いよいよ秋山渉との一戦当日
ハチロクの愛をかけたガチンコバトルが今…始まる…!
そして…渉との一戦の日
西武秩父駅前
ロータリーにて
友奈「いよいよ…だね…」
夜遅くのため、ほとんど人気のない駅のロータリーにポツンと停車している白黒のパンダカラーのハチロクトレノ。その車に寄りかかるように友奈が深呼吸をして心を落ち着かせていた。
友奈「この子の実力を引き出すためには持ってこいのバトル…。失敗なんて出来ない…」
昨日の甘々な友奈はどこへ言ったのか、走りとなれば表情はいつもの彼女に戻っていた。気持ちを落ち着かせるため夜空を眺めていると4AGサウンドと特徴的な過給器音が聞こえてきたことでハッとした顔になる。
友奈「来た……」
そう呟いた彼女の視線の先、そこには友奈と同じパンダカラーのハチロクレビン、そう秋山渉のレビンがゆっくりとロータリーに入ってきて友奈の車の前に入って止まる。
バム
渉「来てくれてサンキューだぜ。はるばる群馬からすまないな…」
友奈「いえ…♪大丈夫です…!ついでに埼玉のぷち観光してきましたから…♪」
渉「ははっ、どうやら楽しんででくれたようだな…♪んじゃ本題に入るぜ?」
友奈「…はい…!」
渉が本題に入るとなれば、先程見せていた笑顔が嘘のように切り替わり真剣な表情で耳を傾ける。それを確認した渉は再び口を開く。
渉「バトルする場所はここから少し先に行ったところにある正丸峠っていうところでバトルする。近いうちに君と同じハチロク乗りとバトルするからな…」
友奈「……(たぶん…いや、私と同じハチロク乗りなら拓海君のことかな…?)」
渉「形式としては先行後追い方式、最初はコースを完璧に熟知してないだろうから俺が先行で軽く流す。その後の2本目からは本気のバトルだ。どっちかが千切られるまで続ける…問題ないな?」
友奈「それで大丈夫です…!受けて立ちます…!」
渉「よっしゃ、そうと決まれば早速やるか。先導するから付いてきてくれ。」
友奈「分かりました…!」
ウォン!!
ウォン!!
4AGサウンドが周囲に響き渡りつつ、何度か吹かしてから渉のレビンがゆっくりと発進。それに続く形で友奈のトレノが動き出して随伴していく。
ーさて…、今噂になっている赤城の歌姫…その実力をとくと拝見させてもらおうか…!秋名のハチロク戦を前にした前哨戦としては不足なしだぜ…!ー
ーこの人もハチロクが好きなんだろうね…。そんな雰囲気がハッキリと伝わってくるよ…、…けど私だってそれは同じ…!一緒にいた年数なら誰にだって負けない自信があるし、この子ために私はもっと速くならないといけない…!ー
お互いそれぞれ思いをはせながら、車を走らせて決戦の舞台である正丸峠へと向かうのであったのだ……。
正丸峠 折り返し地点前の小屋にて
羽南「んでんで〜、どうなのよ〜。昨日はお楽しみ出来た〜?」
祐也「…声大きいぞ…(汗)」
今日の試合を観戦しに来たのだろう。駐車スペースには祐也のエボⅣと秋風の33Rと星宮のFC、池谷のS13と拓海のハチロクが止まっていた。少し先には拓海達がそろって見ていたのだが…
羽南は相変わらず祐也の弄りタイムに入っており、猛アタックしていた。流石に何回も慣れたのか祐也は右から左へ流しつつも的確なツッコミを度々入れている。
拓海「何やってるんでしょうか…(汗)」
星宮「いつものことだから気にしないで、あの子の癖だから」
秋風「そうなんですよね〜」
樹「えぇ…(汗)」
そんな様子を何事かと見ている拓海と樹であったが星宮と秋風にとってはいつものことのため特に気にせずに過ごしており、星宮に限ってはバトルが始まるまでの間、ポケットゲームで遊んでいる始末だ…。
健二「だがいよいよだな…。友奈ちゃんと秋山渉っていう奴のバトル…。」
池谷「あぁ…、拓海との前哨戦とも言っていいこのバトル……。確実に今までにない戦いになりそうだな…」
そんな一同を見つつ池谷や健ニはやや真剣な表情を浮かべており暗闇に包まれた峠を静かに見つめていた。じゃれ合いを終えた祐也は羽南に対して今回のバトルのことを投げかける。
祐也「お前から見てこのバトルはどうなると思う?」
羽南「う〜ん…、正丸峠って相手の地元だからねぇ…。そうなるとどうなるかは分からないかな…実力もけっこうありそうだし…」
星宮「パット見だけどあのレビン乗りは速いわね…。上手い人にしか見えない特別なオーラがハッキリと見えたし」
秋風「簡単には勝たせてくれなさそうだね……」
樹「…にしても…(チラリ)」
星宮や秋風、そして先程じゃれ合いしていた人間とは思えない羽南の真剣な表情を浮かべているのに対してふと気になったのか樹が車が止まっている方に視線を向ける。
