セーラームーン×モンスターハンター 月の兎は狩人となりて   作:Misma

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あけまして、おめでとうございます。
今年も執筆を頑張っていきます。


夜に燃える刃、朝に燃える陽③

 ディノバルドが倒れてからしばらくして、伴侶に近づこうとしたリオレイアが倒れた。

 女王の息は既に浅い。胸や腹の辺りにひどい痣が出来ていた。

 セーラームーンは、急いでリオレイアの元へと駆け寄っていく。

 

「セーラームーン、離れて!」

 

 ヴィーナスが叫んだが、セーラームーンは言うことを聞かずリオレイアの頭へと駆け寄った。

 リオレウスはよろめいて立ち上がるとリオレイアを気遣うように鼻同士を近づけ、擦りつけながら小さく長く鳴いた。

 セーラームーンたちのことなど眼中になく、ただ目の前の相手だけを見ている。

 

「リオレウスと一緒に叩きつけられたとき、内臓をやられたんでしょうね」

 

 亜美が言うと、戦士たちは痛ましい視線をリオレイアに向けた。

 彼女はしばらくリオレウスを見つめて首を持ち上げていたが、次第に目の光が消えていく。

 やがて首が力を失い、地に落ちた。

 あまりに呆気ないほどの幕切れ。

 

「嘘……でしょ……さっきまであんなに……」

 

 セーラームーンは言葉もそぞろにして立ち尽くす。

 やがてリオレウスは目を細めるとリオレイアから顔を上げた。

 セーラームーンには目も暮れず、彼は卵の方に視線を向けた。

 息を荒くして脚を引きずりながら、リオレウスは卵へと近づいていく。

 

 彼は楕円形の命の元にたどり着くと、それらを護るように覆い被さった。

 その下から紅い液体が流れ落ち、地面に溜まっていく。

 セーラームーンはそれを見た途端、耐えきれなくなりリオレウスの元に走っていった。

 

 彼女はわなわなと震える手でリオレウスの首を触る。

 生気を失った体組織は冷たくなり、今まさにただの物体になろうとしている。

 マーキュリーが、唇をきつく結んで首を振った。

 

「セーラームーン……残念だけど、彼は」

 

「だめよ!!死んだりなんかしたらだめ!!あなたたちにはまだ大切なものが残ってるじゃない!!」

 

 耳の近くで大声で呼びかけるが、リオレウスは何の反応も示さない。ただ、今にも消えそうなか細い息を吸い、吐くだけだった。

 本来であれば、死んでもおかしくない暴挙であろう。だが彼には、頭を持ち上げる力すら残されてはいなかった。

 

「あたしを倒そうとしてた元気はどこ行ったのよ!お願い、何でもいいから目を開けて!」

 

 セーラームーンは、彼の僅かに開かれた青い深海のような瞳を見つめながら訴える。

 彼女の拳が、虚しくリオレウスの鱗を叩く。

 しばらく頭を押し付けたあと、音がしたのでふと見ると、その目は完全に閉じられていた。

 まるで、眠りについたように安らかな表情だった。

 彼女の瞳から一滴の涙が零れ落ち、コンパクトを濡らした。

 胸元から、眩い光が放たれる。

 目に見えないエネルギーが押し寄せ、セーラームーンの金髪が後ろになびいた。

 

「あ……ああっ……」

 

 セーラームーンは胸を強く押さえつけるが、輝きはより一層増していく。

 マハイは目を片腕で塞ぎ、初めて見るその不可思議な光に目を奪われる。

 

「なんだ、あれは!」

「幻の銀水晶……うさぎちゃんに宿る、無限の力を秘めた宝石です!あれは、うさぎちゃんの感情や強い願いに反応してるんです」

 

 マーキュリーが答えると、マハイは怪訝な顔をした。

 

「無限の力?」

「文字通りの意味よ!あの宝石のパワーがあれば、リオレイアもディノバルドも生き返らせることが出来る!」

 

 マーズの言葉に、彼は信じられないように目を瞬かせた。だが、彼女たちの瞳はその言葉が現実であると物語っていた。

 ジュピターが、前に進みながらセーラームーンへと手を伸ばそうとする。

 

「ダメだ!あの暴走した状態で命を蘇らせるなんてことしたら、うさぎちゃんは……!」

 

 セーラー戦士たちは何とか近寄ろうとするが、凄まじいエネルギーにより後ろにずり下がるをえない。

 セーラームーン自身もどうにか止めようと目を閉じて祈るが、もがけばもがくほど光は強くなっていく。

 そんな中、彼女の肩に手を置いた人物がいた。

 タキシード仮面だ。

 だが、今はアイマスクもハットも吹き飛び、地場衛としての素顔を晒している。

 

