ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~   作:satokun

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第19話 堕天使との遭遇

「神父服を着ることになるとは・・・・・・人生は分からないもんだな」

 

翔は感慨深く呟く。

誰もが寝静まった時刻に、翔は以前、堕天使が根城にしていた教会廃墟いた。

翔以外には祐斗と匙、小猫の姿もある。だが、その服装は何時もの駒王学園の制服ではなく、黒い神父服を身に纏っている。

 

「悪魔が神父服とはね・・・」

 

「そこは我慢してよ」

 

僅かに嫌悪が籠った言葉を漏らす祐斗に、イリナは困ったように返す。

この場には、翔達以外に白いローブを纏うゼノヴィアとイリナもいる。

 

「分かっているさ・・・目的の為だ。何でもやってやる」

 

瞳に決意を浮かべながら頷く祐斗。

ここ最近で一番冷静な状態と言っていいだろう。

だが、エクスカリバーを目の前にして、どこまでこの冷静さを維持できるかが重要だ。

 

「効率を考えよう。これだけ人数がいるんだ、二手に別れた方がいいだろうが・・・・・・力を均等に分けたほうが良いか?」

 

「・・・・・・均等に分けるなら翔くんは単独で、それ以外を一緒にしたらようやく計算がつくと思うんだけど」

 

ゼノヴィアがどうするか案を出すが、それに真面目な表情を浮かべながら答える祐斗。

それを聞いて、翔以外が一斉に頷く。

 

「それは大げさだ」

 

それに苦笑をして否定する翔であるが、誰もがそうは思わなかった。

普段から翔と鍛練をしている、祐斗と小猫、匙からすれば、翔の力は身に染みてわかっている。

ゼノヴィアとイリナも先日の手合わせで、実力差は理解できている。

 

「・・・・・・兎に角、二手に分かれよう。流石に1人では辛いだろうし、いざとなったら私は奥の手もある。やはり、当初の予定通り、悪魔は悪魔、私達は私達で動くことにする」

 

「もしどちらかが先に目的を見つけた場合は?」

 

「戦闘になれば嫌でも気付くだろう。気付き次第、援護に回る」

 

「了解した・・・だが、気をつけろよ? 敵はフリードだけとは限らん。現状ではコカビエルが何時出向くかも予想は出来ない。深追いはせずにやっていく、いいな?」

 

警告に全員が頷くが、翔は内心で、祐斗やゼノヴィア達は無理か・・・、と考える。

最悪無理にでも止める必要があるかもしれないことを考え始める。

 

神父服を身に纏って、夜の街を散策する翔達。

フリードはこの町に調査や戦闘員として送られた神父を次々と殺している。

おそらく、エクスカリバーの扱いを慣れるためだろう。そのため、神父服を着て囮になれば、勝手に向こうから襲ってくる可能性が高いため、神父服を着ているのだ。

ある程度の距離なら気配を読める翔がいるため、不意に襲われることはないが、それでも警戒しながら夜の街を歩く。

しらみ潰しに歩くのではなく、普通の人が寄らない廃墟を見て回っている。

そして、3か所目の廃墟が着いた時に―――

 

「どうやら当たりのようだな・・・」

 

翔はそう呟く。

ゼノヴィアとイリナが持つ聖剣とは別の聖剣の気配と複数の人の気配を感じ取り、何時でも戦闘が出来るように身構える。

それにならって、祐斗達も臨戦態勢に入る。

 

「来るぞ」

 

翔の言葉に真っ先に反応したのは祐斗だ。

魔剣を創りだし、上を見上げた。

 

「神父の一団にご加護あれってね!」

 

上から聖剣を持ったフリードが襲い掛かってきたのを祐斗が魔剣で受け止め、吹き飛ばす。

フリードは上手く着地をすると、その視線を翔に向ける。

 

「おお!この声はあの時の少年、翔くんではありませんか!これ感動的な再会ですなぁ~!」

 

「俺はあまり会いたくはなかったがな・・・」

 

「つれませんなぁ~、あんなに激しくしといて、それはないざんしょ!」

 

「君の相手は僕だ!」

 

神父服を脱ぎ、制服姿になった祐斗はフリードに突貫していく。

 

「おっと僕ちん、このイケメン君を切り刻むから! 翔くんはちょっと雑魚神父を相手して暇潰しといてねぇええ!!」

 

「僕の台詞だ、やらせてもらおう!」

 

《騎士》の速さでもって祐斗はフリードに斬りかかる。

以前のフリードならば反応が出来ないほどの速度だが―――

 

「僕ちんのエクスカリバーは天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビッドリィ)は速度だけでは負けないんだよッ!」

 

手に持つ聖剣で難なく受け止める。

エクスカリバーの力でフリードの実力が底上げされている。

強みである速さが通用しないとなると、怒りで冷静さを失った今の祐斗では苦戦を強いられるだろう。

加勢に行きたい翔達ではあるが―――

 

「御剣、随分とたくさんいるみたいだぜ!」

 

廃墟から続々とはぐれ神父達が出てきた。

 

「先に邪魔なこいつらを相手するぞ。小猫、匙」

 

「おう! 行くぜ、黒い龍脈(アブソーブション・ライン)!」

 

「・・・・・・はい」

 

翔達も神父服を脱ぎ去り、制服姿となってはぐれ神父達の相手をする。

翔達がはぐれ神父の相手をしている中、祐斗もうリードと激しく剣戟を繰り広げていた。

 

「くっ!」

 

だが、数回聖剣と刃を交えたところで、祐斗の持つ魔剣が刀身から砕け散る。

 

「僕の・・・ 同士達の想いに応えろ! 魔剣創造(ソード・バース)!!」

 

祐斗は叫びながら魔剣を二本創りだし、二刀流となって再度フリードに突貫していく。

 

「おお! これはこれは魔剣創造(ソード・バース)じゃありませんかぁ?でも、残念無念!

