夜9時妙義山頂上
祐也「んで、細かいルールとかはどうする?」
慎吾「横に並んでスタートが定番だな。そっちが奥側、こっちが手前で行く。」
祐也「わかった。んじゃそれで行こう」
話がまとまり、奥側にエボⅣ、手前にEG6という形でスタートラインに並ぶ。
慎吾「おい!お前カウント頼む!!」
「はっはい!わかりました!」
慎吾は近くにいたナイトキッズのメンバーの一人に合図をするように指示を出す。
祐也「んじゃ、しっかしシートベルトはしておけよ?」
友奈「わかってるって♪」
祐也の指示に頷きつつ、シートベルトをしっかしつけて突っぱりを握る。
「それじゃカウント始めるぞ!!
5秒前!!
4!!
3!!
2!!
1!!
GO!!」
ナイトキッズメンバーの合図とともに弾かれたように飛び出す2台。しかし流石の加速のいいシビックでも4WDの加速には敵わないのか、ジリジリとエボⅣが前へと出ていく。
「流石公道の王者ランエボ!!いい加速だぜ!!」
「でも慎吾さんだって遅れてない!!妙義最速のダウンヒラーの実力を見せてやれ!!」
熱気に包まれているナイトキッズメンバーの目の前を勢いよく通過していく2台。エボⅣが先頭、それにピタリと張り付く形でEG6が続く。
第1コーナー
2台はもつれあいながら最初のコーナーに差し掛かる。ほぼ同時にブレーキランプが点灯、3速から2速に叩き込んでステアリングを切る。互いに密着しあいながらコーナーを駆け巡る。
ーなかなかいいコーナーリングだ‥、地元だからこそ言える‥。いい走りだぜー
ステアリングを握りつつ慎吾はそうつぶやく。
ーだがコーナー勝負はこっちが僅かだが上回ってる‥。この感じだとここを走り始めたのは最近か‥ー
ー流石はナイトキッズのダウンヒラー‥惚れるようなコーナーリングだぜ‥ー
エボを操りながらバックミラーを見つつ、関心の表情を浮かべている祐也。
ーまともにコーナーリング勝負したら勝てないな‥なら‥ー
そう確信した祐也は更にアクセルを踏み込む。流石はランエボと言わせるような加速を見せつけ、EG6を振り切りにかかる。しかしそれを逃すまいとEG6もブイテック特有の加速を発揮し追いすがる。
ー‥、走りが変わった‥。この感じだとコーナー勝負では勝てないって判断したか‥ー
ドリフトの際の横Gに耐えつつ、祐也の走りが変わったことに気づく友奈。それもそう、最初の何個かのコーナーに比べて突っ込みの際の角度が緩くなっている。
ー突っ込みの角度を浅くして立ち上がりの加速勝負に切り替えたみたい‥。4WDの性能をフルに活かしてる‥ー
友奈の冷静な分析通り、祐也は突っ込みの角度を多少浅くして立ち上がりの加速でめいいっぱい踏み込める走りに切り替えていた。
ー‥ちっ‥!走りが変わった‥!突っ込み勝負で勝てないなら立ち上がり加速ってか‥!さっきに比べて距離が縮まらねぇ‥ー
ステアリングを切りつつ、焦りの表情を浮かべてる慎吾。最初の何個かのコーナーではストレートで離された分を取り返せていたのだが、今はあまり距離が縮まらなくなっていた。
ーだがここで離されるわけにはいかねぇ‥。いつも以上の突っ込みでいくしかないな‥ー
そう思いつつ、慎吾も負けじまいと先程よりも突っ込み速度を上げて、祐也の立ち上がり加速に対抗しようとする。
ー後ろのEG6のドライバー‥ペース上げたわね‥、それに、あのブレーキランプの点滅の仕方‥左足ブレーキか‥ー
バックミラーでEG6の動きを見て察する友奈。そう慎吾の藤原拓海にも劣らない突っ込みの秘訣はこの左足ブレーキ、ラインを外すこともなく維持し突っ込み速度も普通のブレーキよりも早くなるのだ。
ーサーキットでもほとんど見かけないのに‥あのEG6のドライバーはかなり速い‥ー
ーこっから先は勾配がきつくなる、真のダウンヒラーの実力を見せてやるぜ‥!ー
第10コーナー‥
「しっかし中里さんが動いたか‥」
「あぁ‥、あの赤城の歌姫にバトルを吹っかけたらしいぜ」
「んでそのバトルが今週の金曜日にここであるのか‥、いくら地元だからって相手はあの高橋涼介に勝った赤城の歌姫だぜ?本当に勝てるのか?」
