八幡Side
奉仕部部室。
ミーティングを終えた俺達は奉仕部の部室に戻ってきた。
雪ノ下、由比ヶ浜、一色はまだ不機嫌そうだ。
どうやらオレの対応が気に入らなかったらしい。
雪乃「それで何か策はあるのかしら?」
八幡「一応アイデア的なものは。」
結衣「どんな?」
八幡「普通にやったら俺達が何をやっても三田先輩はダメなパーティだったって言い張るだろう。だからそれを言えない状況を作ってやればいい。」
雪乃「どういうことかしら?」
八幡「例えば恋人の家に遊びに行ってご飯の時に嫌いなものを出されたらそれが嫌いだって言えないだろ、知らんけど。」
いや、知らんよ本当に。だって彼女なんていたことないし。
結衣「ただの妄想だった?」
雪乃「比企谷くんの妄想はさておき、Noと言ったら三田先輩にダメージが来るような状況を作ればいい、ということかしら?」
八幡「例えばだ、卒業パーティが最高に盛り上がっているクライマックスのところで三田先輩を舞台に立たせ、「パーティについて、事前に大分心配されてましたけど本日のパーティはいかがでしたか?」とでも聞けば何も言えないんじゃね?多分。」
結衣「なるほど。それは確かに言えないね。なんかヒッキーらしい案だね。」
いろは「なるほど~。じゃあ、それまでに卒業パーティを最高に盛り上げておくことが肝ってことですね。」
雪乃「毎度毎度よくそんな下らない事を思いつくわね。」
雪ノ下は呆れながらオレのアイデアに反応した。
八幡「まあ、最悪失敗してもオレが本気を出せば、土下座と靴舐めくらいは余裕だ。任せておけ。」
雪ノ下と由比ヶ浜はオレの冗談に苦笑いをしていたが、一色は真剣な顔をしている。
いろは「そんな事は私がさせませんよ。絶対に」
一色が真剣な眼差しでオレの言葉に返事した。
なんか一色の後ろからオーラが見える気がするんですけど。
雪乃「そうね。実際にその程度で済む保証はないのだし、絶対に成功させるしかないわね。」
いろは「とりあえず、今日のところはこの辺にして明日みんなでアイデアを持ち寄って議論しませんか?この前の打ち合わせで決まった企画をベースにできることをみんなで考えたいんです。明後日また海浜総合と打ち合わせがあるんでその時に向こうに提案しましょう。あと海浜総合の方で同じような問題が起きてないか確認しておきますね。」
雪乃「それでいいわ。」
結衣「さんせーい。」
八幡「そうするか。」
その日は解散となり、案について各自で考えることになった。
翌日の放課後。奉仕部部室。
俺達は各自家で考えたアイデアを持ち寄り、議論すべく部室に集まった。
いろは「じゃあ、始めますか・・・。」
一色の様子が変だ。明らかに顔色が悪い。
八幡「どうした、一色。顔色が悪いぞ?」
いろは「いえ、ちょっと昨日は考えすぎてあまり寝れてなくて・・・。さっきまで考えてました。」
八幡「お前、まさか授業出てないのか?」
いろは「はい・・・、すみません。なかなか考えがまとまらなくて・・・」
一色は申し訳なさそうに答えた。
いろは「生徒会長なのにダメですよね。ははは・・・」
雪乃「一色さん、無理はしないで。今日は帰ってもいいのよ?」
いろは「いえ、せめて私のアイデアを説明してからにさせてください・・・」
一色は一晩考えたアイデアを俺達に説明した。
一色の提案はひいき目なしに見てもこれ以上はないというものだった。
八幡「一色、おまえこれ一人で一晩で考えたのか?」
雪乃「すごいわ、一色さん、これなら多分いける」
結衣「うん、私も賛成。」
俺達もそれぞれアイデアを考えてきたが一色のアイデアに及ぶものではなく、ほとんど一色のアイデアで行くことになった。
いろは「ありがとうございます。それじゃ明日はこれで海浜総合に説明しますね。あとは準備・・じゃなかった今日はちょっと休みたいんで帰りますね、お疲れ様です。」
結衣「いろはちゃん、一人で帰れる?」
雪乃「送っていくわ。」
いろは「いえ、一人で大丈夫ですので。お疲れ様です。」
一色は俺達の心配をよそに一人で帰っていった。
翌日。コミュニティーセンター。
今日は海浜総合との打ち合わせの日。前回の会議で決まった企画の細部を決める日だ。
