群馬エリアをかけた一大決戦か行わます!!
京一「それじゃ‥始めるか‥」
友奈「‥はい!」
二人はそれぞれの車に乗り込んでスタートラインに車を並べる。それを見ている羽南は少し不安そうに眺めている。
ー大丈夫‥かな‥。いや‥親友を信じないでどうするの‥!友奈ならやってくれる‥!ー
清次「京一、今回の作戦は‥?」
京一「シュミレーションⅢでいく」
清次「‥前に俺に指示したヤツか」
京一「あぁ、今回の相手は手強いだろう。だからシュミレーションⅢで気を引き締めて勝ちに行く。」
羽南「それじゃ!カウントいっくよ!!」
2台の前に立つように羽南が出てくる。友奈からのお願いでスタート合図を担当することになった。本来は祐也に頼もうかと思っていたが彼はゴール地点に陣取ることになったため羽南に頼んだところだ。
羽南「スタート5秒前!!
4!!
3!!
2!!
1!!
GO!!」
羽南のスタート合図で2台とも弾かれたように飛び出していく。
「マジで始まっちまったよ‥!一体どうなっちまうんだ‥!!」
「わかんねぇ‥!でも今まで以上にやばくなるだろうな‥!!」
気迫に飲まれているギャラリー達の前を通り過ぎるよう通り過ぎるように通過していく。スタートした直後は同時に飛び出したのだが、京一がアクセルを少し離してハチロクに前を譲る。
「第3コーナー来たぞ!!歌姫が頭だ!!」
1、2コーナーの先、3コーナーで陣取っていたギャラリー達が見守る中2台は勢いよく突っ込んでくる。
友奈「くっ‥!!」
手前でフルブレーキングからの4速から2速に叩き込んでステアリングを切り込み、四輪の全開ドリフトで流す。後ろについた京一も同じように。シフトダウンからの四輪ドリフトでやかましいほどのバックファイヤを鳴らしながら追従する。
「すげぇツッコミ‥!!しっかり見ねぇと置いていかれそうだぜ‥!」
「にしてもあのエボⅢのドライバーなかなかやるぜ‥!赤城の歌姫に喰い付いてやがる‥!」
「それに秋名のハチロクのときもそうだが‥あのエボⅢバックファイヤ凄くねぇか‥!?」
「だがめちゃくちゃはえぇ‥!!伊達に群馬エリア制覇を掲げてるだけはあるぜ‥!!」
ーこの嫌というほどやかましいバックファイヤ‥アンチラグシステム‥ミスファイヤリングシステム‥か!ー
ステアリングを操りつつ後ろのエボⅢから鳴り響くバックファイヤの音で判断する。
ーちっ‥!!相手は目の付け所が良さすぎる‥!ただでさえ4WDだけでも低速域からの加速はピカイチなのに‥!!そこにミスファイヤリングシステムが加わるとなれば低速セクションの化け物と化すじゃない‥!GTR相手するよりも厄介だわ‥!ー
様々なプロレーサーとバトルしてきた友奈からすれば車の走り方でどんなセッティングかというのはあらかたわかる。そうなれば京一のエボⅢに搭載されているミスファイヤリングシステムの恐ろしさは嫌というほど経験している。
ーこれなら‥ダウンヒルで秋名のハチロクが喰われた理由も納得できるね‥。ものの見事にエボⅢの弱点をうまいこと無くしてる‥ー
ーなかなかやるな‥やはり俺の予想は的中していた‥ー
後ろからハチロクの動きをみつつステアリングを握る京一はそんなことを思いつつ関心の表情を見せる。
ーブレーキングのタイミングやヒール&トゥー‥そしてゼロカウンターの四輪ドリフト‥最短距離をカットするライン‥あの高橋涼介を倒しただけの実力はあるようだな‥ー
その間にもコーナーに差し掛かり2台ともフルブレーキング、そして3速から2速に叩き込んでステアリングを斬り込み、ハイスピードのドリフトで駆け巡る。
その際ハチロクは茂みの中埋まってるガードレールギリギリまで車体を寄せる。
「すげぇ!!あのハチロク‥!ガードレールギリギリを通しやがった‥!!」
「茂みで見えないのによく寄せれるぜ‥!?」