「うさこは、本当はあの生き物たちを救いたいんだな」

「まもちゃん……」

 

 本来の愛称で呼び合ったあと、彼らは真っ直ぐ見つめ合う。

 

「なら、なんでその願いを止めようとする?」

 

 彼の問いかけ方はあくまで穏やかで、ただ真摯に彼女の想いを聞こうとしているようだった。

 

「ハンターって仕事、あたしは最初はただただ本当に怖かった」

 

 セーラームーンはうつむき、独白した。

 

「戦士の力を使って何の罪もない生き物を傷つけることなんて、絶対に出来ないしやりたくないって思ってた」

 

 彼女の瞳には透明な膜が張っている一方で、その奥には強い光が宿っていた。

 

「でもこれが、この子たちと一緒の世界で生きることなんだって、そうしなきゃ生きていけないんだって、あのお爺さんやココット村の人たち、そして──他でもないあの子たちから教えてもらったから」

 

 セーラームーンは、目を細めて目の前にいるリオレウスを見つめた。

 

「だから、この世界の在り方を──生命たちの生き方を、この銀水晶の力で歪めるようなことはしたくないの」

「そうか」

 

 恋人は優しい声で答え、コンパクトに添えられている彼女の手に自身のそれを重ね合わせた。

 

「わかった。なら、うさこは安心して力を止めることに集中してくれ」

 

 それを聞き、青い宝石のような瞳が歪み、潤んだ。

 少女は目をそっと閉じ、震える呼吸を統一した。

 

「そう、ゆっくりと鎮めて」

 

 銀水晶の輝きが、次第に弱まっていく。

 やがてエネルギーの流れも止み、傾いた穏やかな月光が巣の中を再び照らした。

 セーラー戦士たちの緊張は一気にほどけ、彼女たちは一斉に胸を撫でおろす。

 そんな中、こちらに駆け寄って来る小さな少女の姿があった。

 

「セーラームーン!終わったのね!」

 

 ちびムーンがルナとアルテミスを連れ、うさぎの胸に飛び込んできた。

 

「ええ。ルナ、アルテミス、ちびムーンを見てくれててありがとう」

 

 安堵した顔の猫たちに礼を言いながら、セーラームーンは抱きしめたちびムーンのピンクの髪を撫でる。

 

「正直に言っちゃうとね、あたし、再会したときは間違いなく嬉しかったけど、貴女がこれを持ってるのを見たときはちょっと怖かった」

 

 彼女はセーラームーンに、握りしめていた焼け爛れた鉄のかけらを渡した。

 

「でもね、怪物たちに立ち向かうときの瞳を見て分かった。やっぱり剣を持ってても、うさぎはうさぎなんだって。完全にまもちゃんの言う通りだった」

 

 セーラームーンが当の本人を見やると、彼は少し顔を赤らめて横を向き「そりゃあ……そうに決まってるだろ?」と呟いた。

 思わずセーラームーンの表情が緩み、それに伴って一滴の雫が目端に浮かんだ。

 

「ありがとう、2人とも。あっちにいた時から、ずっとあたしを信じてくれてたのね」

「お疲れ様、セーラームーン……うさぎ」

 

 ちびムーンの朗らかな笑顔に、セーラームーンは涙を滲ませて彼女と抱き合い、その暖かさに自らの身体を沈ませた。

 

「おい。リオレウスにまだ息があるぞ」

 

 リオレウスの口元に傍耳を立てていたマハイが言った。

 セーラームーンが、弾かれるように顔を上げた。

 

「今回の件で飛竜たちの狩猟依頼は取り消されているが、どうする」

 

 そう言ったあと、彼は「もちろん、最終的に決めるのは君たちだが」と付け加えた。

 仲間たちは、じっとセーラームーンがどう出るか見守っている。

 じっと考えたあと、彼女は愛しき人、そして仲間たちの顔を決意した表情で見回した。

 

「あたし、リオレウスを治すことにする。彼は本来、ここに生きてるはずの命だったと思うから。みんなはどう?」

「どうって、あたしたちもやるに決まってんじゃない!」

 

 ヴィーナスが真っ先に言うと、ちびムーンを含んだ他の戦士たちも口元を緩ませて互いに顔を見合わせ、頷いた。

 

「リオレウス、か……」

 

 タキシード仮面はアイマスクとハットを付け直しながら、その竜の名を小さく呟いた。

 

「ここまで私を導いてくれてありがとう」

 