樹「凄いよな…、羽南ちゃんの知り合いでこんな車に乗っている子がいるなんて…」
健ニ「…言われみれば確かにな…」
樹に言われたことで健ニも視線を向けつつそう呟く。その視線の先には星宮の前期型FCと秋風の33Rが…、確かにこの2台は峠ではあまり見ないレア物揃いだ。FCなら少し前に何台か走っていたが33Rに関しては峠の走り屋が乗っていること自体が珍しい。
秋風「他の人にもよく言われますね…(汗)イメージがイメージなので…。だからこそ33Rで峠を走っているっていうのもありますが…!!」
星宮「私の前期FCは知り合いの走り屋から乗り換えるからって譲り受けたんです…。最近は会えてないですが…、私が本格的に走り屋目指すきっかけにもなったんです…♪」
池谷「その気持ちは分かるぜ。車にはそれぞれ思い入れっていうのがあるよな…(フッ)。俺もシルビアは大切な相棒っていうイメージがあるな…」
樹「俺も分かります…!!くぅ〜!!やっぱ俺のレビンは最高だぜ…!!」
やはりそれぞれにドラマというものは多種多様に存在する。車に対する情熱は人それぞれだがやはり走り屋や車好きなどは自分の相棒に対する思入れが強いのだろう。
羽南「そりゃ私だって♪このインプレッサ手に入れたときは本当に嬉しくて友奈に自慢したもの♪」
祐也「俺もだなぁ…。あのランエボはもう家族見たいな存在だな…、少々乗り方が荒くなるが……(汗)」
健ニ「やっぱ思うことはみんな似たりよったりなんだな…♪っとそろそろ時間的に始まるんじゃないか?」
それぞれ思い思いに語っている中、ふと時計を見た健ニがそろそろ時間になっていることに気づいてみんなに伝える。
池谷「いよいよ始まるぞ……。ハチロクの熱さをかけたドライバー同士のバトルが……」
正丸峠入口
ヒルクライム
暗闇に包まれた正丸峠、その入口へと2台のハチロクは入っていく。最初は普通に登っていたがレビンが途中でハザードを突然炊く。
ーハザード…こっから行くってところね…ー
ーよっし…行くぜ…!!大事な車潰すんじゃねぇぞ…!ー
ハザードを炊いてからすぐにスイッチが入ったのかレビンが過給器音を響かせて弾かれたようにフル加速していく。もちろん友奈も遅れまいとシフトアップしてハチロクを加速していく。
ウォン!!ウォン!!
元々道幅が狭い正丸峠、更には年数が経ち道路状況が悪くなったり土や落ち葉が隅っこに溜まったりしている。つまり道幅が前よりも狭くなったおり、バンビーになっていることで滑りやすくなっているのだ。
ーっ!!ー
フルブレーキングからの4速から3速に叩き込んでステアリングを切り込む。…がやはりバンビーなせいでコーナーの途中で後輪がスライドしてしまう。一瞬驚いた友奈であったがすばやくカウンターを当ててなんとかドリフトでカバーする。
ーうわぁ…思ってたよりも滑るねこれ……。今まで走った中でも一番悪路かも…ー
ーほう…初っ端から綺麗に立て直しが出来てるじゃねぇか…。しかもロスをほぼないように抑えてる…、やっぱり俺が見込んだ通りだ…!いい腕をしてやがる…!ー
あのスライドをほぼロスなしで立て直して着いていくる友奈のテクニックに改めて関心の表情を示す渉。彼自身でも2度もこの正丸峠で事故を起こしているためその恐ろしさは充分理解出来る。
ーおまけにガードレールの端から5センチはほぼほぼ使えない……。ちょっとでもタイヤ乗せたらとっちらかる……思ってるよりも道幅が狭く感じる……。…けど…なんだろう…ー
自分が思ったよりも使える範囲が狭いというかなり狭苦しくて走りづらい峠なのにも関わらず先程から不思議な感覚に包まれていた。
ーこんなにバンビーで走りにくいのに…前よりもハチロクが思うように動いてくれる……?自分の思い描いたラインに乗れてるし…ー
それは前よりもハチロクをコントロール出来ている…というものだ。自分の思い描いたラインに乗れるし本気で走るには初めての峠でここまで走れている。
ー…やっぱり…私ってこのハチロクじゃなきゃいけないんだ…♪…だからこそ…勝ちたい…♪このバトル…♪絶対勝たなきゃ…!ー
乗れたことでスイッチが入ったのか、赤城の歌姫としての本領を発揮して車からとてつもないオーラを漂わせながらシフトアップして加速していく
ーおっ…早速吹っ切れたようだな…!!だったら遠慮なく行かせて貰うぜ…!!しっかりついてこいよ…!!ー
友奈のモチベーションが高まったことを肌で感じつつ渉も本気モードに突入してアクセルを踏み込む。直後ウェストゲートの拔ける音がハッキリと聞こえながらレビンは少しフラフラしつつ加速する。
ゴクン!!
