ハイスクールD×D ~正義の味方を目指す者~ 作:satokun
・・・意識が覚醒に近づく。
浮き上がるような目覚めの余韻と同時に五感が徐々に感覚を伝えてきた。
まぶた越しに光を感じる。恐らくカーテンの隙間から太陽の日差しが入ってきてるのだろう。
翔は起き上がり、体の調子を確かめるように軽く体を動かす。
「特に違和感はないな、今のところ問題はない、と・・・」
昨日、『
「ま、考えたところで俺が分かるわけもないか・・・」
そう言って、翔はストレッチを軽くし、シャツを脱ぐ。
すると鍛えられた身体が露わになる。無駄な筋肉はついておらず、絞り込まれている。
だが、至る所に傷跡がついており、特に目立つのは左肩にある傷と胸にある交差するように斬られた傷跡だ。
翔はその場で逆立ちをし、そのままの状態で腕立て伏せをする。
一つ一つの動作をゆっくりと行い、自身の体の状態をより詳細に確認する。
終わった頃には全身から汗が流れており、どれだけ集中して行っていたのが窺える。
静かに呼吸を繰り返しながらゆっくりと確かめるように演武を行う。
そして最後に―――
「破ッ!」
気合いと共に正拳突きを放つ。
その勢いと共に全身に流れていた汗が吹き飛ぶ。
「はぁ・・・・・・すぅ・・・・・・」
息を大きく吐き出し、深く吸う。
脱いでいたシャツを再び着て、座禅を組んで瞑想を行う。
数分程経ち、閉じていた瞳を開ける。
「そろそろか・・・」
扉の開く音が聞こえる。
「おはよう。リアス、朱乃」
「ええ、おはよう。翔」
「おはようございます、翔くん」
背を向けたまま、部屋に入ってきたリアスと朱乃に挨拶を行う。
翔は立ち上がり、リアス達の方に向く。
「どうして私達って分かったのかしら?」
「気配がしたからな・・・、ある程度の近づかれれば分かる」
「そう・・・(かなり出来るわね。何か武術でも習っていたのかしら?体はかなり鍛えられているわね)」
リアスが翔の事を内心で考えていると、翔がリアス達が来た理由を訊く。
「で、なんか用か?」
「ええ、そうよ。翔、貴方これからどうするの?」
「どうするって、今日は何処か住む場所が無いか探して、それから働く所を探し・・・・・・駄目だ」
「何が駄目なのですか?」
翔の言葉に不思議そうな表情を浮かべた朱乃が問いかける。
「俺はこの世界の身分を証明するものがない」
「それなら大丈夫よ、ほら」
そう言い、リアスは翔に封筒を渡してきた。
封筒を開けると中には身分を証明する書類等が入っていた。
「ありがとな、リアス」
「これくらい朝飯前よ!」
豊満な胸を張るリアス。
そんなリアスに翔と朱乃は苦笑する。
さて、身分を証明する物が手に入ったし、速く住む場所と働く場所を決めないとな・・・
「ねぇ、翔?」
内心で翔がこれからの事を考えていると、リアスに声をかけられる。
「ん? 何だ?」
「私達が通っている、駒王学園に入らない?」
「・・・俺に学生をやれと?」
「ええ、そうですわ」
リアスの代わりに朱乃が答える。
学校か・・・
翔が考えていると、リアスがメリットを言う。
「入るんだったら学費はこちらが全部持つし、住む家を用意するわよ?」
やけに気前良いな・・・。そういや、ここら辺はグレモリーの管轄だって言ってたしな
まぁ悪い条件じゃない。それにしても―――
「そんなに俺を学校に通わせたいのか?」
翔の問いかけにリアスは笑顔で即答するリアス。
「ええ、それに同じ学校にいたほうが行動しやすいしね」
確かに、とリアスの言う言葉に納得する。
だが、まだ翔は腕を組んで悩む表情を浮かべる。
「あら、どうしたんのですか?」
「いやな、今さら勉強って思って、な・・・」
「あら、貴方勉強できるの?」
悩む翔に朱乃がどういたのか、と訊くと翔がそれに答え、リアスが少し驚いたように言う。
「ある程度なら出来るぞ? 英語とドイツ語、スペイン語、アラビア語、中国語、その他、主要な言語は使えるぞ」
「「えっ!?」」
翔の言葉にリアスと朱乃は驚きを示す。
それに翔は自身が馬鹿だと思われていたことに若干項垂れる。
「そ、それって本当なの?」
「まぁな。それに色んなところ行ったからな自然と身についた。執事もやってたしな」
「そ、そう・・・。それにしても執事ね・・・じゃあ私専用の執事にならないかしら?」
「拒否する」
翔の話を聞いたリアスはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて、己の執事になるように勧誘するが、翔は即答で拒否した。
「即答!? 少し考えてくれたっていいじゃない!!」
流石に即答されたのが気に障ったリアスは声を荒らげる。
「だってな・・・俺には執事はあまり合わないと思うし、それにリアス専用って言うのは嫌だ」
「あらあら、じゃあ私専用はどうですか?」
「・・・・・・悪いが断る」
今度は朱乃に言われ、翔は少し考える仕草をしてから断る。
それに対して、リアスは声を上げる。
「何で!? 朱乃の時は少し悩むのよ!」
「だって、朱乃は優しそうだし、リアスは如何にも我が儘お嬢様って感じがな・・・」
ピキ!!
