セーラームーン×モンスターハンター 月の兎は狩人となりて 作:Misma
美奈子は、バルバレの昼間の雑踏を駆けていた。
「えーと、元気ドリンコの専門店って確か……」
簡素に書かれた地図を見ながら目的地を探す美奈子に、肩に乗ったアルテミスが呼びかけた。
「美奈、くれぐれも寄り道するなよ?3回もおつかい忘れたなんてなったらみんなに殺されるぜ」
「わかってるわかってるって。あら、何かしらこれ?」
美奈子が掲示板に貼られたチラシに目を留めると、アルテミスは「言ってる傍から……」とため息をついた。
「へー、『歌姫』?」
ドンドルマと呼ばれる街のアリーナに、唄と共に生き、唄に人生を捧げる少数民族の末裔がいる。
その荘厳な歌声は狩りに疲れた狩人たちの心を癒し、連日彼女の下に来るものは絶えないという。
そんな彼女が、このバルバレで出張公演をするというのだ。
なんでも、最近の妖魔事変で疲れ切った皆様の心を癒したいとの理由だった。
記載によると、これはハンターの歴史上初の試みだという。
肝心の公演日は、約2か月後だった。
そこまで大きくもないスペースに所狭しと同じチラシが並び、日に焼けた髭面の男がグッドサインでビールを宣伝するチラシが隠れてしまっている。
その光景を、よく似た顔立ちの男が襤褸切れを纏いながら恨めしげに見ている。
「……ヌフフフ……諸行無常……ナッシング・キャン・ステイ・ザ・セイムだ……」
そう呟いてとぼとぼ歩いていく彼の向こう、涼しげな衣服を着た人々はゆったりと半透明な衣に身を包む女性の絵を見て盛んにくっちゃべていた。
「僕たちの世界でいう、アイドルみたいな存在なのかな?」
肩に乗ったアルテミスが言うと、美奈子は達観したように目を細めた。
「多分そうよねー。ほーらこんなスケスケ衣装で男受け狙っちゃってぇ。業界が考えるこったぁ、こっちの世界でも大差ないってわけね」
「いやー、だいぶそういうのとは雰囲気違うとは思うけど……ってうわっ!」
神秘的な雰囲気に描かれた挿絵を見ていたアルテミスは、いきなり方向転換をした美奈子にあわや落とされそうになった。
「でも、最新の流行には乗ってかないとね!みんなに知らせなきゃ!」
「おい、おつかいは……」
彼女はそのまま超特急で走り出し、アルテミスは必死に肩に掴まった。
「どわーっ!僕がいることくらい考慮してくれよーっ!」
通り過ぎた少女と白猫の背中を見て、襤褸を着た男は背中を丸めてため息をついた。
「はぁ……若いモンはいいなぁ。ワガハイもあの頃は……ぐすっ」
美奈子は急いで飛んでいき、街中で集合した仲間たちにそのことを伝えた。
少女たちは数少ない休暇を満喫すべく、今日は屋台の間で立ち食いをしていた。
常に何かしら動いているバルバレの人々は、間食程度ならこうして済ませてしまう。
うさぎは掌サイズに小分けされた『オッタマケーキ』にフォークを刺し、口に運ぼうとしていた。
「へー、この世界にもアイドルみたいな人いるんだぁ!」
素直に驚くがあまり、彼女は食べることも忘れて感心していた。
それに気をよくし、美奈子は人差し指を立てて得意げに話を続けた。
「そうそう、あと2か月くらいで公演なんだってー!」
「ふーん、歌姫ねえー」
レイは小皿に入った『チコフグと林檎王のセビーチェ(マリネ)』をパンと一緒につまんでいた。
興味のなさそうな顔ながら、しっかりと聞き耳は傍立てていた。
「……それにしても、カオスな光景ね」
亜美は紙に挟んだ『リノハツサンドウィッチ』を手に苦笑した。
美奈子は数々の食べ物を見つめ、涎を垂らしかけている。
「あーん、どれも美味しそー!あたしも『モガモ貝とマトンの火山カレー』ってやつ早く食べたぁーい!」
「ほんと食い気に関しては他の追随を許さないな、美奈は!」
美奈子の肩から降りたアルテミスは、呆れた顔でルナの隣に来ながら言った。
