セーラームーン×モンスターハンター 月の兎は狩人となりて   作:Misma

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月と六花が零す悲哀⑦(☽)

 導きの地における狩場は、荒地や森林から陸珊瑚の台地のような地帯に変わった。 

 この地は新大陸中のあらゆる地形や植生が所狭しと集う異様な環境だが、その中でもここの目立ち方は群を抜く。

 新緑の森の隣に桃色の珊瑚がいきなり鎮座しているのだから、無理もない。

 そして現在の満月昇る珊瑚地帯では、天から、地から、火球が次々に飛び出していた。

 

 金火竜と、途中から加わった番の銀火竜によるものである。

 

 珊瑚林すべて焼き尽くさんばかりに降り注ぐ灼熱の雨を、ハンターであるうさぎは何とか走ってやり過ごす。

 しかしそれにも限度がある。枝葉生い茂る森と比べて開けた珊瑚礁は、逃げ隠れるのが難しい。

 紅色の鮮やかな地帯を抜けると、縦に長く白い珊瑚が聳える谷に入る。

 そして斜面状になった坂を登っていたところで遂に、行き止まりが来てしまった。

 火竜の番はますます血気盛んに、うさぎを包囲しようとする。

 うさぎは振り向くと編纂者から渡された信号弾をスリンガーにセット、天に向けてレバーを引いた。

 天地を暴れ回る2頭の間を、赤い煙の尾を引いて光が立ち昇っていく。

 

「お願い……っ!」

 

 彼らはこれまで、金火竜が先導する形でうさぎを何処までも執拗に追ってきた。このままキャンプに帰ると、ハンターや編纂者をも危険に巻き込む可能性があった。

 だからこそ、今ちょうどが信号弾の出番であることには間違いなかった。

 しかしそれでも、助けが来るまではうさぎ1人で持ちこたえなくてはならない。

 

 金火竜が、口内に蒼い炎を溜める。

 反転した少女は劫炎を掻い潜り、金髪のツインテールを弧状に舞わせ、頭上に被さった金火竜の翼へ、振った大剣を大地砕く勢いで叩きつけた。

 翼膜の一部に傷がつくが、女王は怯まない。

 そこへ、銀火竜が中空から火炎放射を振り回す。

 

「くぅっ……」

 

 直撃は避けるも、余波だけで鎧越しに皮膚が焼けそうなほど熱い。

 間髪入れず、金火竜からの突進が来る。

 大剣を盾にするが、全身を使った膂力により相当の距離を押しに押された。

 踵が虚しくずり下がり、背後に棘山の如き珊瑚礁がじりじりと迫ってくる。

 うさぎは何とか斜めに力を受け流し、その勢いで金火竜を珊瑚礁へ突っ込ませる。

 

 無論、首を振った陸の女王の身に傷は無い。その遥か上空、銀に光る空の王が控えてこちらを見下ろしていた。

 彼は翼を広げ、己が身を眩く滾らせて天高く咆えた。

 金火竜と同じ『劫炎状態』である。

 うさぎは息を吞み、銀火竜へと視線を移した。

 

 次も銀火竜が火球狙撃で初手を打つ。

 しかもそれは、金火竜のそれと遜色ない広範囲で爆発する。

 彼女が爆圧で煽られると、その隙を狙うように弧を描きつつ急降下、鋼鉄をも砕く毒爪が振りかざされた。

 

 姿勢を崩しかけていた彼女が出来ることは限られた。

 再び大剣を盾にして掴ませる形で防御すると、銀火竜は片脚で大剣を掴んだまま容赦なく灼熱の蒼火を送る。

 度重なる縦横の圧力で、蒼火竜の鱗からできた大剣の表面が弾け飛ぶ。

 それだけでも、これまで狩ってきた竜種と目の前の彼らの間にある決定的な差は明らかであった。

 未だ砕けない獲物にやきもきする銀火竜の横から、金火竜が突っ込んでくる。

 銀火竜は驚いたように大剣から爪を離し、低空へと飛びのいた。

 

