明日の運命   作:サソリス

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モスティマが出なくて意気消沈していた途中、書けば出ると誰かに聞いたので書きます。
モスティマが出ない限り多分続く。


特異点F
プロローグ


これを読んでいる者は英雄と聞いたら誰を答えるだろうか。

 

―――物語に出てくるような偉大なる活躍をした偉人? 

―――――人類の進歩に大きく貢献した一握りの天才や努力家? 

―――――――世界は広く、可能性は無限に広がていると証明した冒険者たち? 

 

 

 

その他に様々な要因で英雄と名指しされ、祀られている人物を皆はコタエルだろう。それは常識であり当たり前であり、正常な人間の答えと言える。

が、しかし。

 

その者は皆が思い描く英雄達の中に常識では加えないであろう人物達を加えていた。

誰も知らない彼、彼女らは勇気を持っていた。

 

「………」

 

病に侵されている者が大半でそんな環境の中、絶望が占める世界を生きていた―――

 

「……ター」

 

侵されている病にも負けず、そんな修羅の世界を生き抜く者達だからこそ一番よく理解しているのかもしれない――――――

 

「…クター」

 

そんな、そんな者達を見守り、そして一緒に過ごしていたからこそ、その者達をその者の中で無意識の中で英雄に加え、そして憧れていたのだろ―――――

 

「ドクター」

 

――――数々の困難を乗り越え、時には出会いそして別れ、敵対しそして殺し合った……そんな者達を一番近くで見て来たはずなのだが、残念な事にその者は憶えてはいない。

 

「ドクター?」

 

天井の大穴の外ではメラメラと世界が燃えているかのような大火事の風景が広る光景を他所に月明り刺すある屋敷の蔵の中。地面は摩訶不思議な魔法陣の様な幾何学模様が広がって淡い光を出し俺達を照らし続ける。そしてその光が収まり俺は、彼女と出会う。

 

「ドクター、大丈夫ですか?」

 

「……ドクター?」

 

色々と語ってきたが前座はここまで、これからはその者……ある世界で流行り病にかかった病人達を救うためにひた走り、そして死んだ。その者の人生の後にあった世界を救うお話。

 

 

※※※

 

 

うさぎぴょん!ぴょん! 蔵の中~…‥‥ってふざけてる場合じゃねぇ! パニックになる前に状況整理開始!

 

ここは何処だ、親友の家にある蔵の中! 何故いる、大掃除に駆り出されて蔵の中で昼寝してた! 俺は誰だ、穂群原学園2年C組所属、C組保健委員および穂群原学園保健委員会副会長の……アレ?名前が、名前が思えだせねぇえ!? 得意な事は他人の感情を読み取る事!って言ってる場合じゃねぇ!

 

「ドクター、とりあえず立てますか?」

 

「あ、あぁ。ありがとう」

 

自身の名前を思い出そうとすると靄がかかったような感覚に苛まれ思い出さない感覚を気持ち悪いと思いながら、突然地面が光り出した事によって俺は驚いて尻もちをついた体勢だった為に差し出された手を取り俺は立ち上がる。ってか、パニック起こし過ぎて逆に冷静になってきたけど……俺ってば中々の非現実的な現象に苛まれてますな。

 

「? どうか、しましたか?」

 

俺をドクターと呼ぶ光から出現した謎の女の子。ぱっと見て身長は140㎝弱、声から見て多分JCぐらいの年齢だと思う。体格は身長に比例してかかなりの小柄ではあるがその身にダブダブなコートを羽織っている。顔はフードを被っており月明りしか光源が無い関係か顔は見えない。そんな感じでただでさえ謎の女の子なのだが……それに加え、普通ではない特徴を持っていた。

 

「うさ耳ッだとッ!?」

 

フードから飛び出すその二つの細長い可愛いお耳は知り合いの影響で若干ケモナー化しつつあった俺の目を盗んで離さず、若干揺れる耳を俺は凝視し続けるしかない。

 

「あ、あのぉ……」

 

あぁ何て耳なんだ、俺は猛烈に感動している。「ドクター?」最初は俺も人間に獣の耳ぃ? なんて嫌悪してい「ドクター」たが実物を見て思う、これは……良いもの―――「ドクターッ!」

 

「はッ!」

 

「しっかりしてください、ドクター」

 

不味い不味い、目の前の光景に我を忘れて夢中になってた。所かまわず、それどこそ緊急事態の時にだって我を忘れて夢中になる癖は昔から親友には注意されてたのに―――悪癖が治らねぇ。

 

心配そうな感じを出す少女に俺は自分を取り戻して何とかその耳から目線を外すと俺はその少女へとまともに対面する。よく見るとフードの奥からこちらを見つめる綺麗な青い瞳が覗かせてる……綺麗だな。

 

「それで、君は一体誰?」

 

「ッ! やっぱりドクターは今回も記憶を……

 

俺がそう問うと彼女は何処か悲しそう? 悔しそう? って感じがフードで顔が見えない状態であっても読み取れる反応を見せた。

 

ありゃ? 俺ってばいけない事をやっちゃいましたか? そんな不安が脳裏に過る途中、彼女は俺的に謎に包まれていたベール(フード)を脱いだ。

 

