愛さんは俺が話すのを隣でじっと待っていてくれている。昨日から俺の様子をずっと心配してくれていたんだろうな……。
屋上へ来て外の空気を吸ったら少し気持ちが楽になった。
意を決して俺は愛さんに中学の話すことにした。
「俺には、沙絵って妹がいたんだ。」
愛「さっきバスケ部の主将が話してた子??それに"いた"って……。」
「ああ。沙絵は俺が中学の頃に亡くなったよ。」
愛「えっ……」
「小さい頃から病弱でな。入院、退院の繰り返しでまともに外で遊ぶことも出来なかったよ……そんな妹がいつも楽しみにしていたのは俺のバスケだった。」
沙絵はいつも俺がバスケしている姿を見てとても楽しそうだった。俺が出ている試合を見に来てくれたこともあった。俺のプレーを見て妹が元気になってくれるのが嬉しくてそれがバスケをする原動力となっていた。
ーー回想シーンーー
俺がバスケを始めたのは友達との遊びがきっかけだった。そこからバスケに夢中になり気づくと中学では全国から注目される選手になっていた。
沙絵はそんな俺をいつも誇りに思ってくれて俺の勝利報告を聞くと、とても喜んでくれていた。しかしその時には沙絵の容態は酷くなっており、自分で立つことも出来なくなっていた。
「沙絵、遊びに来たぞ。」
沙絵「お兄ちゃんっ!部活終わるの早かったね!!」
「お、おう!今日はすぐ終わったよ!」
沙絵「ホントはサボったんしょ??」
「……まーたまにはな。」
沙絵「ダメじゃん!!大会近いんでしょ??……今日私の調子が悪かったから来てくれたんでしょ。」
「そりゃあ大事な妹なんだからな。練習よりも最優先するさ。」
沙絵「気持ちは嬉しいけど、私のせいでお兄ちゃんがバスケに集中出来ないなんて嫌だよ。」
「……。」
沙絵「私は大丈夫だから、練習はちゃんと行って??お兄ちゃんに心配させないように私も元気になるから!」
そう言って沙絵は小さな小指を立てて俺に向けてくる。こんな妹の為にも俺はバスケで沙絵を元気にさせたかった。
「……分かったよ。必ず日本一になってやるからな。」
指切りで約束した事でより俺の勝ちたい思いは強くなった。
次の日からの練習は今まで以上に励み、調子は最高に良かった。
いける、これなら誰にも負けない、このチームで日本一になれる……
主将「準太、今日は絶好調みたいだな。」
「ありがとうございます。でも俺は常に絶好調ですよ。」
主将「こいつ言いやがる。今年は過去の中でもベストメンバーで試合に臨めるぞ。勝つぞ、○峰!!」
「せめてそこは名前を呼んで欲しかったんですが……」
主将の言う通り今年はうちのバスケ部の中で最強メンバーで大会に臨める。俺たちの中では優勝以外考えられなかった。
その日は自主練のため夜遅くまで残っていた。今よりもっと良いプレーが出来るようになって沙絵に見てもらいたい、俺の心は妹のことでいっぱいいっぱいだった。
自主練を終え、体育館を出ると見覚えのある女の子を見かけた。
「よう、お前もこんな時間まで練習か??海未。」
海未「はい。弓道部も大会が近いので出来ることは全てやっておこうかと。」
「流石だな。そりゃどの高校も海未には敵わないわけだ。」
海未「大袈裟ですよ。準太も練習を張り詰めているみたいですが大丈夫ですか??」
「絶好調だよ。今年の優勝はうちらだからな。」
海未「随分自信があるのですね、私も応援していますよ。それで……最近沙絵の様子はどうでしょうか??」
海未は小さい頃からずっと沙絵のお姉さのような存在だった。沙絵が思うよう遊べなくても海未が一緒に遊んでくれていた。だからこそ沙絵の事をよく気にかけてくれていた。
「……あまり良くはないな。」
海未「そうですか……私にも出来ることがあればいいのですが…」
「気持ちだけでも十分嬉しいよ、それにあいつと優勝するって約束したからな。俺が優勝したらきっと沙絵も元気になってくれるはずだ。」
海未「そうですね……準太、あまり自分を追い込まないようにしてくださいね。」
「別にそんな事しないさ。でも、ありがとうな。」
こうして海未と別れて帰った。あの時絶好調な俺に何故海未が追い込まないようにと心配したのか当時の俺には分からなかった。それは沙絵が亡くなった日に痛感することになる。