セーラームーン×モンスターハンター 月の兎は狩人となりて   作:Misma

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陸の珊瑚に揺蕩う喧騒①(☽)

「ほれ、黒髪の嬢ちゃん。あんたが頼んでたカイザー装備だぜ!」

 

 あちこちから突き出した煙突が蒸気を吐く、新大陸式の工房。

 正面奥では瞼を焼くほど眩しい炉が休む間もなく稼働し、熱気を送ってくる。

 その前で、色黒肌の眼帯をした男……工房の親方が、トンカチを持って指差した先。

 少女たちの間、黒髪のツリ目の少女があっと声を上げ、手前のコンベアの縁に手をかける。

 

 炉を囲むように設置された鉄の細道を、真紅の鎧が5セット流れてきた。

 王冠、胸当て、篭手、スカート、脚部。

 いずれもが高貴な光沢を帯びており、今にも燃え出しそうな色合いを秘めている。

 カイザーβ装備。

 炎王龍テオ・テスカトルの素材から造られる防具である。

 

「まあ綺麗ー! ありがとうございまーす!」

 

 親方の弟子たちがレプリカ人形に防具を着せていく手前、少女レイの紫色の瞳は宝石のように輝いた。

 

「あのー。試着、させて頂いても?」

「ハッハッハッ! 良いぜ。存分に自慢してやりな!!」

 

 彼女のわざわざ顔を近づけての確認に、親方は豪快にOKを出した。

 

「んっじゃーレイちゃん、着替えてきまーす♪」

 

 いつにも増してハイテンションで着替え室に直行してゆくレイと並行し、レプリカ人形も滑車に乗って連れ去られていく。

 それを見守るうさぎたち一行も、自然に視線を引かれていった。

 レイの姿が消えた途端、彼女たちは一点に顔を寄せ合う。

 

「あれ、確か重ね着よね。よく出来てるわ〜」

「ああ。見た目だけ変えるってやつだろ?」

「へんっ。表面だけ着飾っても、中身が駄目じゃー意味ないのよっ!」

「もしかしてうさぎちゃん、対抗しようとしてる……?」

 

 しばらく仲間たちが様々に話し合っていたところ、意外にも早く幕が上がる。

 同時に、レイはその腰まで伸びる黒髪をかきあげた。

 

「みんな見なさいよ、この輝き。まさしくこのクールビューティーなレイちゃんに相応しいって思わなぁい?」

 

 自画自賛でさえ嘘ではないと思わかねないほどの似合い具合だった。

 炎王龍の鱗が封じ込められた全身の赤は、無論彼女の扱う炎を連想させるがそれだけではない。

 性質としては甲冑であるが、同時に絢爛さが目を引く。縦線型の装飾と腰鎖が印象をそうさせるのだろう。

 王冠の載った姿はまさしく戦神を守護に持つ女王に相応しい。

 まことと美奈子が思わず怯み、目を塞いだ。

 

「こ、これが古龍の装備……!」

「眩しい、眩しすぎるわーっ」

「おほほほほ。皆の者、平伏すがいいわぁ〜! おーっほっほっほっほ〜!」

 

 調子に乗りに乗ったレイは、羨望の眼差しを欲しいがままにする。

 己の作品がここまで喜ばれることに感慨を感じたのか、親方は誇らしげに腕を組んでレイと向かい合った。

 

「どうだ。着心地の方は?」

「ええ、もうサイッコーです!」

 

 文句無しに、レイは最高点を告げたが。

 それに対し、本来のプリンセスであるうさぎは如何にも面白くなさそうであった。

 

「けーっ。レイちゃんたら態度でかくなっちゃってさー」

「まあいいじゃない、荒地の戦いのVIPなんだし」

 

 亜美がそう宥めるが、うさぎの不服は止まらない。

 

「はぁー、いいなーいいなー。あたしももっと可愛い装備ほしいなー!」

「ほらほらうさぎちゃん、ここにある装備なんて良いじゃない!! 次はこれ目指しましょーよー」

 

 美奈子がうさぎの肩に腕を回し、コンベア上に造られた机へ半ば無理やり意識を向けさせる。

 そこには、工房で作製可能な武器や防具が書かれているリストが置かれている。

 美奈子がいう『可愛い装備』のスケッチが、ちょうどページの開かれたところに書かれていた。

 頭にはふさふさの装飾に蒼い角、胸当てと腰当ては面積の狭い白生地だけで、腹と脚を露出させた大胆な恰好である。

 