その弱っちい魔剣じゃ、僕ちんのエクスカリバーたんには勝てないぜ!」

 

だが、祐斗のフリードのもつ天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビッドリィ)を破壊するどころか、傷一つ与えることも出来ず、フリードに押されている。

 

「御剣、木場の奴が押されているぞ! あいつ滅茶苦茶強いじゃねぇかよ!?」

 

「ああ、この前とは別人だ・・・それに―――」

 

言葉を途中で止め、翔は注意深くフリードを見据える。

 

以前の奴とは決定的に何かが違う・・・・・・何だ?

 

翔はフリードの雰囲気の違いに、僅かに驚きを示す。

 

「何かしらの転機があったとしか考えられないな・・・、以前のあいつは『殺し』という行為に悦楽を見出していたが、今のあいつは違う・・・純粋に『戦い』を楽しんでいる」

 

復讐に大半の意識を傾けている祐斗に、今のフリードを倒すのは無理だろう。

怒りで冷静さを失った祐斗に対し、戦いを楽しみながらも冷静に対処しているフリードでは心の余裕に差が出てしまい、それは実力にも結びつく。故に、今のままでは祐斗はエクスカリバーは愚か、フリードにすら傷を与えのも難しいだろう。

 

「仕方がないか・・・」

 

はぐれ神父達を粗方片付け終えた翔は、祐斗が劣勢なのを見て、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を顕現させる。

 

『Boost!』

 

「匙、フリードの動きを止めろ」

 

「おうよ!伸びろ、ライン!!」

 

翔の言葉に頷き、匙は左手の甲にあるトカゲの口から光り輝く紐のようなものを伸ばし、フリードの片足に巻きつける。

 

「おっと!? これは何ですかね?って力が吸われてるぅ!?」

 

最初は足に絡まった紐を見て不思議そうな表情を浮かべるフリードだったが、力が吸われていることに気がついて慌てて、聖剣で斬ろうとするが、なかなか切断できないでいる。

その隙に翔は祐斗に近づき、肩に手を置く。

 

『Transfer!!』

 

倍加させた力を祐斗に譲渡する。

 

「・・・貰った以上は使うしかないね」

 

随分と偉そうに言う祐斗に翔は苦笑で答え、まだ小猫がはぐれ神父達の相手をしているため、祐斗から離れ、そちらに向かう。

 

「これはこれは、因子を集中させないと斬れないってことですなぁ!」

 

片足を拘束されていたフリードだが、手に持つ聖剣にオーラが集中していく。

 

驚いたな・・・、聖剣の扱いがゼノヴィアやイリナよりも巧いな・・・

 

聖剣使いこなしているフリードに翔は内心で感嘆の声を漏らす。

 

「覚悟してもらうぞ!」

 

譲渡で跳ね上がった力を神器に使い、祐斗は魔剣を地面に突き刺した。

すると、地面から魔剣が続々と魔剣が生えていき、フリードに迫る。

 

「ほんじゃ、斬っちゃいましょ!」

 

オーラを集中させた聖剣で足にまかれた光り輝く紐を今度は容易に斬り裂く。

 

「マジかよ!?」

 

驚愕の声を上げる匙を余所に、拘束から逃れたフリードは地面から迫りくる魔剣にオーラを集中させた天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビッドリィ)を横薙ぎに一閃する。

 

「これから本気モードってことで、よろしくッ!!」

 

先ほどまでより、さらに速くなった速度で祐斗に迫るフリード。

突然のことで反応が遅れた祐斗にフリードは容赦なく聖剣を振り降ろそうとしたところを―――

 

「すまないな、遅くなった」

 

ゼノヴィアの持つ聖剣、破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)によって止められた。

 

「やっほー! ヒーローは遅れてやってくるのが基本よね!」

 

白いローブをすでに脱ぎ去って、戦闘服姿になっているイリナも登場した。

 

「・・・・・・遅すぎです」

 

最期の神父を倒した小猫が文句を漏らす。

 

「おっとと、これはこれは教会のクソビッチな聖剣使いではありませんかぁ~?」

 

突然現れたゼノヴィアとイリナに驚きの反応を示しながらも、フリードはその余裕な態度を崩さない。

すると―――

 

「ふむ、魔剣創造(ソード・バース)、あらゆる力を持つ魔剣を創りだすことが出来る、使い手によっては無類の力を発揮する上級の神器・・・それに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)か・・・、フリードが苦戦するのも無理はないか」

 

廃墟の奥から老いた声が響き、声の主が現れる。

神父服を着た眼鏡をかけた老いた男はフリードの隣に並ぶように立つ。

 

「やっと出来て来たな・・・。このタイミングで出たという事はお前が聖剣計画の首謀者であるバルパー・ガリレイだな?」

 

