ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~   作:satokun

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大変お待たせしました!



第29話 激突する二天龍!

 

 

「やれやれ・・・この状況下で反旗か、ヴァーリ」

 

「そうだよ、アザゼル」

 

アザゼルの問いに平然と答えるヴァーリ。

 

カテレアとアザゼルが空中で戦闘を繰り広げている最中に、ヴァーリがアザゼルに横槍を加えようとしたとこを翔が止めたことにより、アザゼルとカテレアは一旦戦闘を中止して四人とも大地に降りて、対峙する。

カテレアの隣にヴァーリ、アザゼルの隣に翔が並び立つ。

 

「和平が決まった瞬間、拉致したハーフヴァンパイアの神器(セイクリッド・ギア)を発動させ、テロを開始させる手筈でした。

頃合いを見てから私と共に白龍皇が暴れる。三大勢力のトップの誰かを屠るか、会談そのものを破壊が今回の襲撃の目的です」

 

「・・・まったく。俺もやきが回ったもんだ。身内がこれとはな」

 

淡々と事実を話すカテレアに、アザゼルは自嘲したように呟く。

ヴァーリは兜を鎧に収納させて、暗い銀髪の長髪を風に靡かせながら素顔を見せる。

 

「戦いに生きようとするお前のことだから納得と言えば納得だな」

 

翔が納得したようにヴァーリに言葉を漏らす。

 

「それで何時からだ?」

 

「コカビエルを本部に連れて行く途中でオファーを受けたんだ。悪いね、アザゼル。

こっちのほうが面白そうなんだ」

 

翔の問いかけに、ヴァーリは笑みを浮かべて答える。

 

「『白い龍(バニシング・ドラゴン)』が『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』に下るのか?」

 

「あくまで協力するだけ・・・とても魅力的なオファーを受けてね。『アースガルズと戦ってみないか?』―――こんな事を言われたら、自分の力を試してみたい私では断れない。アザゼルはヴァルハラ、アース神族と戦う事を嫌がるだろう? 戦争嫌いだしね」

 

「ヴァーリ。俺はお前に『強くなれ』と言ったが、『世界を滅ぼす要因だけは作るな』とも言った筈だぞ?」

 

「関係ないさ・・・私は永遠に戦えれば良いだけ」

 

「・・・そうかよ。いや、俺は心のどこかでお前が手元から離れていくのを予想していたかもしれない。―――お前は出会った時から今日まで強い者との戦いを求めていたもんな」

 

「今回の下準備と情報提供は白龍皇ですからね・・・。彼女の本質を理解しておきながら放置しておくなど、貴方らしくない。結果、自分の首を絞める事となりましたね」

 

アザゼルの対応の悪さに、呆れたようにそう言うカテレア。

 

「そうだな。ったくよ・・・」

 

頭を掻きながら、小さく愚痴をこぼすアザゼル。

その顔は少し寂しそうに見えた。

 

ヴァーリは自身の胸に手を当て、更に驚くべき事実を明かす。

 

「私の本名はヴァーリ。―――ヴァーリ・ルシファーだ」

 

『ッ!?』

 

ヴァーリの言葉に翔を含め、この場にいた全員が驚愕を示す。

カテレアとアザゼルが驚いていないのを見ると、どうやら元からこの事実を二人は知っていたようだ。

 

「死んだ先代の魔王ルシファーの血を引く者なんだ。けど、私は旧魔王の孫である父と人間の母との間に生まれた混血児。―――『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の神器(セイクリッド・ギア)は半分人間だから手に入れたものだ・・・偶然だけどね。

ルシファーの真の血縁者でもあり、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』でもある私が生まれた。

運命、奇跡と言う物があるなら、私の事かもしれない―――なんてね」

 

ヴァーリの背中から光の翼と共に、何枚もの悪魔の翼が広げられた。

 

「嘘よ・・・そんなことって・・・」

 

弱々しく否定をするリアスであるが、アザゼルは肯定する。

 

「事実だ。もし冗談の様な存在がいるとしたら、こいつの事さ。俺が知っている中でも過去現在、おそらく未来永劫においても最強の白龍皇になるだろうな」

 

「アザゼル、終わりにしましょう」

 

ヴァーリの横に立っているカテレアがアザゼルと対峙しながら言い放つ。

 

「赤と白の前哨戦にしては、ちっと豪華じゃねぇのか? 堕天使総督とレヴィアタンの末裔ってのは?」

 

「ふざけたこと言っていないで、さっさと奥の手を見せたらどうだ? アザゼルにカテレア?」

 

「・・・おいおい、俺達が本気でやっていないっていうのかよ?」

 

「貴方は何を知っているのですか?」

 

アザゼルとカテレアの二人は怪訝な表情を浮かべて翔に問いかける。

 

「知りはしないさ。ただな―――二人の懐にある何かから強い気配を感じたんでな」

 

「「―――ッ!?」」

 

その言葉に二人は驚きの表情を浮かべて言葉を詰まらせた。

すると―――

 

「くくく・・・はははははっ!! マジで面白いな、お前!!」

 

突然、腹を抱えて笑い出したアザゼル。

そして、笑みを浮かべながら懐から一本の短剣を取り出す。

 

「それは・・・何ですか?」

 

