翌日
GSスタンドにて
拓海「……(ったく…昨日は酷い目に合ったぜ…)」
あれからなんとか耐えきることに成功した拓海であったがさけびすぎたせいなのか表情はかなり疲れ切っており少しげんなりしていた。
拓海「…(まさか友奈ちゃんがあそこまでクレイジーな走りをするとは思わなかったな…、ってそれを樹達に言ったらお前も同じだよって言われそうだな…)」
いつも通りボヘ〜っとしつつ給油機をぞうきんで拭いている拓海、ちなみに友奈は今日は昼からの出勤で樹と池谷は店長から頼まれた買い出しに出かけており今は拓海が担当している。
拓海「…(まあ、友奈ちゃんが楽しそうだったから問題ないか…なんだかんだ言ってあのエンジンの乗り方のコツ掴めたし…)」
そんなことを思っているといかにもザッ走り屋とも言えるような雨宮仕様の白色の前期FCが何度かふかしながらスタンドに入ってくる。
拓海「あっ…お客さん…、いらっしゃいませ〜…!」
ボヘ〜としていてもお客さんが来たことに気づいた拓海は駆け足で給油機の前に止まったFCの元へ駆け寄っていく。チラリとナンバーを見るとどうやら栃木県からきた車のようだ。
星宮「ハイオク満タンで、あっあと窓拭きもお願いできるかしら?」
拓海「わかりました…!」
まあ白の前期FCとなれば既にわかった人もいるだろう、どうやらドライバーは星宮だったようでなにかの用事で群馬を訪れていたようだ。
ーふぅん〜…、これが秋名のハチロクで有名なドライバーかぁ〜。確かに初めてパット見た感じじゃ誰もわからないかもね…ー
フロントの窓拭きをしている拓海を気づかれない程度に視線を向けつつふむふむと頷いている。
ーでもオーラは尋常じゃないわね…、伊達に赤城の歌姫を追い詰めただけの実力はある見たい…ー
拓海「おまたせいたしました。ハイオク満タンです」
星宮「っとと、ありがとうね」
そうこうしているうちに給油が終わり、拓海に言われたことでハッと思い出したかのように財布からお金を取り出して手渡しする。
拓海「ありがとうございました〜!」
精算が終わりレシートを受け取った星宮はエンジンを始動させてロータリーエンジン音を奏でながらスタンドを後にするのであった。
ーあの子を見ていたら走りたくなってきたわ…、帰りにいろは坂寄って帰ろうかしらー
ふとそんなことを思いながら、星宮はゆっくりとアクセルを踏み込んでFCを加速させつつ帰りの県道を奏でながら走って行く。秋だというのに満点な青空が上空に広がって、なんだか星宮の気持ちを現しているのうな気がした。
焔の整備工場にて
友奈「…ということがありまして…(汗)」
祐也「ほ〜、友奈がはしゃぎ過ぎて拓海の奴気絶しそうになったのか…」
羽南「まあ…(汗)その気持ちはわからなくもないけどね…(汗)」
その頃、友奈達はというと羽南の整備工場でメンテナンスをしながら雑談をしていた。…と言っても内容のほとんどがあのレビンとのバトルと例の拓海の件だが…
羽南「友奈は確かに運転は上手いけど……なんか根本的に違うのよねぇ…。上手いやつの隣は安心出来るっていうけど…それが全く感じられないというか…逆に怖い感情が出てくるんだよ…」
友奈「う〜ん…そうなのかな?」
祐也「無自覚かよ…(汗)。まあでも、ダウンヒルって平地とかに比べて速度が乗りやすいからなぁ…、サーキット走ってる奴とかからよく聞くけど、峠のダウンヒルは怖いらしいし」
羽南「たしかにね〜…」
祐也の言うとおり、サーキットと峠、はたまた公道とでは根本的に走りのレンジが違う。それは速度もそうだしコーナーワーク・エスケープゾーンの有無も関係する。だからサーキットを中心に走っている人からすれば峠は怖いというものだろう。
友奈「でも拓海君のハチロクもなかなかいいセッティングだったよ〜。聞いたらお父さんの車らしいから、けっこう凄い人なんだろうな〜♪」
祐也「まあ拓海があれだからな…。親父さんはけっこう凄腕だったりするのは確実だろう」
羽南「私もそんな走りしてみたいな〜…、っとそういえば脱線仕掛けたけど今週じゃない?友奈の言ってたレビンとのバトル」
拓海のオヤジである文太の話で脱線仕掛けたものの、思い出したかのように羽南が今週行われる秋山渉との一戦の話を切り出す。
祐也「あ〜、そういやそうだな。どうなんだ友奈?話聞く限りじゃ相手の地元でするっぽいが…」
友奈「ん〜…どうだろう…、見た感じかなり速そうなレビンだったし…ドライバーの迫力も満点というか…」
羽南「しかもハチロクターボっていうね…さらに言えばドッカンターボ…。そんなじゃじゃ馬に乗ってる時点で強者でしょうよ…(汗)」
友奈「羽南ちゃんの言うとおりなんだよねぇ……、オーラだけでもかなりのやり手っぽいし油断できないかも」
彼女の予想している通り、秋山渉は作中でもかなり有力な走り屋の一人、お金に苦労しながらも独自の走りで速さを求めてきた彼はまさに漢とも言えるレビン乗りだろう。車の性能はお金で上げられてもテクニックは上げられない。原作でもそれを思わせるワンシーンなどが幾度も出てきた。
祐也「まあ、いかにもハチロクを愛してやまないって言うのがひしひしこれだけでも充分伝わって来るからな…」
友奈「でも…!私だって負けるつもりはないもん…!同じハチロク乗りなら尚更…ね!」
羽南「うんうん…!頑張ってね…!応援してるから…!!」
祐也「俺もだぜ…!負けるんじゃねぇぞ?」
友奈「もっちろん♪」
夜の8時にて
栃木県
日光いろは坂
頂上にて
ゴフ!!