俺達は一色が昨日説明してくれた案を提案するつもりだ。
だが開始時刻になっても一色は現れない。
結衣「いろはちゃん大丈夫かなあ?」
雪乃「少し心配ね。」
結衣「私連絡してみる。」
由比ヶ浜が一色に連絡しようとすると会議室に一色が現れた。
明らかに昨日より顔色が悪くなっている。
八幡「一色おまえ顔色が・・・」
一色は明らかに辛そうだったが無理して笑顔を作っていた。
いろは「すいません、遅れました。顔色はメイクを失敗しただけなんで大丈夫ですよ。あんまり見ないでください。恥ずかしいんで」
一色は俺達の心配を振り切って議長席に座ると会議を始める挨拶をした。
いろは「みなさん、遅れてすいません。これから本日の会議を始めさせていただきます。議題は昨日送付させていただいたとおりで前回決まった企画の詳細について案を作ってきたので説明させていただきたいと思います。」
そう言って一色は自分の案を説明し始めた。
昨日聞いた時よりもブラッシュアップされ、説明資料も素晴らしいものとなっていた。
海浜総合高校のメンバーも一色の本気度を感じ取ったのかいつものようなビジネス用語を並べただけの意見を述べる事はしなかった。
玉縄「いろはちゃん、素晴らしい提案だね。僕たちはこれにアグリーだよ。あとはみんなでこの計画にコミットメントしようか。」
いろは「・・・ありがとうございます。」
一色は玉縄の反応に安堵の表情を浮かべるとその場に倒れこんでしまった。
八幡「一色!」
会議は中断され、俺達は救急車を呼び、一色に付き添って病院に行った。
病院のある病室。
運ばれた病院の病室で一色は目を覚ました。
医者によると極度の緊張状態で無理を続けた事による過労らしい。
八幡「一色、気が付いたか?」
いろは「せんぱーい、会議どうなりました?」
雪乃「会議は中断されたわ。でもあなたの案は海浜総合も賛成してる。だからゆっくり休んで。」
八幡「どうしてこんな無茶を」
いろは「そんなの決まってるじゃないですか、私せんぱいの土下座なんて見たくありません。」
結衣「いろはちゃん・・・。」
オレは自分を責めた。
最悪自分だけが泥を被るように仕向けたつもりが一色に無茶をさせてしまった。
大事に思っている相手が傷ついて喜ぶ奴なんていない事は修学旅行の時に学んだはずなのにな・・・。
オレは一色いろはを見くびっていた。
自分のためにこれだけの無茶をできる人間が世の中にどれだけいるだろうか?
本当に心が揺れる。いままでにないくらいに・・・。
しばらくすると一色の表情が小悪魔モードに入った。
いろは「ところでせんぱーい、せんぱいのために頑張った私にはせんぱいからご褒美があって然るべきだと思うんですよ~。」
八幡「ま、まあな。」
いろは「じゃあ、私のこと今度から一色じゃなくていろはって読んで下さい。」
結衣「あっ、ずるい。私も」
いろは「だめですよ、結衣先輩。これは私の頑張ったご褒美です。」
一色に拒否され、由比ヶ浜は不貞腐れている。
ボッチにとって女の子を下の名前で呼ぶのは正直ハードルが高い。
しかしここまでされて一色のお願いは断れない。
八幡「いくぞ・・・・、いいいいいろはっ。」
やべミスった。どこの通りすがりの仮面ライダーだよ。
いろは「はっ?」
一色が心底呆れた顔をしている。
いろは「分かりました。下の名前で呼ぶのはもういいです。その代わりこれが終わったら私とデートして下さい♪まさか嫌とは言いませんよね?」
一色は小悪魔な笑みをオレに向けてきた。
八幡「分かった。」
この状況で断れる奴はいないだろう。もっとも断る気もなかったが。
一色はオレの返事を聞くと子供のようにはしゃいでいる。
いろは「じゃあ、約束ですよ♪」
八幡「でもそんなのでいいのか?」
いろは「はい♪とりあえずは。本当に欲しいものはちょっとずつもらう事にしましたので。」
八幡「本当に欲しいものって?」
いろは「それは秘密です♪」
俺達の会話を尻目に由比ヶ浜が思いつめた表情をしていた。
結衣「ねえ、ヒッキー。ちょっと席を外してもらってもいい?」
八幡「どうしたんだ?」
結衣「ちょっと女の子同士の会話。」
由比ヶ浜に促されてオレは病室を出た。