「俺は生粋の神器(セイクリッド・ギア)のマニアでな。マニア過ぎて自分で製作したりする事もある。レプリカ作ったりな。

まぁ、殆どの物が屑でどうしようもないが、神器(セイクリッド・ギア)を開発した神は凄い。俺が唯一、奴を尊敬するところだ―――だが、甘い。『神滅具(ロンギヌス)』と『禁手(バランス・ブレイカー)』なんて言う神と魔王、世界の均衡を崩せるだけの『バグ』を残したまま死んじまったんだからな。ま、赤龍帝が言うには、その『バグ』も神の意志で残したもんじゃねぇかという考えもあるがな。やっぱり、神器(セイクリッド・ギア)は面白いな・・・」

 

掲げた短剣が幾つものパーツに別れ、アザゼルはある言葉を発した。

 

禁手化(バランス・ブレイク)・・・ッ!」

 

一瞬の閃光が辺りを包み、光が止むと―――アザゼルは黄金の全身鎧を身に付けていた。

姿はまるで金色のドラゴン。背中から漆黒の翼を展開させ、手には巨大な光の槍を持つ。

 

「『白い龍(バニシング・ドラゴン)』と他のドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)を研究して作り出した、俺の傑作人工神器(セイクリッド・ギア)だ。

堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)』。その擬似的な禁手(バランス・ブレイカー)状態、『|堕天龍の鎧《ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー》』だ」

 

これがアザゼルの切り札か・・・

不完全とは言え、神器(セイクリッド・ギア)を人工的に作り出していたとはな

 

流石の翔も、アザゼルが作り出した人工神器(セイクリッド・ギア)に驚きを示す。

 

神器(セイクリッド・ギア)をバースト状態にして強制的な覚醒をしているんだろう。一種の暴走だ。

あれでは戦闘後に神器(セイクリッド・ギア)が壊れる。人工神器(セイクリッド・ギア)とやらを使い捨てで使用する気か?』

 

使い捨てとは言え、ドラゴンを有する神器(セイクリッド・ギア)を作り出したのは凄まじい開発力だ

 

「へへっ、『黄金龍君(ギガンテイス・ドラゴン)』ファーブニルを人工神器(セイクリッド・ギア)の核に封じて、二天龍・・・『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の神器(セイクリッド・ギア)を模してみたが、今のところは成功ってとこか」

 

自身の姿を見て、満足そうに頷くアザゼル。

 

ファーブニル・・・?

 

『『五大龍王』の一匹だな。『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』ティアマット、『西海龍童(ミスチバス・ドラゴン)玉龍(ウーロン)、『終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)』ミドガルズオルムがいる。と言っても、大昔にヴリトラは神器(セイクリッド・ギア)に封印され、アザゼルの話ではファーブニルもみたいだな。本来、龍王は六匹いたんだがな。噂では、悪魔になったらしいからな、何時か出会えるだろう』

 

翔の疑問にドライグが答える。

すると、ヴァーリは嬉しそうに笑みを浮かべながら言う。

 

「やっぱり、アザゼルとも戦いたいが・・・それ以上に赤龍帝―――御剣翔と戦いたいな」

 

「俺とこいつのが終わったら存分に戦えばいいさ」

 

「おいおい、俺の了承は得ないのか?」

 

「お前なら断らないだろ?それに―――」

 

―――馬鹿娘を頼むぞ?

 

すれ違いざまに翔の肩を叩きながら、アザゼルは小さくそう告げて、空へと飛び立った。

再び上空へ上がるアザゼルに続くように、カテレアも上空へと飛び立つ。

 

「やれやれ、頼むぞって・・・」

 

アザゼルの言葉に、翔は苦笑を浮かべる。

 

再び上空で対峙するアザゼルとカテレア。

 

神器(セイクリッド・ギア)の研究はそこまで進んではいなかったはずですが・・・・・・やはり重要な情報は極一部の者にしか伝えていないのですね」

 

「その様子じゃ、俺の組織の裏切った輩が神器(セイクリッド・ギア)の研究をいくらか持ち出したみたいだな。だが、無駄だ。真理に近い部分は俺とシェムハザしか知らない」

 

「こうなっては仕方ありませんね」

 

そう呟いて、カテレアは懐から一つの小瓶を取り出した。

その中には黒い蛇のようなものが入っており、それを取り出したカテレアは手に取ると、蛇を呑み込んだ。

その刹那―――

 

ドンッ!!

 

空間が振動する。

カテレアから放たれる魔力が膨れ上がり、全身から不気味なオーラを漂わせた。

 

「・・・それはオーフィスの野郎から貰ったものだな」

 

「ええ、そうです。・・・使う気など全くなかったのだけれどね」

 

アザゼルの言葉に肯定するカテレア。

後半に呟いた言葉は、誰に聞こえることもなく風の音にかき消された。

 

「ほら、来いよ」

 

手に持つ巨大な光の槍の先を二又へと変化させて、槍を構えるアザゼル。

 

「―――行きます!」

 

全身から最大級にオーラを全身から放ちながら、カテレアはアザゼルに特攻する。

 

ザンッ!!

 

一瞬の交差。

凄まじい速度で飛び出したカテレアに対して、アザゼルは冷静に対応した。

 

ブシャッ!!

