セーラームーン×モンスターハンター 月の兎は狩人となりて 作:Misma
咆哮を合図に始まったベリオロスの狩猟。
それは数分も立たぬうちに、激しい攻撃の応酬となった。
「たあああっ!」
「はああっっ!!」
レイの太刀『灼炎のルーガー』が焔の軌跡を描き、まことの鎚『王牙鎚』が落雷を轟かせる。
最前線で攻撃をぶつける彼女らに対し、ベリオロスは軽やかに飛び下がりつつ横へ旋回。
「ゴアアッッ」
前肢に力を込めて吼えると、直後、氷上を疾駆し跳びかかる。
レイたちが転がって避けると、彼は己の身を回転させ即座に振り向き。そしてその大きな体躯を氷に滑らせることもなく、次の跳びかかりに備えて身体を屈めた。
「こいつ、ナルガクルガと似ているな……」
天王星を守護に持つセーラー戦士、セーラーウラヌスは相手の様子を窺いながらそう呟いた。
次の跳びかかりも外すと、ベリオロスは小さく跳んで横向きに身体を構え、力を溜める。
そこから身体を直接レイとまことをぶつけにかかった。
「やっぱり、隙が少ないわ!」
太刀を払い、斬り下がったレイが叫ぶ。
原因は、氷をも切り裂く爪と翼の外側に生え揃った棘によるものが大きい。
これがスパイクの役割を果たすことで、彼は氷上でも何の支障もなく動くことができるのだ。
一方、彼は寒冷地に棲むゆえ火や雷に弱い。
そのためか、しばしば彼女たちへの対処に意識が行っているところがあった。
激闘のなか、ベリオロスは先が二股に分かれた尻尾を横薙ぎに払う。
剣士たちを近づけないための牽制だったが──
「あたしには効かないわよ!」
美奈子のヘビィボウガン『バイティングブラスト』から撃たれる弾には関係ない。
相手の意識外から、容赦なく厚い甲殻を背中、尻尾、翼と削る。
「グゥアアァァァッッ……」
氷牙竜は忌々しく唸ると体躯を躍動させ、空へと飛びあがる。
当然レイとまことは武器を持って様子を見るしかない。
ウラヌスも、空中に飛ぶ相手への有効な攻撃手段が無いゆえ、身構え避ける準備をしていた。
しかし彼女がベリオロスの視線を辿ると、その先は美奈子。
氷牙竜は彼女を最も厄介と認識し、目標を切り替えたのだ。
「美奈子、あの様子だとヤツは君に……」
ウラヌスは、叫ぼうとした途中で言葉を失った。
美奈子は、真正面にしゃがんで片目をつむり、照準をベリオロスに向けていたのだ。
「おい、何をやってる!」
ベリオロスは翼を拡げ、少女を薙ぎ払わんと滑空する。
「クレッセント・ショットォッ!!」
待っていたとばかりの連続射撃。
機関銃と見紛わん光の連射が、ベリオロスの頭に何発も突き刺さる。
「ガアッ」
彼が苦しげに鳴き、大気を捉える翼がぶれたことで滑空の軌道もずれる。
かなり強烈な攻撃だったようで、ベリオロスは美奈子のすぐ隣に不時着すると低く呻きながら首を振っていた。
「な……」
あまりに無茶な力業に、ウラヌスは目を丸くしていた。
美奈子は全ての弾を撃ち切り、発熱した砲身を上に掲げる。間を置くことなく、まことが蒼い甲殻に白い帯電毛をあしらった鎚を持って振り回す。
「シュープリーム・スピニングメテオ!!」
翼目掛けて、手から伝わった雷のパワーを開放する。
閃光と轟音が鳴り響き、落ちた剛雷の衝撃は一挙に翼の外周にある甲殻と棘を吹き飛ばした。
「グギャアアアッッ!!」
ベリオロスはバランスを崩して転倒する。
雷が余程効いたのか、焦げた前肢が痙攣している。
「やっぱ武器新しく作って正解だったな! あたしの雷によく馴染んでる!」
まことは未だ静電気の宿る手に王牙鎚を持って不敵に笑った。
ウラヌスはそれを見て、遂に感づいた。
「まさか君たち、戦士の力を武器に込めてるのか?」
「えぇ、とある教官に教わった技と組み合わせてね!」
既にレイは、手から太刀に自身の炎を流し込んでいた。
伝導した熱は、蒼炎を模した刀を赤を超えて黄色に燃やす。
