 

「我々はこの辺で帰るとしよう。気遣いも無用だ」

 

ゼノヴィアに続くようにイリナも立ち上がり、部室から出ようする。

だが、そこで帰ればいいものを彼女らは、愚かにも龍の逆鱗に触れる。

ゼノヴィアは立ち止まりある人物に視線を向けた―――アーシアだ。

 

「最初見た時にもしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか? まさか、この地で会おうとは・・・」

 

ゼノヴィアから放たれた『魔女』という言葉に、ビクッ!?とアーシアは体を震わせる。

その瞬間、翔が僅かにゼノヴィアとイリナに鋭い視線を向ける。

だが、それに気づくことなくゼノヴィアとイリナはアーシアに近づく。

 

「貴方が一時期内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん? 悪魔や堕天使をも癒す能力を持っていたらしいわね? 追放され、どこかに流れたと聞いていたけど、悪魔になっているとは思わなかったわ」

 

「あ、あの・・・私は・・・・・・」

 

「大丈夫よ。ここで見たことは上には伝えないから安心して。『聖女』アーシアの周囲にいた方々に今の貴方の状況を話したら、ショックを受けるでしょうからね」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

イリナの言葉にアーシアは複雑な表情を浮かべる。

 

「しかし、悪魔か・・・『聖女』と呼ばれていた者。堕ちるところまで堕ちるものだな。まだ我らの神を信じているか?」

 

「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰しているはずはないでしょう?」

 

「いや、その子から信仰の匂い―――香りがする。抽象的な言い方かもしれないが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。それと、同じものがその子から伝わってくるんだよ」

 

ゼノヴィアが目を細めながら言うと、イリナが興味深そうにアーシアを見つめる。

 

「そうなの? アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」

 

「・・・捨てきれないだけです。ずっと、信じてきたのですから」

 

悲しげな表情で言うアーシアにゼノヴィアは布で包まれた聖剣―――破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)の切っ先を向ける。

 

「そうか。それならば、今すぐ斬られるといい。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

 

「ッ!? 何を勝手な事を言っているのかしら? 昔はどうであれ、今のアーシアは私の可愛い眷属よ! 貴方達が関与することではないわ!」

 

リアスはアーシアを庇うように立ち、眉を吊り上げながら鋭くゼノヴィアを睨みつける。

朱乃と小猫、そして復讐に燃えていた祐斗も、教会側の身勝手な考えに怒りの表情を向ける。

 

だが、リアス達は失念していた。

 

この場で誰が一番怒りに満ちているかと、怒らせてはならない存在に手を出したのかと・・・。

聖剣に対する憎悪と殺意、それに大切な仲間であるアーシアを嘲られたことによる怒りで祐斗が

ゼノヴィアとイリナに飛び掛かろうとした瞬間―――

 

「ほう・・・ならば、神の意志を理解してないお前らはどれほど罪深いのだろうな」

 

静かに、だが圧倒的な威圧を放つ声が部屋に響き、この空間を支配する。

声の主は今まで壁に寄りかかて事の成り行きを見ていた翔だ。

組まれた腕を解き、ゆっくりとゼノヴィアとイリナに対峙するように近づく。

その龍のように鋭い眼は2人の体を硬直させる。

 

「ッ!? わっ私達が神の意志を理解していないとはどういうことだ!?」

 

翔から放たれる威圧に気圧されながらもゼノヴィアは虚勢を張って言い返す。

 

「悪魔を癒すことが出来るアーシアを『魔女』だと言うのなら、神もまた『魔女』と似たような・・・いや、それ以上の存在かもしれんな」

 

「きっ貴様は神を冒涜するのか!?」

 

翔の言葉に激昂するゼノヴィア。

隣にいるイリナも親の仇を見るような視線を翔に向ける。

教会にとって神とは絶対的な存在だ。その存在を貶されたのだ怒りを見せて当然だろう。

 

「・・・本当に貴様ら宗教の人間は畜生と同じだな。自身で考えることを止め、神と言う名の虚像に縋る・・・。まず考えてみろ、神器を創ったのは誰だ? 他でもない貴様ら主と仰ぐ『聖書の神』だ。ならば、神器の力は神が決めたもの・・・・・・アーシアはただ神器の力を使っただけに過ぎない」

 

『ッ!?』

 

ゼノヴィアとイリナの2人だけではなく、この場にいた全員が翔の言葉に驚愕の表情を浮かべる。

だが、よくよく考えれば翔の言葉は正しい。

 

「だっだが、異端の神器も存在する!」

 

「そもそも、異端の神器と言われること自体が間違いではないのか?

