ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~ 作:satokun
一気に後半は書き上げたので、無理やり感があるかもしれませんがご了承ください。
使用人の案内された部屋は異様な空間が広がっていた。
翔達のことを見下ろすような高い場所に席が設けられており、そこには初老の悪魔が数人が腰をかけていた。さらにその上に魔王であるサーゼクスやセラフォルーが座っており、他に見知らぬ悪魔が二人座っている。緑色の髪で妖艶な顔つきの美青年と覇気がなくやる気だるげで眠たそうにしている男性だ。
あの二人が残りの魔王か・・・
その下に座っている初老の悪魔達が上層部の者達だな
見上げて上にいる者達の事を確認する翔。
そして、中でも注意を向けたのはサーゼクスの横に座る妖艶な顔つきの美青年。
あの人はサーゼクスさん同様に他の悪魔とは一線を画しているな
すでに悪魔という種族の枠組みを外れている・・・
視線に気づいたのか、彼は翔のことを見て軽く笑みを浮かべ、隣にいるサーゼクスに話しかけた。
そして、サーゼクスから何かを聞いたようで再び翔に視線を戻すと、興味津々な視線を向ける。
それに対して、翔は軽く肩を竦めてから視線を外す。
それにしても、嫌な雰囲気だな
魔王達は違うが、それ以外の悪魔達は完全にこちらを見下している・・・
集まった若手悪魔であるリアス達が横一列に並ぶと、その後ろに各眷属達は自分達の主の後ろに
控えるように立つ。
リアスの後ろに控えている翔が内心で愚痴を吐いていると、初老の悪魔の一人が口を開いた。
「よく集まってくれた。今日は次代を担う貴殿らの顔を確認するために集まってもらった。
これは一定周期ごとに行う、若き悪魔を見定める会合でもある」
「早速、やってくれたようだが・・・」
手を組みながら威厳が満ちた声で語ると、一人の悪魔が皮肉げに言葉を足した。
「まぁ若気の至りとしとこうか。君達六名は家柄に実力、共に申し分のない次世代の悪魔だ。
だからこそ、お互い競い合い、力を高めてもらおうと思う」
笑みを浮かべながらサーゼクスがそう言う。
恐らく、魔王の中でもリーダー格なのがサーゼクスなのだろう、と翔が内心で考えているとリアスの横に立つサイラオーグが手を挙げた。
「一つ質問を宜しいですか、サーゼクス様」
「何だね、サイラオーグ?」
「我々もいずれは『
その問いかけに対して、サーゼクスは僅かに顔を顰めた。
「それはまだ分からない。だが、出来るだけ若い悪魔達は投入したくはないと思っている」
その答えにサイラオーグは納得できないといった表情を浮かべて、再度問いかける。
「何故です? 若いとはいえ、我らとて悪魔の一端を担います。すでにこの場にはテロ組織と戦って、生きて戻った者達までいる。この歳になるまで先人の方々からご厚意を受け、なおも何もできないとなれば―――」
「サイラオーグ、その勇気は認めよう。だが、それと同時に無謀だ。確かにリアス・グレモリーとその眷属達はテロ組織との戦に参加した。だが、それは彼らの意思ではなく、巻き込まれただけだ。
本来ならば、そのようなことはあってはいけない。
何よりも成長途中の君達を戦場に送るのは避けたい。次世代の悪魔を失うのはあまりにも大きいのだよ。理解して欲しい。・・・君達は君達が思う以上に我々にとって、宝なのだよ。だからこそ大事に、段階を踏んで成長して欲しいと思っている」
言葉を遮って話すサーゼクス。
サーゼクスの言っていることは正しい。
いくら実力があったとしても実戦経験の少ない者は戦場で命を落とすことは多くある。
実戦経験がある者は戦いの進め方を知っている。それを知っているのと知っていないのでは大きく差が出てしまう。
サイラオーグは、一応は納得したように返事を返すが、浮かべる表情は不満で満ちていた。
・・・彼は実力が示したいのか? それとも戦果を挙げたいのか?
それかただ単に己の力を振るいたいだけか?
・・・・・・どれも当たりではないが、違うとも言い切れない何かがあるようにも感じられる
滅びの力を受け継がなかったのと何かしら関係があるのだろうか・・・?