「炎華、気刃斬!!」
螺旋を描き、獲物の頭に灼炎を刻み込む。
超高温の斬撃は琥珀色の鋭牙を容易く叩き折り、遠くへ吹き飛ばした。
もはやウラヌスが手を出すまでもない。
少女たちは確実に、凍土に君臨する白騎士を追い詰めつつあった。
「グウウッッ」
ベリオロスは起き上がると、悔しげに唸って北へと翼を広げ逃げていく。その動きに弱ったところはなかったものの、すぐさま逃げる判断をしたことは彼女らの実力を認めたと言うに等しい。
「さすが、この世界に長くいただけはあると言うべきか」
武器をしまった少女たちに、ウラヌスはほぼ使わなかった魔具スペースソードを虚空へと仕舞いながら呟いた。
澄ました顔をしていた彼女たちは途端に「えっ!?」と表情を一転させる。
「やったぁ、遂にはるかさん……じゃなくてウラヌスに褒められちったー!」
「ま、属性の相性もあったけどね」
ぴょんぴょんと飛び上がる美奈子に対しレイは冷静そうに振る舞うが、嬉しそうな感情は誤魔化せていない。
「で、アイツはどこに行ったのかな」
まことはベリオロスに付けたペイントの臭いを嗅ごうとしたが、激しい風に吹かれているせいで分からない。
「方角からして、洞窟に逃げ込んだ可能性がある。行ってみる価値はありそうだ」
北には洞窟へ続く道が2つある。
ウラヌスは、その東の方に向かって先頭を歩き始めた。
だが、やがて雪を踏みしめる足音が自分以外にないことに気づく。
「ん?」
振り向くと、少女たちがウラヌスを見つめながら固まっていた。
「あ、あのー……」
「本当に行くんですかぁ?」
「行くに決まってるだろう。ここで逃げられたら、調査も何も進展しない」
至極真っ当な言葉に、彼女たちはそうっと洞窟を覗く。
暗闇の中からひゅううう、と風がそよいだ。
揃って肩を震わしたかと思うと、レイは焦って見るからにぎこちない笑いを浮かべる。
「で、でも、洞窟にはいない可能性だってあるかも……」
「君たち、別の何かが潜んでいると思ってるのか?」
その一言に、少女たちの間の雰囲気がまさにこの地に満ちる空気の如く凍りつく。
図星とわかったウラヌスは、元から鋭い目つきを更に吊り上げた。
「君たち、それでもセーラー戦士か。猛獣1匹にそんな調子じゃ、この先プリンセスを護れないぞ!」
叱り飛ばされた少女たちは目を瞑って耐えていたが、すぐに反駁する。
「怖がりすぎるくらいでなきゃ、この世界じゃ生き残れないんですーー!!」
「それにあたしも狩人の勘で感じるんです! あそこに行っちゃダメだって!」
美奈子とまことが必死に訴え、レイも物凄い勢いで頷いている。
いつも気が強くさっきまでも獅子奮迅の戦いぶりを見せていた彼女たちが、珍しくかなりの弱気を見せている。
頼むように見つめられていたウラヌスはやがて、はー、と深いため息をついて頭を掻いた。
「分かったよ、じゃあ君たちは外を調べてくれ。僕はこのまま行かせてもらう」
「「……ありがとうございますっ!!」」
もう感謝してもしきれない、という勢いで3人は頭を下げた。
──
「狩人の勘、か……やはり彼女たち、この世界に馴染みすぎてるな」
エリア4。
洞窟に入って少し歩くと着く、天然の空洞。
外と違ってやや暖かく感じるそこを歩き、ウラヌスは薄暗い闇の中でぼやいていた。
やがて彼女は、1人密室に入っているかのような感覚を覚えるようになる。
そうして立ち止まると、スペースソードを再び手元に出現させ、自身の憂いた顔を刀身に映し出す。
「……何をしたって、僕たちがセーラー戦士という事実からは逃れられないってのに」
ペタ……。
「っ!!」
静かに這い寄る音を、ウラヌスは見逃さなかった。
構えて振り向くと──
小さな白いぶよっとした塊が、ウラヌスの方へ未熟な4本脚で芋虫のように這っていた。
どこにも目はなく、丸い口だけが開いている。
