ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~   作:satokun

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お久しぶりです。
久々に執筆意欲が出たので書いてみました。
とりえず、次の話も今月中には投稿したいと思っております。



第36話 成果報告とパーティー

「さて、外に修行に出ていた奴らも十分と休息したことだし、今回の修行の報告とゲームに向けてのミーティングを行う」

 

アザゼルは目の前にいるリアス達に向けてそう言う。

外で修業をしていた翔と祐斗、ゼノヴィア、小猫の四人はグレモリー邸に帰宅したのち、汗を流すとともに軽く休息を行い、他のメンバーと翔の部屋で集合し、それぞれお修行成果を発表することとなった。

翔を除く全員が報告を終え、翔の番となった。

 

「それじゃ、最後はこの修行の総監督である翔から発表としますか」

 

「俺は何時の間に総監督になっているんだ? まぁいい」

 

アザゼルの言葉に軽く溜め息を吐いた翔は立ち上がり、全員を見渡せるようにアザゼルの隣に立つと自身の修行内容を軽く告げた。

 

「―――といった感じだな。・・・・・・おいおい、どうして唖然としているんだ?」

 

翔の視界には口を広げて唖然とした様子を見せるリアス達の姿が映った。

隣にいるアザゼルは引き攣った表情を浮かべている。

 

「いやいや、そりゃそうなるわ! 何だよ! 龍王二体相手にガチでサバイバル生活しながら戦うとか!?」

 

いち早く復活したアザゼルは逆切れしたように声を荒らげて言葉を放ってくるのに対して、平然とした様子を見せた翔は、同じく外で修業を行った連中に視線を向け、問いかける。

 

「外で修業していた連中は俺とは違うのか?」

 

「翔くん、非常に申し訳ないけど、僕達はグレモリー家が用意してくれた山小屋とかで過ごしていたけど・・・」

 

申し訳なさそうに告げる祐斗。

 

「そうなのか。まぁ不自由はなかったから気にしないが、釈然としないな」

 

「はぁ・・・。それで、その修行の成果は?」

 

軽く溜め息を吐きながらアザゼルが問いかける。

 

「そうだな。まず禁手(バランス・ブレイカー)に関してはこの期間体に慣れさせるために出来るだけ常時発動していたおかげで体への負荷はかなり抑えられるようになったな。それによって、倍加の数も増えたようだ。ドライグやタンニーンが言うには瞬間火力で言えば、ティアに匹敵、もしくは上回るといわれたな」

 

翔の言葉に周囲は再び唖然とした様子を見せる。

瞬間火力とはいえ、あの龍王最強のティアマットに匹敵、または勝てるというのだ。

これに驚かないほうが無理な話だろう。

 

「おいおい、マジかよ・・・ッ!? 頭が痛くなる・・・」

 

「こ、これは流石に予想してなかったわね・・・」

 

「まぁ、それでこそ翔くんといったところでしょうか?」

 

「あ、あはは・・・また翔くんは遥か高みに行ちゃったな」

 

「これでは私たちが翔に追いつけるのは何時になるのだろうな・・・? そもそも追いつけるのか?」

 

「翔先輩は私達、悪魔より非常識な存在ですね?」

 

「翔さん、流石です!」

 

「翔先輩、凄いですぅ!」

 

アザゼルとリアスは予想だにしない翔の成長に頭を抱え、朱乃は納得したように呟く。

そして、祐斗とゼノヴィアは遠い目をしながらまた実力差が開いたことに軽く嘆き、小猫に至ってはツッコミを入れていた。アーシアとギャスパーだけが尊敬した眼差しで翔を見つめる。

 

そんな状況を翔と共に修行していたティアマットは苦笑を浮かべながらもう一つ衝撃的なことを告げる。

 

「ちなみに今の話は通常の禁手(バランス・ブレイカー)の話だぞ。こいつがこの修行で開花させた新たな力はさらに上をいく」

 

「と言っても、その維持に莫大な体力と魔力を喰うからな。今のところ維持時間は僅かだ。それに使用後は禁手(バランス・ブレイカー)は強制解除になり、通常の能力も使用不可になる。切り札としては十分な性能を誇るが、その分リスクが大きすぎる」

 

補足するようにティアマットの言葉に説明を入れる翔。

 

「もう驚き疲れたぞ・・・」

 

疲れたようにそう言葉を漏らすアザゼルに頷くリアス達。

 

「まぁ、それについては後でアザゼルに伝えておこう。もう夜も遅いことだし、今夜はこれで終わりにしよう。そういえば、明日は魔王主催のパーティーがあるのだろ?」

 

「ええ、そうよ。みんなには今夜伝えようと思っていたけれど、翔はすでに聞いていたのね。

明日の夕方から魔王様主催のパーティーが行われるわ。私達は学生の身分だから制服でもいいとお兄様から言われているけど、流石に他の貴族の方々もいる場で制服で行くのは不味いからちゃんとした服装で行くわよ」

 

『はい!』

 

「やれやれ・・・。俺は制服でいいか? あまり堅苦しい衣装は好きじゃないんだが・・・」

 

「駄目よ! 貴方には必ず正装で行ってもらうわ!」

 

「面倒なことになったな・・・」

 

明日のことを思い、翔は憂鬱な表情を浮かべて溜め息を吐くのであった。

 

「やれやれ・・・とりあえずは撒けたが、見つかるのも時間の問題だな」

 

ミーティングを終えた翌日の夕暮れ時、駒王学園の夏制服姿の翔は客間で寛いでいた。

リアス達女性メンバーは今頃、メイド達と共に着飾っており、祐斗も別室にて正装に着替えている頃だろう。本来ならば翔も祐斗と同じように正装に着替える予定であるが、翔自身がそう言ったものを好まないのと、あまり目立ちたくはないため、着替えさせようとするメイド達を撒いて今この場で他のメンバーの準備が終えるのを待っているのだ。