亜種の禁手に目覚めたものなら話は別だが、神器は『聖書の神』自身が創ったものだ。

ならば何故、わざわざ自身の意志に背くような異端と呼ばれる神器を創りだす必要がある?」

 

翔がドライグやリアス達から神器について話を聞いていて、疑問に感じたことだ。

おそらくそれは教会は話の都合のいい解釈によって生まれたものであろう。

 

「傍から見れば、貴様ら教会の者は神と言う名の免罪符を利用し、好き勝手やっているようにしか見えないのだよ。自分勝手な思想を他者へと押し付け、それを受け入れないなら容赦なく斬り捨てる」

 

「黙れ!! 我々を侮辱するな!!」

 

「1人の少女を勝手に祀り上げ孤独にするだけでは飽き足らず、求める存在と違ったから『魔女』として追放とは・・・・・・貴様らは随分と身勝手な存在だな」

 

「黙れと言っている! 『聖女』は本来、神の愛だけで生きていける! 他者に友情や愛情を求める時点で、彼女には『聖女』の資格はなかっただけだ! 神は愛してくださっていた! 救いが差し伸べられなかったのは、彼女自身に信仰が足りないか、偽りだったのだかのどちらかだ!」

 

自分達は悪くはない、悪いのはアーシア。

遠まわしに神に見捨てられたとしたのならば、それはアーシアの自業自得と言いっているのだ。

ゼノヴィアは幼子のように自分の思い通りにいかないことに対して喚き散らす。

 

「―――黙れ」

 

一瞬、時が止まったかのような錯覚に陥る。

呼吸が止まり全身が震え、まともに立つことも出来なくなり、ゼノヴィアとイリナは膝をつき、過呼吸のような状態になるが、放たれた殺気が一瞬だったため、2人はすぐに落ち着きを取り戻し始める。

 

「ハァ・・・ハァ・・・きっ貴様ッ!!」

 

完全落ち着きと取り戻したゼノヴィアは翔を強く睨みつける。

 

「用はすんだのだろ? さっさと帰えりたまえ、これ以上いても互いに気分のいいものではない」

 

「侮辱するのも大概にしろ!」

 

犬をあしらうような態度で言う翔に、ゼノヴィアは怒りによって顔を真っ赤にさせながら言い放つ。

 

「相手は堕天使の幹部のだろ? ならば、こんなところで足踏みしている場合ではないのでは? さっさと教会のくだらん命令でも遂行すればいいと言っているのだ」

 

やれやれ、と言った風に肩を竦めて言う。

普段の翔からは考えられないほどの冷たい声色で放たれる皮肉の言葉。。

 

「くだらない、だと・・・ッ!?」

 

「・・・いい加減、調子に乗るのもよくないよ」

 

怒りに打ち震えるゼノヴィア。

そして、翔の言葉を受け、冷たい雰囲気を放ちながらイリナが言う。

 

「悪魔に組する人間が・・・・・・すぐに断罪してくれるッ!!」

 

ゼノヴィアは手に持つ破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)の切っ先を翔へと向ける。まかれている布の隙間からはゼノヴィアの怒りに反応するように聖剣のオーラが溢れだしている。

流石にそろそろ止めようとリアスが口を開こうとした時―――

 

「いいね・・・僕も混ぜてもらうね」

 

今まで傍観していた祐斗が介入してきた。

 

「君は・・・誰だ?」

 

「君達の先輩だよ―――失敗作だけどね」

 

今の祐斗の心を表しているかのような、真っ黒に染まった剣を創りだす祐斗。

その瞳には抑えきれない憎悪と殺意が渦巻いている。

 

「どれだけこの時を待ったことか・・・・・・ついに機会が訪れたんだ―――エクスカリバーを壊す機会が・・・」

 

「祐斗・・・・・・」

 

黒い感情に染められた顔を嬉しそうにしながら呟く祐斗に、リアスは悲しみと無力さが籠った声を漏らす。

 

場所は変わり、翔は球技大会の練習をしていた場所にいる。

少し離れたところに祐斗。さらに翔と祐斗に対峙するようにイリナとゼノヴィアがいる。

そこへ翔達の周辺を丸ごと囲むように結界が展開されていた。結界内部の端にはリアス達が

見守るようにいる。

日は沈み始めていた。部活を終える時刻を過ぎているので生徒の殆どが帰宅しているのだが、

まだいる可能性があるため、結界と共にの周辺には阻害認識の術も展開されている。

 

「では始めようか」

 

イリナとゼノヴィアは白いローブを脱ぎ、黒い戦闘服姿となっており、動きやすい格好だ。

ゼノヴィアは布を取り払い破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)を解き放ち、イリナも紐状にしていた擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を日本刀にへと変化させている。

何故こうなったかと言うと、祐斗が介入してきて話の雲行きが怪しくなったところで、ゼノヴィアが名案を浮かんだ、と言った風な表情で提案してきたのだ。

 

『リアス・グレモリーの眷属の力・・・試してみるのも面白い。()()とやらの力も気になる。

そしてなにより、主を冒涜した者を断罪できるしな』

 

明らかに最後の言葉は翔に向けたものだろう。

翔自身、アーシアを侮辱された怒りで色々と言ってしまった事に後悔はないが、何故戦う展開になったのかと疑問を抱けずにはいられないが、もうすでに戦うことは免れないので諦めている。

それに―――

 

教会にいる聖剣使いの実力も気になるからな

見たところ、そこまで逸脱した強さではないが・・・聖剣の所持が認められているのだから、ある程度の実力があるのだろうな・・・・・・

 