「……ギィギか」
彼女はゆっくりと剣を下げる。
ギィギは、洞窟に棲む吸血性の小型モンスターである。
一般人からすれば十分な脅威だが、鎧を着こんだハンターからすれば対処は決して難しくはない。
「ンギャッ」
それは踏ん張ると口を大きく広げ、歯を剥きだしにしてウラヌスに飛びかかる。
が、彼女は難なくそれを躱す。
「どうやら、洞窟ではまだ被害はマシらしいな」
ギィギは放っておき、ウラヌスは東にあるエリア7へ。
そこは天井も壁も、そして地面さえも氷に閉ざされた空間だった。
幾分外の光を反射するためか、視界は比較的明るい。
氷の下には今は亡き生命たちの骨が埋まり、悠久の時間を思わせる。
ウラヌスは念のため周囲を見渡すが、どこにも生命の気配はない。
ただ、風に反響してフオオォォン、と透き通った環境音が奏でられるだけ。
「……あとは一つか」
南側にあるエリア5の洞窟へ、彼女は何の障害もなくたどり着いた。
そこは今までの洞窟より一段と不気味だった。
何故なら最奥には光の入らない曲り道状の窪みがあり、完全な闇に包まれていたからだ。
「……」
ウラヌスは敢えて、ずかずかと入り込んでいく。
「ワールド・シェイキング!!」
必殺技を発動し、窪みに向けて発射。
金色の光球は奥で爆発し、そこを明るく照らし出した。
が、そこには何もいない。
ただ、静寂を保つのみ。
「あの子たちの心配は、取り越し苦労だったというわけだな」
ウラヌスは、肩の力を抜いてすぐ隣にある出口を目指す。
これで洞窟は一通り見て回った。ベリオロスの姿はもちろん、ペイントボールの臭いもしない。恐らくは外にいると見て間違いはなさそうだった。
そのまま彼女は、ブーツをコツ、コツと鳴らしながら白い光へと一歩、一歩近づいた。
「ギ……ギ…………」
天井から、何かが呻き、軋む音。
振り返ると。
円型に開いた口に無限に列を成した歯が、涎を引いて迫っていた。
「はっ!!」
後方へ跳躍した直後、上から伸びた、長く白いものが、ぐるりと空間を刈り取った。
何も見えぬなか、ぼんやりと浮かび上がる2つの紫色。
「ホォアァァ」
うっすらと見えた像は、遠目ならばベリオロスとそう変わらぬ四肢──翼を兼ねた大きい前肢に小さな後肢を持っていた。
だがその表面に、鱗も、甲殻も、毛すらも存在しない。
ブヨブヨとした白い皮膚が扁平な身体を覆い、翼から伸びた吸盤のようなもので天井に張り付いていた。
首と区別のなくなった壺型の頭には目すら存在せず、代わりに毒々しい紋様が走っていた。先ほどの紫光の正体だ。
「まったく、おぞましいヤツだ……」
全貌を目の当たりにしたウラヌスは、思わず顔を引きつらせる。
毒怪竜ギギネブラ。
それが、いまウラヌスの様子を窺っているモンスターの名である。
「ンォホアアアァァッ」
天井から身を翻すと、白い背とは真逆な、血のように真っ赤なヒダ状の腹が露わになる。
そのまま覆い被さろうとする相手にウラヌスは瞬発的に反応、駆けて背後へとすり抜ける。
ベチャアァッと妙な音を立てて着地する白い異形。
彼女はそれを睨みつつ、ちらりとすぐ手に届く位置にある出口を見つめた。
「生憎だが、今はお前に構ってる暇はないんだ!」
片手でペイントボールをぶつけ、もう片方の手を金色に光らせる。
「ワールド・シェイキング!!」
ペイントボールを投げた勢いで己の身体を回転、そのままの勢いで地に光球を叩きつける。
エネルギーの集合体は氷を割りながら真っすぐ相手へ向かう。
が、ギギネブラはそれをひらりと舞うようにして躱した。
そののっぺらとした身体はウラヌスの真上を通り、反対側へ。
まるで彼女の行き先を予測したかのように出口を塞がれた。
「くっ、こんな時彼女がいれば」
ウラヌスには、波打つ髪の少女がその手に持つ手鏡でこの化け物の弱点を暴き出し、それに従って自分が徹底的に攻撃、そして圧勝する光景がありありと見えた。