「そこよっ……」

 

 うさぎはがくついた大剣の合間からスリンガーを突き出し、ロープに接続されたクローを射出、本物の銀の如く輝く頭の甲殻に引っ掛けた。

 突進の勢いのまま虚空に嚙みついた金火竜の視線が、空を滑った彼女へ引っ張られた。

 今や、うさぎは銀火竜の領域に足を踏み入れていた。

 

 銀火竜は、なぜか常に金火竜から一定の距離をとって後方に陣取っていた。

 理由はどうあれ、この状況では目標である金火竜に近付くことは難しい。

 だからこそ、銀火竜への対処をどうしても行う必要があった。

 

 戸惑う銀火竜の頭にしがみつくうさぎがスリンガーを構える。

 弦を引っ張る形で固定部装置に装着されているのは、赤く光るコケ。

 陸珊瑚の台地特有の植物、ヒカリゴケだ。

 うさぎは一度、金火竜との位置関係を横目で確認する。

 

「あなたはできる限り巻き込みたくないけど……ごめんっ」

 

 謝罪の言葉を叫びながら、銀火竜の眼に向けてヒカリゴケを発射する。

 彼は突然の衝撃と視界の攪乱により墜落。

 巨体ごと、地上にいた金火竜に突っ込んだ。

 

「グァォッ!?」

 

 鈍く、重い音が響いた。

 発射時の反作用でうさぎは銀火竜から離脱、地上に再び降り立った。

 火竜の番が共に倒れて呻くのを見て、彼女は表情を引き締めた。

 

「……いま、終わらせるよ。貴女にかけてしまった呪いを」

 

 少女は走り出し、白い珊瑚の坂を滑り降りる。

 銀火竜は無視。狙うは金火竜の頸、一点のみ。

 

 ある所で踏み切って跳んだ時、夜空では満月が昇りきっていた。

 その下に倒れる金の女王を見つめ、大剣を構えたうさぎは、

 

「何もかも勝手で、ごめん」

 

 そう呟いて、白刃を下に向けた。

 倒れる彼女へ、重力に任せ切った巨刃が落ちた。

 

 

 金属が当たり擦れる音が鳴った。

 

 

 果たして、うさぎの身体が地上に届くことはなかった。

 

 金火竜が倒れた状態から首を伸ばし、大剣に直接噛みついたからだ。

 

 脚を起こして起き上がると、女王はその大剣を咥えたままぶん回し、遠心力でうさぎを突き放す。

 半ば放り投げられた形で背後の白珊瑚の壁に強く激突した彼女は、力なくその場に横たわる。

 

 金火竜は、牙の間に挟まるそれを憎悪の視線と共に噛み締め──

 噛み砕いた。

 たった一発の力を与えただけで、煌剣リオレウスはもろくも金属と蒼い鱗の塊へと崩れ去った。

 

「……ぁ」

 

 倒れるうさぎは額から血を流し、何も言えず虚しく口を動かすだけだった。

 しかもそこに、銀火竜がよろめきながらも立ち上がる。

 もはや少女の運命は決したようなものだった。

 

 次に金火竜が見たのは、大剣の持ち主であるうさぎ──

 ではなく、銀火竜。

 

 彼女は突如振り返りざま、銀火竜の頭を振り回した尻尾で再び打ち据えた。

 銀火竜の巨体がひっくり返り、うさぎとは反対側にある珊瑚の壁に激突する。

 崩れる陸珊瑚の破片の中で身体を持ち上げようとする彼に、金火竜が走り寄った。

 

 うさぎは、絶句した。

 

 火竜の番といえば必ず助け合うことが常識であった。

 相方に傷がつけば駆けつけ、敵があれば共闘し、瀕死となれば隣で見守る。

 しかし今、目の前に広がる光景は。

 少女は眼を見開いたまま首を振って、震え上がる口を押えた。

 