「だがエボⅢも突っ込みは負けてねぇぞ‥!!」
?「凄い‥!2台とも凄いスピードで突っ込んでる‥
!!」
ほとんど男が多いギャラリーの中に一人だけ女性の姿が‥、年齢からしてかなり若い。興奮が収まらない彼女にお兄さんであろうか‥隣りにいた男性が声をかける。
?「レッドサンズとの交流戦が一日延期になったときはどうかるかと思っていたが‥‥来てみて正解だったな‥。あのハチロクはかなりやるぜ‥」
?「ふぇ?そうなの?」
?「あぁ‥、俺でもあそこまでレビンをコントロールできない‥。噂通りの実力だな‥」
スタート地点
「(ピピッ!!)こちら45コーナー!!以前ハチロクが先行!!ですがエボⅢもめちゃくちゃ速くて‥ピッタリと張り付いています!」
忠浩「‥予想通りか‥」
賢太「どうなるんでしょうか‥このバトル‥」
啓介「‥それは俺にはわかんねぇ‥いや‥この場にいる奴らもわからないだろうな‥」
報告を聞いたギャラリー達は不安な表情を浮かべていた。あの群馬最速のダウンヒラー赤城の歌姫がエンペラーのエボⅢにピッタリ張り付かれ、ジワジワと追い詰めてきていることをほとんどの人間はわかっていたのだ‥。
羽南「‥‥友奈‥‥」
ゴール地点
「聞いたか‥!?」
「あぁ‥あの赤城の歌姫がエボⅢにピッタリ張り付かれてるってな‥」
「なんか秋名のハチロクと似たような状況になってねぇか‥?」
「だろうな‥‥だが確実に赤城の歌姫は苦しい立場になっているよ‥」
祐也「‥‥」
ギャラリー達がソワソワしている中、祐也はただ一人だけ静かにエボⅣに寄りかかっていた。
祐也「‥‥(確かに‥はたからみればこのバトルは一方的に見えるかもな‥だが‥オレはそんなこと思ってないぜ‥。友奈‥負けるんじゃねぇぞ‥!)」
ー追い上げてきてる‥‥!ー
バックミラーをチラチラ見つつ、先程よりも近くなってきているエボⅢに焦りの表情を見せてきている友奈。
ー突っ込みで離れても立ち上がりでその分を楽に取り返される‥だから少し前から立ち上がり勝負に切り替えたっていうのに‥ー
ツッコミ勝負では勝てないと判断して、コーナーでは突っ込む角度を少し緩くして立ち上がりでアクセルをふむ時間を長くしていた。しかしそれでも京一のエボⅢは走りを変えたハチロクに焦りを見せることなくジリジリと迫ってくる。
ーやっぱりミスファイヤリングシステムと4WDの恩恵をうけたエボの性能は化け物‥‥。それだけじゃない‥!このドライバー‥かなりやる‥!ー
焦りを見せつつもほとんどペースを落とすことなく赤城のダウンヒルを疾走する友奈。その様子を後ろから見つつステアリングを切り込む京一。
ー改めて思うが‥コイツはいい腕をしてるぜ‥ハチロクをここまでの次元で操れる奴が他にいるか‥?秋名のハチロク以上の実力だ‥。ー
再びコーナー手前でフルブレーキングからの四輪の全開ドリフトでとてつもないスピード域で流し切る。
ーだが‥いくらテクニックが良くても所詮非力なハチロクではこの先はないだろう‥。俺がその現実を突きつけてやるー
「うぉ!?きたきた!!まだハチロクが頭だ!!」
「でもエボⅢも速度は負けてねぇぞ‥!」
「そもそも性能差がありすぎるんだ!!いくらレースエンジンを積んだハチロクだとしても‥相手はラリーカーと同じような性能を持ったランエボだ‥!」
あるコーナーで陣取っていたギャラリー達は勢いよく通過していく2台を見て興奮を隠せずにいた。
「軽さを活かした突っ込みで離しても‥立ち上がり加速でランエボの低速域での加速力であっさりと取り返されちまう‥!!」
「やっぱり手強いぜ‥エンペラーは‥!!」
「群馬最速の赤城の歌姫が‥追い詰められてる‥!!」
ーさてと‥そろそろ仕掛けさてもらうか‥お遊びは終わりだ‥ー
ヘアピン
中里「この音‥来たな」
慎吾「どっちだ‥どっちが頭なんだ‥?」