「……なんか水着みたい。こんなんで身体守れんの?」

「そぉ? 動きやすそうであたしなんか似合いそうじゃなーい?」

 

 疑心暗鬼なうさぎの前で、美奈子がセクシーめに身体をくねらせ体躯をアピールする。

 

「嬢ちゃんたちも、見た目変えてぇなら新しい素材を持って来な。重ね着なら少量の素材でも作製出来るぜ」

 

 親方はここぞとばかりに身を乗り出し宣伝してきたが、うさぎは動じないとばかりに手をひらひらと振り、

 

「でも見た目変えるだけでしょ? 生憎、あたしは見た目だけでなく中身も重視する女なのでー……」

「そう思うだろ?」

 

 澄ました顔を作っていたうさぎの視線が、親方の顔に食いつく。

 

「今までの重ね着は単に見た目を変えるだけだったんだが、防御力と素材の性質を一部上乗せできるよう改良したんだ。あのカイザー装備もそうだぜ」

「えっ、そうなの!?」

 

 親方が、レイが今も見せびらかすカイザー装備を親指で示すと、うさぎは素っ頓狂な声を上げた。

 

「はぇー、すっごい……」

「さすが2期団の人だからこそ為せる技ね……」

「はっは、何言ってんでぃ。あんたら6()()()の大活躍があったからこそ、こうやって一念発起したんだぜ」

 

 まじまじと工房の『芸術品』を眺めていたまことと美奈子は、その呼び名に思わず振り向いた。

 亜美は、照れたように俯いてしまう。

 

「そ、その呼び方、なんだか慣れないです……」

「素直に喜べばいいじゃねえか。あの炎王龍相手に大金星をあげたんだ。みんな、心から尊敬してそう呼んでんだぜ」

 

 親方は、眼帯とは反対側の眼を優しく細めて語りかけてくれた。

 書類上では5期団の補欠であるうさぎたちだったが、今やその5期団からも『6期団』と呼ばれる始末だ。

 

「次は陸珊瑚(おかさんご)の台地だろ? 頑張ってどしどし素材をここに注ぎ込んでくれよ」

「はぁーいっ、6期団も頑張りまーすっ!!」

 

 うさぎは手を上げて、元気よく返事する。

 まことは、親方に急接近していた彼女の肩を引き戻した。

 

「うさぎちゃん、上手く乗せられすぎだって……」

 

 さっきまで気取っていたのは何だったのか。あまりもの心変りの早さに、レイも含めた仲間たちは苦笑いを浮かべるのだった。

 

──

 

 少女たちは、細い崖を伝うように歩いていく。

 その横には御付きの猫、ルナ、アルテミスも一緒だ。

 リハビリも終え、彼らもある程度の任務ならば同行できるようになっていた。

 

「ほら、危ないわよアルテミスッ!」

「ああうん、そんな言われなくても分かって、ぎゃ──ッ!!」

 

 白い雄猫の彼はさっそく足場を踏み違え、ぐらついた岩場から落ちかける。

 猫ゆえの反射神経の鋭さで何とか姿勢を立て直したが、落ち着いた頃にはかなり息を荒くしていた。

 

「ほーら、言わんこっちゃない」

 

 足を少しでも踏み外せば奈落の谷底へ真っ逆さまだろう。

 空では雲が早く流れて渦巻いている。

 それが示すように彼女らに横から吹きつける風はかなり強く、翼竜の使用による越境はできない。

 一説にはテオ・テスカトルによる天候変化の余波だと言われている。

 

 ここは大峡谷。

 大蟻塚の荒地の北方に見える、さらなる奥地への侵入を阻む天然の障壁だ。

 左右の稜線は不自然なほど平行線を辿って、巨大な溝を成している。

 案内役を務める青年、調査班リーダーは、草木1つも生えないその不毛の地を感慨の眼差しで見下ろした。

 

「ここに来るのは久しぶりだな」

「確か古龍渡りの調査の時に、超巨大古龍……ゾラ・マグラダオスを迎え撃った場所ですよね」

 

 毛皮を着た浅黒い青年は、亜美に振り向いて「ああ、そうだ」と返す。

 

 古龍渡り。

 

 古龍たちが現大陸から海を渡り、はるばる新大陸に来るという不可思議な現象。

 当現象の原因解明こそ、新大陸古龍調査団の発足理由の一つであった。

 