 金火竜が、銀火竜を喰っている。

 

 劫炎を纏った牙で無理やり銀翼を引きちぎり、剛爪で胸を深く切り裂いた。

 銀火竜は抵抗しようと脚を暴れさせるが、強大な脚力で無理やり抑えつけられる。

 次に口を開けて光らせたが、そこへ翻った尻尾の棘が直撃。

 口内から脳天へ一直線に貫かれた彼は、そのまま黙って餌食となった。

 

 うさぎの眼からは涙すら出なかった。

 魔法を使える彼女にさえ、どこの誰がこんな皮肉を与えてきたのか見当もつかなかった。

 暫く、月下に咀嚼音が鳴る。

 月は、相変わらず綺麗な形で柔らかな光を送っていた。

 少女の重くなった瞼は今にも、視界を保つことを諦め閉じ切ろうとした。

 

 その時、黒いものが近くの地面に、轟音を立てて突き刺さる。

 

 見るとそれは、大剣であった。

 大きく、漆黒の、斧のような。

 白風景の中にあって明らかな異物感を放つ、鱗の塊であった。

 

 見上げると、崖の上にハンターの姿があった。

 編纂者とオトモに支えられて苦しそうに息を切らす、インナー姿の人。隣の2人の表情には何処か躊躇いが見えるが何も言わない。

 包帯が巻かれた指が、痙攣しながらもうさぎへ向く。

 

「生きたければ……それを、手に」

 

 うさぎは未だ、ぼんやりとした眼でその妙な大剣を見つめていた。

 しかし次になって、彼女の瞳がはっきりと意識の光を取り戻し始めた。

 番だったものの延髄を飲み込んだ金火竜の視線が、確かに崖の上の人々を捉えたからだ。

 

 うさぎは藻掻くようにして、蒼い鱗と金属の破片を見つめた。

 長く使っていた煌剣リオレウスは、完全に真っ二つにされた。

 もはや武器としては使いものにならない。

 

 少女は少しずつ、片腕を使って自身を怪しげな黒剣へと手繰り寄せた。

 

「この世界との、戦いを……終わらせる」

 

 少しでも早くと自身を急かして、震える右手を宙にある柄に向かって伸ばす。

 

「竜たちと、もう、戦わなくって、済む、ように……!」

 

 片脚で立ち上がって伸ばした手が、確かに柄の先を掴んだ。

 

「!?」

 

 掴み取った瞬間、筆舌に尽くし難い鼓動のような感覚が、少女の身体を突き抜けた。

 希望を崩す絶望。守護を破る侵入。秩序に唾を吐く不秩序。神聖を嘲笑う邪悪。

 何かが呼びかけてくるような、何か恐ろしいものと共鳴するような。

 

「誰……ッ」

 

 うさぎの意識は赤く、黒く、塗りつぶされた。

 しばし、瞳が濁って電源が落とされたように項垂れた。

 調査団の2人と1匹は、固唾を呑んで見守った。

 

 首が、再び上がる。

 瞳の焦点は何処にも合っていない。

 まるで、ここではない所を見ているかのようだった。

 

「……ァ、ァあア……」

 

 腕が震えている。脚が震えている。

 口も舌も震えて、息が次第に荒くなって。

 

「……ァァァァアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」

 

 金火竜へ、それは唸った。

 地面が蹴られ数秒後。

 赤黒い雷の一閃と共に、翼爪が吹っ飛んだ。

 大重量の厚鱗の塊が風を切り、次々に金鱗を捩じ切り、叩き割り、圧潰する。

 

「グゥオオオオオォォォォォォォッッッッ!?」

 

 奇襲を防げなかった女王は、初めて悲鳴を上げた。

 

「あ、相棒。本当に、彼女は」

「……戦が、口を開けようとしている」

 