翔は眼を細めて現れた老人を見据える。

 

「いかにも」

 

「貴様が、バルパー・ガリレイか・・・ッ!!」

 

憎悪の籠った瞳でバルパーを睨みつける祐斗。

今の彼には、バルパーを以外が見えなくなっている。

そのことに内心で舌打ちをしながらも、翔は如何なる状況にも対処できるように身構える。

 

「フリード・セルゼン!バルパー・ガリレイ! 叛逆の罪で神の名のもとに断罪してくれる!」

 

聖剣の切っ先をフリードとバルパーに突き付けて言い放つゼノヴィア。

 

「バルパー・ガリレイ! 同士達の恨みを今ここで晴らす!!」

 

それを余所に、祐斗は現れたバルパーに斬りかかろうと肉迫するが―――

 

「何か事情があるみたいっすけど、今このおっさんを死なせるわけにはいかねぇんですよ!」

 

ゼノヴィアと対峙していたフリードは天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビッドリィ)の力を使って目にも止まらぬ速さでバルパーに襲い掛かろうとした祐斗の魔剣を受け止め、鍔迫り合いをする。

 

「くそっ!」

 

魔剣の限界を悟った祐斗は、悔しそうに顔を歪めながらも完全に破壊される前に魔剣を手放し、離脱する。

 

「ふむ・・・フリード、少々分が悪い。ここは退くとしよう」

 

「流石の僕ちんもまだ翔くんと戦うのは嫌なんで、そうしますか! ほんじゃ、ちゃらば!」

 

懐から黒い塊を取り出したフリードは、それを地面に叩きつけた。

すると、強烈な閃光が辺り一面を覆った。

突然襲い掛かる閃光に祐斗達は咄嗟に目を瞑るが、完全に防ぐことは出来ずに動けずにいた。

その隙にフリードとバルパーは退散しようとするが―――

 

「悪いが、それだけじゃ逃げられないぞ」

 

翔だけは違った。

フリードが閃光弾のようなものを叩きつけるより前に、目を瞑りっていたので、閃光弾の影響をあまり受けずにいた翔は、閃光に姿を眩ませ、逃げようとするフリードとバルパーに迫ろうとするが―――

 

ゾクッ!?

 

「ッ!?」

 

突如襲い掛かる気配に気づいた翔は頭上を見上げる。

 

「おいおい・・・」

 

頭上には何時の間にか光の槍が出現していた。

以前、レイナーレが見せたものより巨大であり、このままだと背後にいる祐斗達まで巻き込まれてしまう。

祐斗達は未だに閃光弾の影響で動けずにいるため、回避するのは不可能・・・、翔は2人を捕まえることを諦め、光の槍を対処するためにその場に留まる。

 

ドライグ、倍加はどれだけ溜まっている?

 

『十分過ぎるほど溜まっているぞ。『Blast!』を使うのか?』

 

いや、違う

 

『Explosion!!』

 

力の開放が解放される。

解放された力の一部が右手に収束される。

拳を握り締め、腰を深く落とし、深く息を吸う。

そして―――

 

「破ッ!」

 

気合い声と共に解き放つ。

放たれた赤黒い閃光と光の槍は均衡するが、すぐに赤黒い閃光が巨大な光の槍を呑み込む。

 

「・・・・・・流石に逃げられたか」

 

閃光が消えると、巨大な光の槍も消えており、何は去ったが、フリードとバルパーには逃げられた。

思わず舌打ちをしてしまう。

 

何故、『Blast!』ではなく、『Explosion!!』にしたかには理由がある。

『Blast!』は今まで溜めた倍加の力の全てを一撃に注ぐ機能だ。

その力は『Explosion!!』とは比べものにならず、体にかかる負担も少ないが、その代わりに次に繋げられない。最後の一撃で決めるのであれば問題はないのだが、もし違った場合、それは致命的な隙となる。

今の状況では、突如襲い掛かった攻撃に対処するだけではなく、増援の可能性を考える必要がある。

光の槍の力から考えて、放ってきたのは中級堕天使であったレイナーレ以上の存在・・・コカビエルの可能性が高い。そうだった場合、『Blast!』で力を使い切るのは愚策だ。故に、今回翔はこの後の展開を考えて。力の開放である『Explosion!!』を選んだのだ。

 

翔は警戒を緩めずに辺りの気配を探っていると―――

 

「追うぞ、イリナ!」

 

「うん!」

 

視界が回復したゼノヴィアとイリナはフリード達を追いかけるために、早々にこの場から離れていった。

 

「おい、深追いは―――」

 

「僕も行かせてもらおう!」

 

制止しようとする翔の言葉を遮って、祐斗も彼女らについていってしまう。

 

「戯けが・・・、匙と小猫はもう帰れ。現段階でこれ以上の深追いは危険だ。

俺は祐斗達を追いか―――」

 

「誰が誰を追いかけるですって?」

 

またもや翔の言葉を遮る者がいた。

凛とした声だが、その声色には不機嫌さが滲み出ている。

 

「流石に気づかれるか・・・」

 

「あれだけ派手にやれば当たり前でしょ?」

 