 

メイド達に見つからないようにある程度気配を消していた翔であるが、知っている気配を感じ取り、そちらへと視線を向ける。

 

「久しぶりだな、匙。今日はそちらと一緒に会場入りするようだな」

 

「おっと、御剣か・・・。ああ、そういうことになってる。それでさっきここについたわけだけど、会長達はリアス先輩にあいさつにいったけど、男の俺が一緒について行けるわけないからあたりを散策してたら、何となくお前の気配がしたからここまで来たけど、声をかけられるまで正確には分からなかったけどな」

 

正装に身を包んだ匙は突然声をかけられたことに少し驚きながらも翔の姿を視認すると苦笑しながら言葉をかける。そして、翔の正面に腰を下ろした。

 

「ああ、それは少しばかり事情があってな。気配を軽く消していたからだ。その状態でも何となく気づけるとは・・・夏休み前までとは別人だな。この期間、相当修行したようだな、匙」

 

「そりゃな。次のゲームは会長は勿論、俺達も負けられないからな。それに俺の目標はお前なんだ。追いつけるかどうかは分からない。でも、それだけで諦める理由にはならないからな」

 

「そうか・・・」

 

匙の決意が籠った声に翔は笑みを浮かべながら小さく頷く。

 

「少しさ、俺の話を聞いてもらっていいか?」

 

唐突に問いかけてきた匙に、翔は特に驚くこともせずに頷き続きを促す。

 

「俺さ、先生になりたいんだ。会長が作る学校の」

 

「レーティングゲームの学校だな」

 

「ああ・・・。会長は今ある上級悪魔だけの者じゃなく差別のない誰もが望めば通うことが出来るレーティングゲームの学校を設立しようとしている。

この前の顔合わせで、御剣が言ってたように、冥界も変わりつつある。差別やら伝統やらなんかが緩和されてきた。

―――けど、まだまだ根柢の部分では受け入れがたい部分があるって、会長が寂しそうに言っていたんだ。『ゲームは誰にも平等でなければいけない』。これは現魔王様達がお決めになられたことだ。でもさ、平等とは言っても下級悪魔の平民にとってゲームの道が遠いんだよ。そんなの可笑しいだろ? もしかしたら、貴族以外の悪魔でもやり方次第では上級悪魔に昇格出来るかもしれないのによ。可能性はゼロじゃないはずなんだ!」

 

拳を強く握りしめて語る匙。

 

「会長の話を聞いて、俺は心の底から感動した! そして、力を貸してくれと会長に頭を下げられたときにこの人に一生ついていこうと思ったんだッ! 俺が先生となって、あとに続く奴らの背中を少しでも押してあげられるかもしれない・・・。それって凄いことじゃないかって思たんだッ! だから、俺は先生になりたいと心の底から思ったんだッ!! だから―――」

 

匙は立ち上がり翔を見下ろし、拳を作った右手を翔に向けながら自身の想い、覚悟を伝える。

 

「次のゲームはお前に勝負を挑み、勝って見せる! ああ、俺はお前に憧れた! 誰かを背に誰かのために戦う姿に俺は憧れたんだッ!! そんなお前に、憧れたお前に追いつくために俺はこの一か月死ぬ気で鍛えた! 堕天使の幹部に白龍皇を倒したお前だけど、俺はお前に勝ってやるんだッ!!」

 

匙の言葉を聞いて、翔はゆっくりとした動作で立ち上がり、一度瞼を閉じ、再びその眼が開かれたとき、彼の纏う気配が変わった。

 

「ッ!?」

 

突如襲いかかる重圧に匙は小さく呻く。

鋭い目でこちらを真っ直ぐと見据え、体からは放たれる覇気はまるで龍を彷彿させる。

だが、それでも匙は視線を翔から逸らさなかった。震えそうになる膝、突き出した右腕は左手で支えなければ、勝手に下がりそうになるが、そんなことをせずに腹の底から精一杯の気力を振り絞り、全身に喝を入れ、体勢を維持する。

 

「―――貴様の宣戦布告受け取ったぞ、匙。次のゲーム例えどのような事情があろうと俺は俺の全てをもって貴様を打ち砕こう」

 

そんな様子を見せた匙に翔は突き出された匙の右拳に己の右拳を軽くぶつけ、匙の想いに応える。

 

「・・・上等だぜッ!!」

 

匙は翔の言葉に不敵な笑みを浮かべて言葉を返す。

それに小さく笑みを浮かべた翔はようやく威圧をおさめる。

 

「はぁ・・・」

 

重圧から解き放たれた匙は大きく息を吐き、ゆっくりと息を吸い、呼吸を整えた。

 

「どうやら生半可な修行はしてないようだな」

 

「当たり前だろ。この程度で負けちまったら、俺はお前に挑戦なんてできねぇ・・・。

ところで、さっきから気になっていたけど、何で御剣は制服なんだ? 確かに会長も制服でもいいって言ってたけど、貴族達が集まる場だから正装で行きましょう、って言われたんだが、そっちはそうじゃなかったのか?」

 

余裕を取り戻した匙は、先程から微妙に気になっていたことについて翔に問いかける。

問いかけられた本人は苦笑を浮かべながらその問いに言葉を返す。

 

「いやなに、俺自身があまりそう言った衣装を好まないからな。グレモリー家のメイド達に捕まりそうになったところを逃げてきたのだ。堅苦しいのは苦手でな」

 

「何だそう言った理由か」

 

そんな話をしていると―――

 