ヘアピンで他のギャラリー達と一緒に陣取っていた中里と慎吾ががスキール音で気づいて視線を向ける。すると少ししてヘッドライトの光とともにハチロクとエボⅢがヘアピンに突っ込んでくる。
中里「ハチロクが頭だ!!」
慎吾「っ‥!!」
ー見せてやる‥須藤京一流‥勝利の方程式を!!ー
ここぞと言わんばかりに京一はアクセルを踏み込んでステアリングをアウト側に切り込んで滑り込ませる。
「何!?アウトからだと!!」
慎吾「エボⅢが仕掛けにいった‥!!」
2台はほぼ並んだ状態でヘアピンに突っ込んでくる。しかし並んでからの突っ込みまでは、およそ1秒の全開区間しかない。だがエボⅢはまるでそれを感じさせないような加速でハチロクに対してコーナリング勝負を挑む。
中里「‥あのたった1秒しかない全開区間で‥‥!?」
慎吾「この先は左‥つまりインとアウトが入れ替わる‥!!やられた‥!!」
慎吾の言うとおり、この先は左。つまりアウト側にいるエボⅢがイン側に入れ替わる。もうこの時点でおわかりだろう‥。そう、京一が得意としている特技、カウンターアタックだ。こうなればもう防ぐことは不可能、低速域からのフル加速でじわじわとハチロクの前に出ていく。
中里「‥やられる‥!!赤城の歌姫が抜かれた!!」
慎吾「っ!!」
友奈「‥ちっ‥!!」
思わず舌打ちをしてしまう友奈。その間にもエボⅢはじわじわと前に出てゆきハチロクの前に躍り出る。もつれ合った状態の2台は次のコーナーに入りギャラリー達の視界から消えていく。
慎吾「やられたな‥」
中里「あぁ‥悔しいが見事なまでのオーバーテイクだったぜ‥。こればっかりはドライバーどうこうの話じゃねぇ‥あのやろう‥最初からこれを狙っていたのか‥」
慎吾「ランエボとハチロクじゃ1秒の全開区間だけでもかなり差が出る‥そうなればタイヤをいたわりつつ抜けるって寸法か‥」
中里「‥負けるんじゃねぇぞ‥赤城の歌姫‥」
スタート地点
「ピピッ)こちらヘアピン!!エボⅢがハチロクを抜いた!!見事なぐらいのオーバーテイクだったぜ‥!!」
忠浩「ハチロクが‥抜かれた‥!?」
下からの報告を聞いて驚きのあまり一瞬頭が真っ白になる忠浩。いや彼だけではない、エンペラーを除くほぼ全員が同じようになっていた。
清次「へっ‥所詮どんなにチューニングしたところで非力なハチロクで京一に勝とうなんて夢のまた夢だ。一度アイツを前に出したらそこでジ・エンド」
賢太「前に出ただけで調子に乗るな!!まだ勝負は終わってないぞ!!」
「そうだ!そうだ!」
「ふざけたこと抜かしてるんじゃねぇ!」
清次の挑発的な態度に思わずカチンときた賢太やほかの走り屋達がブーイングを飛ばす。
清次「へっ‥、諦めの悪い奴らだ。そんなこと言って‥お前らはわかってるんじゃねぇか?ハチロクがランエボに勝てるはずがないって‥」
羽南「いい加減なことを言わないでください!!!」
しかしそんなバチバチの雰囲気を引き裂くような声が響き渡る。それに驚いた一同が向けた視線の先には羽南の姿が‥
羽南「確かにハチロクとランエボじゃ現実的に見ても圧倒的不利‥でも!ここは赤城の歌姫‥いや!友奈の地元!!何年も走り込んでるしその凄さは私だって体験した!それに!あの子が本気になれば負けるはずがないんだから!」
清次「何寝言言ってんだ、現実的に見てもランエボが最強なんだよ。ハチロクなんてアウトオブ眼中だな」
羽南「それでも‥!私は信じてる‥!友奈は負けないって!!」
啓介「ほぉ、なかなかいいことを言ってくれるじゃねぇか」
賢太「啓介さん‥!?」
二人の対立の間に割って入るかのように啓介が立ちはだかる。
啓介「オマエの言うとおり‥確かにランエボとハチロクじゃ勝ち目がない‥。けどな‥お前は一つ見落としてるぜ?」
清次「何‥!!?」
啓介「アイツの走りには常識は通用しないぜ‥?」