翔は溜め息を吐きながらも声が聞こえた方へと振り返る。

振り返った先には、鮮やかな紅髪を夜風に靡かせながら、笑顔を浮かべるリアスがいた。

ただし、その眼は全く笑ってなどおらず、全身から怒気が滲み出ている。

リアスの隣にはソーナもおり、彼女らの背後にはそれぞれの《女王》である朱乃と椿姫もいた。

 

「会、長・・・」

 

ソーナの姿を見た瞬間、匙は顔を真っ青に染めあげたのが印象的だった。

 

「エクスカリバーの破壊って、貴方達ね・・・」

 

「匙もどうしてこんなことに首を突っ込んでいるのですか?」

 

廃墟で説教を行うリアスとソーナ。

彼女らの前には地面に正座して座る、翔と小猫に匙。

小猫と匙は申し訳なさそうな表情を浮かべているが、翔は特に気にした様子も見せずにただ正座しているだけだ。

3人の背後には、ニコニコと笑みを浮かべた朱乃と、クールな表情の椿姫の姿もあり、逃げようとすればすぐさま背後の2人がお実力行使で捕まえようとするのが容易に想像できる。

 

「翔・・・、貴方のことだからちゃんと考えもあってのことだろうけど、今回の出来事は下手をすれば三大勢力の均衡に罅を入れる可能性もあるのよ?」

 

「そうです。三大勢力の均衡は非常に不安定・・・些細な罅が均衡を崩壊させるかもしれません」

 

リアスの言葉に続くようにソーナが厳しい言葉を3人に向ける。

 

「匙と小猫は俺が無理やり強制したものだ。今回の件の責は全て俺にある」

 

その言葉に目を見開いて驚きの表情を浮かべる小猫と匙だが、すぐさま、違うと否定しようとするが、翔は2人のみを威圧し、強制的に口を閉ざせる。

 

「翔くん、これはそんな簡単な話ではないのですよ?」

 

「俺がはぐれとなって討伐されれば、一応の均衡の揺れは治まるだろ?」

 

「そ、それは―――」

 

「何を言っているの!? そんなの認めるわけないでしょ!?」

 

翔の言葉を受け、ソーナが驚愕の声を漏らすよりも先にリアスが激昂する。

先ほどまでニコニコと笑顔を浮かべていた朱乃と隣にいる小猫も同様に怒りの表情を浮かべている。

 

「どうして貴方は自分を蔑ろにするのよ!?」

 

「別に蔑ろにしているわけじゃない。ただ、誰かが死ぬくらいなら、俺は俺の命を差し出すと言っているだけだ」

 

「それを蔑ろにしてるって言うんでしょう!! 貴方は自分が傷つくことを前提に考え過ぎよ!

貴方は人間の体なのよ!? 悪魔の私達と違って、簡単に死んでしまうわ・・・私は貴方の傷つく姿を見たくはない・・・」

 

最期は懇意するかのように言うリアス・

それに翔は―――

 

「ならば、どうしろと言うのだ、リアス・グレモリー?」

 

厳しい現実を突きつける。

立ち上がり、リアスより背の高い翔は彼女を見下ろす。

その表情は何時もの優しいものではなく、何の感情も見せない無表情を浮かべており、冷たく鋭い視線をリアスに向ける。

 

「お前は祐斗を失いたくない。祐斗はエクスカリバーを破壊して、同士達の想いを晴らしたい。

その想いはどちらも尊いものだ。だが、どちらも上手くいくとは限らない。時には何かを斬り捨てることでしか何かを護ることも救うことも出来ない。ならば、俺は、『自身()』を斬り捨てて、『他者()』を護り救うことを選ぶ」

 

『ッ!?』

 

誰もが息を呑んだ。

冗談じゃない、本気で彼はそう言っている。

分かってしまった、理解してしまった。

だが、翔の言っていることは正しい。

レーティングゲームでも勝利を掴むために多少の『犠牲《サクリファイス》』をする場合もあるため、リアス達は理解している。だが、それはゲームであって実際の戦い・・・命がかかった場合は違う。理解できても心が受け入れられない。

 

誰もが翔の言葉を否定できずに、顔を俯かせてしまう。

だが―――

 

「・・・・・・も」

 

微かに声が聞こえる。

それは翔が見下ろしているリアスだ。

 

「それでも私は・・・私は両方護りたい! 祐斗も手放さない! 祐斗の想いを果たしてほしい!

ええ、確かに言っていることは綺麗ごとよ! でもいいじゃない! 何が悪いのよ!!

始めから諦めるなんて私は出来ないし、したくもない!」

 

俯いていた顔を勢いよくあげて言い放つリアス。

 

「随分と強欲だな」

 

「強欲で結構、私は悪魔よ? 欲を我慢してどうするのよ!」

 

威風堂々と言い放つリアス。

その瞳には迷いは一切なく、何にも屈する事のない不屈の決意の炎が爛々と燃え上がっている。

彼女の言葉を聞いて、同じように顔を俯かせていたソーナ達も顔を上げ、リアスの言葉に賛同するように強い決意を宿した瞳を翔に向けている。

それを見て翔は―――

 

「ならば、君の願いは俺が護ろう」

 

微笑みを浮かべる。

 

「えっ・・・?」

 

事態についていけないリアスは素っ頓狂な声を漏らす。

翔は優しい微笑みを浮かべながら、リアスの頭を優しく撫でる。

 