「翔、お待たせ。あら、匙くんもここにいたのね?」

 

ドレス姿のリアスが客間へと入ってきた。続いて部員の面々も入ってくる。朱乃は今日は着物ではなく西洋のドレスを身に纏っている。アーシアも恥ずかしそうにしてるが、綺麗なドレスを着ている。ゼノヴィアも着慣れない様子だが、十分に似合っている。小猫も他の者達より一回り小さなドレスを着ていた。ティアマットも動きやすさを重視したものではあるが、綺麗に着飾っていた。そして、何故か男であるギャスパーもドレス姿で現れた。

ソーナとその眷属達も同じ様にドレスアップしている。

 

「久しぶりだな、ソーナ会長。そして、シトリー眷属の面々」

 

「ええ、久しぶりですね。翔さん」

 

翔は姿勢を軽く正し、一礼する。

それに優しく微笑みながら言葉を返すソーナ。

 

「それにしてもこれほどの美しい女性が並ぶと圧巻だな。みんなよく似合っていて、可愛らしいな」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「ん? どうした?」

 

急に顔を赤く染めた女性陣に首を傾げる翔。

ちなみにそれを見ていた匙は、流石御剣だな・・・、と戦慄した表情を浮かべていた。

 

「全く、翔は本音でそう言ったことを平然と言ってくるからたちが悪いわよね・・・」

 

「ええ、全くですわ。確かに下心満載の視線は嫌ですけれども、全くないのはないで自身がなくなりますわ」

 

翔の言葉に赤面していたリアスであったが、平然としている翔の姿を見て小さく溜め息を吐きながら呆れたように呟くリアスに続くように言葉を漏らす朱乃。それに全力で同意する女性陣。

 

「いや、流石にそれは不味いだろ。相手が不快になるとわかっていて損な視線を向けるわけにはいかないだろ、朱乃」

 

「ええ、確かにそうなのですが・・・」

 

「ところで、翔? 貴方はまだ着替えないのかしら? そろそろ、出発の予定なのだけれど・・・」

 

これ以上話しても無駄だと悟ったリアスは話題を変えるため、未だに制服姿である翔に問いかける。

その問いに苦笑しながら答えようとしたところで―――

 

「翔さん」

 

突如、背後から響いた声に翔は頬を引きつかせる。

 

おいおい、何の気配も感じなかったぞ・・・?

 

自身が背後を取られ、声をかけられるまで全く気付かなかったことに内心で戦慄する。

そして、必死に言い訳を考える翔であるが、その努力も空しく。背後に立つものが翔の肩に手を置いた。

その正体は―――

 

「お、お母様!どうして此処に?」

 

リアスの母親であるヴェネラナ・グレモリーであった。

 

「こんばんわ、皆さん。皆さん大変綺麗なドレスですね。これならば、翔さんもそれ相応にならなければなりませんよね。―――少々、この方を借りさせてもらいます」

 

「ちょっ―――!?」

 

リアスの制止の声を無視し、ヴェネラナはいつの間にか姿を見せたメイド達と共に翔を引きずって行った。

翔自身もメイド達からは逃げれるが、ヴェネラナからは逃げ切れる自信がないため、素直に諦めていた。

 

『若様お似合いでございます!』

 

複数のメイドが声を揃えて、称賛の言葉を翔に送る。

その頬はうっすらと朱く染まっており、見惚れた様子で思わず小さく溜め息を吐いていた。

 

―――どうしてこうなった?

 

内心で大きく溜め息を吐きながらそう問いかけずにはいられない翔。

 

目の前にある大きな鏡には自身の姿が鮮明に映っていた。

いかにも高級なスーツを着こなし、普段は適当に整えていた髪は適度に散髪を行われ、整髪剤が使い綺麗に整えられていた。

 

「お似合いですよ、翔さん。私の目に狂いはなかったわ」

 

うふふ、と妖艶な笑みを浮かべるヴェネラナ。

 

「はぁ・・・。ヴェネラナさん、俺はあくまでもリアスの眷属であって、それほど身嗜みに気を使わなくてもいいと思うのだが・・・」

 

「あら、それならば尚更しっかりとした身嗜みにしなくてはなりませんよ? それに貴方は赤龍帝であり、今回はそのお披露目も兼ねているのですから」

 

「面倒なことだな」

 

「さて、翔さんの準備も整いましたし、リアス達の元へ参りましょうか」

 

そう言ってヴェネラナは意味深な視線を翔に向ける。

その視線の意味気づいた翔は、軽く溜め息を吐きながらも姿勢を正し、優雅な仕草で左手を差し出す。

 

「奥様、よろしければ私にエスコートさせていただいてもよろしいですかな?」

 

優しく笑みを浮かべながらそう告げる翔に、言われたヴェネラナは勿論のこと、周りにいたメイド達すら赤面してしまう。

 

「え、ええ・・・。よろしくお願いしますわ」

 

差し出された手の上に自身の手を差し出すヴェネラナ。

翔はその手を優しく握ると。そのまま彼女を自身の左隣りに誘導し、腕を差し出す。

それに応えたヴェネラナは翔の腕に自身の腕を絡ませ、その豊満な胸を惜しみなく当ててくる。

 

「あまりくっつき過ぎるとリアスが何か言ってくるぞ?」

 

「あの子にはちょうどいい勉強になるでしょう。―――油断していると横から掻っ攫う者もいるというね?」

 

翔の言葉にヴェネラナはお茶目な表情を浮かべて応える。

 

「やれやれ・・・。とりあず、タンニーンもそろそろ来る頃だろうし、行くとしようか」

 