そんなことを思考していると、次はこの場にいる悪魔達が様々な話を始めた。
ある程度話し終えたようで、最後といった風にサーゼクスが若手悪魔達に向けて話し出す。
「最後に今君たちが胸に秘めている今後の目標・・・夢や野望を聞かせてくれないか?」
笑顔でそう問いかけてきたサーゼクスに対して、一番最初に答えたのは―――
「俺は魔王になるのが夢です」
はっきりと堂々とした態度でサイラオーグは言い切った。
上層部の者達もサイラオーグの並ならぬ意思を秘めた相貌に感嘆の声を漏らす。
「大王家から魔王が出たら前代未聞だな」
「冥界の者達が俺が魔王に相応しいと感じれば、自然とそのようになるでしょう。
そう感じられなかったのであれば、俺はそこまでの男という事だ」
そう語った彼の表情には迷いなど一つも無かった。
「そうか。これから先が楽しみだ。次は―――」
サーゼクスが笑みをこぼして、次の者に促そうとすると、それよりも早くリアスが挙手をして発言した。
「私の目標は私の愛すべき眷属達と共に己の『誇り』を忘れずにレーティングゲームの覇者となる事です。それが現在の目標です」
そう告げた彼女の瞳は力強く輝いた。
それを見たサーゼクスは思わず笑みをこぼす。
その後もシーグヴァイラ、ディオドラ、ゼファードルが己の夢や目標を語っていき、
最後にソーナが残った。
彼女はいつも通りの冷静な表情を浮かべて告げる
「冥界にレーティングゲームの学校を建てるのが夢です」
ほう・・・レーティングゲームの学校か
だが、それはすでにあったはずだ・・・・・・いや、あれは限られた者達、つまり貴族といった極一部の者達しか通えないものだったな・・・
なるほど、おそらく彼女が作りたい学校とは―――
翔はソーナが目指すものについて結論が出たところで、本人がその答えを告げた。
「レーティングゲームの学校と言っても、すでに現存している上級悪魔や特例の悪魔のための施設ではありません。―――平民や下級悪魔、そして転生悪魔。彼らが平等に学ぶことのできる、学校を作ることが私の目標です」
それで彼女は生徒会長という役職をやっていたのかもしれないな
彼女らしい夢だ
だが―――
『ハハハハハハハハハハハハハッッッッッ!!!!!!』
笑い声が響き渡る。
馬鹿にするように嘲るように大きな笑い声が・・・。
初老の悪魔達の笑い声が会場を支配した。
「それは無理だ!」
「これは傑作だ!」
「なるほど! 夢見る乙女と言うわけですな!」
「若いと言うのは良い! しかし、シトリー家の次期当主ともあろう者がその様な夢を語るとは・・・。
ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったと言うものだ!」
彼らが笑いを抑えて放った言葉は全てソーナの夢を馬鹿にするものであった。
誰一人、彼女の夢を肯定する者はいなかった。
「・・・今の冥界がいくら変わりつつあるとしても、上級と下級、転生悪魔、それらの差別はまだ存在する。それが当たり前だと未だに信じている者逹も多いんだ」
上層部の反応に対して、近くにいた祐斗が小声で翔にそう告げる。
それに対して翔はあまり反応せずに腕を組んで目を瞑っている。
そんな彼に心配する祐斗であったが、それ対しても翔は短く返事をするだけだった。
不思議に思う祐斗であったが、それ以上は話しかけず彼もソーナの夢が馬鹿にされたことに内心で腹を立てながらも、ぐっと堪えていた。ここで自分が騒ぎを起こせば、主であるリアスに迷惑がかかるのを理解していたからだ。
だが、この時祐斗は失念していた。
翔がこのような状況を黙認するはずがないというのに、普段の彼ならば真っ先に首を突っ込んでいたはずだ。
そのことが完全に頭から抜けていたのだ。
「私は本気です」
非情な言葉を受けながらソーナは決意の籠った眼を上層部に向けながら告げた。
セラフォルーは愛すべき妹の目標に全力で頷いていたが、それとは反対に上層部の悪魔達は冷徹な声で言葉を返した。
「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出されるのが常だ。
そのような施設ができてしまえば、伝統と誇りを重んじる旧家や名家の顔に泥を塗る事になりますぞ?
いくら悪魔の世界が変革の時期に入っていると言っても変えて良いものと悪いものがあります。
全く関係の無い、たかが下級悪魔に教えるなどと・・・」
その言葉を聞いて、ソーナの後ろに控えていた匙が我慢の限界を超えたようで、上に座る上層部の悪魔達に対して、自分達の思いを叫ぶように伝える。
「黙って聞いてれば、なんでそんなに会長の―――ソーナ様の夢をバカにするんスか!?
こんなのおかしいっスよ! 叶えられないなんて決まった事じゃないじゃないですか!