ーくっ…!!ー
ーつっ…!!ー
コーナーが迫るとブレーキングで減速しつつステアリングを切り込んで2台ともややドリフト気味に曲がっていく。立ち上がり加速もハチロクターボに遅れを取らないような加速力で友奈のハチロクが背後に喰らいつく。
池谷「…来たぞ…!!」
ウェストゲートの拔ける音が微かに響いてきたため池谷が真っ先に声を上げて視線を向ける。たのメンバーもそれにつられて視線を向ける中、コーナーの奥からヘッドライトの光が照らされるとともにそれに遅れて2台のハチロクが飛び出してくる。
羽南「頑張れ友奈ぁ!!」
スキール音にも負けない声援を羽南が一生懸命送っている。やはり親友としては応援したいものなのだろう、そんな彼女達の目の前を2台は物凄いスピードで駆け抜けていく。
ゴフ!!
その後も何個かのコーナーをハイスピードで過ぎていく中、突如レビンが減速しつつハザードを炊き始める。
ーハザード…、折り返しってことかな…ー
もちろん友奈もその意味は理解しておりレビンと同じようにペースダウンしつつフルブレーキングしながらステアリングを切り込んで180度ターンで向きを変えていく。
2台はそのまま180度ターンをしつつポジションを入れ替えるように停車、トレノ先行レビン後追いのダウンヒルバトルへと変貌する。
渉「…(パッシング)」
友奈「よし…!」ウォン!!
ギュルルルル!!
渉からの合図を確認すると同時に1速へとギアを叩き込んでアクセルを踏み込む。直後ホイルスピンをさせつつも友奈のハチロクが飛び出していき、渉のレビンも続くようにターボ音を響かせながらカタパルトに載せられた戦闘機かのように発進していく。
ーみせて貰うぜ…!ダウンヒルでは負け無しと言われた歌姫の実力をな…!ー
後追いということで今噂となっている赤城の歌姫の実力をじっくり見物するために渉は目ン玉ひん剥くようにして動きを一つ一つ観察しつつステアリングを操る。
ゴフ!!
ー…っ!ー
コーナーに差し掛かるとフルブレーキングで減速、2速へと叩き込んでステアリングを鋭く切り込む。直後テールランプが点灯して後輪をスライドさせつつ悪路を感じさせないような美しいドリフトで思いっきり流していく。
ーたまげたぜ…、こんなバンビーな峠でそこまで綺麗なドリフトが出来るなんて…ー
渉はここまで綺麗なドリフトをこの正丸峠でしているドライバーを見たことがなかった。それだけこの峠はバンビーということだろう。…だが彼女はどうだろう?こんな悪路でも全くぶれないドリフト、更にはドリフトのための綺麗なライン取り、走り込んでいる彼でもこうはいかない…。
ー流石は赤城の歌姫って言われる由縁があるぜ…。おまけに走りに関しては文句なしだぜ…!女だからって油断してるやつはすぐに喰われるだろうな…。ー
ーだからこそ峠は辞められない!!こうゆう奴がいるからこそ盛り上がるってもんじゃないかよ…!!ー
完全に渉は歌姫の走りに虜になってしまっているようだ。それほど彼女の走りには惹かれるものがあるということだろう。数年前、かつて初代「赤城の歌姫」と言われ友奈の母親でもある春香もその一人だ。彼女とバトルしたプロレーサーやドライバーは「あんな走りは見たことがない」、「ドリフトの考えを根本的に変えられたような気がする」と口を揃えていた。
それから現在、母親の走りを受け継いでいる友奈も徐々にその走りに近づいてきていた。まだまだ春香には及ばないものの、それでも18歳という若さながら群馬エリア最速の走り屋となった彼女の実力は計り知れない。
ー今日はとことんまでやるぜ…!!俺だって走り屋の一人だ…負けてられない…!ー
ー…ハチロクとの呼吸が合う…。だからこそ勝ちたい…!それ以外の言葉が見つからないよ…!いや…それが一番大切なんだ…!ー
友奈が決心するとともに、彼女のハチロクからはとてつもないオーラが漂い始めていた。そのオーラはまさに高橋涼介などとほとんど同じと言ってもいいぐらい迫力に包まれている。
ーイケてるぜ、お前を見る者を鮮やかに納得させちまうそのキレっぷり!!それに…!お前のトレノからほどばしるオーラ…オレには見える!ー
ー今俺は幸せ者だ…!こうやってこいつの走りを自家で見れているんだからな…!ー
赤城の歌姫とも言われたその走りに魅力されつつも、渉は同じハチロク乗りとして負けられないというオーラを漂わせつつアクセルを踏み込む。
どちらかが引くまでという終わりの見えないダウンヒル・ヒルクライム混合の熱きバトル。だがまだまだこの戦いは始まったばかり…、
新時代の「赤城に歌姫」とも言われている少女である結城友奈、そんな彼女の走りが覚醒への道へ一歩踏み出していくのであった…。
どちらかが引くまで続けられる二人のガチンコバトル
果たして…どちらが勝利するのか…
そして…友奈はこのバトルで何を得るのか?