翔は冷静に2人の強さを測る。

悪魔の眷属にいる以上、これからもしかした教会側の人間と戦闘になることもあり得る。

その際に相手の情報があるのとないのでは、だいぶ変わってくる。

 

「・・・笑っているのか?」

 

祐斗は笑みは薄ら寒くなるほどの不気味な笑いだ。

いや、正しくは狂喜の笑みと言っていいほどだ。

 

「倒したくて、壊したくて仕方なかったものが目の前に現れたんだ。嬉しくてさ・・・・・・悪魔やドラゴンの傍に居れば力が集まるとは聞いていたけど、こんなにも早く巡り合えるだなんてね。翔くんには感謝すべきなのかな?」

 

『ドラゴンはありとあらゆる力に惹かれる』

 

以前、ドライグが翔に言った言葉だ。

その強さ故に、ドラゴンは様々な力に少なからず影響を与え、惹き寄せてしまう。

 

「・・・魔剣創造(ソード・バース)。神器所有者は頭の中で思い描いた魔剣を創りだすことが可能。

魔剣系神器のなかでも特異なもの。『聖剣計画』の被験者で処分を免れた者がいるかもしれないと聞いていたが・・・・・・それは君か?」

 

問いに答えず、祐斗ただ殺気を向けるだけ・・・。

祐斗とゼノヴィアの様子を見ていた翔は僅かに目を細める。

 

今の祐斗だと、勝つのは無理だな・・・

技術面ではおそらく祐斗のほうが上だが、力ではゼノヴィアの方が上の可能性が高い・・・なんて言っても破壊の名がつけられた聖剣だ、力が強いのは容易に予想できる・・・

それに何かしらの切り札を持っているだろう・・・・・・でもなければ、このような無謀な任務を年端もいかない小娘らに任せるわけがない

 

内心で色々と考えていると―――

 

「悪魔に魅入られた哀れな貴方を断罪してあげるわ! このエクスカリバーで貴方の罪を裁いてあげる!ああ、どうか主よ。この罪深き者にもお慈悲を与えたまえ、アーメン!」

 

イリナが声を上げて斬りかかってきた。

陶酔、狂信と言っていいほど彼女の信仰心は凄まじい。いや、イリナに限った話ではない。

教会の殆どは彼女と同じと言っていいほど、狂信者ばかりだろう。

故に、先ほど部室で翔が言っていたことを認めることをしない、考えることもしない。

翔は溜め息を吐いた後、とりあえず神器である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を顕現させる。

別に神器を使う必要などないのだが、戦いが始まる前にリアスに何度も聖剣には気をつけろ、と念を押されたからだ。

 

「それは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)か? ・・・こんな極東の地で赤い龍の帝王の力を宿した者に出会うなんて」

 

「・・・・・・神滅具」

 

翔が顕現させた赤い籠手を見てゼノヴィアとイリナはどちらも顔を顰める。

 

有名人だな、ドライグ

 

『それはそうだろうな。神をも殺す神器・・・教会の者が知らないわけあるまい』

 

「翔くんに気を取られていると、怪我では済まなくなるよ!」

 

翔の神器を見ていたゼノヴィアに祐斗が斬りかかる。

だが、その程度の不意打ちではやられる筈もなく、容易に破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)を振り上げ、受け止める。

祐斗の一撃を受け止めたゼノヴィアは不敵な笑みを見せた。

 

魔剣創造(ソード・バース)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)さらにアーシア・アルジェントが持つ聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)。我々にとって異端視されている神器ばかりだ、悪魔になったのも必然と言えるのかもしれないな」

 

「僕の力は無念のなかで殺されていった同志の恨みが生み出したものでもある!

この力でエクスカリバーを持つ者を打ち倒し、そのエクスカリバーを叩き折る!」

 

魔剣が破壊される度に新たに魔剣を創りだし、それで斬りかかりながら叫ぶ。

祐斗は自分の人生が聖剣によって狂わされたことに対する復讐だけではなく、一緒にいた者達の中で自分だけが生き残ってしまった・・・故に自分が彼らの無念を晴らさなければならない、という強迫概念に突き動かされている。

 

俺が言えた義理ではないか、俺自身もきっとそうだろうからな・・・

 

思い出すは遠き昔の誓い。

何時何処で誰に誓ったのかすらも分からない―――(ちか)い。

正義の味方(御剣翔)』という存在の原点とも呼べるもの・・・。

 

「ハァアアアア!!」

 

「ッ!?」

 

聞こえてきた声に現実に戻される翔。

目の前にイリナが持つ擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の刀身が迫ってきていた。

だが慌てることなく、翔は余裕をもって、迫りくるそれを躱す。

すると―――

 

ドォォォォォオオオオオオンッッ!!

