ハンバーグを食した後、二軒程お店を散策して解散となった。
また迷子になりそうなので一応送ろうとしたのだが、この後用事があるらしくいつもよりちょっと元気に駅に消えていった白姉。
誰かと……それこそ彼氏とかそういった存在の人とでも会うのかな。
あの人のプライベートに干渉する気はないけど、そういう人がいるのならちょっとは見てみたいなって思いながら、本日のサブイベントのための集合場所に到着した。
(それでぇ? 弟子の大舞台の前にそんなに美味しそうなハンバーグの自慢っすか? ふーん?)
(……うっさいぞ。俺からすればお前のカチコミの方がおまけだっつーの)
いつもと同じように黒猫になって肩に乗り、もう一日の予定を消化し終えた気分で念和していると、成美は露骨に口を窄めて文句を垂れてきた。
良いだろ別に。お前の方がお金ありそうだし、くやしかったら自分で行ってこいよまじで。
(……もうすぐ到着だし、くだらない雑談はここまでにしとこうか)
(……はいっす)
昨日聞き出した住所に到着に近づくにつれ、成美の言葉数も少なくなっていく。
過度の不安や緊張で堅いわけではなく、かとって集中していないわけでもない絶妙な塩梅。
……うん、これなら特に問題はないだろう。それで勝てるかはさておき、何も出来ずに散るなんてしょうもないことにはならなそうで良かった。
なんだかんだ面白いものは見れそうだなと思いながら、成美の足はようやく目的地の目の前に到着する。
一般の家庭にはまず縁のない大きな門のある家。端から見ればヤの付く人とかお饅頭箱渡し合っている政治家の方々が寛いでいそうな、まあ家という屋敷とか言った方が正確かもしれないな。
(……随分と複雑な結界だな。こりゃ入ったらもう退けねえな)
(師匠でもっすか?)
(阿呆。お前のことだよ)
肉球でほっぺたを叩きながら、改めてこの非常によく出来た結界を観察していく。
尋常じゃないほど複雑に編まれた結界。人払い、認識阻害、物理障壁、空間歪曲など軽く見ただけで四つは特性を持っていることが確認できる。
来る者を試し去る者を逃がさない、まさに完全に閉ざされた空間。入ってみないと分からないが、中は最早一つの世界と言って良いほど独立したものになっているはずだ。
ふむ、ちょっと甘く見てたかも。これだけの結界術を使える存在がいるとなれば、正直俺も手を貸した方が良いかもしれないか。
……ま、困ったらで良いか。この結界だって、昔の化け物が張った奴を維持しているだけかもしれないしね。
(……じゃあ行くっすよ)
(おけー)
成美は念話を閉じ、三回ほど深呼吸し己を整える。
抱えるのは見るからに大砲だとわかる白い大筒。力を流して溜め込み、砲光が漏れそうだというくらいになって初めて砲身を扉に向け──。
「吹っ飛べっっ──!!」
彼女の象徴である白色の魔力弾が放射され、目の前にあった門を吹き飛ばす。
光弾は結界によって消失したものの門は大破。人の進入を拒む境としての機能は、もう果たせそうにないくらいぼろぼろだった。
「はっはっはー!! 突撃っすよー!!」
大砲を分け銃と剣を一つずつ持ち、痛快に笑いを上げながら門を踏み越える成美。
──領地に入った瞬間、世界ががらりと変貌した。
外から見たのとは明らかに異なる広さ。成美の立つ場所を端とし、透明な天井にでも覆われた巨大なドームの中にいるような閉塞感。そして最も分かり易いのが、門を越えるまでは欠片も聞こえなかった、反響する警報音。
まるで別の世界に飛ばされたかのよう。予想はしていても、思わず感嘆を漏らしたくなる光景だった。
「……はえー外からとは全然違うっすねっと──!!」
成美は驚嘆を零す間もなく、まるで洗礼だとと言わんばかりに前後左右、あげく空からもから飛来する黒い人影を払いながら駆け出す。
「──邪魔!!」
成美も命を刈り取らんと振るわれる、黒装束の非情な刃。
だがその軌跡は成美の白剣は弾かれ道をなくし、次々と向かってくる敵を蹴散らしながら進み続ける。
「死ねぇぃ!!」
「っきりがない……ならっ!!」
前方三人左右四人、後ろに気配屋根にはいっぱい──!!
前方から放たれる三つの刃を白剣で流し、もう片方に持つ弾丸を浴びせながら周囲を確認し、いかに数という要素が手強いかを実感する。
彼らの使う独特な動きは昨日見た。だからこんなやつら、一対一にさえ持ち込めれば何回連続だって負けやしない自信がある。
厄介なのは魔力の乗った空からの刃。何故かあっちの人間をすり抜け私だけを狙うその攻撃は、ふとした切っ掛けで串刺しにされかねない。
無視できない刃物の雨をどうにか出来れば何人でも相手できる。だからそのためにどうすれば──!!
「放てっ!!」
屋根に立つ忍によって、空に再び刃が放たれる。後ろの攻撃を躱しながら背後に銃弾を放ち、その声を耳で捉えた瞬間にやるべきことを脳が導き出す。
やるしかない。この状況を覆すなら、ここが好機だ!!
炎を纏う刀が振り切られる前に銃で忍の眉間を撃ち抜き、降り注がんとする空に光を灯した剣を構え勢いよく振り切る──!!
「消し飛べっ──!!」
上空に放たれた三日月状の光は、雨のように落ちる刃の群れを呑み込み消失した。
光はそのまま空で破裂し、まるで花火のように強く眩く空に漂い続け、忍達の注意を引く。
「──今っす!!」
ほんの一瞬、忍達の目が逸れたその瞬間を成美は逃さない。
忍の間を掻い潜りながら障子に飛び込み、屋敷の中に転がりながらも入り込む。
実に無様実に不恰好。悪党としてはこれ以上なく情けないが、それでも確かに、成美は刃の雨から逃れることに成功した。
頭を抑えながらも直ぐに迫る刃と拳を避け、休むことなく追撃をしていく。
さあてまだまだ敵は残っている。勝負はまだ前半もいいところ、これからが本番だな。
書く時間が全然取れないので、ちょっとペース落ちるかもしれません。
明日はないです。