セーラームーン×モンスターハンター 月の兎は狩人となりて 作:Misma
『ランポスを掃討せよ!』
条件:ランポス8頭の討伐
目的地:テロス密林
依頼主:瘦せこけた農民
依頼文:妖魔化現象で作物が全滅したおかげで、うちの地域一帯は大飢饉だ。その上、同じように飢えたランポスどもが村近くに降りてきやがる!助けてくれ、お団子頭のお嬢ちゃん!
『憎き大猪を討ち取って!』
条件:ドスファンゴ1頭の討伐
目的地:テロス密林
依頼主:涙ぐむ少女
依頼文:貝を取りに行ったうちの兄ちゃんが、なぜかひどく怒ったドスファンゴに突進されて大けがをしたの!この森、最近おかしいわ。報酬は出すからどうか仇を討って、話題のハンターさん!
『森に木霊す羽音』
条件:ランゴスタ20匹の討伐
目的地:テロス密林
依頼主:困り果てた若商人
依頼文:妖魔化現象で死肉が増えたせいか、密林にランゴスタが大量に湧いて俺たち行商人が通れない。このままではもはや商売上がったり。一番頼りになるハンターさんも用事でいないし、ここはひとつ、近頃話題のお嬢さんに依頼したい。
『妖魔!妖魔!妖魔!』
条件:すべてのモンスター(妖魔化)3頭の狩猟
目的地:テロス密林
依頼主:村のせっかちな男
依頼文:昨日から、わけは知らんが妖魔化した盾蟹、桃毛獣、毒怪鳥が総出で大暴れしてる。森は枯れるわ、村から人は出ていくわで最悪だ!まとめていなくなるまで狩りつくしてくれ!誰でもいいから、早く!!
うさぎは月下の砂浜で、4枚の紙を見つめた。
平和な村に突然訪れた危機への戸惑いと悲鳴が、紙を通して伝わってくるようだった。彼女はその紙を、目の前にいる自分と同じくらいの身長の少女に差し出した。
「はい、今回の分も達成したよ!」
この近くの村で受付嬢として働くその女性『パティ』は、緑のスカートに白いエプロンを被せたような制服に身を包んでいた。
やや信じられないような顔つきで、彼女は依頼書を恐る恐る受け取る。依頼書すべてに、依頼を達成したことを示すハンコが押された。
彼女が涙ぐんだ顔で深く頭を下げると、うさぎほどではない短めの茶色のツインテールが両脇に垂れた。
「本当に、本当にありがとうございます。今この時うちの村で頼れるのは貴女だけです」
「うん!また困ったことあったら、うちの猟団に相談してね。もうすぐ仲間も来てくれると思うから」
屈託のない表情を見たパティは、うつむいて指をいじりながら躊躇いがちに呟いた。
「その……すみません。それが、また……」
うさぎは、彼女の腰のポーチからはみ出た、赤い印付きの文に目を留めた。
「あっ、新しい依頼?ほら、見せて!」
「で、でもやっぱり、これ以上はさすがに!」
手を出された彼女は思いなおしたように首を横に振り、視線を下にずらして一歩下がった。
うさぎの防具は傷だらけだった。あと一撃でも貰えば崩れ去りそうな危うさがあった。
それにも関わらず、彼女は何ともないような表情でひょいっと文に手を伸ばす。
「お金の問題ならこの際気にしないでよ!こー見えても、結構貯まってる方なのよ」
うさぎは、パティに向かって少し得意げにウインクしてみせる。
筆頭ハンターたちと共に妖魔化生物を狩り続けた所為で、彼女の懐は十分に温まっていた。狩猟用の道具を買い足したとしても余りまくるぐらいだ。この際ハンターと村を繋げる仲介役のギルドに事情を説明すれば、本来ジャンボ村が出すべき報酬金も少なく済むかも知れない。
「そんなことが問題じゃ……あっ!」
パティが背後に持っていこうとしたポーチから巧みに文をひったくると、うさぎは月光に広げて透かし、その内容を見た。
『ヤバい怪鳥!緊急事態!!』
条件:イャンクック(妖魔化)1頭の狩猟
目的地:テロス密林
依頼主:村のせっかちな男
依頼文:俺、また見ちまった。黒い霧に蝕まれておらついてる怪鳥だよ!すっかり化け物になっちまってて、このままじゃ村が焼野原だ!とにかく討伐だ!密林にまだいる間に討伐を今すぐ頼むぜ!