 

鮮血が舞う。

 

「・・・・・・これまでのようですね」

 

自嘲するように呟きながらカテレア。

左肩から右腰にかけて、逆袈裟に斬られた痕から止めどなく血が流れ落ちる。

大地に降りたカテレアは力なく、膝を地につける。

 

「どうやら勝負ありってところだな」

 

膝をついたカテレアの目の前に降り立つアザゼル。

すると、アザゼルが身に纏っていた黄金の鎧が音を立てて砕け散った。

 

「人工神器(セイクリッド・ギア)の限界か・・・。まだ改良の余地が多分あるな。核の宝玉が無事なら、また作り直せる。もう少し付き合ってもらうぜ『黄金龍君(ギガンテイス・ドラゴン)』ファーブニル」

 

砕け散った神器(セイクリッド・ギア)の中から宝玉を手に取り、それに軽くキスをするアザゼル。

そして、再び手に光の槍を作り出して、その矛先をカテレアに向ける。

 

「さて、最後に言い残すことはあるか、カテレア・レヴィアタン」

 

「思い残すことなどありません。これが私が行った結果だというのなら、甘んじて受け入れます」

 

「そうかよ。じゃあ、迷わず逝け」

 

目を瞑って、死を受け入れたカテレアに、アザゼルは振り上げた槍を容赦なく振り下ろした―――が、それを止める者がいた。

 

「・・・・・・どうして止める―――赤龍帝」

 

「少し話がしたくてな」

 

怪訝な表情を浮かべるアザゼルに、翔は軽く答えながら地に膝をついているカテレアに近づく。

 

「何の用です? 先程も言ったように、私は貴方の敵で、貴方は私の敵。それに変わりはない。

今更、何を話そうというのですか?」

 

相変わらず冷たい態度をするカテレアに、特に気にした様子も見せずに翔は静かで穏やかな声で問いかける。

 

「これが君のやりたいことなのか?」

 

「・・・貴方には関係ないと言ったはずです」

 

「ふむ。確かにそうかもしれないが、そうじゃないかもしれない」

 

「・・・何です?」

 

翔の言葉に怪訝な表情をするカテレア。

 

「君は先ほど言ったな。俺は君の敵で、君は俺の敵。ほら、関係は少なからず存在するじゃないか?」

 

「え・・・?」

 

翔の言葉に思わず間抜けな声を漏らしてしまうカテレアに、翔は笑みを浮かべながら言葉を続ける。

 

「それにな・・・、君の瞳からは強い意志とそれと同じくらいの後悔や悲しみを感じられた。

そしたらな、君の真意というものが聞きたくなってしまってな。こうして話しかけているんだよ」

 

肩を竦めてそう告げた翔に、カテレアは茫然とした様子を見せたが、不意に溜め息を吐き出した。

 

「ふぅ・・・・・・何故か貴方には嘘をついていられませんね」

 

その声色は、先程までの冷たいものではなく、酷く穏やかなものだった。

 

「ええ、そうですね。最期くらい貴方のような方に心の内を告げるのも悪くはない」

 

カテレアは静かに己の心情を語りだした。

 

旧魔王派の者達に対する疑問、そして今の悪魔世界に感じている危機・・・。

 

過去の戦争において失われた原初の魔王達。

ルシファー、ベルゼブブ、アスモデウス、そしてレヴィアタン。ご先祖様ひいては同志のご先祖様でもある。その魔王達が失われた事により別れてしまった悪魔の世界・・・。

 

それによって起きた新政府側と旧魔王派による争い。

実質上、新政府側が勝利を納めたが納得していない者が数多く存在した。

 

「私は別にどうでも良かった・・・。今の魔王、サーゼクス達は性格に少々問題があるが、魔王として冥界を思う気持ちは誰よりも強く、その責務を果たそうとしていた」

 

―――だが、争いは止まらなかった。

 

過去の栄光?正当な血筋?きっとそれら全てなのだろう。

一度手に入れてしまったものを手放したくはないと言う考えから、旧魔王派は己の事しか考えられなくなっていった。これからの冥界のことなどを何も考えていないのだろう。

そして―――

 

「そして何より、私と同じ魔王の血縁であるクルゼレイ・アスモデウスとシヤルバ・ベルゼブブの二人は、己が欲望の為に魔王になりたいだけ、冥界の未来なんて考えてなかった。それに気づいてしまった。―――だが、気付くのが遅すぎた。

もう旧魔王派は止まることを知らない。・・・私はただ、冥界に住む悪魔達を護りたかった」

 

静かに涙を流しながら語るカテレア。

 

「過去に縋り、未来を見据えることが出来なくなった彼らの暴走は止まることはない・・・。どちらかが滅びるまで、きっと止まらないでしょう。・・・・・・・巻き込まれた者達、争いは望まなかった者達、彼らを護るために私は旧魔王派へと進んだ。・・・これが私の心の内です」

 

全てを語り終えたカテレアはすっきりとした笑みを浮かべていた。

 

「こうして誰かに語ると、こうも心が穏やかになるのですね。最期に貴方に会えて良かった・・・。さぁ、殺しなさい・・・」

 

「・・・ああ、そうさせて貰おうか。旧魔王派、カテレア・レヴィアタン」

 

翔は懐から柄だけの黒鍵を取り出し、刀身を生じさせた。

 

ああ、最期なんて言ったけれど、本音を言えばもっと早くに貴方に会いたかった・・・

でも、これも運命・・・受け入れるわ

 

そんな思いを胸に秘めながら、瞳を閉じるカテレア。

翔は手に持つ黒鍵を振り上げ・・・・・・振り下ろした。

 

スッ!とした風切り音がカテレアの耳に届いた。

 

「・・・・・・?」

 

何時まで経っても来ない痛みに怪訝な思いをしたカテレアは、ゆっくりと目を開いた。

開いた先に映ったのは、優しい微笑みを浮かべた翔の顔であった。

 

