時は流れ俺たちは大会真っ只中だ。俺以外にもメンバーの調子も良くて順調に勝ち進んでいき、準決勝まで勝ち進んだ。相手は強豪だが今の俺たちは誰にも止められない。それくらい今の俺たちの勢いは凄まじかった。
そして準決勝を勝利した日に俺は決勝戦前に病院へ行った。あとひとつで日本一になれる、沙絵の兄ちゃんが日本一になる、色んなことを伝えたくて何から話そうかずっと迷いながら向かっていた。
そして、沙絵がいる病室に入るとーー
「沙絵っ!試合勝っ………え……。」
母「……準太。」
そこにいたのは先生や看護師、母親、そして……静かに目を閉じている沙絵だった。
俺は状況が飲み込めずただただその場に立っていることしか出来なかった。
すると母親が静かに口を開いた。
母「あんたが試合をしている間に容態が悪くなってね。先生たちも最善を尽くしてくれたんだけど……沙絵っ……。」
「な、何言ってんだよ…だって、ついこの間まで沙絵は元気だったのに…」
母「準太が来た時は無理してたのよ、そうしないとあんたがまたバスケに集中出来ないからって。」
「そんな……俺はあいつが無理していたのに気づけなかったのかよ。」
母「今日も最後まであんたのこと応援してたのよ。お兄ちゃん頑張れって……」
母親の隣で眠っている妹は死ぬ間際まで俺の事を応援してくれていた。それなのに俺はあいつが苦しんでいることを気づくことが出来なかった。
その後の俺はまさに抜け殻だった。何のためにバスケをしたのか、何のために優勝したかったのか、全てどうでも良くなってしまったのだ。そして俺を動かしていた原動力の沙絵もいなくなった事で、今までの練習で蓄積された疲労が一気に俺の体を襲い、決勝はまともに動くことが出来なかった。
ーー回想シーン終了ーー
「それがきっかけで決勝戦もボロ負け。俺のせいでチームは負けて先輩たちは引退、俺もその後バスケ部を辞めた。……俺は沙絵との約束も守れなかった上に先輩たちの夢も潰してしまった。だから俺はもうバスケ部には入りたくないんだ。でも沙絵との日本一になる約束をバスケ以外で叶えたい、そう思って俺は今弓道で1番を取ろうとしてるんだ。」
愛「……話してくれてありがとう、ジュンジュン。」
俺の話を黙って聞いていた愛さんは普段からは想像できない慈愛に満ちた目を俺に向けていた。そして俺の頭を静かに撫でながら口を開いた。
愛「ジュンジュンは沙絵ちゃんのために勝たなきゃって思ってたんだね。愛さんはそれくらい沙絵ちゃんを大切に思っているジュンジュンは凄く素敵だと思う……でも。」
「……でも、何だよ。」
愛「今のジュンジュンが仮に1番になっても沙絵ちゃんは喜んでくれるのかな??愛さんはそう思わない。」
「なっ!?……何が分かるんだよ!!俺は沙絵と約束したんだ!1番にならなきゃあいつとの約束を果たせないんだよ!知ったような口を……」
愛「いいから愛さんの話を聞いてっ!!!」
「っ!?」
初めて愛さんに怒鳴られた。いつも笑顔で怒ることがなさそうな彼女が怒るからより迫力がある。
愛「確かにジュンジュンは沙絵ちゃんとの約束を守ろうとしているのは立派だと思う…けど、そもそも沙絵ちゃんは優勝しているのを見たかったんじゃなくて、ジュンジュンが楽しそうにバスケをしている姿が好きだったんじゃないの?!」
「っ……沙絵は優勝した姿を。」
愛「違う!!そんな苦しそうな顔をしているジュンジュンが優勝してもきっと沙絵ちゃんは喜んでくれないよ!?」
「愛さんに何がわかるんだよ!!沙絵のこと知らないくせに!」
愛「分かるよ!!だって……弓道をしている時より球技大会でバスケをしていたジュンジュンの方が輝いていたんだもん!!あの時みたいに何も考えず、純粋にバスケを楽しでいる姿が沙絵ちゃんは好きだったはずだよ!」
その言葉を聞いて俺はハッとした。沙絵は昔から俺のプレイが好きだった、しかし俺はそれを優勝する事でより喜んでもらえ、元気になってくれると思っていた。沙絵の容態が悪化する度に俺は焦り、自分のプレイより勝つことだけを考えて試合をしていた。
しかし愛さんとの球技大会では仲間と一緒にやる純粋なバスケをすることが出来ていたのだ。
愛「ジュンジュンが沙絵ちゃんも思う気持ちはとても大切なことだよ??でも、苦しみながら試合をするジュンジュンなんて……愛さんは見たくない!」
そう言って俺を見る愛さんの目には涙が出ていた。なんで愛さんが泣いてるんだよ……どうしてそこまで俺の事を気にかけてくれるんだよ……
「……全く、こんなにズバズバと言われるとは思わなかったよ。…どうしてこんな気にかけてくれるんだよ。」
愛「ど、どうしてか……うーーん…///」
愛さんは少し照れた様子で悩んでいるとそっと俺の顔に手を添えて口を開いた。
愛「愛さんにとって、ジュンジュンは大事な人だから……かな??」
その言葉を聞いた時一瞬時が止まったように感じた。大事な人……それってどういう意味だ……??
「愛さん、それって……」
愛「そ、そろそろお昼ご飯食べよ!!今日もおばーちゃん特製のぬか漬け持ってきたからこれ出して元気になろうよ!!」
愛さんは俺の言葉を遮って話を切り替えた。その後はお昼ご飯を食べ、教室に戻り、いつも通り授業を受けた。愛さんと話したあとは今まで俺の中で感じていた苦しい気持ちがすっと消え、気持ちが楽になっていた。
愛さんもその後は沙絵の話をすることもなかった。そして今日で俺の中で宮下愛という存在が気づかないうちに大きな存在となっていることを自覚したのである。
愛「ジュンジュン、これから新作のタピオカ買いに行こうよ!」
「……はいはい、ついて行きますよ、愛さん。」
準太の過去編終了です!
これでシリアスな話は終わってこれからは以前の様にコメディを入れていきます!!