セーラームーン×モンスターハンター 月の兎は狩人となりて   作:Misma

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少し懐かしい顔ぶれが揃います。


帰るは白閃①

 シナト村は、極東の小さな島国である『シキ国』、その中でも雲海が眼下に見えるほどの高所にある。

 山々の間から吹く乾いた風を受け、石造りの建物の屋根にある風車がゆっくりと回っていた。

 

「はぇー、すっごい高くにあるわねー」

 

 飛行船から下船したうさぎたちがまず目にしたのは、一面中に冴え渡る晴天である。

 足場から少し視線を外せばそこは断崖絶壁、真下は雲に隠れて何も見えなかった。

 絶景、というには恐ろしすぎるものを見たポニーテールの長身の少女、まことはぶるりと肩を震わせた。

 

「あたし、高所恐怖症かも……」

「こんなの誰だって怖いわよ~!」

 

 快活な金髪の少女、美奈子でさえも、抜き足差し足で門を潜った。木柱に括られた布が風にそよいで少女たちを出迎える。

 シナト村は、もはや村と言えるか怪しい規模の小ささだった。目に見える建築物は5、6軒くらいしかなく人々らしき影も10人にも満たないのではないか。

 

 村に入ると、やがて彼らもこちらの存在に気づき始める。

 見る限り、ゆったりとした軽装を着た小さい人たちばかりだった。

 手前にある粗末な木の柵に囲まれた畑で唯一、彼女たちより少し大きい背丈の青年が鍬で畑を耕していた。

 

「た、たのもーーーー!!」

「うさぎちゃん、それ道場破りで言うやつ……」

 

 うさぎが最初に話しかけたが、今までにない静かな雰囲気のあまりか、まことに指摘されるほど変な口調になってしまった。

 

 青年はこちらに気づくとにこやかな人懐っこい笑顔で汗を拭い、鍬を土壌に突き刺した。

 

「貴女たちが件の猟団の御方かい? 話は聞いてるよ」

 

 いつの間にか、2人の子どもが青年の後ろからうさぎたちを覗いていた。 

 大人と同じく長袖で暖かそうな紫の衣を着ているが、男の子は興味津々に目を煌めかせ、女の子は人見知りのようだがはにかんだ顔で出迎えてくれた。

 「こんにちは」と亜美が微笑むと、彼らはこくんと頷いて反応してくれた。

 

「それなら話が早いです! 長老さんがいらっしゃったらご挨拶を……」

 

 レイが交渉を行っている間、うさぎと美奈子は周囲をつぶさに観察する。

 彼らの共通点としては長く尖った耳や4本の手指を持つが、それ以外は人と全く変わらない。

 集まってくる人々の中には、青年と子ども2人以外にはほぼ老人しか見当たらなかった。

 

「長生きで有名な竜人族の人たちの村って聞いてたけど……」

「これが噂に聞く超高齢化社会ってやつ……!」

 

 竜人族の寿命はおよそ300歳と言われるので、彼らの多くは少なくとも200年以上は生きていることになろう。

 少女たちよりずっと背の低い老人たちが歩いてくるが、健脚なようで足取りはきびきびとしている。その中でも、笠を被り長髭を生やした老人が名乗り出た。

 

「若者よ、よくぞ来てくれた。ワシがここの長老じゃ」

 

 その老人もうさぎたちの腰の辺りまでしか身長が無い。少女たちは揃って挨拶をした。

 

「しかし、このシナト村に悪しき風がまた吹いてくるとは。此度は果たして間に合うのかのう……」

「悪しき風とは、ゴア・マガラのことですか?」

 

 亜美の言葉に頷いて応対する長老の顔は、どこかやつれて見えた。

 

「そうじゃよ。この村に伝わる伝承ではそう言うておる。と言っても、今回は人が操る点で厄介なのじゃがな」

「大丈夫です、ご長老。このシナト村は我らの団と筆頭ハンター……そして、この少女たちが護ります」

 

 若々しい、滑らかな声が響いた。それはうさぎたちにも聞き覚えがあった。

 やがて蒼い鎧を着た青年が、肩まである銀髪を山風に靡かせて人々の間から出てきた。

 

「……久しいな。息災にしていたか?」

「筆頭リーダーさん!」

 

 鋭さの宿る眼、きりっとした眉に高い鼻。

 うさぎは、何とも懐かしい顔に嬉々として駆け寄った。

 彼こそ、バルバレギルドの4人の精鋭『筆頭ハンター』の一角。本名はジュリアスと言い、かつて太陽の市場バルバレをセーラー戦士と共に救ったハンターの1人である。

 

「やっぱ、いつ見ても顔が良いんだわぁ……」

「先輩似のまつ毛の形もそのまんまだぁ……」

 

 レイは、リーダーに見惚れる美奈子とまことをつまみ出して遠ざけた。

 

「はいはい、2人はビョーキ再発しないようにね。で、あとのルーキーさんたちはどうしたんですか?」

「ルーキーは別件でギルドに任じられ遠くへ赴いたが、ガンナーとランサーは我らの団ハンターと共に、天空山に向かう妖魔化生物を相手取っている」

「……やっぱり、妖魔がここに迫ってるんですね」

「そう、だからちょうど避難準備を呼びかけたところだったのだ」

 