「な、何故・・・?」

 

振り下ろされた黒鍵はカテレアにではなく、その隣の地面に振り下ろされていた。

 

「旧魔王派のカテレア・レヴィアタンは、ここで死んだ。これからはただのカテレアで生きていくがいいさ」

 

「ッ!?」

 

翔の言葉に驚きの表情を浮かべるカテレアであったが、次第にそれの表情は薄れ、静かに涙を流し始めた。

 

「貴方と言う人は・・・」

 

ポンポンとカテレアの頭を軽く撫でてから、翔は先ほどから自身に濃密な戦意を放つ者へと視線を向けた。

 

「さぁ! これで前座も終わった! これでようやく私達の闘争を始めようとしよう! 昔から続く白と赤の終わりなき闘争を!!」

 

全身から魔力を迸らせて、声高らかに叫ぶヴァーリ。

猛獣のようにギラついた眼を翔に向けている。

 

目の前に何時でも襲ってきそうなヴァーリがいるというのに翔は身構えることもせずに至って自然体でいる。

そして、近くにいるアザゼルとカテレアに声をかける。

 

「カテレアにアザゼル。この場から離れていた方がいいぞ」

 

「んなこと言われなくてもわかってるよ、ったく・・・。おい、カテレア。どうせ、すでに戦う気なんてないんだろ? だったらさっさとこの場から離れるぞ。お前についてはサーゼクスに任せるが、それでいいな?」

 

「ええ、どのような事情であれ、私が行ったのはテロ行為。相応の罰は受けるつもりです」

 

アザゼルの言葉に、カテレアは頷きながら立ち上がる。

 

「御剣翔。ヴァーリ・ルシファーの実力は最上級悪魔に匹敵、またはそれ以上のものです」

 

「ああ、分かっているさ」

 

「それに彼女は禁手(バランス・ブレイカー)に至っているというのに、貴方はまだ至っていない・・・」

 

目を伏せて言うカテレア。

 

カテレア言う通り、いくら翔の持つ赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)神滅具(ロンギヌス)だとしても、ヴァーリは、その対となる存在の白龍皇の光翼(ディバイン・デイバイディング)を持ち、さらには禁手(バランス・ブレイカー)に至っている。・・・・・・この差は大きい。

 

だというのに、翔は特に気にした様子も見せずにいた。

 

「だからどうした。確かに禁手(バランス・ブレイカー)の力は絶大なのだろう。

だがな、それだけのことで、臆する理由にはならんな」

 

そう言って、翔はヴァーリへと対峙する。

 

「またせたな、ヴァーリ」

 

「ええ、本当に・・・この時をどれほど待ったか。君にと出会ったあの時・・・。君はコカビエルとの戦闘の後だっていうのに、その眼光の鋭さと放つオーラは衰えておらず、むしろ戦闘前より増していた! ・・・ああ、これが私の宿敵になる存在。君との戦いを想像しただけでこんなにも感情が高ぶるッ!!」

 

全身からドラゴンのオーラは迸らせながら、狂気的な笑みを浮かべるヴァーリ。

 

『典型的なドラゴンに憑りつかれた者だな・・・。力には呑まれていないが、戦いに魅入られている。

どうやって相手するつもりだ、相棒。勝機はあるのか? 女悪魔が言ったように、あちらには禁手(バランス・ブレイカー)に至っている。それだけじゃなく、先代魔王の血筋。生まれ持ったポテンシャルが違いすぎるぞ?』

 

それで?

確かに、ヴァーリから放たれる威圧を見れば、コカビエルを上回る強者なのは一目瞭然だ

・・・だからと言って、それで俺が退く理由にはならないさ

あっちに白龍皇がいるように、こっちには赤龍帝であるお前がいるだろ、ドライグ?

 

『・・・・・・くくくっ、はははははははっ!! ああ、確かに相棒の言う通りだな。

むしろ、この程度の事を乗り越えなくてどうする! さぁ、俺達の力を見せてやれ!

そして、格の違いというものを教えてやれ!!』

 

その言葉と共に、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)から荒々しいドラゴンのオーラが溢れだす。

 

「見ろ、アルビオン! 彼の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)から放たれるオーラッ!」

 

神器(セイクリッド・ギア)は単純で強い想いを力の糧とする。―――真っ直ぐな者、それこそがドラゴンの力を引き出せる真理の一つ』

 

「なるほど・・・彼の方が私よりドラゴンの相性がいいのか。だけど、彼はその強靭な精神で怒りを深く抑え込んで戦う人よ?」

 

『間違いではないが、正解でもないな。抑え込んでいるのではなくて、心の内に秘めているのだ。

心してかかれよ、ヴァーリ。今までのどの敵よりも強敵だ』

 

「わかっているさ!」

 

ヴァーリも翔に負けないようにドラゴンのオーラを放つ。

それを見て翔は呟く。

 

「向こうは準備万全のようだな・・・。なら―――」

 

―――こちらも全力で往くとしよう

 

翔は全身から静かにオーラを迸らせる。

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

互いに沈黙を貫き、相手の出方を見ている。

だが―――

 

「ふっ!」

 

先に動いたのはヴァーリであった。

どうやら待ちきれなかったようだ。

 

一気に最高速度で駆け出すヴァーリ。

その勢いのまま、ヴァーリは強烈な蹴りを翔の顔面へと放たれるが、翔はその蹴りといとも容易く左腕で受け止めようとするが―――

 

「ッ!?」

 

突如、翔は受け止めようとしていた腕を引っ込めて、ヴァーリの一撃を躱し、間合いを開ける。

 

・・・なんだ?