 編纂者の恐怖と戸惑いを同時に滲ませた顔に、ハンターは頷いて短く答えた。

 その額に巻かれた間から覗く瞳は、涙を撒き散らすうさぎのそれとは真反対に深く、突き刺すような光を帯びていた。

 

 もはや、あの無垢の名残たる肩の鱗を見ても少女の瞳は微動だにせず。

 人形のように目を見開いたまま、ここにはいない何かを恐れ、逃げ惑い、泣き叫ぶまま。

 白く細い腕で振り上げられた漆黒の大剣が、飛竜の肩から噴く血を啜った。

 

「いヤアア゙ァッッッ来ナイで! 来ないデェッ!!」

 

 発狂寸前の感情に任せた絶叫は接近を拒否するも、その手足は金火竜に向かってひた進み彼女の血を求める。

 言葉に伴うべき感情と実際にする行為がまるで一致しない。さもその手に持つ大剣が、持ち主を2つに分離してしまったようだった。

 

「まもちゃんッ、ちびうさッ、なるちャんっ」

 

 鮮血が飛ぶ満月の下。

 月野うさぎは、狩人となりて。

 竜を剣で狩る。

 

「れいちゃんッ、あみチゃっ」

 

 鉄よりも硬かった皮膚に、刃が通る。

 鈍い光を放つ刃が尻尾を突き通り、骨までも完全に寸断する。

 撃たれた劫炎を裂いて横薙ぎに円弧を描いた刃が、一発で腱を断ち切り大地に跪かせる。

 

「まこチャンっ、みなこチゃんッ」

 

 枯れ果てた声に、血の混じった涙。

 仲間を呼ぶ言葉に、少女特有の金属を擦ったような悲鳴が混じる。

 今にも消えそうなほど細い手が、飛竜の頸と頭へ、握る巨塊をひたすら叩きつける。

 

「誰かッ、タスけ、たすケ、タスけ、たすけェっ」

 

 溜めや距離感などまるで意識せず。

 泣き、呻き、叫び、それらを繰り返す。

 鱗を、皮膚を、骨を、脳味噌を、潰し続ける。

 

 いつの間にか、狩りは終わっていた。

 

 狩人は息絶えた金火竜を振り返ることもなく、屍肉と血溜まりの中から這い出す。

 強迫的感情に囚われ光を失った瞳が、何かを探し続ける。

 振り下ろされた大剣が、威圧するように重く低い金属音を辺りに響かせた。

 

「いる……マダ、何処かに」

 

 亡霊のようによたよたと歩く血塗れの少女は、上方へ意識を向けた。

 珊瑚の崖に生えるツタを登ると、木の枝を寄せ集めたお椀型の物体があった。

 その中心部に、4つの真っ白な竜卵が鎮座していた。

 

「いた」

 

 涙と共に、震える口角が上がった。

 喩えるなら、長く暗闇の迷路を彷徨った末に一筋の光を見つけた子ども。

 いまの彼女は、まさにそれだった。

 

「やっと、これで、戻れ」

 

 一歩、一歩、近づく。

 目は据わっていた。

 狩人はよろよろと卵に近づき、得物を振り上げようとした。

 

「もういい」

 

 その腕を、片手で押えた者がいた。

 新大陸古龍調査団5期団所属『青い星』である。

 途端に、少女の瞳に蒼い光が戻った。

 

「え……」

 

 うさぎは呆然と目の前にある竜卵を、そしてそれに刃を振りかざそうとする血塗れの手と腕を見つめた。

 彼女は一瞬で状況を理解し、大剣を降ろし、青ざめてその場に崩れ落ちた。

 そして冷たくなった自身の顔を、赤い指で何度もまさぐった。

 

「あ、あたし、な……何を……何で、あ、あんな」

「すまなかった。すべて私のせいだ。もう、次からさせない」

 

 ハンターは彼女から大剣を取って、前へ進んだ。

 うさぎはその場から立てないまま、目の前で卵がすべて黒い刃に薙がれるのを見た。

 

──

 