そう言って、翔はヴェネラナが歩きやすい歩幅で歩きだした。

そのことに気付いたヴェネラナはますます胸の奥がキュンとなり、彼に寄り添い、リアス達の姿が見えるまでその幸せそうな表情を浮かべていたのであった。

 

「翔! 戻って・・・来た・・・・・・のね・・・・・・・・・・・・」

 

翔の存在にいち早く反応したリアスであったが、翔とヴェネラナの姿を見て言葉を失う。

他の面々もリアス同様に翔達がいるほうへと視線を向け、言葉を失っていた。

 

「ん? どうしたんだ?」

 

「きっと、称賛の姿に見惚れているのですよ」

 

リアス達の反応に怪訝な表情を浮かべながら言葉を漏らす翔に、ヴェネラナは優しく微笑みながら言葉を返す。

 

「ちょ、ちょっとお母様それはどういったことですか!?」

 

漸く再起動を果たしたリアスを筆頭に翔に好意を寄せている女性たちも翔にエスコートされているヴェネラナに問い詰める。

 

「あらあら、女性をエスコートするのは殿方の務めです。翔さんもこれから社交界に出る機会が多くなることですから、これはソレのための練習ですよ。ねぇ、翔さん?」

 

彼女らの言葉をさらりと受け流し、ヴェネラナは正論を告げ、翔に同意を求める。

勿論、そう言った理由もあるにはあるが、ヴェネラナは単純に翔にエスコートをしてもらいたかっただけなのだが・・・。

 

「娘を揶揄うの程々にしてくれ。それにもう迎えが来たようだ」

 

翔がそういうと庭に何か重いものが着地する音が聞こえてきた。

 

「タンニーン様とその眷属の方々がいらっしゃいました」

 

数秒後に姿を現した執事によって、タンニーンが来たことを告げられた。

 

「あら残念。なら、今回はここまでのようですね。エスコートありがとうございます、翔さん」

 

「いえいえ、私には過ぎた行為でした。以後はそれ相応に見合った振る舞いをさせてもらいます」

 

「そのようなことはないですよ。それでは私と旦那は別の方法で会場入りしますので、失礼させてもらいます」

 

翔の腕から離れたヴェネラナは優雅に一礼するとその場から離れていく。

その際、リアスの横を通り過ぎ―――

 

「―――いつまでもそのような振舞でしたらいつしか翔さんを失ってしまうかもしれませんよ、リアス」

 

「ッ!?」

 

彼女にのみ聞こえる声量で忠告をする。

その言葉にリアスは返すことはできず僅かに唇を噛みしめるだけであった。

それにヴェネラナは僅かに目を細めて何も言わずに通り過ぎていった。

 

翔はリアス達を宥めて、途中で祐斗と合流し、タンニーンがいる庭へと足を進めた。

 

「約束通り来たぞ、翔」

 

「ああ、ありがとう。それにしても圧巻の光景だな・・・」

 

目の前に広がるのはタンニーンを筆頭に、その眷属達であるドラゴンの群れがグレモリー邸の庭にいた。

 

「そうだろうな。今の時代これほどのドラゴンの群れは早々お目にかからないだろう。だが、怯える必要はないさ。見た目は厳ついが気にいい奴らだ」

 

「怯えることなどないさ。タンニーンの眷属ならば信用に値する。それに何があってもそう簡単にやられはせんよ」

 

「アハハハッ! それもそうだろう。龍王二体相手の修行に生き残った上に互角に戦ったのだからな! 俺の眷属をもってしても歯が立たんさ」

 

豪快に笑うタンニーン。

すると、そこにリアスとソーナが現れる。

 

「迎えをしてもらいありがとう、タンニーン。会場まで頼むわ。シトリーの者もいるけれど、大丈夫かしら?」

 

「おお、リアス嬢。美しい限りだな。人数が増えようが構わんよ。背に乗っている間、特殊な結界を背張ってある。それで空中でも髪や衣装やらが乱れないだろう」

 

「気遣いができる、紳士的なドラゴンだな」

 

「何、これでも悪魔社会には長い間いるからな。これくらいの気遣い造作もないさ」

 

ニヤッ、と牙を剥きだして笑うタンニーンに翔は苦笑する。

 

そして、翔達はドラゴンの背に乗り、冥界の大空へ飛びだった。

翔とティアマットだけはタンニーンの頭部に腰を降ろして、空からの風景を楽しんでいた。

 

『ドラゴンの上からこの景色を見るとはな・・・。何とも言えん体験だ』

 

「それについては同意だな。他のドラゴンに乗って空など飛ぶ機会などあるはずもないからな」

 

翔の左の手の甲に緑色の宝玉から苦笑するドライグの声が響く。

それに同意するようにティアマットも言葉を漏らす。

 

「ハハハハ、それは面白い体験だろう、ドライグにティアマット。しかし、力のある強大なドラゴンで現役なのは俺とティアマットを含めても三匹か。いや、俺は悪魔に転生しているから、元の姿で残っているのはオーフィスとティアマットぐらいだ。残りはやられて封印されたか、隠居したか。玉龍もミドガルズオルムも二度と表には出てこないだろう。そして、ドライグ、アルビオン、ファーブニル、ヴリトラは神器(セイクリッド・ギア)に封じられてしまった。―――いつの時代も強いドラゴンは退治される。強いドラゴンは怖い存在だものな」

 

タンニーンは少し寂しげな口調で話した。

 

「生き物は自分と違うものを恐れるもんさ・・・。仕方がないと言えば仕方がないのかもしれないが、悲しいよな」

 

そう言って悲しそうに話す翔にティアマットは寄り添うように翔に近づく。

彼女の気遣いに翔は軽く笑みを返す。

そして話題を変えるようにタンニーンに問いかける。

 

