いよいよ始まった赤城レーシングの遠征バトル第一戦
初戦は長野エリア屈指の走り屋とも言われるスピリットのリーダー、『朝代安芸』。
アクセルワークの達人ともいわれ、白の70スープラを相棒としてヒルクライムを担当している彼が最初の壁として立ちはだかる。
秋風はそんな相手に対して、GTRのトラクションの良さをどこまで活かせるのか…!?
それではEP27
『アクセルワークの達人』をどうぞ!!
交流戦当日
土曜日の夜 碓氷峠にて
ザワザワ…
いつもならそこまでギャラリーをしている人はいない(いてもほとんどがインパクトブルーが目的)はずなのだが、今日はやけにギャラリーをしている人が多く感じる。駐車場や峠のあちこちにある駐車スペースに止まっている車のナンバーも群馬県や長野県、はたまた他県のナンバーとなっていることからあちこちからかなりの人が訪れているようだ。
それもそのはず、今日は長野エリアで有力な走り屋チームともいえる『スピリット』と最近新たに再始動したレーシングチーム『赤城レーシング』との交流戦が行われる日なのだ。そのため両者の走りを一目見ようといろんな人がここ碓氷に押しかけているらしい。
「いよいよ赤城レーシングとスピリットの交流戦かー、なんかワクワクするぜ。碓氷じゃこんなの滅多に見られないからな…。」
「だなー…、この日のためにカメラ用意しといて良かったぜ。見に来れなかった連中用のビデオ撮っとかないと……。」
「でもどっちが勝つんだろうなー…、どっちのチームの地元でもないここ碓氷でのバトルなんて想像付かねぇや…。」
「でもやっぱどっちが有利かと言われれば『スピリット』だろ。アイツらは定期的にここを走ってるんだ、第二の地元峠みたいな感じなんだし…!それに走るのは朝代さんと文乃さんの長野エリアのダブルエース…!負けのシチュエーションが考えられないくらいだぜ…!」
碓氷峠のとあるコーナーのガードレール奥でギャラリーをしていた人たちは今日のバトルがどうなるかといった話をしているようだ。だがやはり、碓氷を走っている関係かスピリットを応援するようで走りなれて尚且長野エリアのダブルエースでもある二人が勝つのではないかと予想しているらしい。
…がどうやら一部の人はそんな考えじゃないようだ…。
「でもなーなんたって相手は赤城レーシングだぞ?全盛期は猛威奮ってて強豪のレーシングチームともため張れたレベルだからなぁ…。」
「それはもう何年も前の話だろ?その頃走ってたドライバーはもう引退してるんだし、なによりドライバーだって新しく変わったそうじゃないか。流石に全盛期ほどはいかないんじゃないか?」
「ダウンヒル担当はあの『赤城の歌姫』とも言われたハチロクだからな。そっちは文乃さんといい勝負しそうだが、ヒルクライムはあのR33だからなぁ…(ニヤニヤ)。」
「あぁ、確かに車自体はいい性能だが、果たしてそんなモンスターマシンをここ碓氷で扱い切れるか…。」
碓氷峠
頂上
湯月「―――…(何やら話している)。」
朝代「―――…(こっちも同じようだ。)」
その頃頂上ではバトル前の最終調整なのか、朝代と湯月が何やら話しておりその隣では文乃がふむふむと頷きながら聞いているようだ。数分ほど話し込んで、確認が終わったのか湯月が友奈達の元へ戻ってくる。
湯月「相手からの希望でまずはヒルクライムからすることになったわ。スタート方法はよーいどんじゃなくて先行後追い方式で向こうが先行よ。」
秋風「先行だろうが後追いだろうが私には関係ありませんよ…!!この子の最高のポテンシャルを引き出して勝ちに行くだけですから…!」
星宮「相変わらずというか、いつもの秋風さんで安心したわ。でも油断しないようにね?ヒルクライムの相手である70スープラのドライバーさん、けっこう速そうよ。」
秋風「分かってるって♪大事な時に油断してたら元も子もないからね…!!」
羽南「ファイトだよ秋風ちゃん!!自慢のGTRを見せつけてきてやりなさい…!!」
友奈「無理はせず確実に…です!!ここだとどうしてもGTRの大きさがかなりのハンデになります…!!」
秋風「任せてよ友奈ちゃん♪しっかり勝ってダウンヒルが気持ちよく始められるようにしてあげるから…♪」
湯月「うんうん♪問題なさそうね♪流石は私直々の可愛い弟子…!」ドヤ
秋高「…(ガラガラ)。33Rのセッティング終わりました…!!いつでも出れます…!」
どうやら先にヒルクライム戦が行われるようで、その関係か湯月は秋風にバトル形式などの説明を行っていた。だが緊張している様子は見られず、友奈達の応援にも笑みを浮かべつつ答えていることから湯月は問題なさそうな表情を浮かべながらドヤ顔を浮かべていた。
するとそのタイミングでセッティングを終えたのか、ジャッキで車を上げて車体下に潜り込んで作業をしていた秋高がゆっくりと顔を出していつでも出れることを湯月に伝える。