部屋に何か切れる音が響いた。
翔は音がした方へと視線を向けると、そこには―――
「ふふふ、誰が主だかわかってないようね・・・」
怒りに応じて、全身から紅いオーラを溢れ出す。
少しからかい過ぎたか・・・
翔はリアスの頭に手を置き―――
「悪いな、少しからかい過ぎた」
と言いながら、頭を撫でた。
「ッ!?///」
「おっと、悪いな。つい癖で・・・」
リアスは突然な翔の行動に反応できずに、顔を紅くしながら何かを言おうとするが、それは言葉にならずパクパクと口を動かすだけに終わってしまう。
そんな彼女を見て、翔はつい撫でてしまった手をどかす。
リアスは、翔の手が離れたときに若干名残惜しそうな表情を浮かべるが、すぐに我に帰り恥ずかしそうに頬を紅く染め、僅かに顔を俯かせる。
子ども扱いされたのが恥ずかしかったのか・・・?
『相棒・・・それは本気で言っているのか?』
内心でリアスの反応を不思議に思っていると、頭にドライグの声が響く。
何だよ? じゃあ、なんであんな反応してんだ?
『今回の宿主は・・・』
呆れた声で言うドライグ。
それを無視して、そろそろ話を再開させようとリアスに話しかける。
「で、どうするか・・・。別に俺は何でも良いんだけどな」
「じゃ、じゃあ、貴方は駒王学園に入学してもらうわ」
少し声を詰まらせながらも答えるリアス。
「明日から学校に通ってもらうわ。住む場所は後程伝えるから、今日はこの町でも回ってきたら?
はい、これを渡すから何かあったら連絡頂戴」
そういって、リアスは制服のポケットから携帯電話を取り出し、翔に渡した。
「ああ。じゃあ、放課後あたりにまたここに来るわ。勉強頑張れよ、二人とも」
「ええ、行ってらっしゃい」
「翔くん、行ってらっしゃいませ」
二人に軽く激励してから翔は部屋から出た。
・
・
・
・
翔は今、街を散策している。というよりただ散歩しているだけである。
なぁ、ドライグ
『何だ、相棒』
俺の
『ああ、そうだがどうした?』
他には能力はないのか?
『あるぞ、
どんな能力なんだ? ギフトって言うから力でも譲渡するのか?
『ああ、倍加させた力を他者に譲渡させることが出来る』
凄いな。それって、俺の攻撃にもできるのか?
『ああ、出来るぞ。他には
強そうだな・・・。ま、そのうち出来るようになるだろ・・・
翔がドライグと心の中で会話していると―――
「はわぅ!!」
「ん?」
変な声がした方を見ると―――
「Oh・・・・・It will fall over why? (あうぅ・・・・・・なんで転んでしまうんでしょう?)」
シスターか、何でこんな所に? 基本修道院や教会からは出てこないはずだが・・・・・・英語で話しているところ、海外から来たばかりなのか?