「それぞれ好きなように選んで集合って言ったはいいけど……お菓子を選んだの、あたしとうさぎちゃんくらいじゃん」
亜美の隣にいるまことは、小さく可愛らしいサイズの『熱帯イチゴのタルト』を片手に持っていた。
昼食とおやつが入り混じったような奇妙な空間だが、これは食べ歩きということで各々で興味が出たものを持ち寄ろうと計画した結果だった。
「歌姫の件は、あたしは遠慮させてもらおうかしら。あまり人が集まるところは好きじゃないし」
亜美はやんわりと断ろうとしたが、まことはそれを留めた。
「でも逃したら、次ないかもよ?」
言われた彼女も興味はあるようで、迷った顔でサンドイッチを頬張った。
「観に行きましょうよみんなー!!行きましょ行きましょ行きましょ行きましょ行きましょー!!」
両手を組んで懇願しまくる美奈子に、亜美とまことは思わず身を引いた。
「……菓子をねだる駄々っ子かよ……」
味方になりかけていたまことが呆れかえっても、美奈子は雨に濡れた子犬のような目で訴え続けた。
「ま、まあー、戦士にも休息って大事よねー。たまにはこの世界を文化を学ぶためにも……」
レイは目を背けてそう言ったが、そこにうさぎが横から顔をにょきっと伸ばしてせせら笑った。
「レイちゃーん、はっきり言いなさいよー。隠れオタクとして気になるんでしょこーゆーの」
「ち、違うわよ絶対っ!」
「はいはい、そうよねー。でぇ、うさぎちゃんは行くー?」
「もちろん行くー!!」
うさぎは、笑顔で腕を振り上げた。
そのままの勢いで、うさぎと美奈子は拳を互いにぶつけ合った。
「よぉーし、それまでに頑張ってミメットのヤツ懲らしめないと!」
「で、美奈子ちゃん、頼んでた元気ドリンコは?」
まことが聞くと、しばらく美奈子は拳をうさぎと合わせたまま固まっていた。
「……あ、ごめん……忘れた……」
ぴたりと、少女たちの動きが止まった。
アルテミスがルナと顔を見合わせると、ルナはぼやいた。
「こりゃーやっちゃったわ」
「言わんこっちゃねぇ」
「「……みーなーこーちゃあーん!?」」
少女たちは、一斉に声を低くし恨めしげに美奈子を睨んだ。
「ひーんごめんなさいですゆるしてぇーーーーっ!!」
美奈子は、泣き叫びながら急いで戻ってきた方向へ走り出した。
──
その後、うさぎたちは歌姫の公演鑑賞までにこの地域を平和にする、という目標で一致した。
夕日も暮れ闇に包まれていく砂漠のなか、バルバレだけは人の作りだした太陽のごとく、キャラバンのテントや露店から漏れる光と賑わいであふれかえっている。
バルバレを象徴する竜頭船、その内部。
篝火が焚かれた酒場には弦、笛、太鼓の音が鳴り響く。狩人たちは豪快な酒と飯に、腕相撲に、自慢話、その他雑多な駄弁りに興じている。
それを取り仕切るは、巨大な球儀の前にあるハンターズギルドの窓口。3人の受付嬢が並び、カウンターの端っこでギルドマスターと呼ばれるウェスタン風の好々爺が、にこやかな顔で酒場を見守っている。
今日はここで、明日からの調査の前祝いとして仲間たちと食い、飲みかわすのだ。もちろん、酒ではなくジュースで。
「はー、楽しかったー……ん?」
仲間たちと一緒に酒場に入り、伸びをしていたうさぎの目にあるものが飛び込んできた。
「う……うう……」
2人の大男が酒場の端っこでうずくまっている。
1人は紫の潜水服のような鎧『リノプロシリーズ』、もう1人は太ましい白い鎧『ハイメタシリーズ』を着こんでいた。
「だ、大丈夫!?」
居ても立っても居られず駆け寄ったうさぎにルナが気づき、急いであとを追った。
「こら、うさぎちゃんったらずっと言ってるでしょ!知らない人に話しかけちゃダメって!」
「分かってるわよ!でも、明らかにこのおじちゃんたち弱ってんじゃない!」
