1人の青年と問題児たちが異世界から来るそうですよ?   作:九龍真夜兎

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やってきました本編です。
ゆっくりしていってね[о]З[о]


YES!ウサギが呼びました! 第1話

 

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箱庭2105380外門居住区画、第360工房

 

「………………うまく呼び出せた? 黒ウサギ」

 

「みたいですね、ジン坊ちゃん」

 

黒ウサギと呼ばれた15、16歳に見えるウサ耳の少女は、肩を竦ませておどける。

 

その隣で小さな体軀に似合わないダボダボなローブわ着た幼い少年がため息を吐いた。

 

黒ウサギは扇情的なミニスカートとガーターソックスで包んだ美麗な足を組み直し、人差し指を愛らしく唇に当てて付け加える。

 

「まぁ、後は運任せノリ任せって奴でございますね。あまり悲観的になると良くないですよ?表面上は素敵な場所だと取り繕わないと。初対面で『実はわたし達のコミュニティ、全壊末期の崖っぷちなんです!』と伝えてしまうのは簡単ですが、それではメンバーに加わるのも警戒されてしまうと黒ウサギは思います」

 

握り拳を作ったりおどけたりと、コロコロ表情を変えながら力説された少年も、それに同意するように頷いた。

 

「なにから何まで任せて悪いけど…………彼らの迎え、お願いできる?」

 

「任されました」

 

ピョン、と椅子から黒ウサギが跳ねる。

 

『工房』の扉に手をかけた黒ウサギに不安そうに声をかけた。

 

「彼らの来訪は…………僕らのコミュニティを救ってくれるだろうか」

 

「………。さぁ? けど”主催者〈ホスト〉”曰く、これだけは保証してくれました」

 

クルリとスカートを靡かせて振り返る。

 

おどけるように悪戯っぽく笑った黒ウサギは、

「彼ら4人は…………人生最高クラスのギフト所持者だ、と」

 

 

その頃、上空4000mに放り出された4人はと言うと、

 

『ぎにゃああああああ!! お、お嬢おおおおおお!!』

 

上空4000mから落下した4人と1匹は、落下地点に用意してあった緩衝材のような薄い水膜を幾重にも通って湖に投げ出される。

 

「きゃ!」

 

「わっ!」

 

「カオスコントロール」ボソッ

 

3人はボチャン、と着水。樹は力を使って水面を蹴って近くで叫んでいた三毛猫を抱えて地面に着地した。

 

そして、三毛猫を3人の内三毛猫と一緒に落ちてきたが女の子が一番に上がって来て三毛猫を心配そうに見ていたので渡した。

 

女の子は、

 

「…………大丈夫?」と聞いた

 

三毛猫は、

 

『あの兄ちゃんのお陰で無事やありがとうな』

 

それに対して僕は、

 

「どう致しまして」ニコッ

 

「三毛猫の言葉がわかるの?!」

 

「まぁね」

 

「初めて三毛猫と話せる人が居た」

 

女の子は嬉しそうに三毛猫に話していた。

 

そんな会話をしていたら他の2人がそれぞれ罵詈雑言を吐き捨てながら陸地に上がってきた。

 

「し、信じられないわ! まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜこれ。まだ、石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

「………。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょ?」

 

「俺は問題ない」

 

「そぅ。身勝手ね」

 

2人の男女はフン、と互いに鼻を鳴らして服の端を絞る。その後ろで三毛猫を抱えていた女の子も服を絞りながら、

 

「此処…………どこだろう?」

 

「さぁな。まぁ、世界の果てっぽいのが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」

 

女の子の呟きに男が応える。何にせよ、彼らの知らない場所であることは確かだった。

 

適当に絞り終えた男は軽く曲がったくせっぱねの髪の毛をかきあげ、

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは”オマエ”って呼び方を訂正して。ーーー私は久藤飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」

 

「…………春日部耀。以下同文」

 

「そう。よろしく春日部さん。そして、貴方は?」

 

「僕かい? 僕は斑目 樹だよ。よろしくね」ニコッ

 

「そう。よろしく樹君。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよお嬢様」

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えるわ、十六夜君」

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

「僕にも取扱説明書くれないかな?」

 

心からケラケラと笑う逆廻十六夜。

 

傲慢そうに顔を背ける久藤飛鳥。

 

我関せず無関心を装う春日部耀。

 

3人を見て微笑んでいる斑目樹。

 

そんな彼らを物陰から見ていた黒ウサギは思う。

 

(うわぁ……………なんか問題児ばっかみたいですねぇ………1人はマシな方が居らっしゃるようですけど…………)

 

召喚しておいてアレだが…………彼らが協力する姿は、客観的に想像できそうにない。黒ウサギは陰鬱そうに重くため息を吐くのだった。

 

 

十六夜は苛立たしげに言う。

 

「で、呼び出さられたのはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明する人間が現れるもんじゃねえのか?」

 

「そうね。なんの説明ないままでは動きようがないもの」

 

「…………。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

 

「耀さんの言うとうりだね」

 

(全くです)

 

