幼馴染を守るため、両親+αの力を振るいます 作:くっ殺男性騎士
私、小山理紗は魔法少女になった。
気持ちの悪いイソギンチャクに襲われた時に、『ポプポピ』と名乗るへんなうさぎに力を与えられて、魔法少女になったのです。
……確かに高校二年生で148cmは子供に見えるかもしれないけど。
なんだかよくわからないうちに、フリフリのコスチュームを着て、魔法を使ってイソギンチャクをやっつけた。もし、あのまま魔法少女になれなかったら、その、え、えっちなことをされてたって言われて、すごくこわかった。
キ、キスもまだなのに、えっちなことはその、大好きな人としたいし。あんなイソギンチャクに初めてを奪われてたらと思うと、今でも体が震えてくる。
だから、って訳じゃないけど、私は幼馴染で、お兄ちゃんで、大好きな人に相談した。相談しちゃった。
魔法少女になった事、イソギンチャクに襲われたこと。全部喋った。
ずっと真面目に聞いてくれたし、帰りもすぐ近くとはいっても夜は危ないからって送ってくれた。
『隼 侠』、お母さんの国籍では『キョウ・H・スターク』。私の幼馴染で、お兄ちゃんで、初恋の人。お母さんのサマンサさんと同じで青い目がきれいで、黒い髪も綺麗で、背が高くて、足も長くて、アクション俳優さんみたいに運動できて、頭もよくて、優しい人。す、好きだってことも相まってべた褒めしてる気がするけど、本当なんだよ!?
サマンサさんも、お父さんの龍さんも、二年前に事故で亡くなってからも、ずっと私を守ってくれた強い人。私のお父さんも侠お兄ちゃんなら安心だって言ってるけど、私にはまだ、その勇気がない。
でも、ほんの少しの勇気を出しておけばよかっただなんて、思う日が来るとは思わなかった。
「これでも喰らえぃ!」
「んんぅっ! きゃあああああ!!」
「へっへっへっへっへ……俺の可愛いペットを痛めつけたお礼はまだまだたっぷりしてやるぜぇ」
ポプポピが感じ取った怪人の気配に向かったら、そこではトカゲのような怪人に覆い被さられている女の人がいた。私に気付くと怪人は覆い被さるのをやめて、私に向き合った。
『折角お楽しみの最中だったってのに……ん? お前は俺のペットをいじめた魔法少女だなぁ?』
襲い掛かってきた怪人が出す光の玉はとっても強くて、私の魔法では弾かれちゃう。ポプポピのアドバイス通り、守りを固めて隙を窺ってたけれどずっと隙がない。
そして私が張ってたバリアも光の玉に耐え切れず、とうとう割られてしまった。
「(魔力を使いすぎて、動けない……!)」
体に力が入らない。コスチュームも維持できなくなって、いつもの制服に戻った。
「おっほほほほ~! なかなかそそるじゃねえか! それにこの匂い……ケェヘヘヘヘヘヘ!!」
トカゲ怪人が舌なめずりしながら近づいてくる。逃げようとしても、後ずさりすることしかできない。怖い、怖いよ。
「ん~! その怯えた表情がグッド! 俺のペットをいじめた分も含めて、たっぷりお仕置きしてやろう!」
もうすぐそこまで怪人が来ている。
やだ、まだ告白もしていないのに、まだキスもしたことないのに、怪人に乱暴されたら、私はもう侠お兄ちゃんに合わせる顔がない、やだ、やだよぉっ!!
「たっぷり可愛がってぎゃがっ!?」
ギュッと目を瞑ったら、怪人が潰されたみたいな声を上げた。おそるおそる目を開けると、そこには青っぽいような、黒い鎧が立っていた。
アルファベットの『T』を鋭くしたような、バイザー? っていうのかな? 青く輝く顔に、背中には日本刀を背負った鎧。
『怖い思いをしたな』
くぐもった声がした。
『あとは俺がやる』
一体、誰なんだろう?