 

突然、足場が激しく揺れて、地響きが発生する。

目の前にいるイリナは、突然襲い掛かってきた振動に堪らず尻餅してしまう。

翔は発信源に視線を向け―――

 

「何をやっているんだ・・・」

 

呆れた声を漏らしてしまう。

視線の先にはゼノヴィアが破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)を地面に突き立てており、それを中心に半径10メートルほどのクレーターが出来ていた。

 

「これが私のエクスカリバーだ。有象無象の全てを破壊する。破壊の聖剣の名は伊達じゃない」

 

自慢げに語るゼノヴィアであるが、本物の威力を知っている翔からすれば雀の涙程度にしか感じられない。だが、それでも今の祐斗の魔剣では、破壊するのは無理だろう。

 

「・・・真のエクスカリバーでなくてもこの破壊力。七本全部消滅させるのは修羅の道か」

 

衝撃の余波で吹き飛ばされた祐斗は、エクスカリバーの威力を見て戦慄した表情を浮かべるが、

すぐに憎悪の籠った瞳でエクスカリバーを睨む。憎悪は増すばかりだ。

 

「もう! ゼノヴィアったら、突然地面を壊すのだもの! 土だらけだわ!」

 

翔が祐斗に視線を向けると、声が聞こえ、そちらに視線を向けると、先ほどの衝撃で尻餅ついていたイリナが立ち上がり、体についた土を手で払っていた。

 

「でも、そろそろ決めちゃいましょうか! 神器の力を早く使わないと負けちゃうよ」

 

イリナは手に持つ擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を構え直して言う。どうやら自身が負けることなど考えていないようだ。

彼女の中では、悪魔に組する翔に神の使徒である自身が負ける要素はないと思っているのだ。仮に負ける可能性があるとするのならば、それは翔の持つ神滅具の一つ、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使われた時のみ、と考えているのだろう。正直言って、教会のレベルを疑いたくなる。部室で翔の殺気と威圧を受けてたというにもかかわらず、力の差を理解していないのだ。

すると―――

 

「はぁぁぁぁああああっ!」

 

ゼノヴィアの気合の籠った声が響く。

 

「その聖剣の破壊力と僕の魔剣の破壊力! どちらが上か勝負だ!」

 

「戯けが・・・」

 

翔は静かに呟く。

祐斗の手に現れたのは巨大な剣・・・禍々しいオーラを放つ、それを祐斗は両手で構える。

自身の身長を遥かに超える二メートル以上の刀身。破壊力はあるだろうが、この時点で祐斗の負けが決定した。ゼノヴィアも理解をしているようで、落胆したように嘆息する。

 

「残念だ・・・選択を間違えたな」

 

祐斗は巨大な魔剣を、ゼノヴィアは破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)を大きく振りかぶり―――衝突させる。

激しい金属音が響き、祐斗の持つ巨大な魔剣の刀身は粉々に砕け散る。

対するゼノヴィアのエクスカリバーは一切欠けることもない。

 

「君の武器は多彩な魔剣とその俊足だ。巨大な剣を持つには筋力不足であり、自慢の動きを封じることにもなる。破壊力を求める? 君の特性上、それは不要なものだろう? そんなこともわからないのか?」

 

「かはっ!?」

 

呆然とする祐斗に、ゼノヴィアは腹部に聖剣の柄頭を叩きつかせる。

柄頭だからと言っても、それは聖剣によるものだ。悪魔の身である祐斗にとっては、それだけでも大きなダメージとなってしまう。

何時もの祐斗ならば、変わった結果になったのかもしれないが、今の彼には聖剣を破壊するという事以外頭にはない。

自身から離れていくゼノヴィアに祐斗は呻きながらも必死に手を伸ばすが、意識が途切れ、伸ばした手は力なく地面に落ちる。

慌てて、アーシアが駆け寄り聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の力で治療する。

 

「こちらもいい加減幕引きと行くか・・・こんな茶番を長引かせる意味もないだろうからな」

 

祐斗達が終わったのを確認した翔はそう呟くと、イリナを見据える。

視線の先には、翔の言葉に苛立ちを浮かべるイリナがおり、真正面から突貫してきた。

聖剣を振りかぶり、一閃してくる。

聖剣の放つオーラは悪魔には毒だが、人間の身である翔にとってはそれほど脅威ではない。

だが、それでも受ければただでは済まないのだが―――

 

「うそ・・・」

 

呆然とする声を漏らすイリナ。

その表情は信じられないと言ったものだ。

何故なら―――

 

「随分と扱いが下手だな」

 

翔は右手の人差し指と中指の2本の指で白刃取りの要領で刀身を挟むように受け止めたのだ。

さらに驚愕するのならば、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の聖なるオーラがなりを潜めているのだ。

翔を傷つけないように・・・まるで翔を主人と認めているかのようだ。

 

呆然とするイリナに、翔は一気に懐へと肉迫し、その至近距離から寸勁を叩きこむ。

流石に手合わせなので手加減をされたものだが、それでも内臓にダメージは通り、イリナはその場で立てなくなる。

翔は手に持つ聖剣を回転させ、刀身からちゃんと柄を握り、縦に振り降ろし、横に薙ぎ払うように振るう。

 

「う、嘘よ・・・適性のない者が聖剣を掴めるなんて・・・」

 