「俺だって、始めから諦めるつもりなどないさ。だがな、リアス。王とは時に厳しい選択に迫られる時がある。その時に逃げずに、考え、苦悩しながらも答えを出さなければならない」

 

思い出すは一人の少女。

 

 

岩に刺さった選定の剣を引き抜き、王となった少女。

 

愛する祖国とその民を護るために、少女が成った。

 

いや、あり続けた・・・・・・誰もが待ち望んだ『王』に・・・。

 

常に公明正大であり、戦い勝利をもたらす王―――『理想の王』に・・・。

 

己を捨て、性別を隠してまで祖国のために己の全てを捧げた。

 

騎士の理想として、憧れられ、願い続けられ、『騎士王』と呼ばれた一人の少女。

 

何時如何なる時でも正しい判断を下し続け、臣下達に『王には人の心が分からない』と言われながらも『理想の王』であり続けた。

 

そして、彼女の最期は―――

 

 

翔は真っ直ぐとリアスに視線を向けて言う。

 

「・・・何時の日か、君が下した決断が君自身を苦しめ後悔させることになるかもしれない。そのあり方が君を傷つけるかもしれない」

 

彼女の物語はもう変えることが出来ない

でも、リアス。君はまだ始まったばかりだ

故に―――

 

「俺の全てを賭して君を護ろう。これから先、君が一人で歩き続けられるその時まで・・・」

 

「ッ!?///////」

 

告白にも似た言葉を受けたリアスは顔を真っ赤にさせてしまう。

リアスの隣にいたソーナや後ろにいた朱乃と椿姫、そして翔の隣にいた小猫までが翔の言葉を聞いて、その決意を聞いて、リアスほどではないが顔を紅く染めている。

匙も尊敬に似た表情を翔に向けていた。

 

だが、この時リアス達は気づいていなかった。

翔が言っていた『一』とは『自身』という事を・・・・・・彼女達は気づけなかった。

 

翌日の夕方。

翔は1人で祐斗とゼノヴィア、イリナの3人の捜索をしていた。

夜が明け、太陽が完全に昇った時間になっても祐斗は戻ってはこなかった。

流石にそれは問題だ、という事でリアスはオカルト研究部を集め、祐斗の捜索を始めたのだ。

リアスは朱乃と組み、アーシアは小猫と共に祐斗を探している。

 

「そろそろ行動を起こしてくる時間帯なのだが・・・・・・ん?」

 

呟きを漏らした時に何かを感じ取る。

 

この気配は・・・・・・堕天使か!?

 

気配を感じたのは町外れ。

翔がいる地点から然程離れた距離ではないため、翔が感じ取れたのもあるが―――

 

『ああ、相棒も感じ取ったか・・・。これほど強力な堕天使の気配は・・・コカビエルで間違いないだろう』

 

堕天使の幹部クラスの力の波動が大き過ぎたから、離れていても感じ取れたのだ。

さらに意識を集中させて状況を探る。

 

それに近くには祐斗達の気配だ・・・・・・すでに戦闘が始まっているな

 

舌打ちをしてから翔は人目のないところに行き、左腕に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を顕現させ、強く地面を蹴り宙に立つ。

そして、その姿を消した。

 

「なんですなんです、その弱さ!!聖剣使いが聞いて呆れますわぁ!」

 

フリードはイリナの首を掴んで近くの木に強く押し付けられた。

その衝撃で握っていた聖剣、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を手放してしまい、フリードに奪われる。

 

「くっ!? この・・・!!」

 

必死に拘束から逃れようとするが、フリードの力は強く逃れることは出来ず、首を押さえつけられている影響で体内の酸素が減り始め、だんだんと全身の力が抜けていき、意識が遠のいていく。

だが―――

 

「おいおい、女の子にそれは酷いんじゃないか?」

 

「がはっ!?」

 

イリナを抑えていたフリードの腕をいきなり現れた翔が強く掴む。

あまりの強さでイリナの首から手を放したフリードは、イリナから奪った聖剣で翔に斬りかかろうとするが、それよりも速く、翔がフリードを蹴り飛ばす。

 

翔は崩れ落ちるイリナを優しく抱き寄せる。

 

「翔、くん・・・」

 

「大丈夫か?」

 

イリナの姿は傷だらけであった。

戦闘服は無残な姿であり、至る所から切り傷が見えたが、幸いなことに致命傷はない。

 

「ごめん、なさい・・・。昨日・・・翔くん、の・・・声を無視してまで、行ったのに・・・」

 

辛そうに喋るイリナは翔に謝罪の言葉を漏らす。

それに翔は優しく頭を撫でて答える。

それからイリナを優しく地面に寝かせ、後ろを振り返る。

 

「ほう・・・貴様が今代の赤龍帝か。これは思ったよりも愉しめそうだな」

 

凝った装飾がされたローブを身に纏い、十枚の黒い翼を背に生やした男が宙にいた。

 

「堕天使、コカビエル」

 

「ああ、俺がコカビエルだ」

 

翔が宙にいるコカビエルを見据えていると、先ほど吹き飛ばしたフリードが戻ってきた。

 

「さっすが、翔くん! 僕ちんが反応できないほどの速さで蹴ってくるなんて!!」

 

すると、ぞろぞろとはぐれ神父達やコカビエルの配下の堕天使達が現れた。

翔はその場から動かずに、コカビエル達を見据えるだけ。

 