 筆頭リーダーは、村の奥へと歩みを進めつつ、少女たちへ手招きした。

 

「こっちに来てくれ。君に会いたがっている者がいる」

「あたしたちに、会いたがってる?」

 

 うさぎたちが付いていくと、窯と金床を備えた小屋の近くに、がっしりした体格の男性が座っていた。

 ゴーグル付きの帽子に白い袖無しシャツ、青いズボンに作業工具類を入れたポーチをぶら下げる姿は、彼が職人であることを窺わせた。

 

「お前たちが、団長が言っていた『魔女』……いや、『美少女戦士』か。……一目では、とてもそうは見えないな」

「ほらもう、2人ともそんなだから」

 

 レイがまことと美奈子の背後から呟くと、2人の顔にやっと恥じらいという感情が生まれた。

 一方で、亜美は何かに気づいた様子で話しかけた。

 

「もしかして、あなたが『我らの団』の加工担当さんですか?」

「ああ……そうだ」

 

 頷く男の尖った耳は竜人族の特徴だったが、同じ種族であるはずのシナト村の人々とはまったく印象が違った。

 言葉数はあまりに少なく、表情筋もほぼ動かない。おまけに目元も帽子に隠れて見えないので真意が分からない。

 一瞬、彼とどう話せばよいのかと少女たちは戸惑ってしまった。

 しかし唯一、1人だけは気にすることなく前に出た。桜火竜の防具を着た金髪のツインテールの少女、うさぎである。

 

「よろしくお願いしますー! 団長さんから話だけで聞いてたけど、こうして実際に会えるだなんて!」

「……あぁ。こちらも御伽噺が現実になった気分だ。よろしく」

 

 彼女が迷いなく差し出した手に、加工屋は初めて口角を上げて応えた。

 

「流石はうさぎちゃんねー。物怖じしないというか疑うことを知らないっていうか」

 

 美奈子が感心する一方、ふとうさぎは周りを見渡した。

 

「そういえば、お手伝いの女の子は? いつも一緒にいるって団長さんが言ってた気が」

「……彼女なら、俺のもとを出ていった」

 

 寡黙な男の如何にも訳ありげな物言いに、少女たちはギクッと身体を固まらせた。

 

「あっ、も、もしかして触れちゃいけない話題だったとかっ!?」

「……いいや。自分の工房を持ってみたいと言ったので、1年ほど前から世界中で修行をさせている……。実際、彼女の技術も相当な段階に仕上がっていたからな」

 

 慌てて謝りかけていたうさぎは、その一言でほっと一息をついた。

 

「驚いたよ、てっきり喧嘩別れでもしたのかと……」

「ほんとにうさぎって、神経が図太いわよね~」

「ほんとにレイちゃんって一言多いわよね~!!」

「でも、円満退社ってんなら良かったじゃないの!」

「……言葉の使いどころが違うわよ、美奈子ちゃん」

 

 安堵の勢いで思い思いに言い合う少女たち。それを見た加工屋は彼女たちを連れてきた筆頭リーダーと視線を合わせた。彼もまた、かつての戦友たちを懐かしさと可笑しみの混じった笑みを浮かべて見守っていた。

 

「……団長の言う通り、面白い娘たちだな」

「だろう?」

「……よければ、そちらの武具を点検しようか。このあと、すぐ天空山に向かうだろう」

 

 加工屋が少女たちに提案すると、レイと睨み合っていたうさぎはすぐに喜々として反応した。

 

「あっ、ぜひぜひ! 助かりますー!」

 

 うさぎたちは武具を外し、加工屋に渡して少しの間待つことになった。加工屋は分厚いミトンを手に装着し、金属の部分をトンカチで叩いて音を出し、異常がないか点検し始める。

 作業の間に、少女たちは村人たちが用意してくれた椅子に座って簡単な近況報告をした。

 職人が金床を鳴らす音を聞きながら、青い鎧の青年は少女たちの話に耳を傾けた。

 

「なるほど、温泉のユクモ村に南海のモガ村、そして新しくやって来た君たちの仲間……」

 

 作業も終盤、一通り話を聞き終えた筆頭リーダーは、感慨深げに点検が終わって作業台に置かれた装備を眺めた。

 

「そして、上位ハンターか。ついこの前まで下位のモンスターに苦戦していた君たちが、今ではあんな立派な防具を」

 

 青年の視線は、次に少女たち本人へと向いた。

 

「何よりも、君たち自身が狩人の目になった」

 

 一見厳格にも思える顔つきのなか、蒼い瞳は柔らかい光を湛えてうさぎたちを認めてくれている。

 それを見て、彼女たちは誇らしげに笑った。

 筆頭リーダー自身でさえ、どこか前よりも大人びているようにも感じられた。

 

「よし、補強も終わったそうだぞ」

 

 彼自身がそう言って立ち上がった時には、既に加工屋は最後の防具の作業を終え、工具をポーチにしまいかけていた。

 