賢太「常識‥‥」
啓介「賢太だってバトルしてみて薄々感じたんじゃねぇか?いや、赤城の歌姫のバトルを見た全員が感じただろうな‥アイツの走りはアニキでも説明がつかない」
清次「高橋涼介‥でもだと!?」
啓介「あぁ‥!このバトル‥結果はどうなるかはわからないぜ?じっくり見ていようじゃないか‥赤城の歌姫が化けるところを‥」
ーやられた‥まさかここでカウンターアタックしてくるとは‥普通の走り屋じゃまずこんなことは滅多にない‥
コイツ‥元はレーシングドライバーじゃないの‥!?ー
前を疾走するエボⅢの後ろ姿を見つつ、抜かれたことに焦りの表情を更に見せる。しかしペースはほとんど落とさずピタリと背後に張り付く。
ーでも‥チャンスがない訳じゃない‥いくら速いドライバーにだって弱点はある‥‥一瞬の隙も見逃さない‥絶対ぶち抜く!!ー
そう決めた友奈はアクセルをめいいっぱい踏み込んでエボⅢに追いすがる。コーナーに差し掛かるとフルブレーキングからのステアリングを切り込んで、イン側のガードレールに擦り付けるようにフロントバンパーを寄せて脱出する。
「見たかよ‥あれ!?」
「あぁ‥!!ガードレールに擦り付けてたぞ!火花散ってたし‥」
「あぁでもしないとエボⅢに追いつけないんだ‥!!あのエボⅢ‥!口だけじゃねぇ!めちゃくちゃはえぇ!」
「これ‥もしかしてじゃなくてめちゃくちゃ大ピンチ何じゃねぇか!?」
怒涛のコーナリングスピードで立ち上がるハチロクを見つつ驚愕の表情を浮かべるギャラリー達。それだけこのバトルはかなりヤバいのだった。
ー確かにコイツは速い‥低速域での処理は高橋涼介よりも上手いかも‥ー
後ろからエボⅢの動きを観察しつつ、冷静に分析をする友奈。
ー低速での立ち上がりスピードはワンテンポ置いていかれる‥けど‥後ろから見ててある高速の右では異様に侵入スピードが遅くなる‥ー
確かに強力なドライビングテクニックを持っている須藤京一。それは元レーサーの母に叩き込まれた友奈でも驚きを浮かべるほどだ。しかし、それだけ速いとなると遅い区間というのは異様に目立つ。
ーコイツ‥ある右ではやけにイン側に寄せてる‥少しでも早く走るため‥?ー
友奈の言うとおり、京一のエボⅢはある右コーナーに対して異様にイン側に寄せていることに気づく。他のコーナーではそこまで寄っていないのに‥決まった右に対して‥。
ーいや‥エボⅢの性能を考えたらそこまで寄せないほうが立ち上がり加速は速くなる。それは相手もわかってるはず‥わざと‥?ー
なぜエボⅢがわざわざロスに繋がることをしているのか疑問に思っている友奈。思考の中ではいろいろ考えていた。するとある話を思い出す。
ー待てよ‥?確か前羽南ちゃんがエンペラーのこと言ってったけ‥?ー
遡ること昨日、羽南の親が経営している整備工場にて
友奈「そのエンペラーってさ、どんな感じの走り屋なの?」
隣で作業している羽南にエンペラーのことについて質問する友奈。
羽南「まっ、友奈も聞いてると思うけどランエボだけで構成された走り屋集団ってところかな?ホー厶コースとしては栃木県の日光いろは坂。低速セクションと高速セクションの差が激しいって言われてるところだね」
友奈「いろは坂か‥確か、そこって一方通行だよね?」
羽南「まあね〜‥、対向車がこないって本当いいことだよ〜気にしないで思いっ切り攻められるんだから‥」
友奈「完全‥ってわけじゃないけど何となくサーキットに近い感じだよねぇ‥」
ーそうか‥!だからこのエボⅢのドライバーは右でやけにインを意識してるんだ‥!!‥なら!行ける!ー
エボⅢの背後にピタリと張り付きながらも特にラインを変えずに追走してくるハチロクに京一は不気味に思っていた。
ーラインを変えて攻めてくる気はない‥何故だ赤城の歌姫‥諦めたのか‥?ー