「そう言えば、タンニーンはどうして悪魔に転生したんだ?」

 

「大きな戦が出来なくなったこの時代、レーティングゲームをすれば様々な連中と戦えると思ったことが、一つ。そして、もう一つは―――」

 

「ドラゴンアップルだろうな」

 

「ああ、そうだ」

 

「ドラゴンアップル・・・? ああ、龍が食べる林檎のような果物ことだったな」

 

タンニーンの言葉の先を予想してティアマットが言葉を漏らし、それに肯定するタンニーン。

そして出てきた単語に翔は一瞬、頭の中を巡らせ、それについての知識を引っ張り出す。

 

「何だ、知っていたのか?」

 

「ああ、リアスの家で勉強した時にドラゴンの事についての本も少しだけ読ませてもらったからな」

 

『ドラゴンアップル』

ドラゴンの種族か食べる林檎の形をした果物である。

昔は人間界にも実っていたが、環境の激変により絶滅してしまった。現在では冥界でしか実らず大変希少性がある。ドラゴンの中には、そのドラゴンアップルでしか生存出来ない種も存在している。しかし、ドラゴンは冥界でも嫌われ者だ。悪魔に堕天使にも忌み嫌われている。無償で果実を与えるわけもなく、それにより多くのドラゴンが死に追いやられた。

 

「だから、俺は悪魔となってその実が生っている地区を領土にした。上級悪魔以上になれば、魔王から冥界の一部を領土として貰えることに目を付けたのだ。同じドラゴンという種族を守る為に悪魔となったのだ。そして、現在はドラゴンアップルを人工的に実らせる研究も行っている」

 

「そうか・・・。タンニーンは優しいドラゴンだな」

 

その言葉にタンニーンは大きく目を見開くと、次いで大きな声で笑いだした。

 

「優しいドラゴン? ガハハッハハッ!そんな風に言われたのは初めてだ!

しかも赤龍帝からの賛辞とは痛み入る!しかしな、翔。種族の存続をさせたいのはどの生き物とて同じこと。俺は同じドラゴンを救おうと思ったに過ぎない。それが力を持つドラゴンが力のないドラゴンに出来ることだ」

 

「私は自分以外は割とどうでもいいがな。あ、今は違うぞ? 翔の身に何があれば私は全力でお前を助けるからな」

 

そう言ってぎゅっと翔のことを抱きしめるティアマットに抱きしめられた本人は苦笑をする。

 

「あまりくっ付かないほうがいいぞ、折角綺麗に着飾ったんだ。それが崩れてしまったら勿体ないだろ」

 

ティアマットから離れた翔は彼女の頬に右手を添えながらそう告げる。

 

「ッ!? ・・・・・・お前は本当にズルいやつだな」

 

顔を赤く染め上げたティアマットは恥ずかしさのあまり翔から視線を外し、小さく呟く。

 

「ハハハッ、翔の前ではあの最強の龍王も形無しだな」

 

「五月蠅いぞ、タンニーン」

 

そんな会話を繰り広げていると眼下に光が広がっていた。どうやら、会場となる場所に着いたようだ。

 

パーティ会場に到着した翔達。タンニーンは近くの広い場所に降り立ち、翔達を降ろす。

そして、ドラゴン達は大型悪魔専用の待機場所へと向かった。その際に、翔とリアスとソーナが代表でお礼を告げた。

 

「そう言えば、アザゼルも来ているのだろう?」

 

翔達はパーティー会場となる最上階に行くために係りの案内の元、エレベーターに乗り込んだ。

そして、翔はアザゼルの行方が気になり、リアスに尋ねる。

 

「ええ、あの人はお兄様達と一緒に別ルートから来るみたい。すっかり仲良しなんだから」

 

はぁ・・・、とため息を吐くリアスに翔は苦笑する。

 

アザゼルは人の心に入り込むのがいい意味で上手い男だ。そして、何よりサーゼクスを筆頭とした魔王達は非常にノリが軽い。アザゼルと仲良くなるのに時間はかからなかったろう。その結果、グレイフィアやリアスと言った魔王達に関わりのある者達が頭を抱え、頭痛に襲われる事が多くなったが・・・。

 

雑談をしていると、漸く最上階に着いたようでエレベーターが開く。

そして、会場へと入ると、そこは無駄に豪華な空間が広がっていた。

すでに会場に着いた貴族悪魔達はそれそれ談笑していたのだが、会場の扉の近くにいた数人がリアスの存在に気付くと感嘆の声を漏らしながらその美しさを称賛した。

 

「おおっ、リアス姫! ますます美しくなられましたな」

 

「サーゼクス様もご自慢でしょうな」

 

その声に他の悪魔達もリアスの存在に気付きだし、誰もがリアスの美しさを目に収めようとこちらへとより始めた。

 

「・・・魔王の妹というのもあるが、リアス自身の美しさも含め凄まじい人気だな」

 

小さく呟いた翔であったが、その呟きは近くにいたリアスにもちゃんと聞こえており、彼女を僅かに頬を紅く染める。

 

「急にその不意打ちはやめてちょうだい」

 

「ん? 何のことだ?」

 

リアスの言葉の意味が分からずに首を傾げる翔にリアスと他の者達も揃ってため息を吐く。

 

「それが翔なんでしょうけど・・・。まぁいいわ。それじゃ、翔。私と一緒に挨拶回りに行きましょう」

 

そう言って翔へと視線を向けたリアスはちょっと恥ずかしそうにチラチラと翔の腕へと視線を送っていた。それに気づいた翔は彼女が求めていることが分かり優しく笑みを浮かべて手を差し出す。

 

「リアス姫。よろしければ私にエスコートさせてもらえませんか?」

 