奴の蹴りを受け止めようとしたら、体が勝手に動いた・・・?

 

『相棒は白龍皇の能力を知っていたのか?』

 

驚いたような声を漏らすドライグ。

 

いや、知らない・・・

ただ、ヴァーリに触れたら危険だって頭で理解するよりも体が反応したようだ

 

『そうか・・・。なら教えておく、白龍皇の力は触れた相手を10秒毎に半減させ、半減させた力を己の糧とする』

 

それはつまり、奴は相手がいる限り、常に最大限の力を発揮できるってわけか・・・

 

「・・・厳しいな」

 

『だが、負けることはないんだろ?』

 

「ああ」

 

ドライグの言葉に翔は力強く頷く。

 

『Boost!』

 

籠手から力強い音声が響く。

 

これで10回分の倍加が溜まった・・・

 

「次はこちらから往くぞ、ヴァーリ」

 

『Explosion!!』

 

力を開放する。

翔から莫大な力が放たれる。

左腕にある籠手に右手を添え、もう一つの相棒の名を呼ぶ。

 

「―――アスカロン」

 

光り輝く左籠手にある宝玉から柄が出現し、それを一気に引き抜くと翔の手には一振りの剣が握られていた。

 

『ヴァーリ。あれには気を付けろ。あれは龍殺しの聖剣だ。ドラゴンであり、悪魔の血を引くお前にとっては最悪の武器だ』

 

「当たらなければどうと言うことはないさ!」

 

「それほど余裕があると思うか?」

 

「ッ!?」

 

一瞬、ほんの一瞬。それこそ刹那の時、ヴァーリが翔から注意を逸らした瞬間、離れていた翔が目の前にいたのだ。

翔が独自に創り上げた移動術―――瞬歩。

それにより、ヴァーリの懐に一気に肉迫する翔。

咄嗟に拳を翔に放つヴァーリだが、翔はそれを空中で体を真半身にさせることで躱し、そのまま回転することにより、ヴァーリの背後へと回り込んだ翔はヴァーリの身体に容赦なくアスカロンを斬りつけた。

ヴァーリの白い鎧は何の抵抗もなく容易に斬られ、その身に傷を刻み込んだ。

 

「くっ!?」

 

苦悶の声を漏らすヴァーリ。

聖剣によるダメージで肌は焼けたような痛みと龍殺しのダメージが彼女の身体を苦しませる。

そこに追い打ちをかけるように、翔はその場で前転をする要領で一回転をすると、回転力を加えた踵お年をヴァーリに決める。

ダメージにより反応が遅れたヴァーリはそれにより、地面へと落下し激しい砂埃を舞い上がらせる。

 

「咄嗟にオーラを背中に集中させて、防御したな・・・」

 

『だが、それでも龍殺しの聖剣は奴にとって猛毒のようなものだ。かなり大きなダメージを与えたと思うぞ』

 

ドライグの言う通り、いくら防御をしたところで聖剣は悪魔にとって毒であり、龍殺しもドラゴンにとって毒なのだ。その二つによる攻撃を受けたヴァーリの身体には致命傷に近い、ダメージを受けていても可笑しくはない。

 

「・・・フェニックスの涙か」

 

翔が呟いた通り、ヴァーリは懐から一つの小瓶を取り出すと、それを全身にふりかけた後、残っている分を飲みほした。

 

「・・・くくく、ふふふふふ、あはははははっ!!!!」

 

傷が塞がったヴァーリが突如笑い出した。心底可笑しそうに大きな声を上げて。

ヴァーリはゆっくりとした動作で立ち上がると、鎧を修復させながら翔に視線を合わせた。

兜は収納されており、彼女の素顔が窺える。

その表情はまるで親に新しいおもちゃを買ってもらった時のように期待に満ちており、その口元はまるで猛獣のように歪められていた。

 

「これほどとは思ってもみなかったよ・・・。回復アイテムは使う機会があるだろうと予測はしていたけど、まさかこれほど早くに私に使わせるなんてね。しかも、貴方はまだ禁手(バランス・ブレイカー)にも至っていないというのに・・・」

 

「なら、素直に矛を収めてくれるか?」

 

「嫌よ」

 

翔の問いかけにヴァーリは即答する。

 

「なら、さっさと全力で来い」

 

「・・・気づいていたの?」

 

「ああ。いくらなんでも白龍皇の禁手(バランス・ブレイカー)がこの程度なわけないだろ?」

 

「ふふふ、ははははっ! 流石だわ! それでこそよ! 謝るわ、心の奥底では貴方の事を侮っていたのかもしれないわね・・・」

 

そう言ったヴァーリは、呼吸を整える。

そして―――

 

「ふっ!」

 

小さく息を吐くと共に秘めていた力を全て開放した。

途端に彼女から放たれる魔力の量は増し、質もより洗礼されたものへとなった。

纏う雰囲気も放つ威圧も先ほどとは比べ物にならない。

 

「これが白龍皇の真の力ッ!!」

 

離れた場所でリアス達が戦慄した表情を浮かべる。

コカビエルと対峙したことがある彼女達だが、あの時とは比べ物にならない殺気を肌で感じ取る。

明らかに放たれる力はコカビエルを上回っている。

 

「それが本来の君の実力か・・・」

 

「ええ・・・それじゃ、第二ラウンドの開始」

 