信じられないものを見る目で翔を見つめるイリナ。

それは離れた場所で観戦していたリアス達も同じことだ。

 

・・・懐かし感覚だ

あいつを鮮明に思い出すな・・・・・・姿形は変わり七つに分けられても、この剣はやはり彼女のものだ

 

周りの様子など気にも留めず、翔は手に持つ剣に懐かしむような目を向けている。

すると―――

 

「驚いたな・・・まさかこのような場所で同じ天然の適正者に出会うとは・・・・・・君も状況が違ったら私と同じになっていたのかもしれないな」

 

先ほどまで祐斗と勝負をしていたゼノヴィアが翔に近づく。

その手には、まだ破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)が握られていた。

 

「・・・・・・互いに相手との勝負は終わったんだ。さっさとその剣もしまったらどうだ」

 

近づいてきたゼノヴィアには一切視線を向けずに淡々と告げる。

 

「そうはいかない。確かに手合わせは十分だが、勝負は互いに一勝一敗・・・・・・勝ち残った者同士で決着をつけるべきだと思う。それに、聖剣を扱う君と戦ってみたくなった」

 

不敵な笑みを浮かべるゼノヴィア。

どうやら先ほど翔が軽く聖剣を振るったところを見ていたらしい。

 

「やる必要性は感じられないんだが?」

 

「君になくとも私にはある。先ほど君は神を冒涜したのだ、このエクスカリバーで罪を裁いてやる。さぁ、その擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)で存分にやりあおう!」

 

笑みを浮かべながら聖剣を構えるゼノヴィア。

それを見て、説得は無駄だな・・・、と溜め息を漏らした。

 

「すまないが少し我慢してくれ」

 

そう言って、手に持つ聖剣を地面に突き立ててから痛みで立てないイリナの肩と膝裏を両手で持つように抱きあげる。

 

「ちょ、ちょっと・・・///」

 

「動くな。手を抜いたが内臓にはダメージがいっている」

 

根っからのお人好しのため、痛みで立てないイリナをリアス達とは離れた端に連れて行く。

突然のことで呆然としたイリナであったが、すぐに自身の現状の状態を把握し、顔を紅潮させながら必死に翔の手から逃れようとするが、先ほどのダメージの影響で思うように体が動かない。

 

「アーシア、悪いが彼女も治療してやってくれ」

 

「は、はい!」

 

戸惑いながらもアーシアはイリナに近づき、腹部に癒しのオーラを放つ。

祐斗の治療はすでに終えていたが、まだ祐斗の意識は戻っていないようだ。

イリナをアーシアに任せ、翔は聖剣を突き刺した場所まで戻った。

 

「大丈夫だ。彼女には危害を加える気はないさ、ただの治療だ。では―――」

 

―――やるとするか

 

擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を手に取り、切っ先をゼノヴィアへと向け静かに告げる。

上げた切っ先を地面に触れる寸前まで下ろし、余計な力入れずに自然体のままで立つ。

無防備な状態・・・だというのに対峙するゼノヴィアは聖剣を構えたまま動けずにいた。

 

「(・・・隙がない)」

 

鋭い視線で持って翔を睨みつける。

一見隙が多そうな状態なのに、今の翔に隙は全くない。そのため、攻めあぐねている。

 

「どうした? さっきまでの威勢はどうした?」

 

挑発するように言う翔だが、それでもゼノヴィアは動かない。いや、動けない。

だが―――

 

「(隙がないのならば作ればいい!)ハァアアアアア!!」

 

気合いと共に翔に肉迫してくるゼノヴィア。

振り上げられた聖剣は破壊の名を冠する破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)

その一撃は七つに分けられたエクスカリバーの中で最強と言っていいものだ。

対して、翔の持つのは擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)。同じエクスカリバーでも真正面から受け止めるのは愚策だ。

だから―――

 

「力馬鹿のようだな・・・」

 

「なっ何だとッ!?」

 

―――受け流す。

日本の剣である刀は、西洋の剣とは違い、『斬る』ことに特化した剣だ。

そのため刀身は薄く鋭いものとなっており、相手の攻撃を『受ける』のではなく反っている刀身でもって『受け流す』のだ。

 

「疾ッ!」

 

受け流され体勢を崩したゼノヴィアに、翔は彼女が持つ聖剣の鍔に蹴りを放ち吹き飛ばす。

 

「クッ!?」

 

吹き飛ばされたゼノヴィアは宙で体勢を整え無事に着地するが、その表情は怒気を浮かべている。

 

「何故、わざわざ鍔に蹴りを入れた。君ほどの実力者ならあのタイミングで私を気絶させることも容易だろう」

 

「これはあくまでも手合わせだ。それにこれで結果は分かっただろ? もう終わりだ」

 

そう言って、手に持つ聖剣を地面に突き刺し、その場を去ろうとする翔だが相手はそうはいかなかった。

唯でさえ、釣り気味の鋭い眼つきをさらに鋭くさせて、ゼノヴィアは翔を睨む。

手に持つ聖剣を下ろすことはせずに、むしろより一層聖剣のオーラを迸らせる。

 