「Are you OK?(大丈夫か?)」
「Thank you very much.(ありがとうございますぅ)」
お人好しの翔が、無視することなどできるわけもなく、手を差し出し、シスターの手助けをする。
「Here you are.(これを)」
転んだ拍子に落ちたヴェールを拾い手渡す。
「Thank you.(ありがとうございますぅ)」
そこで初めて、翔はシスターの顔を見た。
透き通るほど規定那清らかな翡翠の瞳に、絹のような綺麗な金髪、雪のような白い肌。
そして、何よりも優しげな雰囲気と儚げな表情を持つ少女。
「ッ!?」
一瞬、目の前の人物とは、似ても似つかないのに、翔の頭にある女性の姿が通り過ぎる。
・・・・・・関係ないだろ、彼女とこの子は違う
だが、すぐに頭に浮かんだ女性を消し去り、落ち着きを取り戻す。
※これ以降は英語で話していますが、日本語で表記します。これ以上続けるのは無理です!
「どうしたんですか?」
「なんでもないさ。ほら、荷物も悲惨な事になってるし手伝うぞ」
「あっ、自分で拾いますから!」
「これくらいいいさ」
不思議そうに翔のことを見ていたシスターに、翔は誤魔化すように荷物を拾い始める。
翔はチラッと隣で一緒に荷物を拾うシスターを見る。
なんか動きがいちいち小動物っぽいな・・・
「はぁ・・・お見苦しいものを見せてしまいました・・・・・・」
えへへ・・・と取り繕うように笑うシスター。
「旅行か?」
「いえ、今日からこの町の教会へ赴任する事になりまして・・・。でも道に迷ってしまって、言葉も通じず困っていたんです」
「教会なら分かるから、案内するぞ?」
翔は先ほど図書館に行った時にこの街の地図を見てある程度の地理は把握したため、大体の建物の位置は覚えている。
「本当ですか! これも主のお導きです!」
「・・・・・・主ね。そんじゃあ行くか」
「はい!」
「うわぁあぁん!」
・・・今度はなんだ?
シスターが返事したとほぼ同時に子供の泣き声が聞こえた。
声の方へと視線を向けると、どうやら男の子が転んでおり、その際に怪我をしたようでそれで泣いてた。辺りを見ても親らしき人は居ないみたいだ。
「大丈夫か?」
そんな男の子をほっておく翔ではないので、すぐにそばに駆け寄り、膝を曲げて男の子と目線を合わせながら声をかける。
「大丈夫? 男の子ならこのくらいの怪我で泣いてはダメですよ」
すると、何時の間にかシスターが翔の隣に居た。
そして男の子の膝に手をかざすと―――
「これは・・・」
左右の中指に二つの指輪、所謂エンゲージリングと呼ばれるものが発現し、その指輪が淡い緑色に輝きを放ち、そこを起点に両手から同じように淡い緑色のオーラが怪我に触れると、あっという間に怪我を治してしまう。
「はい! 傷はなくなりましたよ。 もう大丈夫!」
「凄いな・・・、一瞬で治ったぞ」
翔は治癒能力の高さに驚きを示す。
すると、遠くから女性の声が聞こえた。どうやら男の子の母親のようだ。
「よしくん、どうしたの!?」
「あの、お姉ちゃんがね! 手からぽわーって!」
「転んだみたいなので手当をしただけですよ」
「子供が転んだようなのでこの子が手当したんだ」
慌ててきた母親に、子供が自慢でもするかのように話すが、何が起きたか分からない表情を浮かべる母親にシスターが声をかけるが、英語で話しているため、翔がシスターの言葉を通訳しながら事情を伝えると、母親は怪訝な表情で二人を見て、関わらないようにと子供を連れては早歩きでこの場から去ろうとした。
「・・・大丈夫か?」
「・・・いいんですよ、知ってますから」
自身に礼を言わないのに対して翔は気にしないが、シスターの好意を無碍に扱うのに対して僅かに憤りを感じる。
シスターを案じるように声をかけると、大丈夫ですよ、と安心させるように笑みを見せるが、その笑みには影が感じらる。
深く考え込みそうなので、翔は少々乱暴に頭を撫でる。