俺達は本気なんスよ!」
主の、そして自分達の思いを必死に伝えようとする匙であったが、
その行為は虚しいほど無意味であった。
「口を慎め、転生悪魔の若者よ。・・・ソーナ殿、下僕の躾がなってませんな」
視線を鋭くして冷徹な声を匙にかけると、その主であるソーナに冷ややかな表情を浮かべてソーナに告げる。
それに対して、ソーナは静かに頭を下げると謝罪の言葉を述べる。
「・・・申し訳ございません。あとで言ってきかせます」
「どうして、どうしてですか! 会長! この人逹、会長の、俺達の夢をバカにしたんスよ!
どうして黙っているんですかッ!? 例え、今の悪魔社会では考えられないことだとしても、会長の夢はこれからの冥界で大切なことなんスよ!! いくら会長の命令でもそれだけは聞けません!!」
匙は視線を上層部の悪魔達から外して、主であるソーナに対して吼えるように言葉を放つ。
彼の眼には、決してどのようなことを言われても撤回をする気はない、という意思が籠められていた。
「お黙りなさい。この場はそういう態度を取る場所ではないのです。私は将来の目標を語っただけ。
それだけの―――」
興奮する匙に対して、ソーナは冷静に言葉を紡いでいくが、それは途中で止めた。
いや、止めざる得なかった。
ゾクッ!!!???
突如、襲い掛かる重圧にソーナはその身が固まってしまった。
研ぎ澄まされた鋭く濃密な殺気・・・。
誰もがソーナ同様に体を硬直させてしまう。
気になる発生源は―――
「・・・・・・・・・・・・」
―――翔だ。
腕を組んで悠然と立っている。
先ほどまで閉じていた、その漆黒の
「しょ、翔! お、落ち着きなさい!」
リアスは慌てて翔に殺気を抑えるように告げるが、その顔は真っ青であり体は震えていた。
いや、彼女だけでなく他の若手悪魔やその眷属達もリアスと同じように震えており、気が弱いものは立ったまま失神していた。
あの若手ナンバー1のサイラオーグで襲い掛かる重圧に立っているのやっとといった様子だ。
そして、一番上にいる魔王達でさえも冷や汗を掻くほどのものだ。
そのような殺気を向けられている上層部の悪魔達はまるで喉元に鋭い切っ先が向けられているかのような錯覚に陥っている。
誰もがこの状況に対して、どうすることもできない最中、漸く翔の口が開かれた。
「ああ、すまないな。・・・あまりにも馬鹿みたいな事を言う者達がいたので」
静かに丁寧に言葉を告げるが、その声色は恐ろしいほど冷たいものであった。
「先人である者達が、これから未来を担う若者の夢を笑うなど、馬鹿にもほどがある。
最もこのまま勝手に滅びたいのであれば、何も言わないがな」
「・・・・・・それはどういう意味だい?」
肩を竦めてそう告げた翔に、今まで口を閉ざしていたサーゼクスが問いかける。
それに対して、翔は僅かながら呆れた声色を混ぜて言葉を発す。
「本気でわからないのか? 魔王サーゼクス。
・・・今のやり方で転生悪魔を増やし続けていたら、いずれ力の持つ転生悪魔達が手を取り合って、反逆を起こすのは目に見えている。そもそも何故、はぐれ悪魔と呼ばれる存在が出るのか・・・それを考えてことがあるか? 単純に力に溺れ暴走した者いただろう・・・。だが中には無理やり悪魔に転生させられ、眷属とされた者達もいるはずだ。
皮肉を織り交ぜて告げられていく言葉だが、その全てが正しいのは問いかけたサーゼクス自身がよく理解していた。
魔王の一角であるアジュカ・ベルゼブブが作り出した転生システム『
だというのに、転生悪魔への待遇の悪さ、理不尽な眷属契約、無理やりな転生・・・。
そのようなことが続けば、いずれは我慢の限界を超えた者達が現れるのも不思議ではない。
語り終えた翔は放っていた殺気を抑える。
すると、途端に先程まで殺気に怯えていた上層部の悪魔達が翔に対して怒りを露わにする。
「転生すら出来なかった人間風情が!」
「我々を侮辱するというのかッ!」
「立場を弁えない若造が!消されたいのか!」
次々と上層部の悪魔達から放たれる言葉に対して、翔は特に気にすることなく、全身から赤黒い魔力を迸らせ、その魔力がこの空間を覆い尽くす。
ザワッ・・・
先程以上の悪寒がこの場の全員に襲いかかる。
圧倒的な存在が無意識の内に放つ威圧によって押し潰されるような感覚・・・。
喉が渇き、全身の力が全て抜け落ちる若手悪魔達とその眷属達。