清次「って…来やがったよ…」
頂上にあるスタンド近くの駐車場にいつも通りたむろっているエンペラーのステッカーを貼ったランエボ集団、その中で話していた清次が嫌というほど見慣れた白のFCを見て眉を細める。
清次「ったく気まずいんだよな…、コテンパンまでにアイツにやられちまったから…」
京一「そもそもお前が吹っ掛けたのがすべての始まりだからな。オレからすればああなって当然だ。」
清次「…そのまんまでぐうの音もでねぇぜ……」
愚痴を零したがあっさりと京一に論破されて軽くしょげてしまう清次、そんな彼の気持ちとは裏腹に少し離れた駐車スペースにFCを止めて星宮は何事もなく降りてる。
星宮「とりあえずひとまず休憩してもう何本か行こうかしら」
そんなことを呟きながら自販機の元へ歩み寄ってくる。近くにライバルとも見て取れるエンペラーがいるにも関わらず特に気にしている様子も見せずに過ごしている。星宮からすればもう慣れた光景のためそこまで気にならないのだろう。
ガチャン!
カチ
星宮「…(ゴクゴク)ふぅ……、やっぱ走った後の缶ジュースは最高ね…♪」
いつも走った後に飲んでいる三○矢サイダーをゴクゴクと飲みながら美味しそうな表情を浮かべている星宮、そんなこんなしているうちに全部飲みきったためゴミ箱に捨てて再び走りに行こうとしたとき…
?「お前だな、前いろは坂で白のエボⅣを千切ったのは」
星宮「…ん…?」
突然声を掛けられたため少し驚いた表情を浮かべるもすぐに切り替えて声がした方向に視線を向ける。するとそこには青色のMR2が止まっており目の前には自分と同年代くらいだろうか…一人の少年が立っていた。
?「俺は小柏カイ、そこのMR2のドライバーだ。」
星宮「星宮葵って言うわ。あっちにある白の前期FCのドライバーってところかしらね。それで、あなたが言ってた白のエボⅣ千切ったていうのは…本当よ」
同じようにカイに向き直りつつ真剣な眼差しで眉を細めつつ口を開く。表では全く見えないが二人の視線がバチバチとぶつかり合っているというのははっきりと伝わってくる。
ー…俺の時はここまでにはならなかったぞ……何者なんだ……このガキとあのFCの女は…ー
二人の激しい目線のぶつかり合いに息が飲み込まされそうになりながら息を飲んで清次は見守っていた。…いや京一を除くエンペラーのメンバーのほとんどもただ見ていることしかできなかったのである。
カイ「エンペラーの白のエボⅣは俺が先に狙っていた獲物だったんだ…。だがそれをあっさりと狩っちまったら見ている訳にはいかねぇ…」
カイ「ここではっきりと言わせてもらおう…!今からターゲットはお前に変えさせえて貰うぜ…!星宮葵…!!」ビシッ!!
宣戦布告とも言える言葉を放ちながら指を星宮に向けてビシッと突きつける。ピリピリと伝わってきたのか、いつもはクールな彼女がどこか気迫に飲まれているような雰囲気がヒシヒシと伝わってくるのだった。
星宮「……(スゥ…)そこまで言われたら仕方ないわね…。いいわ。やってあげる……、けど私に喧嘩吹っ掛けて後悔しないようにしなさいよ…!」
一つ深呼吸した星宮は、カイに負けないような言葉遣いでそっくりそのままで返しながら完全にスイッチの入ったでしょう顔つきで彼を見つめている。…それはまるで…獲物を狩る本物のプロレーサー顔負けとも言っていいほどのものであるのだ。
いろは坂の地元スペシャリストの小柏カイ……そして栃木エリアでプロレーサーから有力視されている星宮葵との激しい一戦の火蓋が…きられようとしていたのである…。
小柏カイと星宮葵の一戦