黒ウサギはこっそりツッコミを入れた。

 

もっとパニックになってくれれば飛びだしやすいのだが、場が落ち着き過ぎているので出るタイミングを計れないのだ。

 

(まぁ、悩んでいても仕方がないデス。これ以上不満が噴出する前にお腹を括りますか)

 

4者4様の罵詈雑言を浴びせている様を見ていると怖気づきそうになるが、此処は我慢である。

 

ふと十六夜がため息交じりに呟く。

 

「ーーーしかたがねえな。こうなったらそこに隠れている奴にでも話を聞くか?」

 

物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を掴まれたように飛び跳ねた。

 

3人の視線が黒ウサギに集まる。

 

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けたぜ?そっちの猫を抱いてる奴とお前も気づいていたんだろ?」

 

「お前じゃなくて、斑目 樹 まぁなんとなくね」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「…………へぇ? 面白いなお前」

 

軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。樹はわかっていたからなんともないが3人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の籠もった冷ややかな視線を黒ウサギに向ける。黒ウサギはやや怯んだ。

 

「や、やだなあオ4人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは1つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますョ?」

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「ゴメンね」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 

バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。

 

しかしその目は冷静に4人を値踏みしていた。

 

(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まあ、扱いにくいのは難点ですけども)

 

黒ウサギはおどけつつも、4人にどう接するか冷静に考えを巡らせているーーーと、春日部が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒ウサギのウサ耳を根っこから鷲掴み、

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

力いっぱい引っ張った。

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵な耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にもほどがあります!」

 

「へえ? このウサ耳って本物なのか?」

 

今度は十六夜が右から掴んで引っ張る。

 

「…………。じゃあ私も」

 

「ちょ、ちょっと樹さん助けてください!」

 

「あははは……………頑張って!」

 

「ちょ、ちょっと待ーーー!」

 

樹に助けを求めるも今度は飛鳥が左から。左右に力いっぱい引っ張られた黒ウサギは、言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣に木霊した。

 

「だ、大丈夫?」と、樹は声を掛ける。

 

「ーーーあ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小1時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに間違いないデス」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

半ば本気の涙を瞳に浮かばせながらも、黒ウサギは話を聞いてもらえる状況を作ることに成功した。4人は黒ウサギの前の岸部に座り込み、彼女の話を『聞くだけ聞こう』という程度には耳を傾けている。

 

黒ウサギは気を取り直して咳払いをし、両手を広げて、

 

「それではいいですか、御4人様。定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、言います! ようこそ、”箱庭の世界”へ 我々は御4人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです! 既に気づいていらっしゃるでしょうが、御4人様は皆、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でごさいます。『ギフトゲーム』はその”恩恵”を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は質問するために挙手した。

 

「まず初歩的な質問からしていい? 貴方の言う”我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある”コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

「めんどくさいね」

 

「属していただきます! そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの”主催者”が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

 

「…………”主催者”って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練を称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが”主催者”が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。”主催者”次第ですが、新たな”恩恵”を手にすることも夢ではありません。 後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて”主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者は結構俗物ね…………チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間…………そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然ーーーご自身の才能も奪われるのであしからず」

 

黒ウサギは愛嬌たっぷりの笑顔に黒い影をみせる。

 

挑発ともとれるその笑顔に、同じく挑発的な声音で飛鳥が問う。

 

「そう。なら最後にもう1つだけ質問させてもらっていいかしら?」

 

「どうぞどうぞ♪」

 

「ゲームそのものはどうやったら始めれるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

飛鳥は黒ウサギの発言に片眉をピクリとあげる。

 

「…………つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

「それは、僕も思ってた」

 

お? と驚く黒ウサギ。

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは8割正解の2割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換み存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰しますーーーが、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかし”主催者”自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰ぬけは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 

黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、1枚の封書を取り出した。

 

「さて。皆さんの召喚を依頼したくには、箱庭の世界における全ての質問答える義務がございます。が、それらを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話せていただきたいのですが…………よろしいです?」

 

「待てよ。まだ俺と樹が質問してないだろ」

 

静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていることに気づいた黒ウサギは

 

構えるように聞き返した。

「……………どういった質問です?ルールですか? ゲームそのものですか?」

 

「特に僕は質問ないからいいよ」

 

「そんなことはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは…………たった1つ手紙に書いて合ったことだけだ」

 

十六夜は視線を黒ウサギから外し、他の3人を見まわし、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。

 

彼は何もかも見下すような視線で一言

 

、、、、

「この世界は………面白いか?」

 

「ーーーー―」

 

他の3人は無言で返事を待つ。

 

彼らを読んだ手紙にはこう書かれていた。

 

【家族を、友人を、財産を、世界のすべてを捨てて箱庭に来い】と。

 

それに見合うだけの催し物があるのかどうかこそ、4人にとって1番重要な事だった。

 

「――――YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

―――――――――――――――――――




第1話が終わりました。とても長ったです。
次の2話は十六夜と樹が世界の果てへ行くお話です。
それではこれで失礼します。

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