誰もが翔の姿を確認しようと視線を動かした結果・・・・・・彼らは言葉を失った。
翔の背後には赤い龍が顕現し、まるで上層部の悪魔達を威圧するかのように見下ろしていた。
・・・その昔、三大勢力が争っていた時に乱入してきた存在。
当時から生きている者ならその偉大さと圧倒的な力を知っているその赤い龍の名を静かに呟かれた。
「『
神、魔王すら屠ることが出来る伝説のドラゴン。
―――赤龍帝ドライグ。
質量を持つかのように、そこに存在するかのように圧倒的な存在感が感じ取れる赤い龍。
だが、それはすぐに消え去り、襲いかかっていた威圧も悪寒もなくなっていた。
まるで夢や幻であったかのような一瞬の出来事・・・。
誰もが先程の光景に絶句していると、ある者が言葉を漏らした。
「・・・人間界ではパントマイムと呼ばれるモノマネ芸がある。
それの一流のパフォーマーは目の前に見えない壁があるかのように、重みのないバッグに重みを持たせるかのように演技のみで他者を錯覚させることができる」
―――アジュカ・ベルゼブブだ。
彼は面白いものを見つけたかのような様子で声を弾ませて語る。
だが、誰もが彼の言葉の意味を理解できないでいた。急に何を話し始めたのだろう、と思っているのが殆どだろう。
「アジュカ・・・君は何が言いたいんだい?」
この場にいる全員の思いを代弁してサーゼクスが問いかける。
「いや、何・・・久々に面白いものが見れたからね。
さっき僕達が見た赤い龍は彼が発する威圧と魔力によって僕達が勝手に想像した産物に過ぎない。
実際は存在しないし、彼自身が作ったものでもない。あくまで僕達が勝手に浮かべたイメージだ」
『ッ!!??』
その言葉に誰もが衝撃が襲う。
それもそうだろう。あれほどはっきりとした存在が自分達の脳が勝手に作り出したイメージとはとても信じられない。
だが、アジュカの言葉を否定する術を誰も持っていない。
彼らは本能的に悟っていたのだ。彼の言葉は正しい、と・・・。
そんな中、渦中の人物である翔が口を開く。
「話は大分それたな・・・。俺が言いたいのは貴様らにソーナ・シトリーの夢を嗤う権利などあるのか?
先に尋ねてきたのは誰だ? 他ならぬ魔王だろう。若手は『宝』だと言ったのも魔王だ。その『宝』の夢を嗤うなど、貴様らは魔王の言葉すら聞こえていないのか? 彼女の夢はこれから冥界が変わっていく上で重要になっていくだろう・・・。
もう一度聞く。―――貴様らに彼女の夢を嗤う権利はあるのか?」
その問いかけに上層部の悪魔達は何かを言おうとしては口の中で消えていくのを繰り返していると―――
「翔くんの言う通りだよ! おじさま逹はうちのソーナちゃんをよってたかっていじめるんだもの!
私だって我慢の限界があるのよ! あんまりいじめると私がおじさま逹をいじめちゃうんだから!」
いきなりのセラフォルーの言葉に上層部の悪魔達もどうすれば良いかわからないといった反応を見せている。
そもそうだろう。涙目で睨む彼女は非常に可愛らしいが、その身から放たれる凄まじい魔力・・・・・・流石は魔王の一人である。
それも大切な妹の夢を馬鹿にされて、何時爆発しても可笑しくはない状況だ。
すると、サーゼクスが割って入り、両者を諫める。
「セラフォルー、それに翔くんも少しは落ち着いてくれ。君達の気持ちも分かる。
皆さま方も若者の夢を潰さないでいただきたい。どんな夢であれ、それは彼らにとって動力源になるのですから」
そして、サーゼクスはある提案を出す。
「そこでどうかな、ここにいる若手悪魔同士でレーティングゲームを行おうではないか」
その提案に魔王達を除いた者達から驚きや困惑、喜び、感嘆といった様々な声を漏らした。
「サーゼクスちゃん、ナイスアイディア! そうよ、ソーナちゃん! ゲームで好成績を残せば、叶えられることが多いもん!」
その中でもセラフォルーは飛び跳ねる勢いで椅子から立ち上がり、その提案に賛同する。
サーゼクスは詳しい話の内容を話し始めた。
「アザゼルが各勢力のレーティングゲームのファンや興味がある者達を集めて、リアスにゲームをさせるつもりだったのだよ。なんせ、彼女とその眷属達はテロ組織と戦闘経験があるからね。他の勢力にもその噂は届いてしまっていたため、彼女をゲームに出さざるを得ない状況だったんだ。