湯月「相変わらずナイスタイミングね…♪それじゃそろそろおっ始めましょうか…!」
碓氷峠麓
ヒルクライムスタート地点
文乃「オーライ!オーライ…!!はいストップ!!」
文乃のハキハキとした声が周囲に響き渡る中、その誘導に従ってスープラ先行、R33が後追いという形でスタートラインに車を並べて停車させる。
朝代「朝代安芸だ。スピリットのリーダーでヒルクライムの相手をさせて貰うよ。よろしくな…。」
秋風「秋風レイセンです…!本日は宜しくお願いいたしますね…!!」(互いに握手を交わして)
朝代「……(ほう?)」
お互いの自己紹介をしながら挨拶代わりの握手を交わしている二人。秋風の手を握った時何かを感じ取ったのか朝代がどこか興味深げな表情を浮かべながら握った手を少し見つめていたがスープラや文乃達の元へ一旦戻ることに。
文乃「どうだったー?挨拶してみて。」
朝代「あぁ、若い割にはなかなかいい感じのオーラ纏ってたな。こりゃかなりやりそうだ…。長期戦は覚悟しておくか…、こういった形式のバトルでしかもこの碓氷峠となれば短期で終わらせるほうが珍しい…。」
文乃「まっ大丈夫だとは思うけど油断しないようにね?私はちょっととしかあの子とバトルしてないけどそれでも速いって感じたもの。」
朝代「分かってるよ…、だが油断しなくても勝つのは俺だ…!長野エリアの実力を見せてやろうじゃねぇか…!」
一方、湯月と秋風サイドでは
湯月「分かってるとは思うけど、今回の相手は事前の情報じゃアクセルワークの達人らいしわ。いくら貴方の33Rを持ってしてでもコーナー勝負は確実に向こうが上でしょう。」
秋風「まあこの碓氷じゃこちらよりもコンパクトな上に踏めるパワーを持ってるスープラの方が有利でしょうからね…。おまけにアクセルワークの達人と来たもんですか…」
湯月「でも貴方の初戦の相手としては丁度いいんじゃないかしら?ああいうのはプロの世界じゃ案外いるもんだしねー、そんで走る前に一言アドバイスしておくわ。」
秋風「アドバイス…ですか…?」
湯月「えぇ、このバトルの必勝法のヒントになるからしっかりと聞いておきなさいー?」
湯月から相手ドライバーについて話を聞いたとき、秋風はやはりかという表情を浮かべながら眉を細める。いくらヒルクライムで四駆やパワーで有利とは言えど、今回は道幅が狭く右へ左へと続く碓氷峠でのバトル。
こうなれば踏めないパワーよりも踏めるパワーが有利になるのは必然で、しかもアクセルワークの達人と相手が言われてるのであればこちらが不利になるのは間違いない。それを見越してか湯月がそのことについて一言アドバイスを秋風に伝えるようだ。
秋風「分かりました…!しっかりと聞いておきますね…!」
湯月「よろしい…!それじゃ言うわね?この碓氷峠じゃ普通の方法で追い抜くのはかなり厳しいわ。道幅が狭い上にスープラとGTRの大きさが合わされば抜くスペースはないに等しい…。…そこでよ!狭いからこそ広い道幅が一箇所でもあればそこが案外チャンスになったりするものなの…♪」
秋風「広い道幅が一箇所でもあればそこがチャンスに……?」
湯月「えぇ、狭くてラインが狭いからこそ広い道幅になったときに自由なラインが見えてくるものなの…♪いい?C=121がこのバトルを攻略するヒントよ…!覚えておきなさい…!」
秋風「C=121がこのバトルを攻略するヒント…。」
湯月「貴方と33Rならきっと行けるわ…♪しっかり勝ってきなさい…!」
秋風「……はい!」
ウォン!!
ウォン!!
羽南「それじゃカウント始めるよー!!スタート5秒前!!
4!!
3!!
2!!
1!!
GO!!」
ゴキャァァァァ!!!
スタート合図を担当することになった羽南のエンジンサウンドにも負けないよく透き通ったカウントが周囲に響き渡っていく。そして0になり上げていた右手が勢い良く振り下ろされると同時に弾かれたように2台がホイルスピンをしつつ飛び出す。
「やべぇ!!いよいよ始まったぞ!!ゾクゾクが止まらない…!!」
「俺的にはスピリットに勝ってほしいが赤城レーシングの活躍も目を離せねぇな…!!」
「あぁ…!!しかも峠じゃあまり見ない33Rがヒルクライムの相手と来た…!!どんな走りするのか楽しみだな…!!」
「どっちにしたってヒルクライムも朝代さんが勝ってくれるよ…!!あの人の登りは地元の連中でもついていけないんだ!だったら他所者がついていけるはずがない…!!」
「頼みますぜ朝代さーん!!長野エリアの実力を見せつけてください…!!」
沿道からギャラリー達の声援や、どんなバトルになるのかという驚きの声を横に物凄いスピードで2台はその目の前を通過する。やはり立ち上がりは四駆でパワーが上の33Rが有利なのか、ストレートとも言えない一コーナー前の直線区間で後ろぴったりに張り付く。
ゴァァァァ!!!