「ッ!? えっ、ええ。よろしくお願いするわ」

 

差し出した手にリアスがそっと触れると、翔はそのまま彼女を優しく己の左腕へと誘導し、彼女に腕を組ませる。

リアス自身、嬉しさと恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだが、周りの目があるのと、そして何より赤龍帝である翔が自身の眷属だと強く印象付けるために毅然とした態度を見せる。

 

「それじゃ、俺とリアスは面倒だが他の連中に挨拶に行ってくるからお前らは適当に時間を潰しててくれ」

 

翔は他のメンバーにそう告げて、リアスと共に貴族悪魔達がいるほうへと足を進めた。

 

リアスとの挨拶回りを終えた翔は会場の端の壁へと背を預けていた。

 

「疲れたな。赤龍帝がそんなに珍しいか?」

 

珍しいに決まっているだろ!という突っ込みが聞こえそうな台詞を疲れたように溜め息を吐きながら呟く。

翔がいる近くには椅子が設けられており、そこにはアーシアとギャスパーがいる。

リアスと朱乃は少し離れた場所で女性悪魔達と談話をしており、その近くでは祐斗は女性悪魔に囲まれていた。

 

「(助けて!)」

 

視線で翔に助けを求める祐斗。

翔も先程までリアスと挨拶回りをしている時に、多くの女性悪魔に話しかけられた。

紳士的な態度でやんわりと断るが、その時に話しかけた女性悪魔は頬を紅く染める。それを見るリアスは不機嫌になり、周りに見えないところで翔を抓るのだ。

 

溜め息を吐きながらも、アーシアとギャスパーの二人に一言告げてから祐斗の元へと行く。

祐斗の元に行った翔は、囲んでいた女性悪魔達に紳士的な振る舞いと巧みな話術で女性悪魔達を散らす。周りに女性悪魔がいなくなってから、二人はアーシア達がいる場所へと避難する。

 

「助かったよ、翔くん・・・」

 

「お前はもっと、話術を学べ」

 

「翔、アーシア、ギャスパー、料理を持ってきたぞ。食べろ。ん? 木場も一緒にいたのか」

 

そこに両腕に大量の皿を器用に抱えたゼノヴィアが颯爽と現れた。オマケに飲み物まで持ってきている。元神の使徒であるこの美少女に抜かりは無い。翔達はそれぞれゼノヴィアに礼を言いながらグラスや皿を受け取る。多く持って来たので祐斗を入れても普通に足りていた。

 

「本当に大勢の悪魔がいるな」

 

「ああ、人ごみが苦手のギャスパーにはきついだろうな」

 

「そうだね。すでに、ギャスパーくんは限界に近いみたい」

 

祐斗は苦笑しながら言う。

翔とゼノヴィアがギャスパーの方へ視線を向けると、涙目になりながらゼノヴィアが持ってきた料理をちびちび食べるギャスパーがいた。

ギャスパーはこちらを見ている二人に気付いたのか料理を食べるのを止め、翔にしがみ付く。

 

「も、もう無理ですぅ!」

 

涙目で訴えてくる。

翔は苦笑しながらしがみ付いてきたギャスパーの頭を撫でる。

 

「でも、まだまだパーティは続くぞ? 出来るだけ俺らの近くにいることだな」

 

そんなこと話していると―――

 

「久しぶりだな、レイヴェル・フェニックス」

 

翔は自身に近づいて来た者へと先に話しかける。

 

「お、お久しぶりですわね、赤龍帝。名前を覚えていていただいて光栄ですわ」

 

先に声をかけられるとは思ってもいなかったようで少女・・・レイヴェルは驚いたように表情を浮かべるが、すぐにわざとらしく咳払いし両手でスカートの裾を掴んで優雅に一礼する。その頬は僅かに紅くなっていることに気付いたゼノヴィアは若干眼を鋭くさせる。

 

「そこまで畏まらなくていい。俺自身は別に畏まられるほどの存在ではない。それにその赤龍帝という呼び方はやめてくれ。今晩で散々言われているんだ。普通に翔でいい」

 

「ふふふ、そのようなことはありませんわ。確かに貴方様はリアス様の下僕ではありますが、これまでのご活躍で十分にその実力を示しています。それに近い将来、上級悪魔へと昇格するであろうことを考えれば敬意を払うのは当然のことです。ですが、貴方様がそう言っていただけるのならお名前を呼ぶご無礼をお許しください」

 

「ああ、別に気にしない。俺自身、堅苦しいのは苦手でな」

 

「それでは翔様と呼ば差せていただきます」

 

「様付けもいらないんだが・・・」

 

「いいえ、これは譲れません」

 

断固として様付けで呼ぶという意思を彼女から感じた翔は苦笑いを浮かべて諦めた。

 

「それにしても、いくら魔王主催の催しとはいえ、君ほどの名家の娘が護衛から離れて自由に動き回るのは些か危機感が少ないのでは?」」

 

「そうでもありませんわ。それに―――」

 

「レイヴェルに何かあれば俺がすぐに駆け付けるようにしているからな」

 

唐突に聞こえた声に近くで事の成り行きを見ていた祐斗とゼノヴィアは驚きの表情を浮かべた。

対して翔は最初から分かっていたようで軽く笑みを浮かべながら声を発した者へと話しかける。

 

「久しいな、ライザー。あれから随分と自分を虐めぬいたようだな。正直ここまでの力をつけるとは思ってもいなかった・・・流石は上級悪魔といったところか」

 

「フッ、世辞はよせ・・・と言いたいところだが、お前から言われると悪い気はしないな」

 