「それがあっちの地元なら‥だろ?妙義は俺達ナイトキッズのホー厶コースだ。中里さんならやってくれるさ」
すこし広めの路肩に止まっているナイトキッズのステッカーを貼った赤のロードスターと黒のシルビアS14、その近くにはナイトキッズのメンバーが3人ほどたむろっていた。しばらく話していると上からスキール音とエンジンサウンドが響き渡ってくる。
「お?誰かバトルしてるのか?」
「1台はブイテックサウンドだから‥慎吾さんか」
「もう1台は‥誰だ‥?」
少しするとヘッドライトの光とともにエボⅣとEG6がコーナーから勢いよく飛び出す。
「やっぱり!!後ろのシビックは慎吾さんだ!!」
「前にいるのは‥ランエボか!?」
「見たことねぇぜ‥よそ者か!?」
驚きを隠せないギャラリー達を他所に2台は勢いよく通過していく。そのままあっという間に次のコーナーへ消えていくのであった。
「いや!あのラインは走りなれてる奴の動きだ!!」
「ってことは最近出てきたやつか‥!!」
「けっこう慎吾さんといいバトルなんじゃねぇか!?」
ーくそ‥!はえぇ‥!!ー
中間セクションに差し掛かり勾配がさらききつくなってきたダウンヒル。ある程度性能の差は埋められてきたものの慎吾の表情には焦りが見えていた。
ー4WDっていうのはこんなに曲がるものなのか‥!?さっきよりも付いていくのが苦しい‥!ー
ーけっこうこっちも余裕はないな‥。ここから先は勾配がきつい‥。抜きに来るならこの辺からだ‥!踏ん張れよ‥オレ!ー
しかし余裕がないのは祐也も同じ、だが堪えろと自身を奮い立たせて更にアクセルを踏み込む。
ー今まで何度か祐也の横に乗ってきたけど‥この表情は初めて見た‥。でも‥祐也なら必ず勝つ‥!一緒にいたからこそわかる!!ー
助手席からガチの表情になっている祐也を見つつ真剣な表情になって再び前を向く友奈。その間にも再びコーナーに差し掛かりランエボのブレーキランプが点灯、その間にEG6は背後へと張り付く。
ー‥!!ー
3速から2速に叩き込んでステアリングを切り込む。すると後輪がスライドし全開の四輪ドリフトを披露する。対する慎吾はコーナーリングの最中にブレーキランブを数回にわけて点灯、いわゆる左足ブレーキを行いぴったりとついていく。そして立ち上がりのときには2台ともアウト側のガードレールに多少の余力を残して抜ける。
ー流石にこのまま長引かせるのは不味い‥そうなるとこのさきのヘアピンで行かせてもらうか‥ー
そう決めた慎吾はハンドルを左に切ってアウト側にシビックを滑り込ませる。
ーアウトからかよ‥!?くそ!行かせるか!!ー
負けじまいと祐也もアクセルを踏み込んで、エボを加速させる。並んだ状態の2台はそのままコーナーへと突っ込んでいく。
祐也・慎吾「「‥‥!!」」
ほぼ同時にブレーキランプが点灯、3速から2速へと叩き込んでステアリングを切り込む。互いに舞えを譲らまいという意思がガンガンに伝わりつつ一つ目のカーブを過ぎる。
ーこのコーナーを抜けた先の2つ目のカーブではインとアウトが入れ替わる‥!つまりアウトにいる俺が有利ってことだよ‥!!ー
慎吾の思った通り2つ目のがカーブで2台の位置が逆転しアウト側にいたEG6がイン側になったことでジワジワと前へ出ていく。
祐也「‥!(やられた!そういえばここはヘアピンだったな‥!)」
慎吾「この勝負もらった‥」
勝利を確信した直後、フロントタイヤの感触が突然鈍くなる。
ーなっ‥なんだ‥!?ハンドルが効かねぇ‥‥まさか‥!?ー
そう、FF車は基本すべての動作をフロントタイヤで行いリアタイヤはフリーなことが多い。そこまで勾配のキツくないところではそこまで気にならないが、峠のダウンヒル、特にこうゆう全開バトルをしているとフロントタイヤにかかる負担はとてつもないほど大きい。そのため、今のEG6のフロントタイヤは熱垂れを起こし反応が鈍くなってしまっていた。
ーこのままじゃ‥アウト側のエボにぶつかっちまう‥!!っ!ー
