ブライト博士が神浜で二度としてはいけないことの公式リスト 作:ryanzi
「あなたの言う通りでした、スカリエッティ。
リンカーコアを寿司酢に漬けると、性格が変貌してしまった」
「変貌したのは性格だけじゃないはずさ、フェイト・T・テスタロッサ」
「・・・アインハルトちゃんが、寿司の道を歩み始めました。
味はいいけど、あれは嫌な予感しかしません。
まさか、寿司を回すだけであんな魔力変動が起きるなんて・・・」
「ははは!まさか私の妄想がここまで当たるなんてね!」
「妄想だったの???」
「暇で暇で、頭の中で式を組み立てていたんだよ。
すると、一つの方程式が自然とできあがった。
私はこの式をスシブレード方程式と名付けることにした」
「・・・あと、もう一つ報告があります。
あなたの提案で始まった量子再生計画の顛末についてです。
やはり、青銅時代プロ以外の魔法少女まどか☆マギカも存在しました」
「やっぱりね。別の世界線だと地球で製作されていただろ?」
「はい。その通りです」
「そうかそうか・・・ははっ、これは少し面白いことになるかもしれない。
これはつまり、創作された世界というのが無限にあるということを意味するんだよ。
たとえ、この瞬間にも、保澄雫がここにやってきても不思議じゃないんだ。
これは面白いことになったね。羅輯監督の黒暗森林理論にも影響があるかもしれない」
それはともかく、神浜市では世紀の実験が行われようとしていた。
寿司酢によるソウルジェムの浄化実験だ。
ここ最近、ソウルジェムの浄化に効果があった重曹の値段が高騰している。
それをうけて、ブライト博士は代用品を考案した。穀物酢と寿司酢だ。
穀物酢はすでに実験済みで、何の副作用も確認されなかった。
そして、今日、寿司酢の実験が行われようとしていた。
実験に志願してくれたのは、鶴乃由比と夏目かこだ。
「さて、本当に覚悟はいいんだな?寿司酢だけは面白・・・嫌な予感がするんだ」
「大丈夫だよっ!ふんふん!」
「ええ、私も問題ありません。もう博士の奇行にも慣れましたから」
「そうか・・・それじゃあ、二人とも、寿司酢にソウルジェムを漬けてくれ」
二人はそれぞれの皿に用意された寿司酢にソウルジェムを浸す。
すると、ソウルジェムは寿司色の光を放ち、たちまち調整屋内部は真っ白になった。
光が収まると・・・別段何も変わっていないようであった。
ちょっと穢れをためていたソウルジェムがすっかり綺麗になったことを除いて。
「ど、どうだ・・・?」
二人はにっこりと笑った。
「うーん、とくに大丈夫かな?」
「私も大丈夫ですよ?」
ともかく、実験はこれで終了だ。
二人が帰っていったのを見送ったブライト博士はがっくりと肩を落とした。
「何か起こってほしかったのね?」
「そうなんだよ、みたま。私の予想だと、寿司好きになるはずだったんだよ」
だが、翌日、ブライト博士はものすごく嬉しくなった。
二人が本当に寿司を愛するようになったからだ。
鶴乃もかこも、それぞれの本業片手間に回転寿司を始めた。
前者は硬派な回転寿司で、後者は何でも出す普通の回転寿司という違いがあったが。
違いはあれど、鶴乃は高得点の寿司を提供したし、かこも美味しいラーメンを提供した。
通な神浜市民や魔法少女の食生活を豊かにしたのだ。
ブライト博士もそんな二人に発明したレーンを提供したりして応援した。
しかし、だんだんと運命の歯車は軋み始めていた。
両者の方向性はまったくもって違いすぎたのだ。
最初は、かえでからの相談であった。
「ほう、二人が顔を合わせるたびに険悪になると?」
「うん・・・最初は睨み合ったりだけだったんだけど、
次第にお互いの寿司の方向性について悪口を言い合ったりして・・・。
でも、顔さえ合わせなければ鶴乃ちゃんもかこちゃんもいつも通りなんだよ」
「そうか・・・これは面白・・・大変なことになったな」
「ふゆぅ、聞こえたよ?」