「賢明な判断だな。俺はどうでもいいが、今貴様が動けば、この場にいるはぐれ神父共がそこで寝ている聖剣使いを始末するからな」

 

すると、翔の後方に紅い魔方陣が展開され、リアスと祐斗を除くグレモリー眷属が転移してきた。

 

「翔! あれほど何かあったら連絡するように言ったじゃない!」

 

「イリナを頼むぞ」

 

リアスが翔に文句を言うのだが、翔はそれを無視してそう言う。

視線は一切、動かすことなく目の前にいる敵達を見据えている。

 

「これはどういうことだ? 何故、リアス・グレモリー如きが赤龍帝を従えている」

 

「・・・どういう事かしら?」

 

コカビエルの言葉に怒気を含ませた声で問いかけるリアス。

 

「言葉の通りだ。貴様程度の者が、どうやって赤龍帝を眷属にしたのだと言っている。

貴様如きには見合わぬ存在だぞ? てっきり、魔王の妹だからそれなりの実力者かと思っていたが・・・・・・期待外れだったな」

 

「ふざけないで!?」

 

「ふざけてなどいないさ。赤龍帝もつまらない男だな・・・、その程度の小娘の駒になるとは・・・。

本当にどのような手を使ってその赤龍帝を手に入れたのだ? よほどの好条件でもつけたのか?

もしくは体か? 悪魔なのだからどちらも可能であろう?」

 

「ッ!?」

 

コカビエルの言葉にリアスは怒り以上に悔しみの感情が強かった。

思わず顔を俯かせてしまう。

 

否定できない訳じゃない・・・

好条件を付けたわけでも、ましてや自身の体など翔に売ってなどいないが、周りから見ればそうだとしか思われないほど、私と翔が釣り合っていないことが、もの凄く悔しいのだ

出会った当初から只者ではないと感じ取っていたが、翔の強さは、主である自分を遥かに超えている

上級悪魔でフェニックスのライザーを圧倒するほどの実力・・・それは最上級悪魔に匹敵するものだ

明らかに翔と自分とでは釣り合いが取れていないのは、私自身が一番よく分かっているッ!!

 

あまりの悔しさで涙が溢れだしそうになるのを必死に我慢する。

すると―――

 

「そんなことなどないさ」

 

不意に頭から伝わる感触。

それは優しくて、暖かくて、心が満たされるようなものである。

リアスは俯かせていた顔を上げると、そこには何時もの優しい微笑みを向ける翔がいた。

 

「確かに今のお前は未熟だ。でもな、それは誰でも当たり前のことだ。最初から未熟じゃない者などいないさ。誰もが失敗や成功を繰り返して強くなっていく。今の自分を悔いている暇があるなら、強くなれ」

 

「ッ!?・・・ええ!」

 

翔の言葉に驚きを浮かべていたリアスだが、すぐに何時もの自信のある凛とした表情を浮かべで力強く頷く。その瞳には強い決意と覚悟が秘められていた。

 

「ふん、つまらんな」

 

不機嫌そうに吐き出すコカビエル。

 

「それで堕天使の幹部がこの街に何の用なのだ?」

 

翔は静かにコカビエルを見据えて問いかける。

 

「つまらんのだよ、この平和が・・・」

 

「つまらない、だと・・・?」

 

僅かに視線が鋭くなる翔。

だが、それに気づくことなくコカビエルは言葉を続ける。

 

「ああ、そうさ。そうだとも!俺は三つ巴の戦争が終わってから、退屈で退屈で死にそうだった!! アザゼルもシェムハザも、次の戦争には消極的でな。それどころか、神器なんてガラクタを集めだし、訳の分からん研究に没頭する始末だ。貴様の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)クラスのものなら武器にもなろうが、俺は興味が無い。アザゼルは欲しがるだろうがな、あいつのコレクター趣味は異常だ」

 

「ほう・・・・・・ならば、貴様は戦争がしたいのか?」

 

「ああ、分かっているじゃないか! 俺は戦争がしたいのだよ!! あの殺しが正当化される世界をもう一度味わいたいのだよ!! 先の大戦を思い出すだけで鳥肌が止まらない!! あの殺気に溢れた場所! 血の匂いが蔓延した世界!」

 

眼をギラつかせながら言うコカビエル。

明らかに普通ではない。

リアス達はコカビエルが放つ戦闘への狂気に臆してしまう。

ただ、翔だけは静かにコカビエルを見据えるだけ。

だが、その瞳は恐ろしく冷たく静かなものだ。

 

「教会からエクスカリバーを奪えば、天界の天使共が攻め込んでくると思ったんだが、とんだ期待外れだ。教会が寄越したのは、使い捨ての神父共に、弱い聖剣使い2人だけ・・・。まったくもってつまらん話よ。まぁ、魔王の妹を犯して殺せば、魔王は出てくるだろうからな。天界は諦めるとするか。それに赤龍帝が思っていた以上に愉しめそうだから、良しとするか。先日の一撃も防いだことだしな」

 

先日の一撃・・・フリードとバルパーを追おうとした際に、邪魔をするように降ってきた巨大な光の槍のことだ。

 

「・・・どうでもいいさ。ただな、貴様が行う行為で誰かが涙すると言うのならば―――俺は全身全霊を以て貴様を殺す」

 

鋭い殺気がコカビエルに突き刺さる。

 

「いいぞ・・・いいぞ、いいぞッ!! まさかこれほどの力を有しているとはな!!