苛立ちと焦りと恐怖が一緒くたになったような筆跡だった。
うさぎは顔を曇らせ、きゅっと口を結んだ。
「また出たのね」
すぐうさぎはパティに振り返り、明るい顔で親指を上に立てた。
「オッケー!今すぐちょっくら行ってくる!」
「ダメです!そのままでは貴女の身が!」
それを聞いたうさぎは、優しい目つきでパティの肩に手を添えた。
「そんなこと、気にしてる場合じゃないでしょ?見てれば分かるよ。今までずっと平和だったのに、こんなことがいきなり起こって大変だって」
ジャンボ村は、このテロス密林からほど近い場所にある。今では村長をしながら旅に出ているとある若者によって開拓された村だ。今ではかなりの大規模に発展し交通の要所として栄えている。
本来ならモンスターの脅威から護るハンターが村にいるはずだ。しかし、今回の事変により各地からの狩猟依頼が急増。これまで妖魔化生物による被害がなかったジャンボ村にギルドから白羽の矢が立ち、村長と長年懇ろにしている優秀なハンターたちは軒並み出払ってしまった。
そのタイミングで妖魔化生物が突如として大発生し、その余波で一帯の環境が狂い始めたのだ。
折しも、それはうさぎが調査の締めとして簡単な依頼を達成した直後だった。
彼女は、ジャンボ村を見捨てることは出来なかった。至急御付きのハンターたちには緊急事態を知らせる手紙が出されたものの、ここで引き下がればほぼ確実にジャンボ村も妖魔化生物によって被害を被るのである。
パティは耐え切れなくなったようにうつむいて涙をぼろぼろと零し、砂浜に黒い染みを作った。
「大丈夫、あたしに任せればらっくしょーだから!じゃ、探しに行ってくるね!」
うさぎが背を向けると、パティははっとして急いでポーチをまさぐった。
彼女は取り出した文を手にうさぎの元に駆けつけ、文を差し出すと共に頭を下げた。
「お仲間さんからの手紙です。せめて、返事だけでも!」
うさぎは、驚いた顔でそれを受け取った。
「あっ、ありがとう。みんな今頃怒ってるな」
うさぎは苦笑いしながら、手元で文を広げた。
パティは返事用の紙とペンを渡すと、浜辺に停められた小舟に乗り込んで返事を渡されるのを待った。
手紙の雰囲気は、うさぎの予想とは真逆だった。
──
お団子頭のお嬢ちゃんへ
調査、お疲れ様!多分、今頃テロス密林にいる頃だよな?
飛び込んでくるぞ、お前さんの活躍の数々が。あちらこちらからひっきりなしだ!遠征してるお前さんは気づいてないが、バルバレ中でお前さんたちの猟団の評判が上がっている!協力関係の我らの団もますます評価が上がってありがと300万ゼニー!ってとこだ。まさにお嬢ちゃんは幸せの青い鳥だ!!
そこでなんだが、もう調査も終わることだし帰ってきたら記念に宴会でもしないか?そろそろお前さんも狩猟用の食料の味に飽きてきた頃だろう。食い意地の張ったお前さんならきっと気に入るメニューを用意するつもりだ。
みんな、お前さんの帰還を待ちわびている。鳥だっていつまでも飛んでるわけじゃない。時には餌を取り、羽根を休めるからまた飛びたてるんだ。また会えるのを楽しみにしてるからな!無理はするなよ!!