だが、リアスだけではなく、ここにいる次世代を担う若手悪魔同士でデビュー前のゲームを行うことにしよう。そちらのほうが観客達も大いに楽しめると思うからね」
若手悪魔達にとっては初めての公式なゲームである、それに戸惑いや不安が混じった表情を浮かべることはなくだれもが不敵な笑みや闘志に満ちた表情を浮かべていた、
「まずはリアスとソーナの二人で対戦カードを組もう。対戦日は人間界の時間で8月20日。
それまで各自好きに時間を割り振ってくれて構わない。詳細と他の者達の組み合わせも後日伝えよう」
サーゼクスがそう言って、この会合は終わりを迎えた。
・
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「翔! 貴方は何てことをしでかすのよ!!」
会合が終わり、会場を後にしたリアス達は広く開かれた通路にいた。
この場にいるのはリアスとサイラオーグとその眷属達がおり、その状況の中でリアスは先程の行動について翔を説教をしていた。
「ああ、すまないと思っている。この件に関して咎められたら俺一人でその処分は受けるつもりだ」
「だから、そういうことを言ってるわけじゃないわ! 貴方はそうやって何時も一人で背負い込んでッ!!」
翔の言葉に苛立ちを覚えるリアスはますます声を荒らげて言葉を放つ。
「そう苛立つなリアス。それでは伝えたいことも伝わらんだろう」
すると今まで静観していたサイラオーグがリアスを諫める。
「それに御剣翔の言う事の全てが間違いではあったとは断じきれないだろう。
少なくとも俺は共感した。確かに誰にもヒトの夢を嗤う権利などはない」
「それはそうだろうけど・・・。あそこでお兄様が・・・魔王様がおっしゃってくれなければ、今頃どうなっていたことか・・・。まぁ、あそこで何も言わなかったら翔じゃないものね」
サイラオーグの言葉を聞いて、呆れと諦めが混じったような表情で言うリアス。
すると、眷属を率いたシーグヴァイラが翔達の元に姿を現した。
「こんなとこにいたのですね」
「どうしたんだ、アガレス? まだ帰っていなかったのか?」
「ええ、少しばかり赤龍帝とお話がしたいと思いまして」
サイラオーグにそう告げたシーグヴァイラは翔の前と足を進める。
「俺に何か用なのか?」
「どうしてあのようなことをしたのですか?」
「さてね・・・。君が何を言っているのかわからないな」
シーグヴァイラの問いに対して、翔は肩を竦めてはぐらかす。
そんな翔の態度に対して、彼女は何も言わずに言葉を続ける。
「上層部にあのようなことを言えば、どうなるか分からない貴方ではないでしょう?
貴方だけではなく、同じ眷属達・・・そして主にまで罰が下される可能性もあります。貴方はそれを踏まえた上で、上層部に啖呵を切りました。何故そのようなことをしたのですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
その問いかけに翔は答えないでただ苦笑を浮かべた。
「それは俺も気になるな」
翔が答えないでいると、腕を組んでいたサイラオーグは真っ直ぐと翔のことを見据えながらそう告げる。
だが、それでも翔は沈黙を貫いた。
数分の間、誰もが口を閉じて翔の言葉を待っていると、当の本人が軽く溜め息を吐いてからその口を開いた。
「どうやら、俺が言うまで終わらないらしいな」
観念したかのように翔が二人の問いかけに答える。
「・・・・・・泣いていると思ったんだ」
「泣いている?」
その言葉にリアスが疑問を返す。
「ソーナは心の内で涙を流していたと思ったんだ。自分の夢を馬鹿にされ、嗤われた。
きっと凄く悔しかったのだろう、言い返したかったのだろう、と俺は思った。
だが、彼女はそれを決して顔には出さず、内で誰にも悟られずに泣いていたと感じたんだ」
彼の言葉に誰もが口を閉じる。
「伝統や誇りが重んじるのは良い・・・。それも大事なことは理解している。
だが、それは時に呪いともなってしまう」
「呪い、ですか?」
シーグヴァイラが聞き返し、それに翔は頷き、言葉を続ける。
「今まで争っていた、悪魔と天使、堕天使の三勢力が手を合わせて未来に向かって歩もうとしている。
・・・悪魔の世界にも変革の時が来ているのに、それは呪いとなり邪魔なものでしかない。
これを機に悪魔の世界も変わらないといけない。その一歩にソーナの夢は立派だと俺は思う」
