キミと双子の最後の戦場、あるいは正解を探す聖戦   作:ゆーえゆ

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ストック切れもあって毎日投稿途切れてしもた。
今後も投稿ペース落ちると思います。楽しみにしてくれている方すみません。
エタるつもりはないので頑張って続けていきたい。


Chapter.6 帝国にて

「信用できねえ」

 

 帝国。帝都ユンメルンゲン。

 第三セクター内のとある会議室。第907部隊のイスカを除く面々は、イスカが皇庁の魔女に拉致されたというミスミスの報告を聞き、対応策を考えていた。

 

「イスカを攫ったのがあの氷禍の魔女、そこまではまだ理解できる。戦闘行為が禁止されている筈の中立都市で目撃者を出さずにイスカを昏倒させる手段が一体何だったのかは気になるが、それだけ相手の手口が巧妙だったってことだろう」

 

 話しているのはイスカの相棒で同じ師に教えを受けた銀髪の狙撃手、ジン・シュラルガン。

 

「理解できないのは、その氷禍の魔女に双子の妹がいて、そいつが俺たちに協力を持ちかけてきたってことだ。そいつらはどう考えてもグルだろう。

 イスカの無事を保証するって? その言葉を信じられる証拠がどこにある?」

 

 張り詰めた室内の空気が、更に冷たくなる。

 

「その妹の方、星脈噴出泉の争奪戦の最終盤で新しく確認された純血種の魔女だったな。聞けばイスカに不意打ちで重傷を負わせた敵だっていうじゃねえか。俺からすりゃ危険に思いこそすれ、味方に思える理由はねえ」

「うーん、音々もそうかも」

 

 ジンに同調するのは部隊の通信・機工担当の音々・アルカストーネ。

 

「何企んでるか分からないもん。ジン兄ちゃんの言う通りだよ。イスカ兄は音々たちで取り返さなきゃ」

「ジン君……音々ちゃん……」

 

 仲間たちの言葉にはっきりとした言葉を返せず、曖昧な態度を取るミスミス。部隊の中でアーシャと会ったことがあるのは彼女とイスカだけ。ジンたちの疑念も正しいという思いもあり、彼女は判断に迷う。

 

「仮にイスカがちゃんと帰ってくるのだとしても、何かしら裏があると考えるべきだろ。帝国や皇庁の上層部に絡んだ陰謀とかなら、今まで表舞台に出てこなかった魔女の行動としちゃお似合いだ。その辺どうなんだ使徒聖殿? 心当たりは?」

「まさかぁ」

 

 と、部屋の外からジンの問いに答えながら入ってきた眼鏡の女性は、帝国軍最高戦力である使徒聖の第五席。名を璃洒・イン・エンパイア。

 

「イスカっちを拉致られたのも予想外なら、条件次第だけど無事に返すって言ってきたのも予想外。あちらさんの思惑が読み取れなくて八大使徒のお歴々も困惑してたよん。ミスミスの報告からすれば一週間程度で連絡するってことだったけど、その間に何をするつもりなのか……正直ウチも読めないねえ」

「酷い扱いしたら他の国から批判されるから、とか?」

「うーん、そりゃ皇庁が周辺国へのイメージダウンを恐れてるってのはこっちとしても正しい認識だけど、それならそもそも誘拐なんてしなければいいでしょ。

 氷禍の魔女と違ってその双子の妹の方は本当に情報が少ないし、なんなら双子だって名乗ったのも実際に視認したのもミスミスとイスカっちしか居ないわけで、こっちとしても判断材料がないのよ」

 

 まあ、天帝閣下は違うみたいだけど、とボソっと呟く璃洒。

 

「見た目はほんとにそっくりだったよ。妹の方は髪が短くて、あとは服装が多少違うくらい」

「ふうん。強さも氷禍の魔女と同じレベルだとすれば脅威だけど……まあ一旦置いておきましょう。その魔女が何を企んでいるにせよ、イスカっちを保釈されるのを黙って待つことはできなくなりました」

「……例の特務のことか」

 

 ジンが目を細め、ミスミスと音々も緊張した面持ちになる。

 イスカが誘拐される前に目の前の使徒聖から告げられた『ネビュリス女王捕獲計画』という極めて難度の高い特別任務だ。

 

「ほんとはイスカっちには自力で逃げ出してきて貰いたかったんだけど、諸事情によりそうもいかなくてね。女王捕獲のついでに、皇庁第十三州アルカトラズに潜入してイスカっちを奪還することになりました。もちろん実行するのは第907部隊(きみたち)よん」

「ついでだと? 簡単に言ってくれるじゃねえか。イスカの奪還も女王の誘拐も今までの帝国軍の歴史からすれば夢物語もいいところだぞ」

 

 帝国では魔女・魔人と呼ぶ星霊を身に宿した人間には星紋と呼ばれる痣が体のどこかにある。逆に星紋がない人間は星霊使いではないので区別できるわけだが、皇庁ではそれを国境のセキュリティに利用している。

 星霊使いは入れるが、そうでないものは拒む。この星霊審判により、100年の長きに渡り帝国軍は皇庁に侵入することはできなかったのだ。

 

「それぞれの難易度は別に考えても、まずは国境を越えて皇庁に侵入する必要がある」

「うんうん、その手段が《ある》と言ったのが先日のことだったよね。これから説明するよん」

 

 璃洒は持ってきていた金属製の容器を示してにやりと笑う。

 

「今回はきっとイケルと思うんだよねー」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 しばらく後。

『人工の星紋』を付与されたジンたちの身体に星霊使いの印が浮かび上がったことを確認し、いくつか計画の具体的な内容を指示すると使徒聖は部屋から去っていった。

 余計な人間がいなくなり、ミスミスたちは改めて特務とイスカ、そしてもう一つの問題について話し合う。

 

「……結局、皇庁に侵入することになっちゃったね」

「上からの命令だ。拒否はできねえよ」

 

 不安げな上官に狙撃手は念押しするように言う。

 

「でも……」

隊長(ボス)の左肩のソレだけは軍に知られる訳にはいかねえ。不審な動きを見せたらあの使徒聖に嗅ぎつけられる」

 

 その言葉に音々が隊長(ミスミス)の肩に目をやる。

 

「まあ確かに、話としては魅力的だけどねー。星紋を隠すシール。今の音々たちからすれば喉から手が出るほど欲しい代物なんだし」

「結局のところ隊長(ボス)以外の視点からはその魔女が信用できねえって話だろう。イスカの件と上層部から睨まれかねない状況から考えても、今は特務に参加するべきだと俺は思う。

 皇庁に侵入できれば、別にその魔女に頼らなくとも解決策が手に入る可能性もあるしな」

 

 尚も表情の暗いミスミスに、ジンは訝しげな目を向ける。

 

「どうした隊長(ボス)? 魔女との約束を破って恨まれるのが怖いか?」

「怖いというか、まあ……彼女、嘘ついてるようには見えなかったもん」

「隊長しか会ったことないんだから音々たちにはわかんないんだってば。イスカ兄は——ってイスカ兄はいないんだった……」

「アタシだってイスカ君は心配だよ。でもなんか、うーん……」

「最初に仕掛けてきたのはあっちの方だ。隊長(ボス)が気兼ねすることじゃねえよ」

 

 

 こうして、ミスミスの不安もありつつ、第907部隊はイスカが囚われている皇庁——第十三州アルカトルズへと向かうことになったのであった。

 

 

 




アーシャ非登場回。ほぼ原作通りの進行です。
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