ジワジワとアウト側に膨らんでいき、あと少しでエボと接触しかけようとした瞬間、慎吾はアクセルを緩める。
ー‥?減速した‥?ー
友奈が右ミラーを見てふと気づく、アクセルを緩めたEG6はそのままエボの後ろへと下がっていきあっという間に距離を離していくのであった。
ー‥追ってくる気配がない‥マシントラブルか?ー
祐也も気になってはいたが、とりあえず切り替えてステアリングを握り直し妙義のダウンヒルを疾走するのであった‥。
減速したEG6は近くの路肩にゆっくりと止まり、慎吾が車から降りてくる。
慎吾「‥やっぱり熱ダレ起こしてたか‥、そりゃそうだよなぁ‥けっこう無理な突っ込みしてたし‥」
思った通りの表情をしつつ、フロントタイヤをチェックして立ち上がる。
慎吾「普段の俺ならここまではならないんだが‥、そうさせてしまうとは‥流石だな‥あのランエボのドライバーは‥ったく‥峠は奥が深いぜ‥」
妙義麓
駐車場
祐也「どうだった、横に乗ってみて?‥といっても軽く流すとかいってたけど本気で走ったからどうかな‥。いけなかったからもう一回走るけど‥」
友奈「ううん♪大丈夫♪あれでも覚えられたから」
祐也「そっか‥♪」
あのあと、休憩のために麓の駐車場によった二人、あたりには街灯や自販機の光以外見受けられなれなかった。
友奈「にしても祐也も更にうまくなったよね〜」
祐也「そうか?」
友奈「そうだよ♪日に日に上達してるって感じ♪」
祐也「‥なんか照れるな‥(汗)」
友奈に褒められたことで少し照れくさそうにしている祐也。そして飲んでいた飲み物をゴミ箱に捨てて車に乗り込む。
祐也「んじゃ、帰るか」
友奈「ほいほい〜」
祐也「金曜日のバトル絶対に勝てよ〜?」
友奈「わかってるって♪」
そんな雑談をしつつランエボは夜の道をエンジンサウンドを奏でながら走っていくのであった。
そして中里とのバトル当日‥日が落ちた妙義山頂上にて‥
「いよいよ始まるのか‥」
「あぁ‥」
「あの高橋涼介、いや赤城レッドサンズを倒した赤城の歌姫‥、中里さんがどこまで通用するのか‥‥」
「だが、中里さんはナイトキッズのかなめの一人だ‥。地元の意地を見せてほしいぜ‥」
啓介「しっかし、相変わらずギャラリーが多いぜ‥‥一体どこから来てるんだ‥?」キョロキョロ
涼介「それだけ注目されてるってことだろ」
FDによりかかりつつあちこちいるギャラリー達を見ている啓介、それをたがめつつ自身はノートパソコンで何やらシュミレーションしているようだ。
中里「‥俺はあの日‥秋名のハチロクに負け‥そしてここ妙義で高橋啓介に負けたんだ‥。それから今まで以上に走り込んだ‥。寝る間も惜しんで‥、今の俺がどこまで行けるか‥赤城の歌姫で試してやる‥!!」
中里の決意ともに下からエンジンサウンドが響き渡り、ヘッドライトの光ともに友奈のハチロクが現れる。
「来た来た!!赤城の歌姫が来たぞ!!」
「スタートラインに誘導しろ!!」
ナイトキッズのギャラリーがハチロクをスタートラインへ誘導する。
池谷「いよいよ始まるぞ‥、友奈ちゃん初の妙義でナイトキッズの中里とのバトル‥」
健ニ「拓海と高橋啓介に負けてから更に腕を上げたっていう話だからな‥。前よりも厳しいぞ‥」
樹「今回ばかりは前の通りにはいかないっすよね‥」
拓海「‥‥」
祐也「相手のホームコースでどこまで行けるか‥」
羽南「大丈夫‥!!友奈なら絶対勝つ!!」
そんなこんなしているうちにハチロクがスタートラインに止まり友奈が出てくる。
慎吾「‥!!(アイツ‥あのエボに乗ってたやつだ‥。なるほど‥だから不思議な感触があったのか‥)」
慎吾は数日前のことを思い出し、友奈を真剣な表情で見つめている。それをよそに中里が話しかける。
中里「‥聞いたとおり‥若いな‥。年はいくつだ?」
友奈「‥18です。」
中里「‥藤原と同じか‥名前は?」
友奈「結城友奈と言います‥!」
いよいよ初めての赤城以外のバトル、妙義ダウンヒルでのナイトキッズ中里との一戦
彼女のさらなる実力がわかります!!