『我らの団』団長
──
「え……宴会」
彼女の脳裏に閃いたのは、湯気を上げるキングターキー。クック豆とシモフリトマトのスープ。幻獣チーズのケーキ。
口の端から涎が垂れかけ、ぎゅるるる、と腹が鳴った。
「うぐぐぐ……図星ってわけね」
腹を押さえながら、うさぎはちらと左に視線を滑らせた。
「でも……」
パティのいる小舟の隣、大型船に縄で縛られたモンスターたちが載せられている。
彼女は、物言わぬ彼らの山を見つめた。
うさぎは彼らの前に来ると胸の前に手を合わせた。
「……ごめん。今、この子たちを見捨てるなんて無理」
魔女に呪われた生物がいる限り、この地の生きとし生ける者が理不尽な目に遭う。うさぎは決してそれを無視することなどできなかった。
しばらくずっと祈るように目を閉じていた。
目を開けると、うさぎは急いで船のへりに腰を下ろして紙を広げた。
「ホントにホントにごめんなさいだけど、きんきゅうじたいなのであたしは密林で狩りをしてます、だから気にしないで……と……あれ、この字どうやって書くんだっけ……」
時に分からないながらも、彼女なりに思い巡らし筆を走らせた。
恐らく日本語で書いたものよりはるかにまずい文章になっているだろう手紙を、うさぎは筒に入れた。
見上げると、船の向こうに広がる大瀑布の上に、優しく光る満月があった。
恐らく、あの月には王国の名残の一つもないのだろう。
「みんな、どうしてるのかな」
ふと、寂寥感が彼女の心を覆った。
「なるちゃん……海野……元基お兄さん……宇奈月ちゃん……」
名前を呟くたびに、懐かしさが胸の底からこみあげてくる。
同じ月の下に、彼女はネオンの光る街並みを夢想した。
「そうだ、ママも、パパも、慎吾も、はるかさんも、みちるさんも、せつなさんも……みんないないんだ」
そこまで言ってから彼女ははっとして、ぺちんと自分の頬をひっぱたいて立ち上がった。
「ああもう!センチメンタルになるの、おしまい!」
手紙をパティに渡すため、うさぎは砂を巻き上げて小舟へ走っていった。
──
「本日は西地区の会員30名総出でゴミ拾いと清掃を行いました!」
「こちらの酒場では、コラボビールの総販売数が1日300本を超えました!」
「いやはや、1日ごとにバルバレはより良い街に生まれ変わりつつあります!」
篝火の焚かれた暗い部屋に並び立つ男連中は、いずれも鼻が高くて眉も細い中性的な顔立ちで、身体の線が細く華奢な者ばかりである。
いずれもが白い羽衣を首元から垂らしており、ふわふわと浮遊するかのように揺れていた。
その先に、椅子に腰かけた細く白い脚がちらりと見えた。
「それもこれも貴女のおかげです……ミメット様!」
火の煌めきが、幼さの残る顔を照らし出した。
「あら、それはどうも」
カラフルで丈の短いドレスに身を包んだミメットは、どこか恍惚した表情で首を傾け、満足げに笑ってみせた。
「みんなにこんなに愛されて……歌姫見習いのミメット、とーっても幸せです♡」
その笑顔を見た男たちはおおっと色めきたち、明らかな喜色を顔に浮かべる。
「でも、少し不安があるんです」
椅子から立ち上がると、彼女はかつ、かつとヒールを鳴らしながら歩き、扇子で口元を隠しながら話し始めた。
「風の噂ではどうも、魔女がこの市場に巣くっているとか。このままでは歌姫様が穢れに触れてしまうかもしれないわ」
男たちは目の色を変えて互いを見つめ合う。
「ほ、本当ですか!?」
「それは大事件だ!」
「ですから前から申し上げている通り、来週までに最低限、今の10倍に会員を増やしてくださらない?そうすれば魔女どもを追い出し、より『綺麗』な状態で祭りを迎えられますし」
ミメットは真ん中の男の首を扇子で手繰り寄せた。
「あたしが教えたやり方なら楽勝なはずでしょう?予定より遅れてるみたいだけど、ちゃんとあたしたちの目的分かってる?」
背後の机には、ユージアルの名で『前作戦の反省点及び改善案について』という題の報告書が積まれていた。
ミメットに脅された彼は怒りもせず、頷いて従順に答えた。
「世界と繋がるここが我らの愛に染まりきれば、間もなく地上くまなくその波は伝わり、歌姫様のご加護と共に魔女の野望を挫く……」