 彼がしゃがみこんで直接リオレウスの首元に触れると、穏やかな光がぽわん、と手から浮かぶ。

 

「さあ、セーラームーン、ちびムーン。君たちも」

 

 セーラームーンとちびムーンが、その手にロッドを構える。

 目を閉じて彼女たちが祈ると、マゼンタの光が優しくリオレウスに届く。

 

「あたしたちも、力を貸すわ」

 

 セーラー戦士たちが、リオレウスと卵を囲むようにセーラームーンたちの外に並び、手を繋いだ。

 彼女たちの身体からオーラが上がり、より光の暖かさが増す。

 マハイはその輪から離れ、じっと成り行きを見守った。

 

 卵を護るリオレウスは虹色の光に包まれ、あっという間に傷が癒されていく。

 血溜まりが幻のように消え去っていく。

 光が止んだ時、彼はすっかり無傷の状態で安らかに寝息を立てていた。

 マハイは表情に驚きを隠せなかった。

 

「……こいつぁすごいな。君たちは、ハンターに出来ないことを軽々と成し遂げてみせる」

「それはこっちの台詞よ。貴方たちはあたしたちには考えられないくらい、たくさんのいろんな命と向き合ってる」

「だが、お前はそれを成し遂げたんだ。この一夜で」

 

 その一言を聞いて、セーラームーンは何かを答えようとしたが、次第にこみ上げてきたものを呑み込み、赤くした顔で深く頷くので精一杯だった。

 

「もう、褒められてんだから素直に喜びなさいよ」

 

 マーズが隣に立ち、涙を拭ってやる。

 

「だって……だってぇ……」

 

 周囲が彼女を見守る視線は、どこまでも優しい。

 仲間たちはやがて、緊張が解けて泣き崩れるセーラームーンを支えてやるはめになった。

 

「で、落ち着いたところでちょっと質問なんだが──」

「……えっ?」

 

 マハイは、タキシード仮面とちびムーンを交互に見やった。

 

「その男前と女の子は、君にとっての一体何だ?大切な人なのは何となくで分かるが」

「えっ……あ、うーん……」

 

 セーラームーンは言い淀み、マーズとマーキュリーの方に振り向く。

 二人はどう言ったものかと迷い、ジュピターとヴィーナスもマーキュリーから質問の内容を囁かれると、露骨に苦々しい表情をする。

 セーラームーンは紅くなって頭を掻きながら、タキシード仮面をちらりと見た。

 

「えぇーっと、このとーってもかっこいい人は確かにあたしの彼氏だけど、厳密に言うと許嫁と言いますか何といいますかぁ……あ、でもそうなるとちびうさは……」

「未来の夫と娘です、と伝えてくれ。彼に嘘はつきたくない」

 

 そうきっぱりと笑顔で言い放ったタキシード仮面に、セーラームーンとちびムーンはぎょっとした表情をする。

 その様子を見て、マハイは何かを感じ取ったらしく苦笑して手を振った。

 

「……また後で聞く。さあ、剥ぎ取りの時間にしよう」

 

 きょとんとしているタキシード仮面をよそに、セーラームーンたちはディノバルドへと歩を進めた。

 ふとセーラームーンは足を止め、深い眠りにつくリオレウスの横顔に額をつけるとじっと目を閉じた。

 

「リオレウス、一人にしてごめんね。どうか、これからはお父さんの貴方がこの子たちを守ってあげて」

 

 その後、狩人たちはディノバルドとリオレイアから敬意を込めて剥ぎ取りを行った。

 狩猟されたモンスターはハンターズギルドが一旦回収し、ハンターにクエスト報酬として分解した素材を追加で渡したのち、残った部分を地に帰して自然に還元する。

 ギルドに目的達成を報告する際、うさぎたちはある要求をした。

 

 リオレイアもディノバルドも、あの巣の場所で元通りに地に帰してほしい、と。

 




第一話からここまでシリアスな展開が続きましたが、ここの辺りから話の軸、テーマはブレさせないこと大前提で、楽しい明るめのお話にしていきたいです。(これからの作者のやる気と実力と努力によりますが)
うさぎちゃんが大切な仲間や恋人と出会えたので、本編で見せていたいつもの調子が少しずつ戻ってくると思います。

去年は評価などいただけてとても嬉しかったです。最初はこんな変わったクロスオーバーは見てもらえないかなと不安でしたが、ここハーメルンでもピクシブでも見て下さる方、褒めて下さる方がいて安心しています。
本当に執筆の励みになりますので、これからもお気軽に評価、感想など頂けると幸いです。
今年も、何卒宜しくお願い致します。
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