「そのゾラなんとかが、この亀裂を作ったんですよね。よくそんなの捕獲しようって思ったよなー」

 

 まことは足を一旦止めた。

 峡谷の高さは500m以上はある。

 この山々を己の身1つで破ったというのだから、件の古龍の異常なスケールが窺える。

 

「当時は重要な調査対象だったからな。失敗はしたが、今となっては良い思い出さ」

 

 調査班リーダーの口調には、苦みの一切ない純粋な懐かしさが滲んでいる。

 

「むしろ彼が大地を割ってくれたお陰で我々も奥地へ行けた。感謝すらしてるよ」

 

 青年の足が止まった。

 彼の左前方に、亀裂が大きく縦に入っていた。

 

「そこを抜ければ、陸珊瑚の台地だ」

 

 ひたすら一直線の天然……正確には龍が切り拓いた道を征く。

 亀裂の間に吹き込む向かい風は、ますます強さを増す。

 運動能力の高い美奈子辺りはまだ平気だが、うさぎはひぃひぃと息を切らすようになった。猫たちは今にも飛ばされそうなので、匍匐前進で進むしかない。

 その中でも先頭にいる調査班リーダーは、風に全身で逆らう少女たちに振り向いて微笑した。

 

「こうしてると、君たちもアイツの通ってきた道を辿っていると感じるよ」

「……『青い星』さんのこと、ですか?」

 

 飛んでくる砂から腕で顔を庇い、なんとか背中についてきた美奈子は問う。 

 『青い星』の話は、うさぎたちも何度か聞いていた。

 古龍渡りの謎の解明に大貢献した、英雄とも表現すべき5期団のハンター。

 現大陸の噂では、世界規模の危機を何度も救ったとかなんとか。

 調査班リーダーは前を向いたままゆっくりと頷いた。

 

「アイツは凄かった。古龍との連戦でも大した怪我もなく帰ってきて、まさに俺たち調査団を導く青い星だったよ」

 

 亀裂の向こうからは光がもたらされていた。

 それを眩しそうに見つめる彼の眼差しは、憧れにも近いものを感じさせる。

 しかし、後方にいる亜美やレイの顔は沈んでいる。

 

「その人も、奥地に取り残されてるのよね」

「嵐の夜からは何週間にもなるし……大丈夫かしら」

「必ず生きてる」

 

 先頭でそう断言した調査班リーダーに、うさぎたちは思わず顔を上げた。

 

「そう楽観視できるくらいは、しぶといヤツだ」

 

 彼女たちの風圧に抗い押し出した足が、不意に、ザラザラとした質感の岩を踏んだ。

 これまで踏んできた砂岩とは違った感触である。

 風が弱まる。

 うさぎたちが目を開けると、そこには──

 

 

 海底が広がっていた。

 

 

 うろこ雲の波間から、水のない紺碧の海面に太陽光がぼんやりと揺蕩っている。

 中空に湧き上がる塵のなかを青白く光るクラゲが泳ぎ。

 熱帯魚のように鮮やかな橙色のハチドリが、チチチと囀って目の前を飛ぶ。

 下方では桃色珊瑚の樹が枝を四方へ伸ばし、白に緑に茶色の珊瑚も豊かに森林を成している。

 上方に行けば行くほど色素は薄くなり、青色の薄い珊瑚が段状に積み重なっているのも見えた。

 

「ここ……地上よね?」

 

 レイの問いかけに、少女たちの中で答えられる者はいない。

 事前に名前を聞いてどんな土地かは知っていたはずなのだが。

 遥か遠方には塔のように細い白山がいくつか聳え、ここが辛うじて地上であると知らせる。

 

「感動してるところ悪いが、あそこが『研究基地』だ」

 

 彼女たちの余韻は、苦笑した青年の声にかき消された。

 彼は自分たちのいるところから少し下方を指差す。

 珊瑚でできた天然の段差をいくつか降り、木製の跳ね橋を渡ったところにそれはあった。

 ある地点に錨を降ろし、気球によって斜めに吊り下げられる──などという珍妙な浮き方をした木造船である。

 

「案内はここまでだ。俺はアステラに戻って他地域調査の指揮を執る。引継ぎは頼んだぞ、『6期団』」

 

 調査班リーダーは各々の肩当てを拳の裏で叩いてからその場を後にする。

 

「……いつまでも、見惚れてはいれないわね」

 

