キミと双子の最後の戦場、あるいは正解を探す聖戦 作:ゆーえゆ
イスカがミスミスを追いかけて
帝国軍の戦闘衣を着た銀髪の青年とポニーテールの少女。基地に乗り込んできた車両とやらに乗っていた者たちだろうか。
そして別の方向からやってきていたもう一組のペア。それはアーシャにとっては見慣れた自分と同じ顔を持つ少女とその従者。
アリスたちは帝国のキャンプ地にて使徒聖ネームレスと一戦交えた末の帰還であり、タイミングとしては完全なる偶然だったのだがアーシャはそれを知らず、あの帝国軍の兵士たちを追いかけ回していたのだろうかとズレた推測を立てる。
「まったく、姿を見ないと思ったらどこで遊んでいたのやら。……アリス、確認したいことが山ほどありますが、ひとまずはミサイル攻撃から星脈噴出泉を守るのを手伝ってくださ————は?」
話しかけようとしたアーシャだが、姉が自分には目も暮れず、それどころか何を血迷ったか黒髪の少年を追うように光の中に飛び込んで行くのを目の当たりにして絶句した。
落ち着く暇もない。アリスの安否を確認すべく大穴に向けて駆け寄ろうとしたアーシャだったが、そのタイミングで空から高速で迫りくる飛翔物体の存在を感知して立ち止まらざるを得なかった。
ミサイルは確実に
アーシャは苦渋の思いで迎撃を優先することに決める。
「……仕方ありませんね」
背中の星紋を輝かせ、両手を上に掲げる。
「灼熱よ。天を焦がせ!」
その手から放たれたのは先程イスカに向けて放ったものを数百本と束ねた極大の熱線。大空を焼き払うかのごとき勢いで発射されたそれは過たずミサイルを直撃し、上空で爆散させることに成功する。
そしてその瞬間、彼女の背後で、地下から押し寄せた星霊エネルギーが膨れ上がるように地表へと噴出し、翠光がクレーターの淵を削り広げながら爆発した。
ミサイルを撃墜し、急いで振り返った彼女は星霊エネルギーの奔流によって地上まで吹き飛ばされてきたアリスの姿を確認し、そっと息を漏らす。
帝国兵の二人がどうなったのかは確認できない。アリス同様に吹き飛ばされたのであれば地上に戻れたかもしれないが、周囲に満ちる閃光と荒れ狂う暴風が巻き上げた砂埃によって視認するのは難しかった。
十数秒の後、視界が晴れたアーシャが見たのは、ドレスが汚れるのも構わず地面に座り込んだ自らの姉、そして急に放出源が消えたかのように光を失っていく
「もう! なんなのよ! また決着をつけられなかったじゃない!」
「なんなのよはわたしが言いたいのですが……」
「あ、あら? アーシャ? なんでここにいるの?」
「それもわたしがアリスに訊きたいのですが……」
はあ。どうしてこうなったのだろう。
中立都市で出会い、戦場で再会した面白い剣士とは自己紹介だけでろくに話もできないまま別れ。
なぜか戦場に紛れ込んでいた姉は無事であったものの、何やらご機嫌斜めで。
あれだけ苦労して確保したはずの
「どれだけ報告書を書かねばならないのか、考えるだけで頭が痛くなります」
恐らくまたミサイルは降ってくるだろう。守るべき
肉体的にも精神的にも、溜まった疲労がどっと押し寄せてくる。
「本当に疲れました。というか今回の件はわたしにしては働きすぎました……早く帰ってお風呂に入りたい」
とりあえずアリスを拾って皇庁へ帰還しよう。色々と問い詰めるのはその後でいい。アーシャはここしばらくで一番と思える大きなため息をついた。ほんの少しの時間の出来事が濃密な記憶となって彼女の肩を重くする。
「おやアリス、頬に傷がついていますよ? どこかで転びでもしましたか?」
「え? ああこれは……」
「そ、そうですアリス様! まずは消毒をしなければ!」
慌てて救急キットを持ち出す燐。
「いいわよこれくらい。問題はまたイスカと戦えなかったことで……」
「ええ。問題はアリスが帝国軍の兵士を追いかけて
「「(ぎくっ!)」」
こうして、アーシャの名が初めて帝国軍に知られる事になった戦いは幕を閉じた。彼女がそれに思いを至らせるのは、しばらく時間が経ってからのことになる。
争奪戦、ここに決着です。