こんな時に彼女の存在がちらつくあたり、思ったよりも相方に依存してしまっているのだろう。
やがてウラヌスはそんな自分に苦く笑って、
「……甘えたことを言ってる場合じゃないな」
ギギネブラは、出口を背にして毒液の塊を吐いてくる。
軌道を見切って身体を片寄せると、通り過ぎたところで紫の霧が拡がる。
ウラヌスは魔具スペースソードを召喚、逆手持ちに切り替える。
高周波を発生させ、無防備な頭に斬りつけにかかったが。
その時ギギネブラは脚を持ち上げ、腹の下から小さな靄を吐き出しつつあった。
「っ……」
その動作を見てウラヌスが攻撃を中断して飛びのくと霧が毒怪竜の腹から噴出、一帯の空気を毒に浸らせる。
これをされると、迂闊に近づくことはできない。
「ならばこっちにも考えがある」
ウラヌスは、スペースソードを掲げ赤く光らせる。
「ホアアァァァァッ」
毒の霧が無くなると、ギギネブラはその隙を補うように首を元の数倍に伸ばし、前方を振り払った。
鱗や甲殻がない柔軟性ゆえに繰り出せる攻撃だが、その時セーラー戦士は紺色の襟をはためかせ宙に舞い上がっていた。
「スペースソード・ブラスター!!」
宝剣から飛んだ魔法の斬撃が、化け物の頭にある紫の毒腺を鋭く切り裂く。
「ンボェェアアアァァァ……」
手痛い反撃を貰った竜の身体が突如、黒く変色していく。
「ォアアアアアアアァァァァアアアアアアァァァァッッッ!!!!」
早くも、ギギネブラは逆上した。
荒い息を吐き、前肢で膨らんだ頭を持ち上げ、おぞましい口を剥きだしにして咆える。
洞窟に響き渡る絶叫。
その音量たるや、ウラヌスが屈んで耳を塞ぎ、つららが周囲に落ちてくるほどだった。
そのまま毒怪竜は、毒の混じった白い息を吐きウラヌスに詰め寄って来る。
だが彼我の距離が十分に離れていたため、彼女自身の拘束が解ける方が、一歩早い。
「そう来るだろうと……思っていたよ!」
この飛翔の戦士の脳裏には、咆哮による硬直も計算に入れられていた。
だからこそのこの間合いである。
ギギネブラは距離を縮めると、こちらを圧し潰さんと後肢だけで全身を持ち上げた。
再び露わになった真っ赤な腹を見てもウラヌスは動じず、面積の少ない後方めがけて走り抜ける。
そこから、一瞬の隙をついて彼女は光差す出口へと駆け抜けた。
出し抜かれたことに気づいたギギネブラは、後を追ってくる。
「アアアアァァァァ!」
「まったく、しつこいヤツだ!」
狭い通路を抜けつつあるものの、化け物は暗闇の中から未だ這って来ていた。
ウラヌスは振り返り、舌打ちをしていたが。
途中で、相手の動きが止まる。
「アア、ア、アアァァァ……」
「……?」
ギギネブラは立ち止まったまま、小さく呻いていた。
直後、ウラヌスの方を向いたまま暗黒の中に何故か再び引っ込んでいく。
すぐにそれは闇の中に溶け、何も見えなくなった。
一連の出来事は、ウラヌスにとっては不可解でしかなかった。
いったいなぜ、ギギネブラは獲物を追うのを辞めたのだろう。
いや、自ら退くというよりは何者かに引きずられていったような気がするが──
とにかく、危機は去った。
彼女は道を急ぎ、横に広がる洞窟を屈み気味に駆けていく。
「ホアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!」
突然響いた、二度目の絶叫。
先ほどよりもずっと大きく、恐ろしい咆哮にウラヌスも思わず肩を浮つかせた。
「何なんだ、一体……」
戸惑いつつも、ウラヌスは洞窟を抜けた。
その先は、エリア6。
出た瞬間、白い光が視界を覆った。
暗がりに慣れた目に急な明度の変化はきつく、彼女はごしごしと目をこすった。
先にあるのは、舞台のように盛り上がった氷の平地。
その上で何かが動き回りぶつかり合っていた。