「剣を拾え、勝負はまだついていない」

 

「ついたさ。それはお前自身がよく分かっているはずだ」

 

「ッ!?・・・拾わないのならば、そのまま斬りかかる!」

 

翔の指摘に言葉を詰まらせて悔しそうな表情を浮かべたゼノヴィアだが、すぐに鋭い視線を向けながら言う。

 

「ゼノヴィア! 勝負はもう着いたわ! 今の私達じゃ、いくら挑んでも彼には負けるだけだわ!」

 

「まだ負けてない! あそこまで言われたんだ、今さら退けない! ここで退いたら聖剣使いの名が泣く!」

 

イリナの制止の言葉を振り払って、ゼノヴィアは聖剣の力を最大限に高めて、翔に突貫してきた。

やれやれ・・・、と声を漏らした翔は突き刺した聖剣を抜き放つ。

ゼノヴィアは翔に迫った瞬間、飛び上がり、聖剣を上段に構えてから、全力の一撃を振り下ろす。

流石にこの一撃は受け流すのは無理だろう、と誰もが思った。

 

だが、その予想は裏切られた。

 

翔は腰を落とし、弓の弦を引き絞るように刀を持つ右手は後ろに引いて、左手は狙いを定めるかのように突きだされた切っ先に添えられてる。狙い―――つまり、迫りくる破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)だ。

 

「往くぞ」

 

翔の言葉に応えるように、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の切っ先に聖なるオーラが集中する。

 

「―――牙突・零式」

 

迫りくる聖剣の刀身に向けて、上半身のバネを最大限に利用した平刺突(ひらづき)を撃つ。

 

ドォンッ!

 

まるでライフルを撃ったような轟音が響き、空気が振動する。

そして、ゼノヴィアの聖剣と翔の聖剣が衝突しあった瞬間、あたり一帯に閃光が奔る。

観戦していたリアス達は突然襲い掛かる光で見えなくなるが、数秒経つと視力が回復しだす。

そしてどうなったのか視線を向けると、そこに右手に持つ刀を突きだしたままの姿勢の翔がいた。

対してゼノヴィアは離れた場所で倒れていた。

 

―――勝ったのは、翔だ。

 

普通ならば力勝負において、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)に勝つことなどはないのだが、今回は使い手の力量差で決まったのだ。

聖剣のオーラを無駄なく一点に集め、卓越した技を以て放たれた一撃はゼノヴィアの力任せの一撃を容易に上回ったのだ。

翔は残心を行い、吹き飛んだゼノヴィアを見る。

視線の先には、ゆっくりとした動作で片膝をつき、荒い呼吸を繰り返すゼノヴィアがいた。

彼女の近くには破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)が地面に突き刺さっている。

 

破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)が力で負けるなんて・・・」

 

荒い呼吸を繰り返す中で、ゼノヴィアは信じられないと言った表情を浮かべて呟く。

だが、それは彼女に近づいた翔が斬り捨てる。

 

「それはお前がその聖剣の力を十全に使いこなせていないからだ。お前の性格と合わさって力任せでもある程度は扱えているが、それだけだ。どうせ、切り札も使いこなせていないのだろ?」

 

「ッ!? なっ何故それを!?」

 

翔の言葉に驚愕の表情を浮かべるゼノヴィア。

 

「どうやら当たりのようだな。何、簡単な推理だ。聖剣を奪ったのは堕天使幹部・・・いくら聖剣使いと言っても、年端もいかない小娘2人だけ、何の切り札もなしに挑むわけがない。ならば、どちらか片方、もしくは両方にそれなりの切り札があるはずだ。そして、お前は先ほど俺に『同じ天然の適正者に出会うとは・・・』と言っていた・・・。つまり、お前は生まれた時からの聖剣使い、それで紫藤イリナは何かしらの儀式によって生まれた後天的な聖剣使い、と考えられる。天然と人工的な聖剣使いを比べた場合、天然の方に何かしらの切り札があると考えるのが自然なのでは? 例えば、もう1本の聖剣とかな?」

 

「ッ!?」

 

「図星だな・・・まぁそれに関してはどうでもいい。それだけで堕天使幹部を相手にするのは無理だと思うがな、いくら使う武具が強力でも使う者が弱ければ話にならない」

 

「きっ貴様ぁ・・・」

 

悔しそうに睨むゼノヴィアだが、言い返さない。いや、言い返せないのだ。

闘って分かる圧倒的な力の差。そして、聖剣使いの自分達より聖剣の力を使いこなせている翔に彼女らは反論することはできない。

睨みつけてくるゼノヴィアを無視し、翔はアーシアに声をかける。

 

「アーシア、続けて悪いが、こいつも治療してやってくれ。加減はしたんだが、思ったよりも威力が強かったようだ」

 

「は、はい! い、今すぐ治療します!」

 

返事をしたアーシアは未だに立てないゼノヴィアに何の躊躇もなく近づき、両手から緑色の癒しのオーラを彼女に放つ。

それを信じられないものを見るかのような目で見つめるゼノヴィア。

 