そう告げた瞬間、ヴァーリの姿が翔の視界から消えた。

次の瞬間、咄嗟に右側の頭部を護るように腕を掲げると、襲いかかる衝撃。

 

「くっ!?」

 

あまりの衝撃に苦悶の声を漏らす翔。

腕で受け止めたのはヴァーリの蹴りであった。

 

「あら、この速さにも反応できるのか? ―――でも、触れたわね?」

 

『Divide!』

 

ヴァーリの光翼から響く機械的な音声。

途端に翔は自身の身体から力が抜けたのを感じ取った。

そして、ヴァーリの力が増した。

 

「これが白龍皇の半減・・・キツイな」

 

こちらが10秒ごとに倍加をしても、それを半減され、力を奪われる・・・

このままではジリ貧だな・・・

 

「ほらほら! 考え事をしてる余裕なんてないわよ!」

 

蹴りから始まる怒涛の連撃。

ヴァーリは目にも止まらぬ速度で縦横無尽に空を駆け巡りながら、翔に攻撃を続ける。

あまりの速度で翔は防いだり受け流すことで手一杯だった。

10秒毎に倍加の音声が籠手から響くが、それに合わせて、ヴァーリの光翼に嵌め込まれた宝玉からも半減の音声が響く。

 

消耗を続けていくだけの翔に対して、相手の力を奪い、己の力とするヴァーリ。

戦えば戦うほど、二人の差は開いていくばかりだ。

 

だというのに、ヴァーリは翔に決定打を未だに与えられずにいる。

 

「おー・・・未だにヴァーリの奴がダメージらしいのを与えてないなんてな。

あの赤龍帝は相当な修羅場を何度も潜り抜けてきたようだ」

 

離れた場所で二人の戦いを観戦しているアザゼルが感心したように言葉を漏らす。

 

「それに赤龍帝の奴はヴァーリの動きを完全に捉えていないけど、反応してやがるな」

 

「―――制空圏」

 

「ん?」

 

アザゼルの呟きに祐斗が小さく言葉を漏らす。

それに反応するアザゼル。

 

「制空圏? なんだそりゃ?」

 

「『先に開展を求め、後に緊湊に至る』・・・武術の第二段階である『緊湊』に至る事で自然と見えてくる自分の間合い・・・そこに侵入したものを悉く打ち落とすができ、頭上や背後など自身の死角からの攻撃も正確に察知することが可能になる、って全部翔くんの受け売りですけどね」

 

「ってことは、ヴァーリの動きに体が勝手に反応しているってわけか? ますます規格外だな」

 

呆れたような声を漏らすアザゼル。

 

「だが、翔自身はそれほど会得自体は難しくないと言っていたぞ?」

 

「そりゃそうだろう・・・。あの技の本質は自身の間合いを見極めることだ。

やろうと思えば、一定の実力がある者ならば出来るんだよ。偶にあるだろ?

死角からの攻撃を察知することが出来る時が。それをいつ何時出来るようになればいいことだろ?」

 

ゼノヴィアの疑問にアザゼルが答える。

アザゼルも古から戦い続けてきた者だ。戦いにおける知識や技量も十分に高い。

 

「何だ、思っていたより簡単じゃないか」

 

何でもないように言うゼノヴィアであるが、彼女の言葉に祐斗は首を横に振るう。

 

「ゼノヴィア。君は寝ているときでも、食事をしているとき、そして、無意識な時でも反応できるのかい?

戦っている最中は意識を張り詰めているから察知できるだろうけど、それ以外の日常生活でも同じように出来るかい?」

 

「む・・・・・・今の私には出来そうにないな」

 

顔を顰めて言うゼノヴィア。

 

「そういう木場はどうなんだ?」

 

「翔くんが言うには、何時如何なる時も心を静めて、明鏡止水の心を忘れるな、って言われてるんだけど、中々上手くいかないね」

 

苦笑しながら呟く祐斗。

 

「今すぐに彼のいる領域に辿り着くことなんて出来ない・・・。でも、一歩一歩近づくことは出来る」

 

「ああ、そうだな。何時の日か、部長だけじゃなく、翔を支えられる《騎士》になるためにな」

 

決意が籠った瞳で祐斗とゼノヴィアに二人は、翔とヴァーリの戦いを見つめる。

少しでも己の糧とするために・・・。

 

「翔! 貴方は今までで戦ってきたどんな敵よりも最高よッ!!」

 

高揚した声で叫ぶヴァーリ。

 

「そいつは良かったな」

 

平然と答える翔であるが、内心ではこの状況をどうやって覆すかと、思考を巡らせていた。

 

ある程度目が慣れてきたが、今の俺ではギリギリで反応するのが手一杯だな・・・

 

制空圏を築いている翔は、ヴァーリの攻撃に対応できているが、対応しているだけで、攻めることが出来ない。逆にヴァーリ翔の隙に付け込められずに、決定打を与えることが出来ない。

だが、この均衡が崩れれば、一気に勝敗が見えてくる。

 

この状況は打破するためには・・・・・・・・・あれしかないか

 

「・・・君は一体何がしたいんだ?」

 

不意にヴァーリの攻撃が止まる。

 

「戦いの最中だというのに目を閉じるなど!?」

 

「ふぅ・・・・・・」

 

ヴァーリの激昂を無視して、翔は瞳を閉じるとともに、深い深呼吸を行う。

今まで以上に心を鎮め、静かに語りだす。

 

「明鏡止水・・・。制空圏にはもう一段階、上の領域が存在する。

“静”の極み―――流水制空圏」

 

ゆっくりと開かれる(まなこ)

その瞬間―――

 

ゾクッ!!??