////////////////////////////////////////////////
4歳年下の幼馴染が魔法少女になった。
いきなり何を言っているか分からないと思うが、さっき俺も説明を受けたところだ。
小さいころからご近所で、いつも一緒だった幼馴染『小山理紗』。父は公務員、母はスーパーのパートをしている高校2年、将来の夢は保育士。低身長のちんちくりんだ。……下世話な話だが胸以外は。
そんな彼女が昨日唐突に魔法少女になり、やたら気持ち悪い魔物を退治したらしい。
いやいやいやいやいやいやいや。
信じられるかよ。そもそも高校2年で魔法少女てお前。見た目は確かにちっこいけど。
とか言ってたら何か変な生きものが出てきた。語尾がなんか変なアレ。所謂マスコット。普段は手鏡に化けてバッグの中に仕舞われているらしい。見た目はなんか、ウサギの長ーいタレ耳の、ロップイヤーだっけか。あれが二足歩行してる。
そういえばここ最近は、なんだか危ない事件が頻発している。
深夜に女性がどの生物にも当てはまらないDNAの生物に強姦されたまま発見されたり、怪人とかいう存在が器物破壊や強盗を起こしたり、誘拐事件も頻発している。
そんなことを思い返していたら、理紗が言うには昨日退治したのもその強姦してくるやべーやつで、何でもイソギンチャクみたいなうねうねした気持ち悪い生き物だという。そして理紗も襲われかかったところを魔法少女に変身することで助けられたらしい。
俺が昨日家にいる間にそんなことがあったなんて……。
こうしてはいられない。
理紗を送った後、家の地下に安置されているそれらのもとへ向かう。秘密の入り口を通り、円筒状の装置に保存されている人型のシルエット。俺専用の生態金属スーツだ。
『これを使う意味、お前は正しく理解しているか? もし本当に理解しているならば、これを解除するためのカギはそこにある』
解除用のパネルに触れると、久しく聞かなかった、聞けなくなったお袋の声がスピーカーから聞こえた。胸の奥から熱いものがこみ上げる。しかし、それに浸る時間はない。おそらく理紗は今夜も魔法少女となるだろう。何かと優しいあの子のことだ。
解除のためのパスを打ち込む。認証されてロックが解除された。
『……そうか、ならば持って行け。これはもうお前の物だ』
丁寧に手順を踏んで装着と起動を行う。全て良好。委細滞りなく。そして背には父の形見。
『最後に、……あの子を悲しませてはだめよ? しっかり守ってあげなさい』
教官ではなく、母としての言葉に流れそうになった涙を呑んで、裏庭の出口から、俺は夜へと翔けていく。
『……いってらっしゃい、私の息子』
///////////////////////////////////////////////
お袋から授かったこの生体金属スーツを着ているとき、一定の助走を取ることで最高速度で時速320㎞で走ることが可能になる。その状態は『スピードブースター』と呼ぶ。曲がりにくくなるという欠点もあるが。
この超高速走行を用いながら、スーツに連動している量子コンピュータと秘密衛星を介して、超高精度のGPSマップを網膜へ投影し、目標へと向かうのだ。
その甲斐あってか、どうにか間に合ったようで、あと一歩で理紗はトカゲにレイプされるところだった。ギリギリだった。
高速走行状態で発生したエネルギーをスーツ内に蓄積し、一気に解放した爆発的跳躍による体当たり。お袋から受け継いだ技巧『シャインスパーク』は、通常ショルダータックルのような体当たりで行う。
それを俺なりに改造した技。スピードブースターで発生した膨大なエネルギーを右足に集約し、シャインスパークの爆発的跳躍を用いた飛び蹴り。
『スパークキック』とでも名付けようか。威力としては第二次大戦中に用いられた戦艦大和の主砲に匹敵する。これを首に食らって何もないわけがないとは思うが、やはりと言うべきか、怪人はふらつきながらも立ち上がる。まあ、満身創痍でK.O.寸前の情けない姿だが。
「き、貴様ぁ~、何者だ!?」
『死にゆく貴様が覚える必要はない』
バイザーによる解析。怪人はどうやら再生力があり、そのためのエネルギーが枯渇しない限り倒しようがない。気分はさながらモータルコンバットと言ったところか。
「これでも喰らえ!」
光弾を確認。表面温度およそ120℃。軽機関銃程度の威力と連射。
「ああぁっ!!」
「へっ、死んだか」
『違うな、避けるまでもなかった』
生体金属スーツはその設計思想を戦艦のものと共有している。自らの主砲でも貫けない堅牢な装甲を是としているのだ。見た目こそ頼りないがこれは至近距離の水爆の炸裂に耐え、かつその熱と放射線を装着者に伝えない。右腕に専用兵器、『アームキャノン』を転送装着。お袋の最も信頼していた武器。
生体エネルギーを弾丸として発射する大型の銃身。それを最大限まで
『オン バザラ ウン』
そして、親父の秘伝たる忍術を重ねる。アームキャノンの銃口へと炎が集まり、解放の時を待つ。
「な、なんだそのエネルギーは!? ち、ちくしょおおおお!!」