翔の言葉に皆が思うことがあるのだろう。
誰もが思案顔でその言葉について考えていると―――
「・・・翔くん」
自身の眷属を率いたソーナが姿を見せた。
「どうしたんだ?」
翔の姿を見てソーナは何か言おうとしては口を閉じて、言う言葉を迷っている様子が感じられたが、すぐに切り替えて、小さく、だが翔に届くように一言告げた。
「・・・ありがとう」
頭を下げて翔に贈る純粋な感謝の言葉。
それに対して、翔は苦笑しながら言葉を返す。
「俺は感謝されることをした覚えがないが? ただ単に上層部の態度が気に入らなかっただけだ」
「惚けるなよ・・・。会長と俺達の夢を馬鹿にされて、何も出来なかった俺達に代わって言ってくれたんだろう?」
「さてね、俺にはそんなつもりがあったわけじゃないのだが・・・。それに何も出来なかったのは違うな。
匙、お前はソーナの夢を嗤われたのに対して、お前も言い返したじゃないか?」
「俺はただ言い返しただけだ。それだけで何も出来なかった。御前は、ちゃんと会長の夢の意義を遠回しに魔王様に言っていたじゃないか」
翔が魔王サーゼクスに向けて言った言葉。
転生悪魔や下級悪魔に対しての不遇な措置について・・・。
それを無くすためにはソーナの夢が重要なことになっていく事に他ならない。
翔は遠回しではあるが、ソーナの夢の重要性を魔王達に告げたのだ。
もっともそれは匙や生徒会達の勝手な憶測であり、真相は本人しか分からない。
匙の言葉に翔は肩を竦めるだけで何も答えない。
すると―――
「・・・翔くん」
先ほどまで頭を下げていたソーナが一歩翔に近づく。
「あの・・・どうして、私達の為にあんな行動を起こしたのですか?
貴方には関係ない筈だと言うのに・・・それに自分の立場を悪くしてまで・・・」
「気に病む必要はないさ。俺が勝手にしでかしたことだ。勿論、リアス達には悪いと思っているがな」
そう告げてこの話題を終わらせようとする翔にソーナは何も言えなくなってしまう。
そのため、彼女は別の問いかけを投げかけた。
「貴方は私の・・・私達の夢はどう思っていますか?」
問いかけられた本人は柾回分にそんな質問が来ると思っていなかったので僅かに驚きを示したが、すぐに優しい表情を浮かべて、自身の思いを語る。
「レーティングゲームについて誰にでも学べる機会がある、そんな学校があればこれまで耐え忍んできた者達が救われる。俺はその夢に全力で応援するさ。
だからもし、ソーナ達の夢を笑う奴らがいたら、俺に言ってくれ。そいつらにも言ってやるさ。
『人の夢を馬鹿にする権利がお前にあるのか』ってな。例え魔王だとしてもな」
笑いながら、さらりと恐ろしい事を言う翔に周りの者達は苦笑いを浮かべたり、興味深そうに見つめたりとしていた。
「おいおい、恐ろしいことを口にするんだな?」
「末恐ろしい事をするのですね・・・仮にでもですが」
匙とソーナが僅かに冷や汗をかきながらそういう。
「ま、そんなことはしないさ。今の俺では魔王達には勝てないさ。―――なぁ、魔王様方?」
「それは分からないよ」
すると、リアス達の背後から新たな声が聞こえた。
誰もが振り返り声の主を確認すると、そこにはサーゼクス・ルシファーにセラフォルー・レヴィアタン、アジュカ・ベルゼブブ、ファルビウム・アスモデウスの四大魔王がいた。
彼らの姿を確認した途端、翔を除いた誰もがその場に跪く。
「いいや、気にしなくていい。全員楽にしてくれたまえ」
サーゼクスのその言葉にリアス達はゆっくりと姿勢を戻す。
そして、彼の妹であるリアスが驚きと戸惑いを混ぜた声で問いかける。
「ど、どうして、お兄・・・魔王様がここに?」
「リアス、ここではいつも通りでいい。私達はソーナとその眷属達に謝りに来たのだ。
―――すまない。君達の夢と目標を踏みにじる様な事になってしまって申し訳ない」
そう言って、サーゼクスは頭下げると他の魔王達も同様に頭を下げソーナ達に謝罪の姿勢を見せた。
その光景にソーナ達は眼を見開いて驚きを示した。
それもそうだろう。魔王達が頭を下げる光景などそうはお目にかかれないだろう。
翔だけは、ほう・・・と感心したような言葉を漏らすが・・・。
「あ、頭を上げてください! 気にしていませんから!」
「サジの言う通りです! ですから、頭を上げてください!