ルナに叱られても、うさぎは2人を助け起こそうとした。
「は……腹が……減った……」
掠れた声で救いを求めるように僅かに指を動かした直後、2人はばたんと倒れ込んだ。
「おねーさーん、このおじちゃんたちにお肉4つ焼いたげて!」
近くを通りがかった酒場娘に料理を頼むと、こちらを見ている仲間たちに向かってぱんっと両手を合わせた。
「ごめん、みんな!」
うさぎがテーブルに座った向こう側、ふらふらと死にそうな体で席についた男たちを見て、レイは肘をつきながらため息をついた。
「またいつものおせっかい?何度も怒られてるのに、懲りないわねぇ」
「別に今はあたしたちがいるからいいけどさ。衛さんも後々来るんだから、ほどほどにしなよ」
まことが呼びかけると、うさぎは「わかったー!」と元気よく返事した。
彼女たちは席につくも、そのまま少し離れたところでうさぎを見守り続けていた。
ルナは、仕方なさげにうさぎのすぐ隣の席に座った。
2人の男は、骨付きの巨大肉を無我夢中でむしゃむしゃと頬張った。
兜を外した2人の顔は装備に似合わず、骨ばった細い顔立ちだった。
「ちょっとは顔色よくなったじゃない!」
うさぎが笑いかけると、2人の視線が彼女と後ろにいる仲間たちに投げかけられた。
「……あんた、最近話題の美少女ハンターさんってやつか」
白い鎧のハイメタ男が、低い声で切り出した。
彼の方が、リノプロ男より少し背が高い。
「えっ、知ってるの?」
うさぎが驚くと、リノプロ男が少しだけ光が戻った目で笑った。
「よく話題は聞いてるよ。妖魔関係で筆頭さんと大活躍だってな」
彼の目に、うっすらと疑惑の色が浮かんだ。
「……そんな女神様が、この襤褸切れどもにいったい何の用だい?生憎だが俺たちは何も持ってねえぜ」
「床にうずくまってたら誰だって気になるわよ!」
うさぎが身を乗り出すと、金色のツインテールがふわりと揺れた。
もう巨大な骨付き肉を平らげたハイメタ男は、血色が戻ってきた顔で笑い声を漏らした。
「はは、俺たちを豚呼ばわりした女とはえらい違いだな」
「えっ?そんなひどい人が?」
うさぎが顔を歪めると、リノプロ男は憂鬱そうに皿の上に転がった骨と蝋燭を見つめながら話した。
「まあ……ちょっとお話しようって誘ったら、衆前で装備を貶された挙句逃げられてさ」
ルナは、顔に嫌悪感を丸出しにしてしかめた。
「貴方たち、それナンパっていうのよ!自業自得じゃない!」
ルナの厳しい指摘に2人の男はうぐっと口を噤んだあと、下を見つめながら答えた。
「どうせこの先飢え死ぬしかねぇからどうにでもなっちまえってヤケになっちまってさ。あれはバカなことをしたよ」
ため息を吐いたリノプロ男の横で、ハイメタ男がちらりとうさぎの後方を見ながら言った。
「ていうかよ、嬢ちゃん。旦那もいるのに、それこそ俺たちのようなやつと話してていいのか?お仲間も心配がってるぜ」
4人の少女たちが、食事をしながら険しい視線で2人を凝視している。彼らがうさぎに変なことをしないか監視しているのだ。
「ほら、本人たちにまで言われてる。やっぱりこの場は去った方が……」
ルナが小声でささやくと、つんとした顔でうさぎはそっぽを向いた。
「あたしのまもちゃんは、おじさんと話してるくらいで愛を疑ったりしないもん!」
「お、おじさんて……」
「俺たち、まだ20代だぜ……」
かくりと肩を落とした2人に、うさぎは構わず話しかけた。
「愚痴くらいなら、ちょっとだけ聞いてあげてもいいわよ!」
彼女の子どものような笑顔に、2人は戸惑ったように互いに顔を見合わせた。
「……じゃ、ちっとばかしお言葉に甘えさせていただくか」
2人は揃って少女の仲間たちに会釈したあと、水を飲みながらつらつらと語り始めた。
男たちは、密林近くの貧しい農村出身だった。