 少女たちは前へと向き直り、研究基地を見据えると、再び珊瑚で出来た大地を踏んだ。

 

──

 

「なるほど。貴女たちが『6期団』ネ」

 

 顔の両脇から髪を垂らした妙齢の女性が、本の山に囲まれ座布団に胡座をかいている。

 ゆったりとした着物に蒼色の袴を履き、その右手に抱え込んだ容器からは、くらっとするほど甘ったるいお香の匂いが漂う。

 

「あたし、一応期団長。この研究基地を仕切ってる」

 

 無数に置かれた小さな蝋燭の灯の間で、気だるげな視線と声が交じる。彼女にはおよそ長らしい威厳というものはなかったが、勝手に襟を正されるような只者でない雰囲気を醸し出している。

 

 3期団の住居兼研究施設では、本来船底に当たる部分が壁としての役割を果たしていた。

 期団長と少女たちのいる階は最上層であり、そこから垂れ下がる幕と螺旋階段が施設を縦に貫く。

 天井──正しくは船尾から垂れ下がるシャンデリアに似た装飾が、今も揺れて上窓から入る光に輝いてシャラシャラと軽やかな音を奏でている。

 

「初めて見る景色ばかりで、返事どころじゃない?」

 

 その一言で、うさぎは我に返り背を仰け反らせた。

 

「あっ、すみません!」

「別にいいのヨ。ここの学者なんて、毎日目に穴空くくらい顕微鏡覗いてるから」

 

 彼女は一旦そっぽを向き、煙管を吸った口からぷはぁと息を一つ吐いた。

 

「貴女たちが来たってことは、やっとあのメンドくさい安否確認も終わったってわけネ」

 

 大蟻塚の荒地の解放以後、3期団の安否確認については滞りなく進んだ。

 そもそも以前に3期団は20年以上調査団から孤立していた事例があり、今回の件も彼らにとってはさほど問題にならなかったという。

 その後、数日に渡る補給ルートの再構築や団員の状況確認などを経て今に至る。

 

 しかし他の団員と同じ1人の学者である期団長にとっては、どうもそういった手続きすべてが煩わしいものだったらしい。

 彼女は背後に積み上がった本の山から、すぐさま数枚の書類を指に挟んで取り出した。

 

「事前の依頼通り、ここから観測できた古龍の動向について調べといたワ」

 

 お香の匂いが染み付いた紙を、うさぎたちはまじまじと見つめる。

 

「一つ。今回の翼竜逃走の発端になった嵐の一夜は、鋼龍クシャルダオラがもたらしたもの」

「クシャルダオラ……!」

 

 うさぎたちの間でどよめきが起こった。

 書類のうちの1枚に、鎧のような甲殻を纏い口から突風を吹き出す、四足の龍が描かれている。

 クシャルダオラは、うさぎたちも以前から名を知る古龍の中でも有名な種だ。

 鋼の身体を持ち、征くところに悪天候をもたらす典型的な古龍である。

 

「でもネ、消えたの」

 

 期団長はため息を誤魔化すように煙管をふかした。

 亜美は、紙から視線を持ち上げる。

 

「消えたって……もう、新大陸のどこにもいないってことですか?」

「ええ。嵐のせいで目的地は不明。あともう1頭、幻獣キリンも消えたワ」

「……キリン?」

「あんたが思い浮かべてるのとは違うでしょうね」

 

 怪訝に眉を歪めたうさぎの考えを、レイが見透かす。

 間違っても首が長い方ではない。

 

「キリンは雷を起こす古龍。かつてはこの地に生息してた。でも、それも──」

 

 2枚目の資料には、雷をたてがみに纏う馬と似た神秘的な獣の姿があった。

 それを見つめ、レイは複雑な表情を浮かべた。

 

「古龍のせいで他の生物が姿を消すのはよく聞くけれど、古龍自体が一夜にして複数いなくなるなんて……」

「ソ。かなり、緊急事態」

 

 期団長の声は至って平坦だったが、視線は前を向き壁の向こうを見通すように真っ直ぐだ。

 

「古龍渡りの再来……かもネ」

 

 そう一言だけぼやいたあと、彼女は眼下の螺旋階段に目をやる。

 階段を下った先、船でいえば船首に当たる最下層。

 そこに鎮座するは、気球に足場を取り付けた装置である。嵐で壊されたのだろう、気嚢が破れるなど損傷が酷く、今も数人の研究員が懸命に部品交換を行っている。

 

