久々に少しづつ書くをした
結構書いた
かゆ・・・
うま
アニメで幾度となく描写されてきた「阿良々木 暦」の家。多少リアルになっているものの、今目に飛び込んできたのは間違いなくそれだった。初夏の日差しは学生服の僕には暑く感じる。僕をここまで連れてきた少女はそうではないのか、「八九寺 真宵」はそういった存在ではないのか、汗ひとつかいていない。もしやこの汗は日差しに溶かされた僕の灰なのではないか。「阿良々木 暦」をこの目に映せることによほどハイになっているのか足の感覚が長い間正座をしていたかのように鈍い。
「ねぇ八九寺さん。本当に『阿良々木 暦」に会おうって言うのか? 僕が『阿良々木 暦」にどんな影響を及ぼすかわからないって言うのに」
そうなのだ。『「阿良々木 暦」の姿をした怪異』となった状態の僕を「阿良々木 暦」に合わせることの危険性を「八九寺 真宵」は理解しているのだろうか。例えば「ドッペルゲンガー」や「スワンプマン」などの偽物を使った怪談話は複製体がオリジナルを害する性質を持っていることがしばしばである。僕にその意図がなかろうと「阿良々木 暦」を害してしまう可能性は少なくない。
「それに、いきなり家に自分そっくりの人間がいたら、その、『阿良々木 暦』が驚きすぎてしまうんじゃないか? そうした結果「忍野 忍」に僕の排除を命じるかも知れない。いや、命令するまでもなく『主人様の姿を真似るなど無礼じゃ』なんて言って即切り捨てられるか。もしかしたら、ご都合主義的に、願望を映し出すように、2次創作のように、それこそ夢のように『主人様にここまで似ているとは……ぱないの!』なんて言って見逃すかも知れないが、その後のこと……よくよく考えたら「戦場ヶ原 ひたぎ」の突破口がないじゃないか!!」
「無駄に忍さんのものまねが上手い……あと、阿良々木さんを含めたみなさんがあなたを殺そうとすることは無いと思いますよ。あなたに敵意がなければの話ですけど」
「阿良々木 暦」は僕の憧れにして、目標の存在なのだから敵意など抱くはずがない。自分に置き換えて考えてみればいくら自分そっくりだろうと敵意を持たない人間を殺害する気にはならいない。「八九寺 真宵」が言うように考え過ぎだったのだろう。ただし、「阿良々木 暦」のためであれば誰でも殺せてしまうため「戦場ヶ原 ひたぎ」の存在は考慮しないものとする。さらに言えば「戦場ヶ原 ひたぎ」は「阿良々木 暦」を騙る僕の存在を許さないだろう。知った顔で彼らの「物語」を語る僕を許さない。誰が許しても僕が許さない。卑怯にも自分を許さない僕を「戦場ヶ原 ひたぎ」は許さないだろう。
ふと、妙案を思いついた。
「八九寺さん。確実に迷惑をかけることが確定していることだし、何か……そう! ドーナツを買ってくる。僕の不在の間に『阿良々木 暦』が来てしまったら来るべき自分自身(見た目だけ)との対面への心構えを作らせておいてくれないか?」
初対面時のインパクトを「八九寺 真宵」をクッションにすることで和らげ、「忍野 忍」に対しておおよそ正解である差し入れを送り第一印象をよくする。確かに先程の発言は考えすぎかも知れないが、大事なのは考える姿勢を見せること。考えすぎてから回っているぐらいがちょうどいい……「阿良々木 暦」の善性を最大限利用した僕の安全を確保するための僕らしい全く必要のない化かしだ。
「あっ! 阿良々木さん……によく似た人!!」
「八九寺 真宵」の動揺した声を尻目に僕は走り出す。目にも止まらぬと言えるほど走りに自信はないが、呼び止める隙のないほどとは言える程度の速さだった。もはや誰も僕を止めることはできない。この完璧な計画のたった一つの欠点といえば僕がこの街のミスドの位置を知らないということだけだった。
「ごめんなさいね! 八九寺さん!!」
開いた目に低い姿勢はどこか弱々しく見える。不気味で不確かどこから見ても阿良々木暦であるのに致命的に阿良々木暦でないというのがその人の印象だった。
「知ったような口を聞く」という言葉があるが、あの人はまさに何かを知っているような喋り方をした。あの人は私たちの物語と言っていたが、あくまで阿良々木さんを取り巻く現象は内々の話であり、知る由もないことのはずだ。突然現れた不審者でどう考えても危険人物、のはずなのにこちらに対してあまりにも好意的すぎるあの態度がそれを忘れさせる。
それはそれとして
「あの人、多分逃げましたね」
