軽いスランプ状態に陥ってしまった友奈
どう自分の走りと向き合うのだろうか……?
あれから数日後
赤城峠
夜八時にて
少し前に行われた赤城の歌姫対白いカリスマとの一大決戦とも言われるバトルの熱狂がまるで嘘かのように静まり返ってた。
友奈「……っ!!」
だがそんな静寂を打ち破るかのように4AGサウンドが峠全体に鳴り響き、コーナーの奥から光ってくるヘッドライトの光とともに見慣れた友奈のハチロクが勢い良く飛び出してくる。
ーダメ…!この立ち上がりだと上手く速度に乗れない…!ー
あの激闘からまだ数日も経っていないのになにやら走りに熱を入れている様子だ。…だが上手く走れないのかあまり満足そうな表情をしていない。
友奈「っ…!!」
コーナーが近づいてくるとフルブレーキングで2速に叩き込みつつステアリングを切り込む。テールランプが点灯するとともに後輪をスライドさせつつ白煙を上げてハチロクは流していく。もちろん、フロントバンパーはギリギリまで寄せて立ち上がりの際にも同様にしつつ立ち上がる。
ー…ここもダメ…前みたいに上手く乗れない…いくらエンジンが違うからってここまで変わらないラインなのに…ー
普通の走り屋が見れば100点満点の走りでも彼女からすればなにかが違うのだろう。チラリとメーターを見つつアクセルを踏み込む。
ーっ!?しまっ…!ー
集中しきれてないのか、コーナーに入る時にブレーキングが遅れてしまったのだろう、アンダーが出てしまいアウト側に膨らんでしまう。このままではガードレールにぶつかると直感した友奈は反射的にステアリングを反対に斬り込み、あえてスピンさせて衝突を回避しつつ停車させる。
ーはぁ……、全然思うように走れない…。それっぽいイメージは想像出来てるのに…ー
彼女にしては珍しい大きなため息をつきつつ、ハザードを焚いて路肩に車を停めてから降りてくる。気持ちとは裏腹に空は綺麗な星空で埋め尽くされていた。
ーにしても…スピンなんていつぶりだろ……最近はあえてスピンさせる練習以外でほとんどしたことがないからなぁ…ー
そんなことを思いながらもハチロクに寄りかかる友奈。白いカリスマ戦でかなりメンタルがやられたのだろうか…?ちょっとしたスランプ状態になっているらしい。
ー前のはなんとか勝てたとはいえど……全体を見れば実質的には私の負けかな……。熱くなりすぎて前のエンジン感覚で走っちゃったからいらない負荷をタイヤにかけちゃったし…ー
車の中から秋名峠の頂上にあった自販機で買ってきた抹茶ラテ缶の蓋を開けて飲みながら一息つく。自分の考えうる乗り方を一通り試してみているようだが上手くいかないようだ。
ー白いカリスマ戦の前は絶好調だったのに…、なんというか…この子の乗り方がわからなくなって来ちゃった……、どうすればいいんだろ…ー
浮かない表情をしつつ、ポツリと思ったそんな思いは誰にも届くことなく暗闇に包まれた秋名山に消えていくのであった…。
友奈宅
友奈「ただいま~…(ガチャ)」
あれから何回か走ってから家に帰ってきた友奈、玄関を開けて中に入ると丁度お風呂から上がってきたのかタオルで髪を吹きつつ寝間着姿で廊下を歩く春香の姿が…
春香「あら~、お帰りなさい~。お風呂沸いてるから入りなさい~?」
友奈「うん~、わかった~…」
一言二言話してから寝間着を取りに行くために二階へと上がっていく友奈。その後ろ姿を春香は珍しく気になった様子で眺めていたのだった。
雪『なるほどね~?最近娘さんの様子がおかしいと……』
春香「そうなのよねぇ……、聞こうにも上手いことはぐらかされるし…何かあったんじゃないかって心配で…」
友奈がお風呂に入っている中、春香は雪と電話でなにやら話していた。ちなみに雪は丁度仕事が終わったため事務作業をしつつ内容を聞いていた。
雪『そりゃ、よっぽど心配かけたくないんでしょうねぇ~。あなたの娘さんらしいわ』
春香「でも、そんな雰囲気じゃ走りにも影響しちゃうんじゃないかって……。実際タイヤの減り方が前よりも変だし…」