これは計算外だった。今の貴様の殺気は大戦の時でもそうは受けなかったぞ!!」

 

翔の殺気を受けてなお、狂喜的な笑みを浮かべながら笑うコカビエル。

 

「うちのボス凄いでしょ!? でも、僕ちんは戦争とかどうでもいいんですよ~?

僕ちんは宿敵の翔くんと戦えればそれでいいんで~・・・だから、ちょっくらやろうかぁあ!!」

 

先ほどイリナから奪った擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を左手に、右手には以前から持っていた天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビッドリィ)を構えて翔に襲いかかってきた。

天閃の力を使って、《騎士》にも負けないほどの速度で迫ってきているのだが、翔からすればその程度の速さでは遅すぎる。

 

「フリード、貴様はバルパーと共にやることがあるだろ」

 

「・・・・・・へいへい。ほっっっとに残念ですが、ひとまずちゃらば!」

 

途中で止まったフリードはコカビエルの言葉に不機嫌そうに返して。懐から先日使ったものと同じ閃光弾を使ってこの場から去って行った。

翔が追いかけようと思えば、容易に出来るが、それを易々と許してくれるほどコカビエルは甘くはない。

 

「さてと、そろそろ計画も最終段階だ。俺はこの町を破壊する! 止めたければ力づくで求めてみろ!だが、その前にこいつらの相手をしてもらうぞ」

 

そう言ってコカビエルは無数の光の槍を創りだし、それらを解き放つ。

雨のように降り注いでくる光の槍の大群。

それに加え、前方からは待機していたはぐれ神父達や配下である堕天使が一斉に翔達に襲い掛かってきた。

 

「先に駒王学園に行って待っているぞ、赤龍帝」

 

コカビエルはそれだけ言って、この場から消え去って行った。

すぐにでも追いかけたいリアス達だが、今この場から離れるのは容易ではない。

いくら格下の者達だからと言っても、数が多すぎる上に、上空からはコカビエルが放った槍の群れを如何にかしなくてはいけないのだ。

リアスは滅びの魔力を両手に集中させ、朱乃も何時でも雷を放てるように魔力を全身から放ち、小猫も何時でも戦えるようにファイティングポーズを構える。アーシアは自身と傷ついたイリナを護るために、リアス達の後ろで魔力で防御壁を展開させようとした。

だが―――

 

『Explosion!!』

 

機械的な音声が響く。

それと同時に、莫大な力がこの場を支配する。

動き出そうとした者全てが停止する。突如襲い掛かってきた圧倒的な圧力によって・・・。

リアス達に降り注ぐはずだった光の槍の群れは、その力の余波で吹き飛ばされ霧散される。

 

「・・・リアス達は先に学園に行ってろ。ここは俺がやる」

 

静かにそう言う翔にリアスは一瞬何を言っているのかが理解できなかった。

だが、次第に彼が言っていること認識し、血相を変えて言う。

 

「いくらなんでも無理よ! 確かに貴方は強いわ! それでもこの数の敵を1人では無理よ!!」

 

叫ぶリアスに翔は振り返らずに言う。

 

「このくらいなら俺1人で十分だ。ここで無駄に消耗するのは愚策だ―――行け」

 

「ッ!?・・・・・・分かったわ。朱乃、転移の準備を」

 

「はい、わかりました」

 

振り替えることなく背中だけ見せる翔を見てリアスは苦しそうな声で答える。

指示を受けた朱乃は転移魔方陣を構築させる。対象は自分とリアス、小猫、アーシア、そして倒れているイリナ。

誰もが、辛そうな視線を翔に向けている。

だが―――

 

「先に行ってコカビエルを倒してしまっても構わないぞ?」

 

不意に声が聞こえた。

え・・・?と素っ頓狂な声を上げるリアス達。

伏せていた顔を上げると、そこには僅かに振り向いた翔がおり、その口元は笑みを浮かべていた。

 

「・・・・・・精々、最終幕には遅れないようにしなさいよ!」

 

翔の挑発めいた言葉に、凛とした声で返すリアス。

リアスを筆頭に朱乃達も先ほどまでの暗い表情が嘘のように明るい表情を浮かべる。

 

翔はそれだけ聞くと、先頭に居たはぐれ神父の懐に一瞬に肉迫した。

そのはぐれ神父の胴体に背中でもって体当たりをする。その一撃の衝撃はそのはぐれ神父のみで止まらず、後方にいたはぐれ神父達にも襲い掛かった。一撃ではぐれ神父の群れを無効化したのだ。

 

その隙にリアス達は転移を終わらせる。

この場に残っているのは翔とコカビエルの配下である堕天使達。

 

「悪いが貴様らに付き合っていられる時間は短いぞ」

 

翔はそれだけ言って堕天使の群れへと駆け出した。

 

場所は変わり、駒王学園の校門前にリアス達はいた。

転移先を旧校舎の部室に設定したのだが、何者かの阻害により学園には直接転移することが出来ずに、転移先が近くの公園になってしまったのだ。

リアス達はすぐにでも学園に行くと、学園には結界が展開されており、校門前にソーナ達、生徒会メンバーがいた。

 