「やったぁ! ありがとうございま~す!」

「……少し、待ってくれ」

 

 加工屋は、防具を受け取ろうと駆け寄ったうさぎの前に手を差し出した。

 

「まず……バルバレを魔の手から救ってくれたことに……そして、またこうして来てくれたことに。かなり遅れてしまったが、感謝を伝えたい」

 

 少しの間熟慮するように黙ったあと、彼は顔を上げ、少女たちが身に纏っていた防具を指さした。

 

「……だから、俺もお前たちに貢献したい。素材や代金は結構だから、防具の強化もついでにさせてくれないか? 時間はそれほどかからせないつもりだ」

 

 男は相変わらず表情が薄かったが、口調はとても優しかった。トンカチを握る手は力強く、その意志の強さを示そうとしているかのようである。

 

「分かりました。お願いします!」

「レイちゃんからも、お願いしまーす!」

「あたしも、あたしもー!」

 

 彼の気持ちを受け取って、うさぎたちは元気よく頼むことにした。加工屋も嬉しそうに頷き、防具強化に必要な鉱石『鎧玉』を炉の中に継ぎこみ始めた。

 煙突から煙と共に、金属の灼ける臭いが漂ってくる。

 昇華した気体中に防具を入れることで鎧玉の成分が蒸着し、防具の強度が増す仕組みなのだ。

 加工屋が宣言した通り、防具の強化作業は彼自身の手際の良さもあって本当に30分も経たず完了した。

 

「……終わりだ」

「わあ、すごい……! 完全にピッカピカだわ」

 

 防具の素晴らしい出来栄えに感動しているうさぎたちを他所に、筆頭リーダーは荷車を引いてシナト村の入り口に歩みつつあった。

 

「さて、私もそろそろ戦線に復帰する。天空山のことは任せるとしよう」

「え、もう!?」

 

 再会してから一緒にいた時間は、1時間もなかったのではないか。思わず驚くうさぎに対し、筆頭リーダーは苦笑を浮かべた。

 

「さっき言ったろう。あくまで私は呼びかけに来ただけなのだ。いつまでも3人に戦わせるわけにはいかん」

「ざーんねん、久しぶりに会えたと思ったらまたお別れだなんて」

「どうやら、あたしたちに平穏は中々訪れてくれないようだね」

 

 美奈子が肩を落としたのに対し、かつての恋敵であるまことは皮肉交じりで励ます。

 

「……フッ。君たちを見ていると、今回もどうにかなるんじゃないかという気になるな」

 

 晴天のもと、銀髪の青年は少女たちに呼び掛けた。

 

「バルバレでの我々の出会いは、遂にこの真実にまで引き合わせてくれた。たとえ互いに距離は遠く離れようとも、それぞれに真実を求めようとする意志が、我々をこの山にまで到達させてくれたのだ」

 

 彼は拳を握りしめた。それまでになかった力強い色が瞳に浮かんだ。

 

「だから、今こそ信じよう。我々の絆を」

「ええ!」

 

 うさぎは深く頷いて答え、去ってゆく背へと手を振る。

 

「どうかリーダーさん、お元気でーー!!」

 

 あまりに短かった縁故の一時を惜しみつつ、彼女たちは青年を見送った。

 翻って、少女たちはシナト村の東にある吊り橋へと歩を進める。

 その先は天空山に登る坂道であった。

 

 これから天空山に集まるであろう妖魔化生物の群れはすべて、妖魔ゴア・マガラにエナジーを与えるための生贄。

 一刻も早く妖魔ゴア・マガラを見つけ出し、それを操るデス・バスターズの蛮行を止めるのが彼女らの目的だ。

 

「場合によっては、これが最終決戦かもね」

 

 『城塞遊撃隊』の装備に太刀『灼炎のルーガー』を背負ったレイは鋭く前方を睨み、

 

「一夜漬けの試験よりはらっくしょーよ!」

 

 『ファルメルS』にヘビィボウガン『バイティングブラスト』を背負った美奈子は腰に手を当てて楽観し、

 

「油断はいけないわ。相手は妖魔の親玉、手強いことは確実よ」

 

 『ミツネS』にライトボウガン『狐水銃シズクトキユル』を背負う亜美は冷静な観測をし、

 

「大丈夫さ。何が来たってこれで打ちのめしてやるよ」

 

 『ジンオウS』にハンマー『王牙鎚』を背負うまことは、自身の武器の柄を叩いてみせた。

 

「行きましょう、天空山へ」

 

 『リオハート』に大剣『煌剣リオレウス』を背負ったうさぎは、裾野まで広がる山脈を見上げた。

 

 聳え立つ霊峰は、沈黙して少女たちを出迎えた。

 




人々は、各々の決意を抱いて向かう。
次回、天空山にてセーラー戦士たちが見るものとは。

ps.モンハンNowめちゃくちゃ面白い。ハンターランク12まで行ったけど飛竜を早く狩りたいなぁ。世界観的にはたった75秒でモンスターを狩ったり、一般人には歩けなくなるほど重いはずの防具を着ただけで不思議な力が湧いたり結構ファンタジーなところがあるけれど(笑)
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