セーラームーン×モンスターハンター 月の兎は狩人となりて   作:Misma

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夜に燃える刃、朝に燃える陽④

 朝日に包まれてココット村に入ると、彼女たちは村人たちから拍手と賞賛の声の渦に包まれた。

 布を羽織ったうさぎは、村長に出迎えられた。

 

「本当にご苦労じゃった」

 

 村長の眼窩から瞳が見えた。

 

「そしてまずは君たちへの無礼を、心の底から謝りたい」

 

 村長は頭を下げたが、うさぎは微笑みを浮かべて首を振った。

 

「あたしを成長させるため再現しようとしてたのよね。あの伝説を」

「うむ。オヌシの大切なものを護りたいという想い。それはハンターとして忘れてはならぬ大切な心じゃ。だが、優しく純粋な心は、狩りの場においては時に諸刃の剣となる。だから、試した」

「だからってあたしたちを縛る必要なかったんじゃない?」

 

 美奈子が口を尖らしまことが頷くが、村長はホホホ、と飄々と笑う。

 

「その折はすまん。だが、そうでもせんとこの子のやる気が出んじゃろ?」

 

 うさぎが苦笑すると、「しょうがないわね」という顔で2人は受け入れた。

 村長は懐から手帳のようなものを5枚取り出した。

 

「さあ、『ギルドカード』を進呈しよう。これでオヌシらは正式なハンターじゃ」

 

 そう言うと村長はうさぎ、亜美、レイ、まこと、美奈子にそれを一人ずつ手渡していった。

 ギルドカードは、ハンターの世界での名刺のようなもの。これには狩ったモンスターの種類や数、何の武器を扱っているかなどの情報が記録される。初めて会う相手でも、これを見ればその経歴が分かるのだ。

 

「すごーい!」

 

 うさぎはいよいよ上がってきた朝陽にカードを透かしながら飛び跳ね、瞳をキラキラさせた。

 そこには既にこれまでの記録が記されている。

 ドスランポス1頭、ドスマッカォ1頭、リオレイア1頭、ディノバルド1頭の計4頭。

 この数字は、これから旅をするにつれてもっと増えていくのだろう。

 

「ほんと子どもね……」

「別に良いじゃない。あたしだってとっても嬉しいわ」

 

 レイは呆れていたが、亜美は素直ににっこりとカードを見つめている。

 

「これから新しい生活が始まるんだね」

「よーし、じゃあ心機一転の印に合図かけるわよ!」

 

 5人は輪になり、掌をひとつに重ね合わせた。

 

「セーラーチーム、ここに再結集よ!!」

 

 直後、この小さな村はこの一年で最も華やかで、忙しい日を送ることになる。

 

──

 

 宴は一日中続いた。

 戦士たちも村人も忙しなく駆け回り、御馳走や酒がテーブルを埋め尽くす。

 男女は火を囲んで踊り狂い、あちこちで歓声が交わされ、駆け巡る。

 

 夕方になってもその勢い冷めず、うさぎ、レイ、亜美、そしてちびうさと衛はテーブルで集って積もる話をしていた。

 まことと美奈子、ルナとアルテミスは宴のディナー作りや皿の後始末を手伝っている。

 その中で、うさぎはふと気になったことを口に出した。

 

「そういえば、まもちゃんもハンターにならないの?」

「もちろん考えているんだが、ハンターになるための登録とギルドカードの発行に少し時間がかかるらしくてな」

「よかったー!じゃあ、また一緒に戦えるのね!」

 

 顔を輝かせて彼の首に抱きついたうさぎは、衛の膝に座ったちびうさがむすっとした顔でこちらを見ているのに気付いた。

 

「ちびうさはダメよ。あそこはお子様の行くようなところじゃないからね!」

「言われなくても分かってますよーだ」

 

 ちびうさはつんとした顔で口を尖らせる。今までずっと一緒に戦ってきたのにこの扱いは、どうしても気に食わないようだった。

 その時、テーブルの端をこんこん、と叩く音がした。

 

「ちょっと隣、いいか?」

「マハイさん、教官!」

 

 席を開けると、恩師2人が腰を下ろす。ただ、顔を赤くしている教官の方は足取りが何やらおかしい。

 

「あなたたちが教えてくれたから、あたしたち……」

「水臭いっ!」

 

 うさぎの感謝の言葉を、教官はジョッキの底をテーブルにぶつけて一言でぶった切った。

 

「全く、もって、水臭いっ!まだワガハイに感謝するにはお前たちはぺーぺーすぎるな!ヌハハハハハーッ!」

「教官……相当酔ってますね」

 

 亜美が引きつった笑いを浮かべると、マハイは苦い顔で首を振った。

 

「ああ、こいつは勝手についてきてるだけだ。気にしないでくれ」

 

 とても女性とは思えないほど野太い声で豪快に笑う教官に、マハイは溢れんばかりの泡を湛えたジョッキを粗雑に差し出した。

 

「お前は取り敢えず黙ってビール飲んどけ」

「うぬっ!」

 

 素直に返事すると、彼女はぐいっと一気にビールを呷る。

 レイはそれを見届け、マハイの方をちらりと見やった。

 

「で、何か話があるんでしょ?」

「先ほど、今回の件の原因が分かった」

 

 戦士たちの意識が、一気にマハイに向いた。

 

「ディノバルドは主に、尻尾の刃を研ぐ鉱石が豊富な密林、砂漠、火山などの高温地帯に生息する。あの個体はここより南方の密林で暮らしていた」

 

 一瞬でジョッキを空にした教官が、顔を赤くして無理やり割り込んできた。

 マハイは鬱陶しげに眉根を寄せたが、教官はそれを気にする様子は一向にない。

 