一瞬そんなことを思った京一だがすぐに首を振って否定する。
ーはっ‥そんな訳ないのは俺が一番わかりきってることだからなずどこかで来る‥!どこからでもかかってこい‥!タイヤにはまだ余力がある‥!ガッツリ喰い付いてるぜ!ー
そう思うと同時にシフトアップし、更にアクセルを踏み込んで加速させる。ハチロクも負けじまいと高回転エンジンを咆哮させて追いすがる。
ーこれだけの実力となれば‥早すぎる仕掛けは相手に立ち直る隙を与える‥。ポイントは最後の一つ手前の右‥!リスキーだけど‥このワンチャンスにかける!ー
最終コーナー1つ手前
右コーナー沿道にて‥
「赤城の歌姫はピッタリ張り付いています!!けど先行のエボⅢがめちゃくちゃ速くて‥全然ペースが落ちていません!!」ピピッ
池谷「ヤバいよ‥友奈ちゃん大苦戦だよ‥この先はもうゴールなのに‥」
健ニ「苦戦どころか敗色濃厚だよこれは‥」
そんなことを話しているとエンジン音とともにエボⅢとハチロクが飛び出してくる。
池谷「おぉ!来たぞ!!」
健ニ「エボⅢが頭だ!!」
高速の右に2台ともノーブレーキかのように見てる侵入スピードで突っ込んでいく。だが、友奈の予想通り京一はイン側にこれでもかと寄せながら過ぎようとする。ハチロクはそのままピタリと張り付いて‥いたが
ー京一‥さんだっけ?あなたは確かに速い‥けど‥こればっかりは峠の性質上どうにもならないでしょうね‥!
‥弱点は右に対して対向車の恐怖心がぬけきれてないこと!担当直入に言えば右コーナーがド下手ってことなのよ!ー
ここぞとばかりにステアリングを左に切り込んでハチロクをアウト側に膨れさせる。そしてそのまま寄せすぎて空いたアウト側に突っ込ませる。
ー‥何!?ー
もちろん京一も気づいていない訳がない、しかし気づいたときには自身のラインを塞ぐかのようにラインを被せてくるハチロクの姿が‥
健ニ「すげぇ‥!!ハチロクが外から行ったぞ!!」
池谷「エボⅢがハチロクに抑えられて‥前へ出られない‥!!」
池谷の言うとおり、普通ならエボⅢの加速でこのアウトから仕掛けにいったハチロクなら抜き返せる。しかしラインを被せられて前に出ることができずにいた。
ーくそ!これじゃ‥四駆のトラクションも‥ミスファイヤリングシステムも‥パワーを発揮できねぇ!!ー
健ニ「すげぇ‥!ハチロクが頭抑えて立ち上がっていく‥!!」
池谷「いけ‥!!友奈ちゃん!いけ‥!いけ‥!行ってくれぇぇ!!」
池谷の声が届いているかのように、ハチロクがエボⅢを抑えて立ち上がっていく。この少し先は左‥つまりインとアウトが入れ替わるという‥となれば
ー‥!!ー
ここぞと言わんばかりに友奈が目を開きつつ、アクセルをめいいっぱい踏み込む。タコメーターが一気に限界まではねがり、高回転型エンジンがここでも猛威を振るう。そのままイン側についたハチロクはジワジワとエボⅢの前に出ていく。
池谷「いけ!いけ!」
健ニ「行ける!!」
最終コーナーを立ち上がるときにはハチロクはエボⅢの前に躍り出て、加速する。
健ニ「やったぁ!!」
池谷「逆転だぁ!!」
池谷と健ニが歓声を上げると同時に一緒にいた他のギャラリー達も喜びの表情を浮かべていた。
ゴール地点に陣取っているギャラリーやレッドサンズメンバー、少しするとスキール音ともにハチロク、そしてエボⅢが最終コーナーから飛び出してくる。
「そのまま!!そのまま行ってくれ!赤城の歌姫!!!」
レッドサンズの期待に答えるようにハチロクはペースを落とすことなくゴールを通過していく。
ーったく‥ヒヤヒヤさせがって‥アイツー
目の前を通過していく2台のを見つつ、少し安堵の表情を浮かべる祐也であった。
「逆転勝利だ‥!!っておぉ‥?」
他のギャラリー達も歓声に包まれる中、タイムを測っていた一人がそのタイムを見て驚きの表情を浮かべる。