彼らは幼い頃から気づくと隣にいて、喧嘩ばかりだったがそれなりに行動を共にした。
去年までは、畑で育てた作物を外に売ったりしてひっそりと暮らしていたという。
だが今年に入り、妖魔化生物によって村の作物が軒並み全滅。土の養分すら根こそぎ吸われ、これまでの生活では到底生計が成り立たなくなってしまった。
そこで、リノプロ男はなんやかんやで縁のあるハイメタ男から、ハンターという職業を提案された。
ハンターとなって大型モンスターを数頭と狩れば、家族を養う分は当分賄える。
この夢に一縷の望みをかけ、彼らは共にバルバレに出向いたのだ。
しかし、彼らを待ち受けていたのは過酷な大自然の洗礼だった。
元一般人に過ぎない彼らは片手剣を振るうことさえままならず、鉱石を掘って草食竜を狩るのでやっとだという。
貧しく知識も経験も浅い者と共に狩りに行ってくれる物好きもおらず、彼らは沢山の恥と失敗を重ねた。
彼らの身に着ける装備は、そんな苦行で流した血と涙と汗の結晶なのだ。
そんな状況に先日の罵倒で完全に自信を失い、今や狩場で採取したなけなしのキノコや薬草を売るその日暮らしを続けている。
備蓄も金も今は尽きかけ、食うものにも事欠く有様なのである。
そんな話を聞くうちに、警戒して横聞きしていた少女たちも次第に同情的な視線を向けるようになった。
うさぎは自分事のように苦しい表情をしていた。
それに触発されてか、男たちの目に涙が浮かび始めた。
「うぁ~、何もかも上手く行かねえよお~。やっぱ俺たちハンターに向いてねえのかなあ〜」
泣き顔で突っ伏したリノプロ男に、ハイメタ男が叱るように肘で肩をどつく。
「何言ってんだばっきゃろう、親御さんと妹にいいもん食わしてやるんだろ」
顔を上げたリノプロ男は、赤く腫らした目でうさぎとその仲間たちを見据えた。
「嬢ちゃんはいいよなあ。多分、俺の妹くらいの歳だろ?なのに飛竜ぶっ倒せる実力もあって、いい旦那さんも仲間もいて、全く万々歳じゃねぇか」
涙で掠れ切った声を聞き、うさぎははっとした顔になった。
「……おい、そりゃあ俺がいい仲間じゃねぇって意味か?」
ハイメタ男が隣の顔を睨むと、リノプロ男はどこかヤケになった表情で睨み返した。
「最近の惨状を見てりゃあ分かるよ。所詮、俺らはただの腐れ縁だったってな」
「なんだと!?」
リノプロ男の襟首を、ハイメタ男がひっつかんだ。
少女たちは、それを見て立ち上がりかけた。
ルナは、うさぎの袖を引っ張ってテーブルから引き離そうとした。
「……確かにあたし、仲間たちに囲まれて幸せ者だなって最近思うけど……」
うさぎは座ったまますっと目を伏せた。
「大切で護りたいものがたくさんあると、それはそれで大変なんだから」
男たちは殴り合おうとしていた手を止めた。
テーブルの向かいには、彼らを悲しそうに見つめ上げる20歳にも満たない少女の姿があった。
「おじちゃんたちも、本当はお互いが大切と思ってるならそんなことしちゃダメだよ」
静かに首を横に振るうさぎを見て、ハイメタ男は自身の振り上げた拳に視線を移した。
「あ……あぁ、すまん」
2人は喧嘩を止め、我に返ったように再び席に着いた。
ルナも友人たちも臨戦態勢を解き、見物しようとしていた狩人たちも離れていった。
うさぎはほっとしたように微笑んだ。
「でも、大切な人のために命張れる人ってとってもかっこいいじゃん!」
「そうかな……」
リノプロ男は、照れ臭そうに頬を掻いた。
「それに、一度帰りたかったら本当に帰ってみたらいいのよ!」
「え?」
彼は不思議そうに眉を寄せた。
「きっと大切な人の顔を見たら、また頑張りたいって思えるよ。あたしが現にそうだもん!」
どこにも疑いが見えない彼女の言葉に、男たちは迷うように視線を交差させあった。
「ハンターになってそんなこと言われたの、初めてだ」
「でも、こんな姿見せたってなぁ」