「はわぁ!」
突然のことで吃驚して面白い声を漏らすシスター。
すると―――
「お姉ちゃん、ありがとー!!」
「ありがとう。だってさ」
母親と手を繋ぎながらも男の子が手をブンブン振りながらお礼を大声で叫ぶ。
翔が通訳してあげると、シスターは嬉しそうに微笑んで小さく手を振りかえす。
普通の者からしたら、疎むべき存在かもしれないな・・・
『確かにそうだな。過去に
僅かに拳を握る翔。
だが、今考えても仕方ないと思い、話題を変えるようにシスターに話しかける。
「その力は・・・」
「治癒の力です。神様からいただいた素敵な力なんですよ」
そう語るシスターの表情には暗いものがあったが、翔はそれには触れずにいる。
「さて、行くか?」
「はい! お願いします!」
よいしょ、とトランクを持ち上げるシスター。
「大丈夫か? 重たいなら俺が持とうか?」
「いえ、大丈夫です。 きゃっ!」
「無理するなよ」
予想通り、転びそうになったので腕を掴んで支える。
そして、苦笑しながら、トランクを翔が持つ。
「あぅあぅ・・・お願い・・・します」
申し訳なさそうにするシスターに、気にするな、と告げてトランクを持ちながら案内をする。
「あっ、ここです! よかったぁ」
翔達の視線の先に教会が見えた。
だが、教会を見て翔は、目を細める。
・・・何だ? 一瞬、教会から変な気配を感じた、気のせいか・・・?
「ここまで来れば大丈夫だろ、じゃあ俺はこれで・・・」
目の前にある教会に違和感を感じながらも、確証がないため、そのままにすることにした翔は、シスターに別れを告げる。
「えっ!? ちょっと待って下さい!ここまで連れて来て下さったお礼をさせて下さい! せめてお茶でも・・・」
「俺が勝手にしたことだ、礼なんていらないさ。それに、そろそろ用もあるからな」
「でもそれでは・・・」
「悪いな。そうだ、今更だけど俺は御剣翔。 気軽に、翔って呼んでくれ。それで君は?」
「アーシア・アルジェントです! アーシアと呼んで下さい」
「じゃあな、アーシア。また今度機会があれば」
「はい! 必ずお会いしましょう、翔さん!」
この時、アーシア・アルジェントという優しい治癒の力を持つ少女にあんなことが起きることなど、翔はは露にも思っていなかった・・・。
・
・
・
・
「今、帰って来た」
アーシアと別れてから特にイベントもなく、直ぐに部室へと戻ってきた。
「あら、もう帰ってきたの? まだゆっくりしてきてよかったのに」
「まぁな。やることもなくなったし、最後に色々あったしな」
「何があったのかしら?」
「いや、ただ道に迷っていたシスターを教会に案内しただけだ」
「なんですって! 翔、二度と教会へ近づいては駄目よ! 教会は私たち悪魔にとっては敵地。
踏み込めばそれだけで神側と悪魔側の間で問題になるわ。何時、光の槍が飛んできてもおかしくなかったのよ?」
「ほう・・・(なら、あの時に感じた気配は神側の者達の力か・・・・・・それにしては、邪悪なものを感じたが、気のせいか?)」
リアスが声を荒らげて言うが、翔はそこまで衝撃は受けてないようだ。
それよりも先ほどの違和感について考え始める。
「教会の関係者にも近づいては駄目よ。特に『
神の祝福を受けた彼らの力は私達を滅ぼせる程よ。
中には
それがどれほどの事か貴方にはわかる?何も見えず、何も聞こえず、何も感じないの・・・」
「以後気を付けるが、俺は悪魔じゃなくて人間のままなんだが・・・」
「それでもよ。悪魔に関わってるってだけで何するか分からない連中よ。
・・・ごめんなさい、熱くなりすぎたわ。兎に角、今後は気をつけてちょうだい」
「ああ、気を付けるよ」
「あらあら、お説教は終わりましたの?」
リアスの説教が終わったのを見計らって、朱乃が会話に参加する。
「ええ。何かしら、朱乃?」
リアスの問いに朱乃は僅かに顔を曇らせながら答える。
「討伐の依頼が大公から届きました」