()()()()も今すぐ調べたいところだけど、翼竜もまだ怖がってるうえにあの連絡機の復旧も手間取っててネ。だから、その間に頼みたいことがあるの」

 

 彼女は懐から白い毛束の入った瓶を摘み出した。透き通った質感を持つ代物で、静電気のせいか一本一本が広がっている。

 

「ええっと……これは?」

「キリンの素材の一部。うちの研究員が原住民たちから貰った」

 

 そこで、何かに気づいた美奈子の瞳が疑問に染まり──やがて輝いた。

 

「だからそれまでの間、貴女たちには周囲の脅威の排除とキリンの痕跡集めをしてもらいたい」

「ええっとぉ、期団長さぁん……」

 

 うさぎたちが頷こうとした時だった。美奈子が上目遣いかつ猫撫で声で期団長へ迫った。

 その両手はどこぞの悪徳商人のように擦り合わされている。

 白猫アルテミスの顔が「うげっ」と歪む。

 

「ど、どうしたの、美奈子ちゃん」

「ほら、気づかない!? 工房で見たヤツよっ!」

「……あ」

 

 うさぎはそこまで言われてやっと気づいた。

 あの白い水着のような装備である。

 確か、キリン装備という名だったか。

 改めて美奈子はにじり寄るようにして話しかけた。

 

「ふふ、そのぉ、痕跡で集めた素材は、調査が終わったらぁ……」

「いいワよ、そちらの好きにして」

「ぃやった──っ!!」

 

 間も置かない了承とほぼ同時に、美奈子の体が飛び上がる。

 研究以外にさしたる興味はないのか、期団長は余所事のように煙管を再び口に咥える。

 

「み、美奈子ちゃん……」

「完全に重ね着目当てだね」

 

 苦笑いするうさぎとまことに構わず、美奈子はヘビィボウガン『バイティングブラスト』片手に拳を振り上げて階段に1番目の足をかける。

 

「ほら6期団、さっさとコ・ウ・ケ・ンしちゃうわよ〜!!」

「……現金なヤツめ」

「……まぁ、モチベーションはないよりあった方が良いでしょ」

 

 アルテミスはげんなりした顔で主人についていき、隣のルナはそれを慰める。

 レイは肩を竦め、亜美もため息を吐きながら着いていった。

 途中で亜美が再び戻り「……それでは」と肩身狭そうに挨拶した後、列に戻った。

 期団長はそれを最後まで、入口から出ていくまでを見送ると。

 

「なるほど、有望な人材ネ」

 

 一言述べてからゆっくり立ち上がって、階下の研究員を覗き込むようにして呼びかけた。

 

「連絡機担当以外は、大陸内外の移動が観測されたモンスターと環境生物のリスト、全部まとめて。少しでも、奥地に繋がる『糸』を探すのヨ」

「承知しました!」

「うんむ、分かった」

「了解じゃよぉ」

 

 研究員たちがみな彼女を見上げて頷き、各々のタイミングで返事をする。

 そのなかにはかなり若い、青髪の鋭い顔立ちをした女性研究員の姿もあった。

 

「はぁ〜。古龍以外にも渡ってきた生物、たくさんいるんだよなぁ……」

 

 若い男の学者が、膨大なリストを抱えて階段を昇りながら溜息をつく。

 彼が書類をよいしょとかけ声をかけて机に置くと、勢いのあまり数枚の書類が散らばる。

 そこに描かれたスケッチ類の中にはふわふわの生き物、巨大な羽虫、そして、黄金に包まれた竜の姿もあった。

 それを見上げた女性研究員は、隣でネジを回していたご高齢の竜人学者に顔を向けた。

 

「連絡機の調節は私にお願いします」

「あらあらぁ、ユイさんは新人さんなのによく働いてくれるわねぇ」

 

 彼女が新人ユイににこやかに笑いかけると、答えるように口端を上げる。

 しかし彼女が持っているのは冷たい色の瞳だった。

 

「いえ、これも仕事ですから」

 




冒頭のレイちゃん、こんな性格だっけ…?と思いそうになるかもですが、むしろ今までが真面目すぎたかも。原作アニメでは多分、これよりもっとはっちゃけてます。
オリジナル設定である重ね着の改良は、古龍の装備をすぐ作れる理由付けみたいなものです。実際にやったら重くなって機動力がた落ちしそうなのは置いておく。
キリン装備は色々と迷いましたが、使命感のようなものを感じたので実装。
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