「……」

 

 アステラへの帰りは、青い星と足に掴まるオトモアイルーが先導してくれた。

 うさぎは翼竜に揺られながら物思いに耽っていた。

 

「もうすぐ、アステラに着きますね。調査団の人たちが上手く渡り合ってくれればいいのですが……」

「あれ、何なんだったんですか」

 

 うさぎは特に念入りに包帯をした腕を見つめながら、ふと聞いた。

 

 あの後、彼女は気絶したことでキャンプへ運ばれ、両腕の筋繊維が破断していたことが分かった。

 即座に編纂者たちは持参した秘薬や回復薬で身体の修復をしてくれ、現在では普通に動けるほどに戻っていた。

 しかし、彼女の心には未だ重いものがのしかかったままだ。気絶のせいで聞くタイミングを逃したのも影響していた。

 

「貴女の身体自身の防衛反応、かと思われます」

 

 暫くして、編纂者が青い星の代わりに迷うような表情ながら答えた。

 

「あの剣から伝わる気配に本能が差し迫った生命の危機を感じ、普段掛けられている筋肉のリミッターが外れた。科学的に解釈すればそうなります」

「その、気配って……」

 

 うさぎが突っ込むが、編纂者は語りたがらない。

 正確には語りたくても語れない、といった風の反応だった。

 彼女は辛そうに眉を歪めて俯き、

 

「すみません。貴女にとって、きっととても重要なことなのに……」

「いえ、大丈夫です。たとえあたしが化け物になっても、救いたいものを救えれば」

 

 謝罪に対し、うさぎの答えは存外に明るかった。

 編纂者ははっとして顔を上げた。

 

「もうこれ以上関係ない命を犠牲にしなくて済むなら。そちらの世界を巻き込まない、あたしたちだけの戦いになってくれたなら……それで、いいんです」

「うさぎさん……」

 

 その時、一行は雲を超えて古代樹の森に入った。

 先を行くハンターが眉を顰め、鼻を摘んだ。

 少し遅れて、うさぎと編纂者にも腐臭が襲い掛かった。

 

「な、何これ!? 吐きそう……」

「これは……肉が腐る臭い。しかもこの規模、数体どころじゃありませんよ!」

 

 直後、眼下に赤黒い海が広がった。

 

 目玉を骸骨から啄むニクイドリ。

 膨れた腹に針を注入して卵を産み付けるランゴスタ。

 余った脳味噌を取り合うジャグラス。

 千切れた上半身を焼いて溶かし、嚙み砕くアンジャナフ。

 

 今の古代樹の森は、モンスターたちにとって最高の餌場であった。

 そして、彼らが貪る餌は。

 

「ぇ……」

 

 うさぎの瞳から、残っていた生気が抜けた。

 

「どうなって、るの」

 

 愕然とした顔は、青い星と編纂者も同じだった。

 それ以上景色を見ないようにして、アステラ3階に直結する翼竜の発着場へ赴く。

 足場に着陸するが、アステラを占拠していたシュレイド軍は今や夢のように消え去っていた。

 

 仲間たちは。

 調査団は。

 東西シュレイド軍は。

 そして、魔女は。

 

「うさぎちゃん」

 

 送り出した者たちを探す彼女の前に、足音が鳴った。

 うさぎが、その聞き覚えのある音を聞き逃すわけはなかった。

 奥の通路を見ると、歩いてくる色鮮やかな仲間たちが真っ先に視界に入った。

 

「ごめん、うさぎ」 

 

 本来なら喜ぶべき再会の場に笑顔はなく、暗い顔だけがある。

 仲間の1人であるレイが、下を向いたまま唇を震わせる。

 

「あたしたちは……貴女になれなかったッ」

 

 途中から耐え切れなくなったのか、謝罪は嗚咽に取って代わった。

 空は行った時と変わらず、綺麗に青く澄んでいた。




次話で、4編最終話となります。ご期待ください。
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