翔の言葉に笑みを浮かべて応えた者はライザー・フェニックス。

リアスの元婚約者であり、以前に翔と一対一で戦い惨敗した男である。

だが―――

 

「貴方は本当にあのライザー・フェニックスですか・・・?」

 

祐斗が思わずそう問いかけてしまうほど、今のライザーはあの時とは違い過ぎた。

別に姿形が変わったわけではない。いや、体格が以前より大きくなったように感じられるがそれは些細な変化だ。祐斗が驚いたのはその身に纏う雰囲気、そしてその面貌だ。まるで歴戦の戦士のように鋭く、覇気が満ちていた。

 

「なんだ。随分と言ってくれるじゃないか、リアスの《騎士》。・・・まぁ、お前がそう驚くのも無理はないか」

 

そう言って祐斗の言葉に対して笑って軽く流すライザー。

以前の彼ならば先程の言葉に答えはしても、もっと面倒な返しをしてたに違いないが今は違う。

 

「・・・この一か月、翔くんに修行をつけてもらい、成長したと自負していますが・・・貴方には及ばないですね。―――正直言って、貴方と対峙してもすぐに勝負がつくイメージしか湧きません。僕の敗北というイメージが・・・」

 

悔しそうにそう呟く祐斗。

彼はこの修行で大きく成長した。それこそ、以前のライザーにならば勝つことは出来なくとも善戦できるほどの実力はつけたと鍛えた翔自身も太鼓判を押すほどだ。だが―――

 

「だろうな。今のライザーは祐斗とゼノヴィアの二人がかりでようやく善戦できる、といったところだな」

 

祐斗の言葉に翔がそう告げる。

 

「ふん。そういうお前もあの時とは明らかに実力を上げたようだな。今の俺が全力で挑んでもお前に勝つことは出来ないだろう」

 

鼻を鳴らしてそう告げるライザー。

以前の彼ならば決して認めはしないであろうことを平然と認める。

 

「―――だが、それでも俺は俺はもう一度お前に挑みたい。御剣翔」

 

一度瞑目したライザーは真剣な表情を浮かべて翔にそう告げた。

それを見た翔は一つの結論に辿り着く。

 

「・・・なるほど、今お前は壁にぶつかっているようだな」

 

「ああ、だからこそお前に挑む。そして、俺はさらに強くなってみせる!」

 

ライザーの全身から放たれる気迫に祐斗とゼノヴィアは呑まれる。

そして、翔は悠然とその気迫を受け止めて、真っ直ぐとライザーを見据えて言葉を返す。

 

「いいだろう。ソーナ達とのレーティングゲームを終えたらいつでも来るがいい」

 

「―――感謝する」

 

小さく、されど力強く礼を告げたライザーは、一度軽く翔に頭を下げると何処か立ち去って行った。

 

「もう、お兄様ったら! 翔様に言いたいことだけ告げて立ち去るなんて」

 

兄の態度に呆れたように呟くレイヴェルであったが、その表情は笑みを浮かべていた。

すると、そこに見知った顔の女性がやって来た。ライザーの眷属であり、祐斗が戦った《騎士》のカーラマインであった。

 

「レイヴェル様、旦那様がお呼びです」

 

「分かりましたわ。それでは皆様、お話の途中ではございますが、失礼させてもらいますわ」

 

レイヴェルはスカートの裾を摘まんで一礼し、翔達の前から立ち去ろうとしたが、何かを思い出したか、すぐさま翔の前へと戻ってくると何処か恥ずかしそうな表情を浮かべながら翔に問いかける。

 

「すみません、翔様。今度お会いできたら私とお茶でもいかかでしょうか? 私、これでもケーキを作るのが趣味でして、もし・・・もし翔様さえよければ召し上がっていただきたいとお思いまして・・・どうでしょうか?」

 

翔の顔色を窺いながらどこか不安そうな声色で問いかけてくるレイヴェルに翔は優しく微笑みながら答える。

 

「機会があればぜひ堪能したい。その時を楽しみに待っているよ、レイヴェル」

 

その言葉を聞いて、パァーッと花を咲かしたかのように笑みを浮かべたレイヴェルは感謝の言葉を述べ、再び一礼すると翔達から今度こそ離れていった。

すると、レイヴェルを呼びに来たカーラマインが翔と祐斗に話しかけてきた。

 

「久しいな。御剣翔、木場祐斗」

 

「ああ、確かカーラマインだったか?」

 

「久しぶりだね」

 

「ああ。木場祐斗との戦いはいい経験になった。今ではかなり離されてしまったが・・・。そっちは大変だったそうだな。コカビエルと白龍皇と・・・。しかし、御剣翔、君は悉く撃退したらしいじゃないか」

 

「運が良かっただけさ。それと君はレイヴェルとライザーの付き添いか?」

 

「私はレイヴェルの付き添いだ。ライザー様には《女王》がついている。それも先程はご自身から離れて君の元へと行ってしまわれてがな」

 

苦笑しながら言う彼女に、翔と祐斗も苦笑で返した。

 

「それでは私はレイヴェル様の元へと戻ろう。では、またいずれ」

 

手を振って去っていくカーラマインを見送ると、それまで会話に入れず、近くで視線を僅かに鋭くしたゼノヴィアが翔に尋ねてきた。

 

「あの連中は?」

 

「お前が眷属になる前に戦った相手さ。カーラマインの様子を見ると、ライザーの眷属達も個々の実力は上がっているようだな」

 

「そのようだね・・・。自惚れじゃないけど、一騎打ちなら遅れは取らない。でも、連携を許してしまったら痛い目を見るのはこちらになりそうだね」

 

ゼノヴィアに応えた翔は、カーラマインの実力が以前の時よりも向上しているのを見抜き、そして現状のライザー眷属達の力を察する。

それに続くように祐斗も己が戦う時のことを想定する。

 