 

「ッ!?」

 

ヴァーリは今まで感じたことがない悪寒が全身に襲いかかる。

 

何だ・・・何なんだ!? この全身に走る寒気は!?

彼の瞳からは、殺気、闘志が何も感じられない・・・戦意喪失?

・・・・・・・・・いや、静かだが重い闘争心が瞳の奥深くに秘められている

 

おおよそ戦いには異質な雰囲気を纏う翔に、ヴァーリは困惑した表情を浮かべる。

確かに今まで、翔のように冷静に物事を見定めて、戦う相手もいた。

だが、彼以上に闘争心がないと思わせるほどの静かなオーラは見たことがない。

 

「相手の流れに合わせ、そして一つになり、最後は己の流れに相手を乗せる・・・」

 

「何を言っているんだ・・・?」

 

「お前には理解できないだろうさ・・・。ほら、続きをやろう」

 

「・・・雰囲気を変えたからって、今の君に私の攻撃を躱すことは出来ない!」

 

そう言って、ヴァーリは光速で動き回り、動きを読ませないために撹乱しながら、翔の真横に肉迫すると、そこから強烈な回し蹴りを放った。

だが―――

 

「ッ!? 躱された!?」

 

先ほどまで、防いだり受け流すので背一杯だった翔が、いとも容易くヴァーリの一撃を最小限の動きのみで躱したのだ。

 

「まだまだ!」

 

一撃を躱されたのをまぐれだと思ったヴァーリは、先ほど以上の速さで次々と攻撃を放つのだが、そのどれも翔は最小限の動きのみで躱していく。

 

何なの!?

彼のいないところに私の攻撃が吸い込まれるみたい・・・

私の心が読まれているとでも言うのッ!?

 

「はぁああああ!!」

 

気合を籠めた声と共にヴァーリは渾身の力を込めた拳を放つが、それは翔に難なく掴まれてしまった。

 

「お前の流れに乗ったんだ。今度は俺の流れに乗ってもらうぞ」

 

「くっ!?」

 

攻められると思ったヴァーリは必死に拘束から逃れようとするが、それも空しく今度は翔の攻撃が始まった。

 

相手を一切動くことなく、内部のみを破壊する強烈な右突きの不動砂塵爆から始まり、体勢を崩したヴァーリの頭を掴むと大地に向かって投げ倒す。

地上から離れた宙で戦っていたため、地面に投げ倒された際の衝撃は凄まじく、ヴァーリの身体が地面に減り込むほどだ。

 

地面に叩き落とされたヴァーリは全身に痛みを感じながらも立ち上がり、宙にいるであろう翔を見上げようとするが、すでに翔はヴァーリの目前にいて、次の動作に入ろうとしていた。

 

咄嗟に両腕を構えて、防御の姿勢を取るヴァーリだが、翔はそれをこじ開け、大地に踏み締めた足から送り出された力を背中の筋肉で増幅させて放つ双掌打、双纒手を放つ。

そして、肘打ちを二連撃加えた後、上方へと右掌打を放ち、腕全体をまるで鞭のように振り回して、体ごと回転させて手に気血を送り込み硬質化させた左掌打をヴァーリの鳩尾に叩き込む。

 

「―――頂肘鬼哭烏龍盤打(ちょうちゅうきこくうりゅうばんだ)

 

「ごふっ!?」

 

最初の一撃でヴァーリの純白の鎧の全体に亀裂が奔り、二撃目の投げで鎧の大半が粉々に砕け散り、防御もままならない状態で連撃を喰らうヴァーリ。素の状態でも翔の一撃一撃の威力は計り知れないが、最後に放たれた掌打には左籠手に収納されたアスカロンの龍殺しの効果により、さらにダメージは増大されている。

それをまともに受けたヴァーリのダメージ量は計り知れない。

大量の血を吐き出すヴァーリ。

どうみても瀕死の重傷であり、とても戦いを続行できるとは思えないのだが―――

 

「・・・ふふふ、ふはははははっ!!!」

 

ヴァーリは全身を震わせながらもゆっくりとした動作で立ち上がる。

そして、笑い声を響かせる。

 

「私の攻撃は君には届かないのに、君の攻撃は悉く決まる・・・。

流石に嫌になるな、これほど一方的なのも久しぶりだ。もう笑うしかない」

 

ヴァーリは静かに語る。

龍殺しの影響で鎧の修復が遅れているため、その時間稼ぎと共に少しでも体力を回復させようとしているのだろう。

それほどまでに今のヴァーリは追い詰められていたのだ。

自身の攻撃のほとんどは防がれ、受け流され、そして躱される。

だが、翔の攻撃は躱すことは愚か、防ぐのも至難の業・・・・・・それほどまでに翔の技量は凄まじく、実力の差は歴然であった。

 

「一体どれほど戦い続けてきたんだい? 私は貴方の生涯をもっと知りたくなったよ・・・どれほどの強敵と戦ってきたのだろう・・・想像するだけでも楽しくて仕方がないッ!!」

 

自身に両腕で体を抱きしめて思いのままに叫ぶヴァーリ。

 

禁手(バランス・ブレイカー)に至っていないという大きなハンデを持ちながらも、翔は今まで鍛え上げてきた力と技量、そして幾たびの戦いを経て積み重ねられた経験を駆使して、ヴァーリと互角・・・いや、圧倒して見せたのだ。