「私はアーミヤ、貴方を助けるために来ました」

 

月明りに照らされる彼女の姿は俺よりも身長の低い少女のハズなのだがまるで長年連れ添った相棒、もしくはそれに準ずるものと言う懐かしい感

覚と共に何か巨大で偉大な人物を見ている感覚に陥る。なんだろ、この感覚は……怒り? 悲しみ? 憎悪? そして―――安堵。何故かそんな感情ばかり読み取れてしまう……こんな事、今までになかった事だ。

 

「俺の名は―――「あなたはドクターです」え?」

 

いや、確かに俺自身で名前が思い出せないからどうにか話を濁そうとしてたけど……少なくとも名前が役職名ではないと思うぞ。

 

「恐らくですがドクター自身が名前が思い出せなくて混乱していると思います」

 

そんな俺を気遣ってか心配する表情を見せるアーミヤ。ってか、俺が名前が思い出せないの知ってるのか……マジでこの子何者だよ。

 

「しかし、それはあなたがあなたである証明にもなるんです」

 

「俺が俺である証明?」

 

意味が分からない。名が無い事が俺が俺である証明って……普通逆では?

 

「信じられないと思いますが現在、世界は…人類史は焼却されて未来も過去の歴史も消えそうになっています」

「そんな世界で生き残るため、存在が焼却されない為には人類史から一度消え、そして世界の歯車から一度外れる必要があったのです」

「そのために名前と言う個を証明するモノを一度捨てる事によって今のドクターが存在する事ができ、私と出会う事ができたと思います」

 

アーミヤから告げられる俺の想像をはるかに超える情報。一瞬アーミヤがお頭が痛い中二病と言う名の奇病にかかった子なのかな? なんて考えも過ったがその事を告げる表情は親友がエロ本を俺に隠せと必死な表情で告げる時のように真剣そのもの。 嘘を言ってるような感情も読み取れないことがから本当の事を言っている事だとわかる。人類史の焼却って……言ってる事は意味の分からない事だけどヤバそうなのはわかるけど―――

 

「アハハ……なんで俺が」

 

「ドクターが私達を呼び出せる唯一無二の存在だからです」

 

「そんなこと言われもな……」

 

俺ってば名前はわかんないけど普通の高校生だぞ。ちょっとした医療行為は親友が部活で結構怪我してたから自然と出来るようにはなってたけどドクターと呼ばれるほど詳しくは知らないし……マジで意味が分からん。

 

「でも」

 

親友はよく言ってたっけ、正義の味方になりたいって。いつもいつも困ってる人を助ける正義を貫く聖人じみた人間になりたいって。俺はいつもと何時の言い分を聞きながら俺は正義の味方じゃなくて救える範囲で救える人間になりたいとも昔考えた事もあったなぁ‥‥…まさか、俺がそんな状況に追い込まれるとは夢にも思ってなかったけど。

 

「よりにもよって俺か……アイツじゃなくて俺か……」

 

「ドクター?」

 

思わずしゃがみ込んでしまった俺を心配するアーミヤ。その表情は悲しそうな……はぁ~、正義の味方とか以前に女の子にこんな顔させるとか親友に怒られちまうな。

 

「アーミヤ……オレはその人類史とやらを救う事が出来ると思うか?」

 

「できます! ドクターなら、必ず」

 

そんな断言されると俺もやるしかねぇよなぁ……ハァ。

 

「なら、やりますか」

 

ゆっくりと立ち上がって俺は身に着けて居る制服を正す。昔からの癖なんだよなぁ、気持ちの切り替えをする時に服装を整えちゃうってのは。

 

「ドクター、これを」

 

そんな俺にアーミヤは何かを手渡す。何だコレ?

 

「ドクター専用のコートです」

 

「なぜ今それを?」

 

「気分、ですかね?」

 

そうやってでへへと耳をふさふさと揺らしながら笑うアーミヤ……可愛い。

そんな笑顔に答えるべく俺はコートを羽織った。それはアーミヤの身に着けて居るダブダブのコートと同じデザインのモノであり何故か俺の身長にマッチしている。それに初めて着るのに何だか安心する着心地。例えるならアレだな、お気にの服を着てる感覚と同じだな。

 

「やっぱりドクターはドクターです」

 

ん? アーミヤなんか言った?

 

「な、なんでもないです! なんでも……」

 

「?」

 

ま、いいか。 フードを深く被りアーミヤの先導の元、俺は足を進める。

 

「ドクター」

 

「ん? なんだい」

 

扉を開く前、扉の取っ手に手をかけたアーミヤは何だか覚悟を決めたような感じでこちらを振り返る。

 

「これから私達には様々な苦難が待ち受けるでしょう」

「だけど、ドクターには仲間がいます。ロドスの皆がいます」

「だからどんな障害が私達の前を阻もうと、ドクターならきっと大丈夫だと信じています」

 

「……」

 

アーミアがこの時どんな気持ちでこんな事を言ったかは分からない。けれど、その目には揺るがない何かがあると思えるものあった。

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

俺の答えを聞くと安心したかのような表情を浮かべ戸を開けた。そして、俺の目に入ったのは――――崩壊した親友の家に加え燃え盛る、俺にとっての馴染み深い冬木の町の姿だった。

 

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