雪『ふむ……』
電話越しでもはっきりとわかる春香の心配そうな会話に、よほど問題が大きいと思った雪は眉を細めつつ何か策がないか首を傾げつつ考える。
春香『私だって手助けしてあげたいけど…あのこ自身の問題だから……』
雪「ん~…策がないって訳じゃないけど…あるにはあるわよ?」
春香『ほんと!?(ガバ)』
雪「…そうゆうところは昔から変わらないわよね…あんた(汗)」
先ほどの雰囲気が嘘かのように電話越しでも分かるほど喰ってかかってくる春香を苦笑いで聞きつつ話を進める。
雪「私の常連でハチロクに乗っている人がいるのよ。車種はレビンだけど」
春香『あら、私と同じ物好きがいるものね~。それで?』
雪「その人は埼玉県から来てる走り屋なんだけど、ハチロクに対する情熱が半端なくてね~。多分私がみてきたハチロク乗りの中ではダントツかも」
春香『雪がそういうなら相当なんでしょうね~、でもそのハチロク乗りと今回の件…なんの関係が…あっ』
雪が言っていることが今一理解できていない春香であったがふと思い出したかのように閃いた表情をしつつパッと顔を上げる。
雪「そうゆうこと~♪ハチロクの情熱が熱いならもしかして何か知ってるかも知れないと思ってね~」
春香『そうと決まれば早速行動ね~♪…と言うわけで雪~そっちは頼んだわよ~』
雪「はいはい(汗)ったく人使いが荒いんだから……(汗)」
翌日
GSスタンドにて
友奈「ボヘ~…」
池谷「おいおい……、拓海のボケがついに友奈ちゃんにまで移っちまったぞ……。どうすんだ拓海……」
拓海「いや……俺にいわれても………、昨日の白いカリスマとのバトルの後からあんな感じですし……」
樹「けっこうな接戦だったらしいですからね……もしかして気が抜けてるのかな……?」
健二「それにしてはなんか違うような……」
柱に寄りかかりつつボヘ~っとしている友奈を給油機の影から覗くように眺めている拓海達、昨日のカリスマ戦の後からずっとあんな感じのため気になってしょうがないようだ。
友奈「……あっ、お客さん…!」
だがそんな表情をしていた友奈はスタンドに入ってくる一台の車に気づいていつもの笑顔な顔に戻って駆け寄っていく。
友奈「いらっしゃいませ~!車はこちら……」
お客さんだと思って駆け寄った友奈であったが車を詳しく見るなり歩み寄る足を止めてしまう。それだけじゃない、後ろにいた拓海や樹もなにか気づいた様子で表情が変わる。
拓海や友奈と同じく白黒のパンダカラーのハチロク、そして独特のタービン音をするレビンはあの一台しかない。
渉「お前が赤城の歌姫だな」
そう、ハチロクを愛して止まない男であり原作では拓海をさらに成長させるきっかけを作ったまさに物語のキーパーソンと言ってもいいキャラクター、秋山渉だ。
友奈「えっ…あっはい、そうですが……」
渉「俺は秋山渉、このハチロクレビンのドライバーで埼玉出身の走り屋だ。」
樹「わっ渉さん…!?」
渉「おっ、久しぶりだなお前ら。秋名以来か?あのときは気分悪くさせてしまってすまなかったな…」
拓海「いっいえ…その件はもう過ぎたことなので特には大丈夫ですが……。一体友奈ちゃんになんの用が…?」
拓海や樹からすれば秋名で起きたちょっとしたゴタゴタよりも何故渉がわざわざ友奈に会うために埼玉からやって来ているのかよく分からなかった。
渉「っと、話がそれちまったな…。単刀直入に言わせて貰う。俺とバトルをしないか?」
友奈「……!!(ピリピリ)」
渉「突然の申し込みですまないな……。今度の金曜日、もし空いていれば夜八時に西武秩父駅っていう駅のロータリーに来てくれ、そうすればお前の探している答えが見つかるかも知れないぜ?」
友奈「……答え……?」
何故初めて会う人が自分の内心を知っているのか…、友奈は驚きの表情を浮かべつつ渉を見つめていた。そんな彼女を見つつ彼は眉を細める。
渉「…(言われた通りカッコつけて言ってみたが……本当にこんなので乗るもんなのか……?)」