まだ答えを渋っている彼らにうさぎは席から立って近づくと、じゃらっと音の鳴る巾着袋を差し出した。今回の料理の分と、クエストを受けられるだけの金が入っていた。
うさぎは、驚いた男たちの瞳を真っ直ぐ見て笑った。
「大丈夫よ!今がどん底なら、きっとこれからうまく行くって!」
「……きっと、これから……」
2人の瞳の色が変わった時だった。
颯爽と現れた背の高い影が、それよりずっと小さいうさぎの身体を攫った。
「すみません、うちの者が」
「まもちゃん!」
名を呼ばれた男は、うさぎの肩を抱きながら仲間たちの方へ歩いていく。
通り道にいた者たちが、自然と道を開けた。
男たちはその様子を呆然と眺めていたが、すぐその正体に合点が行くと慌てて叫んだ。
「お嬢ちゃん、今回はありがとう!」
「その子が隣にいることを誇れよ、背の高ぇ旦那!」
「……言われずとも」
こちらに振られる節くれだった手に視線だけ寄越し、やや不機嫌な顔で衛は小さく呟いた。
場所を変えるなり、うさぎは衛に両肩を強く掴まれた。
「だから、知らない人には近づくなって言ってるだろ!」
うさぎはしゅんとしてうつむいた。
衛は、怒るというよりは困った顔でため息をついた。
屈んでうさぎと目線を合わせると、衛は言い聞かせるように言った。
「みんな、そういうことするたびいつもうさこを心配してるんだぞ。ココット村より圧倒的に人が多いし、いつ良からぬことを考えるやつが現れるか……」
戦士の面々も、その通りだという顔である。
「うん……そうだよね。ただでさえ忙しいのに手間かけさせて、ごめんなさい」
衛と同時に友人たちも見据える瞳には、謝罪の色が滲んでいた。
「でも、最近思うんだ。こうやって普通に生きてられるあたしたちって、本当に運がよかったんだって」
うさぎは自分が来た方向を見やった。
先ほど別れた男たちが傷だらけの兜をかぶり直し、背を向けて酒場から出ようとしている。
鎧の間から見える布の汚れとほつれは酷く、汚れている。
「戦士の力がなかったら、きっとあたしたちもあの人たちみたいな暮らしになってたはずだよ」
衛だけでなく、友人たちも黙って彼らの後姿を見つめた。
「でも、だからといって……」
うさぎは振りなおった衛の左胸に手を伸ばしてそっと押し当てた。
「孤独な人の悲しくて寂しい気持ち、まもちゃんも分かるでしょ?あたしたちが授かった力は、狩りだけじゃなくああいう人たちにも役立てていくべきよ」
「……」
「きっとそういう気持ちが、こっちの世界だけじゃなくこの世界も救うことに繋がるんだから!」
うさぎの衛を見つめる視線に迷いはない。
一方の衛はじっと思いを巡らせていた。
「せめてさ、元気づけてあげるだけでも許してくれない?絶対まもちゃんの目につかないところではやらないから」
やがて衛は降参したようにもう一方の手で髪をぐしぐしと掻いた。
「仕方がないな、もう……明らかに危ないヤツには近づくなよ?」
「ありがと!まもちゃん大好き!」
うさぎは大きな背中に腕を回して抱きついた。
2人を見た友人たちは表情を緩め、その中で美奈子が口を開いた。
「衛さん公認なら、あたしたちもちょっとは慈善活動しようかしら」
レイはそれに苦笑すると、まだ立っているうさぎに向けてテーブルを叩いた。
「ほーら、早く食べないと冷めちゃうわよ!」
「あ、そうだそうだー!早く済ませないとちびうさのヤツまた拗ねるわ!」
うさぎは席に腰を下ろすと、慌ててこんがり肉にがぶりついた。
彼女たちには今後、筆頭リーダーと共に数件の狩猟の依頼が待っている。
そのいずれもが妖魔化生物に関連するものだった。
いろいろごちゃごちゃしちゃってる^^;
MHXXの料理ってみんなおいしそうだよね……て話。
全体的にセラムンの子たちは自己肯定感高くて羨ましくなるw