スタート地点
「こちらゴール地点!!ハチロクが‥!赤城の歌姫が勝ちました!!」
賢太「よっしゃぁぁぁ!!!」
羽南「最高‥!!本当最高だよ友奈!!」
「うっしゃぁぁぁ!!」
「相変わらずやってくれるぜ!赤城の歌姫は!!」
友奈が勝利したことを聞いたレッドサンズメンバーやギャラリー達は歓声に包まれ喜び合っていた。
ーったく‥無茶をしやがって‥勝てたとはいえリスキーなことを‥ー
流石の啓介も気が抜けたのか、少し表情が緩んでいた。歓声に包まれるレッドサンズとは対照的に京一が負けたエンペラーでは敗色濃厚の雰囲気に包まれていた。
清次「京一が‥負けた‥。ハチロク‥に‥」
動揺が隠せていない清次に涼介が歩み寄ってくる。
涼介「これでわかっただろう‥あのハチロクとドライバーは常識が通用しないということを‥」
清次「へっ‥!好きに言ってろ‥!お前らレッドサンズだけは絶対に倒してやる!せいぜい首を洗って待っているんだな‥!!」
捨て台詞を言い残してその場を立ち去る清次、涼介はその背中を静かにみつめていたのであった‥。
友奈「祐也♪私やったよ♪」
祐也「凄かったぜ‥!流石は友奈だ♪」
友奈「そう言われると嬉しい‥♪」
二人が楽しそうに話していると京一が歩み寄ってくる。
京一「‥完敗だ‥オレの負け‥だな‥」
友奈「いえ‥!あなたもかなり速かったですよ‥。こっちも結構ギリギリでしたし‥」
京一「たとえギリギリでも‥勝ったやつが勝者だ‥‥。お前の勝ち‥だよ‥」
友奈「‥‥」
京一「やはりお前は春香に似ているな‥走りが‥完璧
なまでハチロクをコントロールできる‥。それがそっくりだよ‥」
友奈「えっと‥」
京一「‥機会があれば‥また会おう‥」
そう言い残して京一はエボⅢに乗り込んでその場をあとにするのであった。その様子を友奈と祐也は静かに見つめていたのであった。
帰り‥ある県道にて
ーなんとか勝てたけど‥結構ギリギリだった‥ー
ハチロクのステアリングを握りつつ今日のバトルを振り返っている友奈。時間帯が時間のためすれ違う車はまばら程度しか走っていない。
ーまだまだ‥だね‥私も‥。もっと‥頑張らなくちゃ‥ー
そう決心した友奈、しかしハチロクに異変が訪れていることに気づく。
ーあれ‥なんだろう‥回転の伸びが悪い‥ー
タコメーターに視線を移すといつもないい回転のはね上がりをするはずなのに今日はやけに回りが悪い‥
ーちょっと無理させ過ぎちゃったかな‥。そうなれば慎重に帰‥(プシュー)‥!?ー
慎重に帰ろうとした矢先に、突如ハチロクのボンネットから白煙が立ち込めてタコメーターが完全に下がってしまう。とりあえず道路の真ん中で止まるわけにはいかないのニュートラルに入れて惰性で路肩に車を寄せて止まる。その後ハザードランプを焚きつつ三角板を置いてボンネットの前に駆け寄り、持っていたタオルで火傷しないようにボンネットを開ける。
ー‥やっちゃった‥‥これ‥ー
開けたボンネット内のエンジン状況を見て少し項垂れる友奈。京一との激闘を終えたハチロクは最後の力を出しきって眠りについてしまったのである‥。
ー同時刻‥友奈宅にてー
春香「あっもしもし雪?少し頼みたいことがあるんだけど‥」
雪「何〜‥?まさかまたハチロクのチューニング?」
春香「近いけど少し違うかな‥?あのエンジンを用意してほしいの」
雪「あのエンジン‥あぁ‥確か倉庫の奥で保管してたじゃじゃ馬エンジンのこと?‥またどうして‥」
春香「んじゃ、とりあえず明日用意してくれない?ハチロクは持っていくから」
雪「ん〜‥なんか気になるけど‥まっいいか、了解〜」
激闘の末勝利を勝ち取った友奈。しかしその代償も高くついてしまい、エボⅢとの激戦でハチロクはエンジンがイカれてしまったのであった‥。
一体どうなってしまうのか‥
そして春香と雪の会話の意味とは‥!