 

戦闘狂のヴァーリが興奮しないわけがない。

 

「・・・それで、これからどうするんだ? すでにお前は重傷だ。フェニックスの涙ももうないだろう?」

 

「ええ、そうね。接近戦では貴方と対等にやりあうにはまだまだ酷な話・・・。

魔力による遠距離も君が持つ特殊な移動術の前では無意味・・・・・・」

 

冷静に今の状況を見極めるヴァーリ。

彼女が言っていることは全てが正しく。現在の彼女はまさに八方塞がりといった状態だ。

 

「うん。やっぱり、『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を使うしかないと思う、アルビオン」

 

『本気か・・・? 受けたダメージが大きすぎる上に、魔力も消費し過ぎている。

そして何より、ドライグの呪縛が解かれてしまうかもしれない』

 

「願ったり叶ったりだ。今以上の力を見れるというのなら、私はその上を行って見せる!

『我、目覚めるは―――』」

 

『自重しろ、ヴァーリ!』

 

ヴァーリが何かを呟き始めると、アルビオンの静止の声が響く。

 

「随分と危ないことをしようとしているようだな・・・」

 

『ああ、そうだな。『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』という忌むべき力だ』

 

吐き捨てるようにいうドライグ。

 

『だが、威力は絶大だ。なんせ、宿主の生命力を糧に力を得るのだからな。

ヴァーリ・ルシファーの場合はその類まれる莫大な魔力の保有さ故に短時間ならば、使用できるのだろう。

だが、アルビオンの話を聞く限り、その糧となる魔力を消費しているようだからな。

危険な行為には変わりないのだろう・・・。どうするんだ、相棒?』

 

答えなど分かり切っているであろうに、ドライグは敢えて問いかける。

 

「止めるに決まっているだろう」

 

『くくくっ・・・予想通りの回答だな。

だが、どうやって止める? 未だに白龍皇の半減の力は作用している。一撃で決めようにも決定打に足りていないぞ?』

 

「だからどうした? それだけの理由で諦めるつもりなど欠片もない」

 

『くくく・・・ははははっ!!

そうだな!その通りだ!相棒が!御剣翔という男がこの程度で諦めることなどあり得ないな!』

 

翔の言葉にドライグはこれでもかというほど大きな笑い声をあげる。

 

『それでどうするんだ? 現状では明らかな火力不足。倍加しようにも白龍皇の力で半減されてしまう』

 

「なら、それを上回る力を出せばいいだけだ。あるだろ?神器(セイクリッド・ギア)にはとっておきの切り札が・・・」

 

『だか、あれに至るにはそれ相応のきっかけが必要だ。世界の均衡を崩しかねないほどのきっかけが・・・・・・。

至ろうと思ってもそう易々とは至れるものじゃない」

 

「『覇の理に全てを奪われし二天龍なり―――』」

 

ヴァーリの詠唱が続けられる。

集中しているようだが、翔がその隙に攻撃をしても簡単には倒れてくれないだろう。

それにあれは例えヴァーリの喉を潰そうが、止まらないと翔は感じ取っていた。

 

神器(セイクリッド・ギア)は所有者の想いに応える。

ならば、俺は『覚悟』と『誓い』を示す」

 

そう言った翔はその場に片膝をつくと、左手を胸に添える。

すると、まるで月の女神が彼を祝福するかのように雲の切れ間から月の光が彼だけを優しく照らし出す。

その光景に誰もが目を奪われた。

 

翔は静かに詩を紡いだ。

 

 

―――我、望むは救う力 護る力

 

 

己を示す言霊を紡ぐ。

だが、全てを口にする必要はない。

詠唱とはあくまでも自己に働きかけるものに過ぎない。

故に、今は必要な言葉だけを静かに紡いでいく。

 

 

―――彼の者は常に独り 果てなき想いを胸に刀を振るう

 

 

長い・・・(なが)い時間を歩き続けた。

叶うはずのない願いだとしても、他人からしたら理解など出来ない生涯だったとしても・・・・・・この歩んできた道程は決して後悔などない。

 

 

―――故に、我が生涯に意味は要らず

 

 

その結末の果てが決して報われるものではなかったとしても、得たものが何もなかったとしても、彼は誰かを護り救う刀で在り続けた事だけは決して変わらぬ事実だ。

 

 

―――その者は、きっと『永久に続く希望と絶望』の想いを抱き続けるだろう

 

 

瞬間―――

 

赤い輝きと共に莫大な力の奔流が辺り一帯を包み込む。

誰もが赤で視界を埋め尽くされたのだが、一瞬・・・ほんの一瞬だけある光景が見えた。

 

果てしなく続く金色に輝く平原、常闇が支配する綺麗な夜空が広がる世界―――そして、漆黒の刀を振るう漆黒の衣に身を包んだ男の姿を・・・・・・。

 

 

ドクンッ!!

 

 

力強い脈動が響いた。

 

 

―――禁手(バランス・ブレイカー)

 

 

赤い龍が目覚めた。

 

 




ヴァーリの戦闘がぐだぐだになってしまってますが申し訳ありません。
今の私にはこれが限界です。いずれ修正させるつもりです。

次の話でこの章は終わると思いますので
ようやくエヴァの方が連載を開始出来そうです。

それと活動報告でも書きましたが、ここでもお聞きします。
活動報告で皆様がくださったコメントって、どうやったら見れますか?
無知な私に誰か教えてください(つД`)ノ
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