一介の悪魔に魔王様が頭を下げる様な事をしたら問題が起きます。
私達はもう気にしていませんから」
「そう言ってくれると有り難い・・・」
「ありがとう、ソーナちゃん☆」
慌てたように匙が言葉を放つとそれに続くようにソーナも慌てて頭を上げるように促す。
すると、魔王達は深々と下げていた頭を上げ、サーゼクスとセラフォルーが感謝の言葉を送る。
「さて、それでもう一つ用があるようだが?」
話に区切りができたので、黙っていた翔がそう告げると、サーゼクスは苦笑を浮かべて頷く。
「ああ、実はそうなんだ。よくわかったね?」
「そりゃあ、これだけ露骨に視線を送られていたら流石に気づくさ」
肩を竦めてる翔にサーゼクスは再び苦笑を浮かべる。
「俺に何か用なのか?―――アジュカ・ベルゼブブ?」
「ああ、俺がここに来たのは君が目的だよ。赤龍帝、御剣翔」
一歩前に出てそう告げたのは四大魔王の一人、アジュカ・ベルゼブブ。
彼は興味津々な視線を翔に向けており、それに翔は苦笑してしまう。
サーゼクスさんやセラフォルーさんもそうだが、四大魔王は子供みたいな表情を浮かべるのだな・・・
内心でそう思いながらも、翔は再び問いかける。
「それで俺に何の用なのだ? 大して、興味を惹かれることをした覚えはないのだが・・・」
「それは謙遜しすぎだよ・・・。あの光景には誰もが圧倒されたさ。
まぁ、今回来た理由は別にあるけどね。俺は君の『
「リアスからも君の駒の状況を調べてくれと頼まれていたからね」
アジュカの言葉に続くようにサーゼクスがそう告げる。
「そういえば、そうだったな」
冥界に来る際に話していた内容を思い出した翔は納得しアジュカに近づいた。。
「それじゃ、少しばかり調べさせてもらうよ」
アジュカはそう言って、翔の胸に片手をかざすと、小さな魔法陣を無数に広げた。
そこには悪魔の文字や数字が羅列しており、その意味を理解できるのはこの場においてはアジュカのみだろう。
「ッ!? これはッ!!??」
展開された魔法陣を操作したアジュカは限界以上に目を剥き驚愕の声を漏らす。
「ど、どうしたのです!?」
思わずリアスは詰め寄って問いかける。
サーゼクス達、魔王もこれほど驚愕の表情を浮かべる友人を見たことないので心配そうにことの成り行きを見守っている。
それに答えず、アジュカは黙々と魔法陣を操作していき、作業が終了したのか、展開していた魔法陣を全て消して一息をつく。
そして、彼はリアス達のほうに顔を向けると、ようやく閉じていた口を開く。
「・・・・・・まず安心してほしいのは、駒が彼の体に異常を与えているということはない」
その一言に安心した様に息を吐くリアス達。
だが、彼が次に放った言葉に再び驚愕の表情を浮かべることになる。
「彼の駒の全て・・・八つの《兵士》は『
『―――ッ!?』
翔とアジュカを除いた者達はこれでもかというくらい眼を見開いて驚きを示した。
「さらに付け加えるならば、その駒をもってしても彼の鎖を解くには至らなかったようだな」
「やはりな・・・」
話を進める翔とアジュカの二人。
周りは何の会話をしているか理解できず、首を傾げる。
代表してサーゼクスが問いを投げかける。
「一体何の話をしているんだい? 私達にも分かるように話してくれ」
「ああ、すまないな、サーゼクス。・・・彼にかかっている枷についてなのだが、全くもって理解ができなくてな。駒が変異して枷を緩めているようだが、それでも完全には無理だったようで多く見積もって精々、6割程度しか出来なかったようだ」
「なるほどな・・・。だが、それも一度にではなく段階を踏んでいるな。ライザーの時、コカビエルの時、そして
「データに残る君の魔力の質と量を比べれば、よくわかる。その時々で急激に上がっている」
翔とアジュカが二人で話を進めていると―――
「ちょ、ちょっと待ってくれ! すまないが私達にも分かるように説明してくれ!