「ソーナね、この結界を展開させたのは?」

 

「ええ、被害を最小限にするためです。コカビエルが本気を出せば、学園だけではなく、この街自体に大きな被害が出ます。・・・正直、学園を破壊されるのは耐えられませんが、仕方がありません」

 

淡々と告げるソーナではあるが、その声色には怒気と悔しみが含まれていた。

生徒会長として、この学園を破壊されることに憤りを感じ、護れないことが悔しいのだろう。

 

「下僕が確認したところ、学園の運動場にてバルパー・ガリレイが何か儀式のようなものをしていることが確認できました。儀式の中心には強奪されたエクスカリバーがあることも確認が取れています」

 

「そう・・・・・・。私達、グレモリー眷属がコカビエル達を喰い止めるわ。貴方達は結界に集中して」

 

「リアス・・・現実を見なさい。相手は聖書にも記された堕天使なのですよ? すでに我々の手に負える事態ではないわ。この場には翔くんはいない。例えいたとしても、翔くんが必ず勝つとは限らないのよ?」

 

諭すように言うソーナだが、リアスはそれを首に横を振って答える。

 

「いいえ、翔なら必ず来てコカビエルに勝つわ。それまで足止めするのが私達の役目よ」

 

はっきりと言うリアスにソーナは言葉を詰まらせる。

確かに翔がコカビエルを倒せる保証はない。だが、それでも思ってしまうのだ。

―――彼なら必ず勝ってしまう、と・・・。

 

「・・・それでもサーゼクス様には連絡すべきよ」

 

「貴方だってお姉様を呼ばなかったじゃない」

 

ソーナが魔王に連絡を入れるべきだとリアスに言うが、リアスはそれを拒否する。

 

「すみませんが、すでに魔王様には打診をしていますわ」

 

「朱乃! 勝手に―――」

 

「これは翔くんの指示です」

 

「ッ!?」

 

朱乃の言葉にリアスは言葉を詰まらせる。

 

「・・・正直言って、リアス。私も今回は翔くんの指示は正しいと思うわ。

確かに翔くんは強いかもしれない。それこそコカビエルに勝ってしまうかもしれないと思うほど・・・・・・でもね、リアス。敵はコカビエルだけとは限らないのよ? もし、他にコカビエルほどの敵がいた場合どうするの? いくら、翔くんが強いと言っても、まだ禁手(バランス・ブレイカー)に至っていない彼では、コカビエルほどの敵が複数もいたら、勝てないわ。―――魔王のお力を借りましょう」

 

何時もの口調ではなく、プライベートのものに変えて言う。

その声には明らかに怒気が含まれていた。

何故ならリアスが魔王に頼らない理由が分かるからだ。

 

以前に起きた御家騒動からまだ時間もそれほど経っておらず、またすぐに兄であるサーゼクスに頼るのは彼女のプライドが許さなかったのだ。それに加え、この街を任されているので、自分の力だけでどうにかしたいと思っているので、リアスはどうしても兄であるサーゼクスに頼るのだけは、あまりしたくはなかったのだ。

 

朱乃はそんな彼女の気持ちも分かってしまう。

でも、それ以上に―――

 

「リアス。貴方の為を想って、はっきりと言わせてもらいます。・・・・・・自分の力で如何にかすると言っておきながら、結局のところ翔くんに甘えているのではありませんか?」

 

「ッ!?」

 

朱乃の指摘にリアスは目を見開いて驚きを示すが、すぐに否定しようと口を開くが―――

 

「・・・・・・そうなのかもしれないわね」

 

否定できない自分がいたことに気づいてしまった。

 

「自分であれだけ言っておきながら、自分の甘さが嫌になるわね・・・」

 

吐き捨てるように言うリアス。

 

あれほど翔に自分を蔑ろにするなと言っておきながら、自身のくだらないプライドで

翔を追い込もうとしたことに腹が立つ・・・ッ!!

今の私達じゃ、コカビエルほどの実力者を相手にするほどの力はない

精々、少しの時間稼ぎが精一杯

そして、最後に翔の力に頼る・・・・・・彼だけが戦う羽目になるッ!!

自身の甘さが、翔を苦しめることになるなんて気づきもしなかった

結局のところ、朱乃の言うとおり、私は翔に甘えているだけ・・・・・・

 

「・・・朱乃、礼を言うわ。援軍が来るのは何時かしら?」

 

「ご理解ありがとうございます。魔王様からの援軍が到着するまでは1時間ほどです」

 

「分かったわ・・・。ソーナ、そういう事だから、後は頼むわね。私達はコカビエル達を抑える。貴方達は結界の維持にだけ力を入れて・・・」

 

「ええ、分かりました。・・・・・・リアス、ご武運を」

 

「お互いにね。さて、可愛い下僕達! これから私達が行くのは死戦よ! でも、死ぬことは許さないわ!」

 

『はい!』

 

リアスの言葉に、朱乃と小猫、アーシアが力強く返事をする。

未だに祐斗とは連絡が取れず、ゼノヴィアの消息も不明。不安要素はある。戦力差は圧倒的。

・・・・・・恐怖はあるが不安はない。翔なら必ず来ると信じているからだ。

故に、今自分達がやれることをやるだけ。

 

リアス達は戦場に向かう。

 

 




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