「な、何故、私を・・・?」

 

「教会にいた頃から誰かを癒すことが私にこの力を授けてくれた主の意志であり、私の使命であると信じています。でも、今はそれだけじゃありません。私自身の意志で誰かを癒したいと思っています」

 

アーシアは笑顔を浮かべて言うが、その瞳には強い意志が窺える。

それを見て、ゼノヴィアは眩しいものを見るような表情を浮かべる。

 

「・・・・・・アーシア・アルジェント、数々の非礼を詫びおう。すまなかった」

 

治療を終えたゼノヴィアはアーシアに頭を下げて、謝罪を述べる。

最初こそ驚いた表情を浮かべたアーシアだが、すぐに笑みを浮かべて優しく頷く。

その光景を翔は微笑みながら見つめる。

 

『アーシア嬢ほど優しい者はこれまで見たことがない』

 

ああ、そうだな・・・

彼女の優しさは暖かい・・・

 

『まぁ相棒もかなりのお人好しだがな』

 

俺のはただの偽善さ

アーシアほど綺麗なものではない

 

そう言って、翔はイリナに近づき、彼女の目の前に擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を突きたてる。

 

「借りてたのを返すぞ・・・」

 

「は、はい・・・」

 

呆然とした様子で頷くイリナ。

怪訝に思う翔だが、気にするほどでもないかと思い、気にせずにその場から立ち去る。

立ち去る際に、もう一度、聖剣の柄を撫でるように触れる。

その時、僅かに聖剣が輝いたように感じられた。

 

それからイリナは擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を手に取り、紐状に戻し腕に巻く。

治療を終えたゼノヴィアも再び、破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)を布で包み、背負う。

 

「それでは先の件、よろしく頼むよ。リアス・グレモリー」

 

「ええ、でも本当に貴方達2人だけで堕天使の幹部に挑むつもり? 死ぬわよ」

 

「聖剣を堕天使に利用されるくらいなら、この身と引き換えにしてでも消滅させる」

 

「覚悟の上よ」

 

リアスの言葉にゼノヴィアとイリナは躊躇いなく答える。

その声と瞳には強い意志が感じられる。

2人は、立ち去ろうとするが、ゼノヴィアが途中で立ち止まり翔へと視線を向ける。

 

「そう言えば、君の名前を聞いてなかったな」

 

「ああ、俺は翔、御剣翔だ」

 

「そうか、では一つだけ伝えておこう。勝負に付き合ってくれた礼だ。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』はすでに目覚めている」

 

「・・・そうか。なら俺も一言、死んでもいいなどと簡単に考えるなよ」

 

その言葉にゼノヴィアとイリナは目を見開いて驚くが、すぐに顔を戻し、翔の言葉には答えずに今度こそ立ち去って行った。

 

「待ちなさい、祐斗!」

 

リアスの制止の声が響く。

ゼノヴィアとイリナが立ち去ってすぐに祐斗は意識を取り戻した。

祐斗はすぐにゼノヴィア達が持つエクスカリバーを破壊しよとしたが、すでに彼女らの姿は消えていた。

全く歯が立たなかったことに悔しそうに顔を歪めた祐斗は、聖剣を追うためににその場から離れようとしたところを、リアスに止められたのだ。

 

「私のもとを離れるなんてこと許さないわ! 貴方はグレモリー眷属の《騎士》なのよ。

『はぐれ』になるんて許さないわ! 留まりなさい!」

 

「すみません・・・・・・でも、僕は同志達のおかげであそこから逃げ出せた。だからこそ、彼らの恨みを魔剣に込めないといけないんだ」

 

リアスに謝りつつも、自身に言い聞かせる呟く祐斗。

それを見てリアスは祐斗を強引に留まらせようと、彼の腕を掴もうとしたところを翔が止める。

どうしてとめるのか? と訴えるリアスだが、翔はリアスを眼で制止させて、祐斗に話しかける。

 

「祐斗・・・悪いがお前の過去はリアスから聞いた。それを踏まえて言う。

―――お前はどうしたいんだ?」

 

以前、部室で問いかけたことを再度聞く。

 

「・・・・・・翔くん。前にも言ったけど、僕はエクスカリバーを壊して、同士達の無念を晴らすんだ」

 

「ああ、それは聞いた。俺が聞きたいのは、その果てに何があるんだ?」

 

「ッ!?」

 

その言葉に祐斗は衝撃を受ける。

エクスカリバーを壊すことだけを考えてきた彼にとって、壊した後のことなど一切考えたことがなかった。

 

「ぼ、僕は・・・・・・」

 

「復讐をするなとも、忘れろとも言わない。だがな、その果てに残るのは空っぽの穴だけだ・・・・・・お前はそうなった時にどうするんだ?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

翔の問いかけに答えられない祐斗。

口を閉じ、俯いてしまう。

 

「努忘れるな・・・、お前が行こうとする『孤独の道』の先は何もない・・・・・・伽藍堂だ」

 

「ッ!? じゃあ・・・じゃあどうしろ言うんだ!? 君には分からないだろう! 強い君には!!