推測に過ぎないが、阿良々木さんに会う時が近づいたことで緊張が限界を超えてしまったのだろう。僅かな時間の会話であったがあの人の阿良々木さんへの好意は大きく、そして今まで見てきたものとは違く見えた。純粋な重いと言うよりは崇拝に近い、おおよそ人が人に持つべきではない感情。一体あの人は阿良々木さんの何を知っているのだろうか。
「はーちーくーじー!」
「ぎゃあああ!!!」
私としたことが物思いに耽っていたせいで背後からの接近に気づけなかった。悲鳴の収まる間も無く背後から持ち上げられ体を弄られる。こんなことをするのは阿良々木さんくらいのものだろう。全くどうして崇拝対象にしようなんて考えることができるのかわからない。
「久しぶりだなぁ! 1週間ぶりか? もっと触らせろ撫でさせろ!! 僕の手に八九寺の感触を思い出させろ!」
「いやあああああ!!!」
「ごはっ」
抵抗しようと振り上げた手が顎を掠めて、阿良々木さんは気絶した。
「ところでいきなりどうしたんだよ。ここ、僕の家の前じゃないか」
「ああ、それに関してお伝えしたいことがあって」
突然現れた阿良々木さんにそっくりなあの人について話さなくてはならない。一度描写したことをもう一度書くと言うのも面倒なので説明は省略させていただく。
「お前の言うその僕のそっくりさんの姿がないじゃないか。姿だけでいえば僕そのものと言えるほどそっくりなら一眼見て真偽を確かめたいところなんだが……」
「あの人は今ミスドにドーナツを買いに行ってます」
「そいつ僕の姿のまま何やってんの!?」
「おそらく忍さんを警戒してるんじゃないかと思われます。自分が阿良々木暦の姿になったことで阿良々木暦さんの周囲の人間に消されると思ったみたいで」
「ちょっと待ってくれ、いくら僕に似ているとはいえそいつが忍のことを知ってると言うのはおかしくないか?」
「ああそれについての説明がまだでしたね。あの人……そういえば私名前を聞いていませんでした。一体どこの誰なんでしょうか……それは後で聞くとして、あの人が言うには『君たちの物語を知っている』とか言ってましたけど、意味深な雰囲気に押されて質問できなくて……明確な意味までは理解できないままなんですよね」
「物語、か。言葉通りに解釈すれば……荒唐無稽な話だけど僕や八九寺の過去や現在、もしかしたら未来に至るまでを知っているというのはどうだ?」
ありえない。と言いたいが言い切れない部分が多々ある。彼の「時系列的には」という発言だったり、こっちの事情を知っているにしては怪異に対しての考え方が甘かったりするところだったり、知っているなら頷ける。全て知っているから私を迷い牛だと思っていた。全て知っているから怪異に恐怖しない。それなのに全て知っている彼が一体何をしようとしているのかはわからない。考えてみると一方的に知られていると言うのは快いものではなかった。
「そうだとしたら、流石にちょっといやですね」
「否定しないのか?」
「ええ。できないと言ったほうが私の感情を的確に表しているかもしれません。彼の言動にはいくつか知っていないと出来ないことが含まれていますから」
「……そうだな。忍のドーナツ好きは僕らの中ではまあまあレアリティの低い情報ではあるけれど他人が知り得ることでもないし、八九寺が言うにはそいつ、戦場ヶ原のことも知ってたんだろ? 現在進行形で怪異と密接に関わっている僕らならともかく戦場ヶ原のことまで知っているとなると……何者なんだ?」
「私から話せることはもう無いことですし、本人から聞くとしましょうか」
そう言い放ち電柱柱の影に視線をやると、姿は見えないもののザッ! っと身を捻るような音がする。一瞬はラスボスにも見えていた謎の存在の視線を感じると思って鎌をかけたら本当にかかってしまった。威厳というかプレッシャーの落差で風邪をひいてしまいそうだ。
「なんだ八九寺? って、もしかしてそこにいるのか!? すごいベタな展開だな!?」
「ほら、もうバレてるんだから出てきてくださいよ」
あかん。あかんわもう。どないしよか。わからんもう。「阿良々木 暦」本人おるやん帰って来たらもう。手ぇ震えてもうとるし、めっちゃ話し込んどるし僕行かれんて、あの中入っていくとか「物語シリーズ」的にもアウトやねん。はぁー。「阿良々木 暦」側の心の準備がいくら整ったって僕が出来てなかったら意味ないっちゅーのに気付いとらんかったわ。やってもーたわ。ほんま堪忍してーや。
「────本人から聞くとしましょうか」
咄嗟に身を引く。どうやらエセ関西弁で精神の安定を取ろうとしているような暇はなかったらしく、完全に僕の隠密がバレている。「八九寺 真宵」やはり侮れない存在だ。侮ったことは一度たりとて無いけれども。
「なんだ八九寺? って、もしかしてそこにいるのか!? すごいベタな展開だな!?」