「よろしい」
「はいっ!!」
解放された男は、再び直立して後ろに腕を組んだ。
ミメットは、同じく羽衣を付けて入口の見張りをしていた鎧姿の男をちらりと見た。
「で、そこのあなた。頼んでたあれ、持ってきてくれました?」
「はい、これです!」
彼は喜々として彼女に跪き、書類の束を渡した。
「ありがと、守護兵見習いさん♡」
彼女は背を向けながら、閉じた扇子の先で男の肩をぺしぺしと叩いた。
「歌姫様とミメット様のためなら何なりと!」
目が血走った彼の顔を尻目に、ミメットは豪華なソファに寝っ転がった。
「セーラー戦士どもがハンターとしてここに身を隠してるのは確認済み。あとはどう炙りだすかが問題だったけれど……」
彼女がめくっているのは、受注者リストの複製だった。本来ならば受付嬢など、ギルドの関係者しか閲覧できない書類だった。
妖魔化生物関連の依頼とその結果の一覧のページを開いたとき、ミメットの顔がほころんだ。
彼女は残りの紙を放り投げ、吹雪のように撒き散らした。
「やったぁ、大当たりー!下手に正義感ある奴って、これだから面白いのよねー!」
リストの受注者の欄には、同じ者の名前がまとまった数だけ並んでいた。
「しかも最近話題の猟団やらとメンバーが一致するし、もはや正体が確定したもドーゼン!」
余裕の笑みを浮かべ、ミメットはテーブルに置かれたリンゴを手に取る。
「あたしのオンステージも、もうすぐね。フフッ!」
しゃくしゃくとそれをかじりながら見上げた先、壁にはミニスカートとフリルのついた黒い衣装が飾られていた。
──
「……うさぎ、帰ってくるかな」
ちびうさが、以前に5人組で来た工房前のベンチの真ん中─うさぎが以前座っていた場所─に座りながら呟いた。
歌姫のファンを騙った団体が、未知の方法でバルバレ全体の洗脳を企てている可能性がある。
やや突飛にも聞こえる話を団長とソフィアは真剣に聞き、彼らは自身のツテを使って状況を確認してみると言ってくれた。今はその返事を待っている。
「衛さんがいるからきっと大丈夫と信じたいけど、あとの2人がどう転ぶか分からないわね……」
亜美も、不安な表情を隠せなかった。
「でも、あんな状況で1人でも戦えるだなんてすごいわ。戦士に覚醒したての時なんか『戦いたくないー』って泣きまくってたのに」
「ルナが言うと説得力が違うな」
ベンチの横、ルナの隣に座ったアルテミスが苦笑しながら答えた。
「でも、何かおかしい。最近のうさぎ、むしろ戦いに前のめりになってる感じする。ねえ、そう思わない?」
ちびうさが左右見て問いかけると、少女たちは否定しきれず黙りこくっていた。
そこで、レイがずっと閉じていた口を開いた。
「……実は、ちょっと心当たりがあるわ」
彼女は、右側に座るまことと美奈子の方をちらりと見た。
「特にまこちゃんと美奈子ちゃんには今後支障が出そうだから、あえて言わなかったんだけど」
レイは、自身がショウグンギザミに傷を負わされたとき、リーダーがうさぎの目の前の命を少しでも生かそうとする姿勢を、『逃げ』だと評したことを話した。
そして思わず感情に任せ、うさぎを庇って反論してしまったことも付け加えた。
「リーダーさん……そんなこと言ってたんだ」
まことは驚きと戸惑いが混じったような、複雑な表情でその話を聞いていた。
「で、結局レイちゃんは女の友情を優先したわけね」
美奈子がレイの横顔を覗き込むと、彼女はきまり悪そうに視線を背けた。
「ただ引っ込みがつかなくなっただけよ。それに、今となってはうさぎのこと心配してくれてたんだって思うわ」
目元に後悔の色を滲ませたレイに、まことは首を横に振る。
「仕方ないよ。多分、あたしも実際にレイちゃんの立場なら、いくらあの人でも普通にカチンときてたと思う」
「あたしも。うさぎちゃんは、絶対に何かを護ることから逃げない子だもの」
美奈子もそう言ってまことに深く頷いてみせると、レイがぽつ、と呟いた。
「……護ることに、逃げてるのかも知れない」
彼女は手元のクーラードリンクを見つめたが、一滴も口を付けていなかった。
訝しげに見つめてくる仲間に彼女は言った。