ーやはりストレートでは向こうが上か…まっそれは解りきっていることだがな…。エンジンもかなりやっている…パワーはけっこう出てるようだが…ー
バックミラーでしっかりと写り込んでいる33Rをチラリと見ながら簡単にではあるが車の分析をしながら朝代は眉を細める。いくら相手が四輪とは言えど朝代の70スープラは350馬力のツインターボ、そのへんの車なら簡単にカモれる性能は有しているためそれでストレートで追いつかれるということは馬力では完全に負けていることを意味していた。
だが眉を細めている割にはそこまで気にしていないようにも見える。むしろそれだからこそ、彼が気にしているのは車ではなくどうやら別のことらしい。
ーちゃんと自分のモノに出来てるかいお嬢さん…!!ー
ゴァァァァ!!!
「来た来た!!1コーナー来るぞ!!」
「うひゃー!!2台とも迫力満点だぜ!!まだ始まって間もないっていうのに…!!」
もつれ合いながらも、ギャラリー達が陣取っている1コーナーにスープラが頭でそれに続く形で33Rも飛び込むように突っ込んでいく。2台ともそれなりに車幅はあるためかなり迫力のある走りというのがひしひしと伝わってくる。
朝代「…!!」
興奮しながらも見守っているギャラリー達の目の前でコーナー手前でフルブレーキングでテールランプを眩しく点灯させながらスープラが減速する。ヒールアンドトゥで2速にギアを叩き込んだ朝代は巧みなアクセル操作をしながらステアリングを切り込む。
ギュン!!
タイヤを鳴らす音を響かせながらもほとんどスライドさせない巧みなアクセルワークで綺麗なラインを通りながらも鋭い突っ込みでコーナーをグリップで流していく。立ち上がりもある程度ガードレールとの余力を残しながらも迫力のある加速を見せつける。
「すげぇ!!ほとんど立ち上がりで滑ってないぞ…!!」
「俺ならあそこでケツ滑らす自信があるぜ……。流石はアクセルワークの達人の秋山さん…。あのスープラで碓氷を臆することなく攻めていやがるぜ…!」
「次!!続いて33Rが突っ込んでくるぞ!!」
相変わらずの滑らかな朝代のコーナリングとアクセルワークに驚きを見せているギャラリー達、するとそこに立て続けで秋風の33Rがコーナーに差し掛かって来た。
秋風「よっと…!」ゴクン!!
朝代と同じようにコーナー手前でフルブレーキングしつつヒールアンドトゥで3速から2速へギアを叩き込む。400馬力の力を抑えるためかブレーキロータはオレンジ色にそまりながらも侵入していく。
入口は特に変わらず余力を残したコーナーリングを見せているがそれでも図体のデカい車体とは思えないようなキビキビした走りで中間を過ぎて、ガードレールギリギリに立ち上がってフル加速、再びスープラのケツを捉える。
「おいおい…!!あのお嬢ちゃんもなかなかやるじゃねぇか…!!32Rよりも大きくなった33Rで鋭い走りを見せてくれるとは…!」
「やべぇ…!!見てて迫力満点だぜ…!!ただパワーがあるだけじゃねぇ…!足回りもドライバーの腕もいいぞ…!何もんなんだあの子…!?」
プシャァァァァ!!!
ーこれこれ…!!立ち上がり加速のこのG…!!シートに押し付けられる感覚がたまらないのよね…!!四駆だから踏んでもこの安定感…!!おまけにしっかりとした車体剛性…!これだからR乗りは辞められないのよ…!!ー
ーほう…、Rでそこまで俊敏な動きが出来るのか…。こりゃ思ってたよりもけっこうなやり手だな…。四駆とはいえ俺よりもパワーのあるその33Rを思うがままに乗りこなすとは…ー
コーナーでこちらより少し遅れたとはいえ立ち上がりですぐに喰い付いてくる33Rを見つつ朝代は興味深げな表情を浮べて、関心していた。彼自身R乗りとはかなりバトルしたことがあるがここまでのドライバーと出会ったのは初めてのようだ。
ーこりゃ面白くなりそうだな…。だがやる前から結果は変わらない…!悪いがここは長野エリア、そしてスープラ乗りとして勝ちにいかせて貰うぜ…!ー
ーとはいってもこんなコーナーじゃスープラをGTRでパスするなんて相手がミスしても難しい…。となれば攻略法はやはりあのC=121…!そこまではなんとしてでもついていく…!!チームや友奈さんのためにも勝ちにいきます…!ー
お互い負けられないというオーラを車から醸し出しながら縺れるように2台は次のコーナーへと消えていく。その際、2台のエンジンサウンドが甲高く碓氷の谷底に響き渡っていくのであった……。
EP28 C=121を攻略せよ