あ、「阿良々木 暦」がこっち向いてる! これは夢か? 夢です。夢でなければ許せない! とはいえここまで言われて出ていかないもの探偵に正体を突き止められた犯人が黙秘権を行使するようなもの。興醒めで、ルール違反だ。よってすぐさま姿を現すべきなんだが……いざ「阿良々木 暦」の前に出るとなると緊張する。何言ってこのドーナツを渡せば良いのだろうか。というか財布が都合よく元々の僕の財布だったから良かったものの持ってなかったらどうするつもりだったんだという間話は捨ておいてさっさと足を動かさなければ。
「……出てこないな」
「いるはずなんですが、おかしいですね」
もうだめだ。変な空気になってる。これがラストチャンスだ。これは「試練」だ。緊張に打ち勝てという「試練」と受け取った。
──静まった夕暮れの空に一人分の靴音と、遠く響くいくつものエンジン音が混ざっていく。
「やぁ。「阿良々木 暦」。君たちの仲睦まじい会話に入っていくのも気が引けたのでね。電柱の影で待たせてもらったよ。「八九寺 真宵」もありがとう。「阿良々木 暦」に僕のことを話しておいてくれたんだね……」
「電柱からディアボロみたいなことしてる僕が出てきた!?」
「脱いで無いからほんとに謎の所作ですね」
「わぁ! 生の『阿良々木 暦』のツッコミだぁ!!」
「無邪気か! 一回始めたなら最後までやれよ!」
どうやら声に出ていたらしい。さすがの僕も「阿良々木 暦」に指摘されれば最後までやり通さなければなるまい。
「コホン。人の成長は……」
「本当に始めちゃったよ!!」
「──そうだろう? 『阿良々木 暦』」
「あぁ、この人やっぱりバカなんですね。安心したというか落胆したというか」
重いものが一度坂を降り始めると止めるのが難しいように、足取りが重かった分僕の口もまた簡単には止まらないようで、一瞬の無言も許さないレベルの捲し立てようだった。少しかかり気味かもしれない。どこかで息を入れられたらいいのだが。
「というわけで最後までやり切ってみたがどうだろうか『阿良々木 暦』。いやすまない、いきなりディアボロやられても困るよな? たまたま知ってたから突っ込めたものの知らなかったらマジものの冬が来たよな。緊張していたとはいえ許されないことをしたと思っている。結論を言うと腹を切って詫びようと思うんだ。どうかな」
「どうかなじゃねーよ! ハラキリなんて詫びられた気にならないし、そもそも僕の姿で自傷行為をしようとするな!!」
「それもそうだな。重ねてすまない。それと──」
ずっと手に持っていたミスドの箱を手渡そうとすると、箱が「阿良々木 暦」の手に渡る瞬間、どこかからか手がサッと伸びてドーナツを奪い去ってしまった。
「あ。すまん。うちのが行儀悪くて」
これ、「忍野 忍」の仕業で間違いないのだろうか。1日の間に「八九寺 真宵」「阿良々木 暦」「忍野 忍」とコンタクトを取るとか、僕はこれから死んでしまうのだろうか。具体的には各国から集まった「物語シリーズ」ファンにありとあらゆる暴力を与えられたのちに死んでしまうのだろうか。自然と悪い気はしない。笑顔で逝ける気がする。
「構わないさ。むしろポケスナでレアモーションを見たが如き幸せが駆け巡っているよぉ! アハ」
「うわ、阿良々木さんに匹敵するとんでもない顔してますよ」
「さすがの僕もこれに匹敵すると言われるのは嫌だ。あと、何気に吸血鬼をポOモン扱いするな!」
ツッコミも罵倒もドーナツまっしぐらも、こんな幸せが僕に訪れてはいけないだろう。夢であろうとも許される事ではない。嬉しいのが許せない。顔が綻びそうになるのが許せない。数多この状況を望む人がいる中で、最も価値のない僕が、最も価値のある体験を掠め取ってしまった。許せない。許せない。許せない。ゆる
「アハ! アハハハ!! ア゛!!!!!!!! …………」
「え?」
「し、死んでる!」
「ま、待て八九寺! 気絶してるだけだ!!とにかく一旦いての中に運ぶぞ!」
「はい!」
・・・・・・・・・
ミスド探し中のかなたは原作に出てきてない同級生に遭遇していましたが、かなたはもちろん気がつきませんでした。なんて一幕
「ちょっとそこの方すいません!」
「え?なんですか?ってえ?」
「ミスドの場所って知ってます?」
「あの角を曲がった所……だけど」
「ありがとうございます!では!」
「え、いまの阿良々木だよな。あんな奴だったっけ?まあいいやwww」
「てか阿良々木のやつ、見かけによらず甘党かよ。いが〜い今度話しかけてみよ!」
感想かいてください
お゛ね゛が゛ぁ゛い゛(うわ……目使い)