先程から聞いていれば、翔くんに何かしらの封印がされているのかい?」
そこで話の途中で介入するサーゼクス。
だが、その表情は信じられないといった表情を浮かべていた。
もちろん、それは彼だけではなく。翔とアジュカを除いた全員に言えることだが・・・。
「ああ、そういうことになるな。サーゼクスよ、君の妹はとんでもない者を眷属に出来たね?
本来ならば、今のリアス・グレモリーが眷属にできる存在ではない。―――いや、下手をしたら全盛期の彼を眷属にすることなど我々魔王でも無理な可能性がある」
アジュカの言葉に翔を除いた全員が絶句する。
普通の悪魔より遥かに力を持つ魔王、そしてその中でもサーゼクスとアジュカの二人は一線を画す孫座であるというのにその二人にも全盛期の翔を眷属に出来ることは不可能かもしれないという事実に誰もが驚愕した。
世界の修正力が働いたのだろう。それと世界との契約が切れたのも理由の一つと考えられるな
まぁ、他にも要因は考えればあるだろうが、今のところ何も確証はないな・・・
翔は内心で原因を思考する。
言葉にすれば周りの追求が逃れられないからだ。
「・・・色々と翔くんが規格外なのは理解できた。それに翔くんが力を抑えられている原因はアジュカとそして本人である翔くんにすら分からないのだね?」
「ああ。ちゃんと設備が整った場で調べてみれば何かがわかるかもしれないが、今のところ先に言ったことしか分からないな」
「原因が分かっていたら、どうにかしているさ」
眉間に皺を寄せながら問いかけてきたサーゼクスにアジュカと翔の二人は肩を竦めて答える。
「それもそうか・・・。それでアジュカ。翔くんの八つの駒が全て変異していると言ったが、価値はどれくらいか分かるか?」
二人の言葉に納得したサーゼクスは続けて問いかける。
「・・・最低でも4以上の価値を秘めている。詳しくは俺ですら分からない」
『ッ!?』
その言葉に翔を除いた者達は全員言葉を失った。
「・・・それはつまり単純な推測で少なくとも彼の合計価値は32以上ということになるのですか?」
信じられないといった表情を浮かべたサイラオーグはアジュカにそう問いかけると、アジュカはそれに頷く。
「そうなるな。いやはや、末恐ろしい存在だよ」
興味が尽きないといった表情を浮かべるアジュカに翔は思わず苦笑をしてしまう。
「やれやれ、面倒な人に目をつけられたようだな」
「さて、じゃあ今日のところはこれで終わりにしよう。それと君が悪魔に転生しなかったために不安定となっていた駒を調整しておいた。残念なことにプロモーション機能は使えないが、人の身である君だが駒の影響で寿命が通常の人間より長くなっているだろう」
「プロモーションが使えない・・・?」
アジュカの言葉に怪訝な表情を浮かべるリアス。
そして、これまでの翔が戦っているところを思い浮かべる。
レイナーレの時もそうだし、ライザーとのゲームの際も、そしてコカビエルの戦闘の時も翔はプロモーションを使った様子はなかった。あの時はすでにプロモーションしていたと思っていたが、そんな素振りしていた様子はなかった。
「・・・ってことは翔はこれまでプロモーションなしで戦っていたの?」
「まぁ、そうなるな。レイナーレの時は必要なかったと思うが、ライザーの時に一度試そうとしたところなんも変化しなかったのでな。それ以降は使えないものと考えていた」
「何かあったらすぐに言うって言ってたじゃない!」
翔の言葉を聞いて、声を荒らげてそう告げたリアスに翔は肩を竦める。
「まぁ体に特に変調はなかったので、特に告げる必要はないと思ってな」
「貴方って人は・・・」
翔の言葉に呆れたように言葉を漏らすリアスに周りは苦笑いを浮かべた。
「さてと、思った以上に長話になってしまったね。今日はこれくらいでお開きにしようか」
タイミングを見計らってサーゼクスがそう告げる。
「そうだな。リアスとソーナ。お前達二人が行うゲームは、お互いの誇りと夢のぶつけあいだ。
遠慮なく互いを高めあえ」
翔がそう言い放つとリアスとソーナは顔を見合わせて互いの思いをぶつける。
「ええ、勿論よ! ソーナ、次に会うときには私達はさらに高みに至っているわよ! 覚悟しなさい!」
「それは私達のほうも同じです。私達の夢の一歩として最初に貴方達を倒します」
不敵な笑みを向けながら宣言するリアスに対して、ソーナはいつも通りの冷静な態度で返す。
「ふむ。これは中々面白いゲームになりそうだな」
そんな二人の様子を見た翔は笑みを浮かべた。