破れかぶれの光弾など、俺には意味をなさない。
『破ッ!』
銃口より飛翔せし炎の龍。親父の忍術『火炎龍の術』とお袋の『チャージビーム』の合わせ技。光弾すら飲み込んだ龍はトカゲを巻き上げ天へと昇る。
『終いだ』
落ちてくるトカゲ。アームキャノンを解除し、背負いし刀を抜く。親父が遺した霊刀『龍剣』。その昔龍の牙より削り出された、邪悪を討つ刀、らしい。
『おおおおおお!!』
落ちてくるトカゲの両腕を肩より断ち、首を刎ねる。邪悪を滅する『滅却の法』だ。
『南無』
首を断たれ、音を立てて腐敗していく体へ、最後の慈悲を仏に請う。せめて来世では真っ当に生きてもらいたい。
「あ……あ……」
理沙の方へ振り向けば、腰が抜けているらしくへたり込んでおり、声が震えている。相当怖かったんだろう。俺がやったことは傍から見れば壮絶な処刑そのものだ。
そこへ唐突に網膜に投影される新たな情報。さらに近くで怪人が暴れているらしい。警察も出動しているが、拳銃では歯が立たずに既に1人が重傷を負っている。直線距離にしておよそ15㎞先。
「あっ! 待って!!」
理沙の声に後ろ髪を引かれるが、振り切って俺は現場に向かう。屋根を飛び越えて最短距離で現場へ。
今度も人型のトカゲのような怪人だ。しかも周りには全身黒タイツの男が8人、どうもこいつらも怪人サイドらしい。
警官は負傷して足が折れた様子の男性が1人。もう1人は壁を背に拳銃を構える女性警官。
全身タイツの方は生命反応がほぼ同じ個体であることから、クローン技術で生み出されたクローン人間の可能性がある。最近躍進しているバイオ技術企業の名前が脳裏に浮かんだ。検索しようと社名をつぶやいた。
「君の懸念は当たっているかもしれないぞ」
「叔父さん?」
唐突にオンになったビデオ通話。画面にはアメリカに住んでいる叔父さん、お袋の兄が映っている。彼は稀代の発明家で、俺のスーツも叔父さんから18歳の誕生日に贈られたものだ。
「僕の知り合いに世界一の探偵がいるんだが、どうにも最近頭角を現しているバイオ企業には、お天道様に顔向けできないようなお仕事があるらしい。おっと、君がスーツを起動したときから、データはこちらに届けられる仕様に なっているんだ」
「そうなんだ、なら話は早い。後でゆっくり話をしよう」
「いいとも。そういえば成人したお祝いをまだ送ってなかった、うっかりしていたよ。期待していてくれよ?」
通話が切れた。クローン人間は男性警官を取り囲み、トカゲ怪人は女性警官にじりじりと迫っている。
「っと、悠長にしている場合じゃない」
音もなくクローン人間の背後に降り、その首を刎ねていく。あまりに鋭い切れ味と技術で、クローン人間は斬られたことに気が付いていない。
『おい』
「あぁん? グギャッ!??」
トカゲ怪人に声をかけ、意識をこちらに向ける。油断して振り向いた顔に鉄拳を叩きこんだ。クローン人間たちはこちらに振り向いた瞬間に首がゴトリと地面に落ち、緑色の液体を首から噴射していた。
『貴様の所属はどこだ』
吹き飛んで倒れたトカゲ怪人の腰を踏みつけ、龍剣を首に突き付けて尋問を行う。
「誰が言うか!」
『そうか』
腕を刎ね飛ばして尋問を続ける。
「ぎぃやああああ!!」
『次はもう片方だ』
「動くな!」
女性警官が回復したらしく、こちらに銃を向けている。
『貴様は警察には荷が重い』
「かひゅっ――」
速やかに首を刎ね、頭部を転送。スーツで強化された跳躍力は垂直方向に40m、一般的なオフィスビルの10階相当まで簡単に飛び上がる。女性警官からすれば、一瞬で俺が消え去ったように見えるはずだ。
さて、頭部を持ち去った理由だが、怪人の脳から情報を引き出すことを目的としている。
理沙をこれ以上危ない目にあわせるわけにはいかない。理沙を守るためにならば、俺は鬼にでも死神にでもなる。
情報を上手く引き出せればよいのだが……。
主人公父
リュウ・ハヤブサの能力を特典に転生した男性。生前潰した悪の組織は3桁。
主人公にとっては父であり、師匠。
名前もまんま『隼 龍』。妻との初めての出会いは敵組織内での殺し合い。
表向きは交通事故で死亡。が、実は偽装で裏の世界で邪神とか悪神の教団と戦っている。
主人公母
メトロイドのサムス・アランの能力を特典に転生した女性。ベヨネッタと迷った。
生前潰した悪の組織は3桁。
主人公にとっては母親であり、教官。
名前はサマンサ・スターク。まさか兄まで転生者だとは思わなかった。
夫と共に裏の世界でバリバリの現役。対魔忍みたいな目にあえない因果律持ち。
主人公
両親の能力をコピペ(鳥人族のDNA込み)して産まれ、尚且つARMSの高槻涼みたいな育て方をされてきたので戦闘力は控えめに言って冴島雷牙。
対魔忍アサギの世界に放り込まれたパニッシャーみたいなものだと思ってほしい。
主人公叔父
トニー・スタークの能力をコミック・映画込みで特典に転生した男性。前世もアメリカ人。妹がサムスと知った時は大喜び。もちろんスーツも制作済み。
お友達は一言で言うとバットマン。
ヒロイン
本来ならば対魔忍や淫妖蟲みたいな目にあう運命だった。