(遡ること数時間前)
渉「なるほど…わざわざ俺に電話してきたのにはそんな訳があったんですね?」
雪『そゆこと~、その子けっこうなブランクみたいだからどうにかしてあげたくてね~。』
丁度家にいた渉は、電話をかけてきた雪と例の件で話し合いをしているようだ。
渉「それなら別に構いませんよ。丁度秋名のハチロクと今度のバトルしますし…、それにおれ自身も戦ってみたいというのがあるからな」
雪『助かるわ♪んじゃとりあえずその子の働いているバイト先の住所と電話番号を伝えておくわね。…っとそれと、多分普通にいったらその子に警戒されるでしょうからこれからいう感じの言葉をそのまま言ってくれないかしら?』
渉「はっはぁ……、でもそんなので行けるもんなんですかね…?」
雪『大丈夫大丈夫♪あなたと同じハチロク乗りだし、何より答えを探しているならこの言葉はけっこう響くはずよ』
ー時は戻りー
渉「…(ってあいつは言ってたな…。けどこんな凄い走り屋がそう簡単にウンというはずが……)」
友奈「…分かりました…!!その勝負受けて立ちます!!いえ…!むしろやらせてください!」
渉「…ふっ(どうやら…その心配は無さそうだな)」
いくら答えを探している状態とは言えどそう簡単に首を降ってくれるとは思っていなかった渉であったが、少々食い気味で食らいついてきた友奈を見て笑みを浮かべる。
渉「思った以上に話が早くて助かるよ…、それじゃ改めて日時を確認するぞ?今度の金曜日の夜、場所は埼玉県内にある西武秩父駅内ロータリー、詳しいことはそこでおって説明する。」
友奈「…(頷く)」コクリ
渉「…お前がどうゆう状態なのかはなんとなくだが分かるんだ、だがそれでも俺は容赦しないぜ?同じくハチロク乗りとして全力勝負をさせてもらう!」
友奈「…望むところです!私だって負けるつもりはありませんからね…!!」
渉「ふっ、面白い奴だな。藤原とはこれまた違った雰囲気を感じ取れるぜ…。それじゃ、当日会おうぜ」
話が纏まったのを確認すると、渉はレビンに乗り込んでスタンドをあとにし、その様子を友奈は静かに見つめているのであった。
拓海「あっあのさ…友奈ちゃん?」
友奈「ん?どうしたの拓海君」
あれから数時間経ち、バイトが終わったため帰ろうとした友奈の元に拓海がそそくさと駆け寄ってくる。
拓海「今日の夜って…空いてるかな?」
友奈「今日?ちょっとまってね~(確認)うん、空いてるよ~?」
拓海から予定がないか聞かれた友奈はショルダーバッグからメモ帳を取り出して予定を見て、ないことを確認するとそのまま彼に伝える。
拓海「実は…俺のハチロク新しいエンジンに乗せ換えたんだ。…あの赤城の件でブローしてから」
友奈「おっ、そうなんだ~」
拓海「それで…昨日渉さんにも言われたことなんだけど……、ハチロクの乗り方を見直したくて…」
友奈「ハチロクの乗り方……」
拓海「うん…、だから今夜の8時秋名峠頂上に来てくれ。友奈ちゃんが俺のハチロクでどんな走りをするのか……やってみてほしいんだ。」
友奈「え?拓海君のハチロクを…?」
拓海「うん……、無理とは言わないけど…可能なら…」
友奈「ふむぅ……」
彼からまさかのお願いが来たことに驚きを隠せない友奈は少し首を傾げながら考えていた。幸いエンジンは違えど同じハチロクのため別に走れない訳じゃない。けど、他の人の車、それこそ羽南のインプレッサ以来であるため少し抵抗があった。
友奈「…まあ、そこまで頼まれるなら…♪いいよやってあげる♪」
拓海「本当か…!?サンキュー…!助かるぜ…!」
だが、ここまで拓海が真剣なのも珍しいためせっかくだしいいかなということで友奈は依頼を引き受けることにしたのであった。
再び登場してきました
ハチロクを愛して止まない男
秋山渉
そして拓海からも依頼を受けた友奈、ちなみに原作ではこの時点でレース用エンジンに換装している拓海のハチロクですが今作では別のエンジンに換装しております。
一体それはなんなのか…?