「そうだろうな。まぁ、それはそれでいい経験になるさ。さて、俺は少しばかり風にあたってくるとするか・・・。お前達も周りに気を付けながらこの宴を楽しんどけ」

 

そう言って翔はベランダへと一人、足を進めた。

 

「はぁ・・・。やはり、こういった催しは好きになれんな」

 

溜め息を吐きながらここに訪れる途中でもらった飲み物を飲みながら軽く愚痴を吐く。

 

「・・・それでわざわざこんなところに来てまで俺に話したいことでもあるのか?」

 

「ええ、そうね」

 

翔は外の風景を眺めていたが、その視線を背後に送りながらその人物へと声をかける。

それに応えたのはリアスであった。

 

「こんなとこにいていいのか?」

 

「ええ、挨拶は終えたから今は少し休憩・・・。それに中にいると『是非、自分と!』って言い寄ってくる貴族悪魔の男が多いのよ。・・・ほら、ライザーとの縁談がなくなったから、今まで諦めていた貴族達がこれを機にグレモリー家、さらには魔王であるお兄様との繋がりを求めてくるのよ」

 

うんざりした様子のリアスに翔は苦笑で返す。

 

「まぁ、仕方ないさ。それで何か俺に話したいことでもあるのか?」

 

「ソーナに宣戦布告されたわ。―――『私達は夢のために貴方達を倒す』って」

 

その問いかけにリアスは真剣な表情を浮かべて告げた。

 

「そうか・・・お前はどう答えたんだ?」

 

「例えどのような状況だろうが、私は一切油断も慢心もしない。私の誇りにかけて全身全霊をもって叩き潰す!って返したわ」

 

「ほう・・・」

 

自身の胸に手を置き、真っ直ぐと見据えながら告げたリアスに翔は小さく感嘆の声を漏らす。

 

修行前のリアスならば、これほどまでの覇気を見せることはなかっただろうな・・・

こちらには俺という赤龍帝、聖魔剣の祐斗、雷光を扱う朱乃、仙術を使うようになった小猫に、潜在能力の高いギャスパー、そして絶大な回復力を誇るアーシアがいる

これだけみれば、こちらがは圧倒的に有利なのは明白・・・―――だが、戦いというのはそう簡単なものではない

 

少しの油断、慢心で負けが決まる・・・

 

リアス自身、己の力と眷属達に自信を持っているが、それはあまりに過信しすぎていた

故に、戦いの駆け引きは稚拙であり、不測の事態への対応は遅れる

 

―――だが、この修行中、ヴェネラナと共にその自信を粉々に砕いた

 

そこから彼女がどう変化したかは今の彼女を見れば一目瞭然だ・・・

泥だけになろうとも、どのような惨めな姿になろうとも、勝つために己が何ができるか、思考を怠らず常に戦場を把握し、冷静に対処できるようになったようだな

まだまだ粗削りな部分が目立つが、それはこれから自身で磨いていくだろう

 

「そうか・・・。なら、お前の覚悟と誇りを魅せてみろ」

 

「ええ、魅せてあげるわ。私の全てを!」

 

不敵な笑みを浮かべてそう宣言したリアスに翔は優しく微笑んだ。

すると、ふいにある気配を感知する。

 

「・・・あれは小猫だな」

 

気配を消している?

 

視線をそちらへと移すと、そこには周りの視線から逃れるながら扉から外へと出で行く小猫の姿があった。さらにご丁寧に仙術の力で気配を消して・・・・。

 

「どうしたの?」

 

翔の様子が変化したのを感じ取ったリアスが問いかけてくる。

 

「ああ、小猫がこの会場から出ていった」

 

「化粧直しにでも行ったのじゃないかしら?」

 

「わざわざ気配を消してまでか?」

 

「それは変ね・・・。主である私に何も告げずに出ていくなんて」

 

翔の言葉を聞いて、怪訝な表情を浮かべるリアス。

 

「それじゃあ、追いかけましょうか」

 

「まぁ、待て」

 

そういってリアスは小猫を追いかけようとするが、それを翔は止める。

 

「どうして止めるの? すぐに追いかけないと見失っちゃうじゃない!」

 

「声を荒らげるな。周りに気付かれるぞ」

 

「ッ!?・・・そうね。何かあったとしたら、周りの貴族たちに気付かれるのは不味いわね」

 

「ああ、それにあいつの気配の消し方は、まだ粗削りだからわかりやすい。今エレベーターで一階まで降りたようだな。・・・何かを追いかけている、いや誘導されているのか」

 

そう言って翔はベランダから下を覗く。

そこには小猫が焦った表情を浮かべながら走っていく姿が見えた。彼女の先には黒猫が小猫を誘導するかのように先を走っている。

 

「さてと、流石に放っておくわけにはいかないか。俺がとりあえず様子を見てくる」

 

そう言って、翔はネクタイを緩めて小猫を追いかけようとするが、今度はそれを制止する。

 

「私もついていくわ。主として小猫を止めないと」

 

「いや、お前は・・・。はぁ・・・・・・」

 

リアスの言葉を聞いて、止めるように促そうとした翔であったが、彼女の目を見て溜め息を吐く。

 

「その目は何を言っても駄目なんだろうな」

 

「よくわかってるじゃない」

 

「それじゃ、行くぞ。口を閉じてろ、舌をかむぞ」

 

「えっ? きゃっ!?」

 

翔はそう言ってリアスをお姫様抱っこをする。

突然の行動にリアスは可愛らしい声を上げるが、翔は気にせずにそのままベランダから飛び降りた。

 

 

 

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