「うさぎが狂ったように狩りに参加し始めたのはあの沼地の時からよ。きっと何かを喪うということに、あの子は耐えられないのよ」
うさぎは、初めての戦いの最終決戦で仲間を全員喪った経験がある。それから、彼女は戦いの中である時は我が娘を、ある時は恋人と彼を奪おうとした宇宙人を、ある時は娘の友となった少女を救った。
目の前の大切な命が懸っているとなると、彼女は無限にも等しい力を発揮するのである。
レイの言葉に、そこにいる誰も後に言葉を継ぐことができなかった。
沈黙を破るように、1つの人影が道の真ん中を突っ走ってくる。
「お前さんたちの話、信じるしかなさそうだ!」
息をつきながらオレンジの帽子で白髪を扇ぐ団長の姿を、少女たちは緊張した面持ちで出迎えた。
「まさか、あの白い連中がここまで増えてるとは!もしかしたら、ギルド内部にも洗脳の手が及んでるかもしれん!」
もはや、その男の瞳に懐疑の色は一つも浮かんでいなかった。
少女たちは、予想以上に悪い状況に顔を曇らせる。
「だが、希望はまだある」
団長は帽子を被り直した。
「ランサーのヤツが進言してくれたおかげで、バルバレの守護兵の数は増えていてな。今から俺の口でギルドに至急、警備を強化するように言ってくる」
それを聞いたまことが真っ先に立ち上がった。
「じゃあ、あたしたちはバルバレを調査してきます!あいつらのアジトさえ突き止めればこっちのもんです!」
「ああ、頼む!そこで助けになればいいんだが……」
団長は、帽子の中から黄色い紙を取り出し広げた。赤い丸印が付けられた、バルバレ全体の手書きの地図だった。
彼は手早く、そのうちのいくつかの印を太い指で指さしていく。
「俺の知り合いはこことここ、あとはここらへんだ。聞き込みをするならおすすめだぞ!」
「ありがとうございますっ!」
美奈子が礼を言って受け取ると、団長はにやっとして親指を立てた。
「任せておけよ!こういうのは早く出たもん勝ちさ!じゃあさっそく行ってくる!」
団長は背を向けると、飛ぶように駆けていった。
壮年とは思えない足の速さだった。
「団長さんっていったい何者かしら……?ギルドにも顔が聞くなんて」
亜美が圧倒された表情で背中を見つめていたが、ちびうさはそれに囚われず真っすぐな目で口を開いた。
「今はあの人と、まもちゃんの……タキシード仮面の力を信じるしかないよ!あたしたちは、ここで洗脳を食い止める!」
それに、少女たちも気を取り直して頷く。
「セーラーチーム、出動よ!!」
そう叫んだ美奈子が先頭となって、少女たちは雑踏の中へ踏み出した。
──
「イャンクック……懐かしいな」
うさぎは、密林のエリア4を北に歩いていた。
足が濡れた砂浜に沈み込む。西側の黒い海からやってくるさざ波が、足元を静かに洗っていく。
「あの時も、あの子の命を救おうとしたんだっけ」
目を細めると、波の音と共に様々な言葉が蘇ってくる。
うさぎは強い眼差しで北を見据えた。
「──助けてあげなきゃ。今回の子だけは何としても」
エリア3は、北側に海とピラミッド型の古跡が建てられた孤島が見える場所だった。
此度の狩りで幾度も訪れたその場所は、妖魔化生物やその他の生物によって穴ぼこだらけ、最初来たときは一面を覆いつくしていた大木は、ほとんどが枯れ果て薙ぎ倒されている。まともな平地といえば、北側に少しだけ残された砂浜ぐらいのものだろう。
砂浜を歩いていると、上方から悲痛な叫びが聞こえた。
そしてもう一つ、甲高い強気な唸り声。
うさぎが見上げると、2つの影が上空を飛び回っている。
一方はオレンジ色、もう一方は紫色。後者が追う側だった。
速度からして終始、紫色の方が優勢だった。
刺々しいシルエットが、逃げる獲物を巧みに捕らえ抑えつける。
そのままマウントを保ったまま、荒れ果てた密林のど真ん中に落ちた。
うさぎは驚いて剣を引き抜き、恐る恐る観察していた。
木片が飛び散り、その後も煙が何度も上がる。
下敷きにされているのはイャンクックだった。だが、依頼書に記されたような妖魔化はしていない。
何かがその上を飛び跳ね、弱った獲物のあちこちをしつこくつついている。
ふと煙の中でこちらを見た右目が、ギラギラと赤く妖しく輝いていた。