「だが紫の『霧』が現れた瞬間、たった3日のうちに直径40キロの木が綺麗さっぱり枯れ果て、生態系が丸ごと崩壊したのだ。僅か3日だぞ!?3日!!」

 

 教官は何度も指で3の数字を示し、強調する。

 その言葉に息を呑み、戦士たちは顔を見合わせた。

 生気──エナジーを奪う『霧』。

 デス・バスターズの仕業であることは明らかだった。

 

「こうなると、それを喰う草食動物も、それを捕食するディノバルドも密林を出ていかざるを得ない。飢えて凶暴化したあいつはこの森丘に赴き……」

 

「あの夫婦を襲って、引き離したのね」

 

 マハイの言葉をレイが継ぐと、彼は静かに頷いて返した。

 

「だが、奴は逃げたリオレイアを追って密林に戻ってしまってな。それ以降はしばらく大人しくしていたんだが、彼女がこちらに帰ろうとしたことで状況が変わった」

 

 うさぎたちはそれを聞いて哀しそうに眉を顰め、衛とちびうさに同じことを説明した。

 

「デス・バスターズ……こちらでも相変わらずのようだな」

 

 衛の言葉に、うさぎは悲しそうに頷いた。

 

「うん……」

 

 うさぎは、決意のこもった瞳でここにいる戦士たちの顔一つ一つを見つめた。

 

「まだ何を企んでるか分からないけど、デス・バスターズの計画を止めるためにも頑張らなきゃね」

 

 その言葉に、そこにいたメンツの誰もが同意した。

 

──

 

 夜通しで行われる宴の様子を、赤い衣を纏った女が見下ろしていた。

 

「な……な……」

 

 彼女が覗く双眼鏡の視界には、村人に混じって楽しげに踊るセーラー戦士たちの姿があった。

 

「なによあれはぁー!」

 

 布を放り出し、中から白衣を纏ったユージアルが姿を現わした。

 

「なんであいつらがあの村にまだいんのよ!村の奴らは確かにセーラー戦士どもを恐れ、追放しようとしていたはず……!!」

 

 そこに、額に黒い星のマークが入った鷹が飛んできてユージアルの肩に乗った。

 

「ああ、もう何よこんなときに!!」

 

 それには、ピンクの紙が紐で括られ脚に結ってあった。

 ユージアルは渋々とそれを取り、さっと広げた。

 

『ユージアル先輩へ ご調子はいかがですかぁ~?お久しぶりです、ミメットで~す♡』

 

 やたら丸っこく判読が難しいマゼンタ色の文字で文章が始まっていた。

 

「ミ、ミメット……!」

『前世ではたくさんお世話になりました♡前回はお互いちょっとドジって失敗しちゃったけど、今回こそは協力してセーラー戦士どもを倒しちゃいましょうね~♡また、この世界でのお仕事についてもいろいろ教えてくださいっ。虫とか獣の扱いはちょっと苦手ですケド~』

 

「どうせ今回も利用してくる気の癖に、よくもぬけぬけとっ……!!」

 

 強く紙を握りしめたせいで、そこにぎゅっとしわが寄る。

 

「私の人生最大の敵を復活させるだなんて、教授とカオリナイトは一体何を考えて……」

『あ、それはそうと教授からの伝言です!以下をご覧ください♡↓↓↓』

 

 その文章の下には、不細工な長方形に切り取られた紙が妙に斜めに張り付けられていた。

 面倒くさかったから『教授』から送られた文を切り取って、そのまま張り付けたのだろう。終いには何かのスナックの食べかすが付いている。

 

『此度の計画では、セーラー戦士たちをとにかく原住民たちから孤立させることが重要である。ユージアル君の能力については高く評価しているが、最もセーラー戦士に近いところにいる彼女には、情報作戦の方を優先して頂きたい』

 

 タイプで打たれた文字が並ぶ下には、またあのミメットの字が続いていた。

 

『頼りにされて良かったですね、ユージアル先輩♡前世のことは前世のこと、今回は遠く離れてますけど、なかよぉ~~くやっていきましょ!ではサヨナラ~☆(ミメットより愛を込めて♡)』

 

 ぶるりと身体を震わせると、ユージアルはそのラメの入った紙を破り捨て風に乗せて捨ててしまった。

 

「はぁ……現世はリモートワーク方式で助かったわ。ウィッチーズ5とか言ってあいつら4人と同じ研究室なんて、もうまっぴらごめんよっ」

 

 ユージアルは白衣のポケットから紙を、襟から覗く胸の谷間からペンを取り出すと、手早く文章を書き進めた。

 

「『ユージアルです。今回の報告、確認しました。なお、次からは書面の基本的なマナーを守り、上司への言葉遣いには重々気を付け組織の目的のため全力を以て尽力して下さい。何でも「人に聞けばいいや」では、この仕事は務まりません。その点をご理解のほど、よろしくお願い致します。』……っと」

 

 達筆で書かれたその文章を彼女は来たのと同じように鷹に括りつけた。

 

「ほら、これ持ってって!」

 

 手慣れた様子で腕を振りかぶし押し出すと、鷹はピュイーと鳴いて飛んでいく。

 

「そんなことより!今は!取り返すしか……取り返すしかないっ!この、絶望的状況を!」

 

 ユージアルは歯を食いしばって歩み始めたが、すぐに森の中で咽び泣く声が響いた。

 

「ああ~、帰ってきてよ私の休日~!!」




ユージアルさんは見ての通りの人です。
旧アニ版ミメットさんはぶりっ子腹黒なキャラ。ユージアルさんとはいろいろと因縁があります。
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