後日、ななかも刀を突きつけてブライト博士に相談した。
「なあ、これって相談じゃなくて脅迫というんじゃないかい?」
「そうとも言いますね。でも、あなたは許されないことをした」
「実験に犠牲はつきものなんだ!」
ブライト博士の首は数時間後にくっついた。
だが、すでに何もかもが手遅れになりつつあった。
口喧嘩どころか、つっかみあいの喧嘩になることもあった。
そして、ついにその時はやってきた。
最初はかこから仕掛けてきた。
万々歳に何十杯ものラーメンが回転しながら飛び込んできたのだ。
鶴乃の父親と客は里見メディカルセンターに担ぎ込まれた。
「・・・ついにやりやがったね」
鶴乃もすぐに夏目書房に赴いた。
すでにかこが待ち構えていた。
「鶴乃さん、あなたの寿司はあまりにも弱い。
そんな寿司で、私に勝てると思っているんですか?」
「ラーメンやマヨネーズに頼る奴に言われたくないよ。
・・・3・2・1・へいらっしゃい!」
鶴乃は冷え切った表情でマグロを投げつけた。
だが、かこの投げたラーメンで軌道は逸れた。
進路を変更したマグロはそのままフクロウ印の給水屋に命中した。
こうしてミザリーオウルのウワサは戦隊モノの怪人のごとく爆散した。
だが、ラーメンの椀にひびが入った。
「なるほど、口だけじゃなさそうですね」
かこはそう言うと、はるか上空に寿司を回す要領で飛び上がった。
そして、何百もの魔法陣を展開し、そこからラーメンを召喚した。
「これが新時代の寿司・・・闇寿司の力です!」
ラーメンが一気に鶴乃に向かって発射された。
汁と煙が地上を包んだ。
「やりましたか・・・?」
だが、その煙から鶴乃が飛び上がった。
「こんな寿司でもなんでもないラーメンでやられるもんか!」
「ラーメンは寿司です!どうしてそれがわからないんですか!」
鶴乃はサバの押し寿司をかこの顔にお見舞いした。
だが、かこは鼻血を流しただけで、ほとんど平然としていた。
「くっ、この化け物!」
「まだわからないんですね、私との実力の差が」
かこはステーキの鉄板で鶴乃を地上に叩き落とした。
巨大な噴煙が上がるが、今度ばかりはかこも油断しなかった。
案の定、噴煙より何百ものネタが対空砲のごとく発射された。
かこは超スピードで迫ってくるそれらを、見事に避けていった。
もはや、それは読者諸賢の知るスシブレードではなかった。
それは競技としてのスシブレードではなく、戦争としてのスシブレードだったからだ。
ルール無用。どちらか一方が死ぬまで、勝負は続けられる。
「わあ!寿司がいっぱい落ちてる!これでみんなに寿司を食べさせてあげられるよ!」
この戦争で得をしたのは眞尾ひみかぐらいであった。
そんなことはともかく、これはとにかく戦争だったのだ。
「・・・やっちゃった☆」
「この始末をどうしてくれるんだ?あれは私でもどうにもならんぞ?」
「十七夜くん、笑うしかないよ」
「ブライト、それがお前の答えか」
尻を腫らしたブライトが数分後に発見された。
「・・・というのが、スシクイネ=Hai Irasshai=NICEGUY戦争の始まりらしいな」
佐鳥かごめは一連の話を佐倉杏子から聞いていた。
彼女はたまたまブライト博士の制裁にやってきていたのだ。
「シースーブレード」をやらかした罰だ。
なお、ブライト博士だったものに杏子は腰かけていた。
どうせ数時間後には復活するだろうから何の問題もない。
「そうですか・・・寿司で?」
「そう、寿司で」
かごめは頭が痛くなりそうだった。
「まあ、あたしは市外から来たし、あまり知らねえんだ。
知っている奴に聞けば・・・おっ、ちょうどいいところに来たな」
杏子の視線の先には、一人の魔法少女がいた。
彼女の名前は宮尾時雨、神浜市の主力魔法少女の一人である。
今は、対ネオマギウスの役目を引き受けている。
「あいつは当時のマギウスの翼から派遣されて戦争に参加したんだよ」