失う前に護れて、救うことが出来る君には僕の気持など分かるはずもない!!

復讐をするなとは、忘れろとは言わないだって? 復讐を・・・憎しみを抱いたことなどない君が

分かったように言うなッ!!」

 

翔の言葉を聞いて、祐斗は俯いていた顔を勢いよくあげた。

その表情は怒りを浮かべていた。

力強く翔の胸倉を掴みかかり、激昂しながら唾を吐き出す勢いで言い放つ。

だが、言い切って祐斗は自分の言ったことに気づき、顔を歪めて掴みかかった手を放す。

 

ただの八つ当たりだ・・・。

 

祐斗の言葉は正しいのかもしれない。

復讐の気持など、当事者にしか理解できない。

第三者には、その気持ちなど理解できることはないだろう。

 

感情のままに八つ当たりをしてしまった祐斗は後悔する。

だが―――

 

「―――失ったことがない、だと?」

 

静かに、だが圧倒的な怒りが籠った声が響く。

 

「がっ・・・翔、くん」

 

翔は祐斗の胸倉を右手だけで掴みあげる。

持ち上げられたことにより、息が出来なくなる祐斗は、苦しそうな声で翔の名を呼ぶ。

だが、翔の顔が視界に入った瞬間、祐斗は言葉を忘れ、息すら出来なくなる。

 

―――無表情。

 

感情を感じさせない・・・いや、まるで死人を見ているかのようなほど、今の翔の顔から感情が消え去っている。

だが、その瞳には言葉では言い表せないほどの怒りと悲哀が混じったものであった。

 

「何が失う前に護れ、救えるだ・・・俺はそれを出来たことなどなかった・・・

―――全てを救うことなど出来なかったッ!!」

 

普段の翔からは想像できないほどの激昂・・・。

あまりの出来事に祐斗だけではなく、リアス達も驚き、呆然としていた。

 

不意に祐斗の胸倉を掴んでいた手が緩められ、息がまともに出来るようになった祐斗は地面に座り込む。

 

「・・・・・・行け、祐斗。こっちは俺が何とかしとく。だがな、忘れるなよ。失ったものばかりを考えるな。残っているものを、今手にあるものを・・・・・・。それをよく考えておくんだな」

 

色々と聞きたいことはある。だが、今はそれに触れる時ではない。

そう考えた祐斗は立ち上がり、リアスに一礼してからその場から去って行った。

 

「待ちなさい!」

 

「行かせてやれ」

 

止めよとするリアスを翔が制止する。

 

「どうして行かせたの!?」

 

「落ちつけ、リアス。遅かれ早かれこうなるのは仕方がない事だ」

 

「・・・・・・何が仕方ないのよ?」

 

翔に諌められて、幾分か冷静さを取り戻したリアスは不機嫌そうに問いかけた。

 

「祐斗にとってどっちにしろ乗り越えないといけない壁なんだ。それにあいつは忘れていることがある。いや、気づいてないだけか・・・」

 

「気づいていないこと?」

 

怪訝な表情を浮かべて問いかけるリアス。

 

「確かに昔のあいつは同士達を失った・・・だが、今あいつには何がある?―――お前達だよ」

 

『ッ!?』

 

翔の言葉に問いかけたリアスだけでなく、話を聞いていた朱乃達も驚きの表情を浮かべる。

微笑みを浮かべながら翔は言う。

 

「あいつにはお前らと言う仲間がいる、家族がいる。それにちゃんと気づいていればあいつは必ず帰ってくるさ・・・・・・信じてやれよ」

 

「・・・・・・ええ、そうね」

 

「うふふ、そうですね」

 

「・・・・・・はい」

 

「はい!」

 

翔の言葉にリアスは最初こそは驚いた表情を浮かべるが、段々と笑みを浮かべて頷く。

朱乃達もリアス同様に笑みを浮かべる。

 

大丈夫さ、祐斗は俺なんかとは違う・・・気づくはずだ

結局、俺は最後まで気づくことが出来なかった・・・・・・もっと早く気づいていればお前を失うこともなかったのかもしれないな・・・

 

翔は空を見上げる。

日は完全に沈み、綺麗な夜空になっており、数え綺麗な星々が広がっていた。

星に紛れ浮かぶ月は薄く、だけど包み込むような優しい光で照らしている。

 

儚さを秘めた雰囲気を放つ翔に、リアス達は言葉をかけられない。

触れてしまえば、崩れ去ってしまいそうで、遠い存在になってしまったと感じられてしまう。

 

「・・・空いた穴は何かで埋めるしかない。記憶ではなく、今を積み重ねていくしかないんだ。

お前にはまだ帰れる場所があるだろ? 俺とは違って帰ってきたら迎えてくれる家族がいるだろ?

当たり前だけど、それはとても大切な事なんだ・・・」

 

ここにはいない祐斗に語りかけるように言葉を紡ぐ。

 

 

 




感想、意見受付中!

先日、主人公に関してのメッセージをいただきました。
少し長くなると思うので、活動報告に掲載させていただきます。

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