おまけに聞こえてくる人、それも少女らしき高い声。
「……まさか!」
ウラヌスは軽やかに跳躍し氷舞台の上へ。
そこでは、仲間の少女たちと氷牙竜がちょうど睨み合っているところだった。
彼女たちもちらりと視線を向けると、ウラヌスの存在に気づいた。
「ウラヌス!」
「無事だったのね!」
心から嬉しそうにした少女たちに、ウラヌスも口角を上げて答えて輪に入った。
「ああ。君たちも、ベリオロスを見つけてたんだな!」
当のベリオロスは、既に幾分か傷を負っていた。彼は新たな敵が増えたことに、折れた牙の下から苛立たしそうに唸る。
戦闘、再開。
「で、あの中で見たものは!?」
まことは、氷を削りながら駆けるベリオロスの巨躯を躱しつつウラヌスに聞く。
「ギギネブラだ! すぐそこの洞窟に潜んで、こちらをしつこく襲ってきた!」
ウラヌスが事実を伝えると、少女たちは一斉に顔を蒼くした。
「ひぃ〜〜、やっぱ行かなくって良かった〜〜!」
美奈子は、恐怖を誤魔化すようにヘビィボウガンの引き金を弾きまくる。
先にレイが翼の棘を破壊したせいか、振り返ろうとしたベリオロスは滑って隙ができていた。
弾の嵐が、白騎士の背から腰にかけての甲殻を撃ち抜いてゆく。
「いいや、いずれ行くことになるだろう。ここで起こった因果関係の把握のためにもな」
「ええっ、あたしたちそれも狩るの!?」
「おい、銃口をこっちに向けるな!」
美奈子が思わず重弩を構えたまま振り向いたので、ウラヌスは驚いて叫んだ。
一方、レイはまことと共に斬り込んでいたが、あることに気づく。
「そういえばこのベリオロスも、やたらしつこいわね」
「それと、全体的に少し痩せてるようにも見えるな」
ベリオロスは、半分閉じられた瞼をギラギラ光らせ、ひたすら少女たちに食いつこうとする。
どちらかと言えば、その視線は縄張りを守ろうとする騎士というより飢えに満ちた獣に近い。
「やっぱり、餌が少ないから!?」
叫んだ美奈子が放った麻痺弾を、ベリオロスは後方に跳んで回避。
ちょうど背後にあった壁を蹴り、三角跳び。
そのまま勢いをつけ、前脚と一体化した翼を剣のように美奈子めがけ振りかざす。
「うわっとぉっ」
前方に転がってすり抜けた美奈子に代わり、ウラヌスがスペースソードから振り放った衝撃波で反撃。
「はあっ!!」
頭に数度攻撃を喰らい、ベリオロスはいよいよ怒りを顕にした。
「ゴォアアアッッッ!!」
胸一杯に空気を吸い込み、超低温の液体の塊として吐き出す。
凄まじい気流を伴ったそれが目の前の氷に着弾した途端、破片が吹き上がり竜巻を起こした。
「くうっ」
強烈な旋風に、少女たちは目を塞ぐ。
その後ろに跳び上がった氷牙竜は、上手く風を捉えて遥か上空へ。
「もう、あんな上に!」
レイが視界を取り戻して叫んだ時には、既に彼は彼女らにはとても届かない高所の崖近くに羽ばたいていた。
「ヴォオオオオオオッッ!!!!」
もはや、冷静さを失った零下の白騎士は少女たちしか見ていない。
眼下の獲物を捉え、翼を一層大きくはためかせた、
その時だった。
頭上に影がかかる。
ベリオロスは声も出さず、浮力を失って落下した。
正確には、巨大なものに飛びつかれた。
間もなく、少女たちの前に
あまりの重量に氷がひび割れ、ベリオロスの肉体がめり込む。
大地がひっくり返ったような衝撃と地響き。
少女たちの脚が浮き上がり、1人残らず腰から地に落ちる。
「……は?」
ウラヌスでさえ、一瞬目の前の状況を理解できなかった。
だって、あの彼女に似て気高く高潔な印象を与える白騎士の死体の上に──
巨大で歪な、棘の生えた肉の塊が鎮座していたのだから。
凍土のbgm、ベリオロスにもギギネブラにも合う素晴らしい曲なのでまた登場してほしい…。最後に出てきた肉の塊、分かる人はすぐに分かるお思います。実はサブタイと繋がったりしてます。