結衣Side
いろはの病室。
私はゆきのんといろはちゃんとお互いの気持ちを話し合うためにヒッキーに出て行ってもらった。
いろは「どうしたんですか?せんぱいに出て行ってもらって。ガールズトークですか?」
結衣「うん、まあそんなとこ」
雪乃「私も席を外した方がいいのかしら?」
結衣「ううん、ゆきのんはここにいて。多分ゆきのんにも関係あることだから。いろはちゃんもヒッキーの事好きだよね?」
いろは「その話ですか。はい、好きですよ。この前告白までしちゃいました。」
私はすごい動揺した。ゆきのんも隣で凄い動揺してる。
いろは「でも返事は保留にしてもらってます。告白したときに返事を聞いてもダメなのは分かってましたから。」
結衣「じゃあ、どうして告白したの?」
いろは「だって先輩って私の事妹扱いして女の子として見てくれないんですもん。このままお二人のうちどちらかと付き合う事になったら耐えられないなって。せめて女の子として見て欲しいかなって思って告白しました。」
雪乃「私は・・・」
ゆきのんがいろはちゃんの言葉を否定しようとした。
いろは「だめですよ、雪ノ下先輩。バレバレです。」
雪乃「そんなに分かりやすかったかしら」
ゆきのんは照れながらうつむいた。
結衣「私は気付いてたよ・・・。ゆきのんの事ずっと見てたから。」
雪乃「そう」
ゆきのんは照れたようにうつむいた。
いろは「でも今なら私にも少しは勝算があるんじゃないかなって思ってます。」
いろはちゃんの言葉に私は胸がズキっとした。
結衣「そう・・・だね。あんな事されたら誰だって心動いちゃうよね。」
いろは「だから今日のせんぱいへのデートのお誘いは私からお二人への宣戦布告です。今から私達はライバルです。あっ、でも今まで通り私とも仲良くしてくださいね。私お二人の事も好きなんで。」
結衣「うん、負けないよ、いろはちゃん、ゆきのん。」
雪乃「全くみんなあの男のどこがいいのかしらね。」
結衣「あっ、ゆきのん、それブーメラン。」
ゆきのんはそれを聞いて真っ赤になっていた。
今まではヒッキーの気持ちはゆきのんに傾いていたと思う、多分・・・。
でも今はもう分からない・・・。
いろはちゃんの頑張りを見て私敵わないって思っちゃった・・・。
あんなの見せられたら誰だって心動いちゃうよね・・・。
でも私だって負けないよ、ゆきのん、いろはちゃん。
いろはちゃんは翌日には退院し、翌々日からみんなで卒業パーティの準備に取り掛かった。
八幡Side
卒業パーティ当日。
一色の頑張りもあり、どん底の状況から最高の状態で卒業パーティ当日を迎えた。
一色はパーティの司会をこなしつつ、インカム越しに生徒会メンバーにてきぱき指示を飛ばしている。
大分生徒会長らしくなったものだ。
催し物は順調に進み、残すは最後の催し物のみとなった。
この最後の催し物には俺達の仕掛けが仕掛けられている。
すなわち三田先輩に本日の卒業パーティについて良かったと言わせるための仕掛けだ。
最後の企画というのはランダムに卒業生を選び、一色がみんなの前で選ばれた卒業生にインタビューするというものだ。
卒業生の名前を書いた紙が入った箱の中から一色がそれを引き、順にインタビューを行っていく。
最後の二人を除いてはランダムだが、箱の中に「仕掛け」があり、最後の二人だけは決まっていた。
城廻先輩と三田先輩だ。
卒業生へのインタビューは順調に進み、会場は盛り上がりを見せていた。
次は俺達が事前に"頼んでおいた"城廻先輩が一色のインタビューを受ける番だ。
俺達の計画は城廻先輩に卒業パーティついて絶賛してもらい、その後で三田先輩を壇上に上げ、今日の感想を言わせる事だ。
絶対的な支持を誇る城廻先輩が絶賛した後にそれを否定して場の空気を壊せば三田先輩は卒業生の間で大きく評判を損ねることになる。
あとは全て一色の技量に掛かっている。
城廻「・・・、これからも頑張っていきたいと思います。いろはちゃん今日は素晴らしい企画をありがとう。」
いろは「城廻先輩、ご挨拶ありがとうございました。先輩方に楽しんでいただけて私達も何よりです。最後にもう一方インタビューさせていただきたいと思います。」
一色は名前の入った箱に手を伸ばし、あらかじめ箱の裏側に用意してあった三田先輩の名札を取った。
いろは「あ、三田先輩ですね。三田先輩壇上へどうぞ。」
三田先輩は急な呼び出しに動揺しつつ、壇上へ上がった。
ここで少しでもひるんだ態度を見せてはだめだ。
何食わぬ顔で三田先輩にインタビューを行わなければならない。
いろは「3年間お疲れさまでした。三田先輩もご存知の通り本日の卒業パーティにあたり、様々なトラブルがありましたが、在校生が一丸となりなんとか卒業生に楽しんでいただこうと精一杯頑張りました。至らない点もあったと思いますが、本日は楽しんでいただけましたでしょうか?」
一色は城廻先輩の絶賛の直後の導入のインタビューにこの本題を持ってきた。
うまい、これ以上ないタイミング、これ以上ない聞き方だ。
この空気でこの聞き方で一色を否定すれば三田先輩は卒業生の間で立場を失うだろう。
三田先輩は面食らった表情をし、ちょっと悔しそうな顔を浮かべたがしぶしぶ笑顔で答えた。
三田「ええ、今日は楽しかったです。在校生は限られた状況の中でよくやってくれました。今日は本当にありがとうございます。」
いろは「ありがとうございます。そう言っていただけると私達も嬉しいです。では次に・・・。」
一色は持ち前の外面の良さを最大限に発揮し、"本題"とは無関係なインタビューを続けて行い、場の空気をさらに盛り上げていった。
計画はとりあえず大成功だったと言えるだろう。
卒業パーティ後。
オレ達と海浜総合の生徒会メンバーは後片付けを行っていた。
オレが機材を片付けていると一色が話しかけてきた。
いろは「流石先輩の策、見事に決まりましたね。普通こんな事誰も考えませんよ。」
八幡「ここまでうまくいったのは一色の尽力あっての事だよ。おかげでオレが本気を出さずに済んだよ。」
いろは「本気出すって、土下座の事ですか?先輩って本気出す方向性を完全に間違えてますよね。」
一色があきれ顔でオレの言葉に返してきた。
八幡「いや、まあ、ボッチだからできる事というか・・・。」
いろは「ところで先輩、ご褒美の件忘れないでくださいね♪」
一色は上目遣いでオレに確認を取ってきた。
オレは思わず照れて、目を反らしてしまった。
八幡「お、おう。」
一色の頑張りを見せられて以来オレは妙に一色を意識してしまう。
これはオレの勘違い・・・、じゃないんだよなこれが・・・。
オレは一色にどんどん外堀を埋められている気がしていた。
パーティ後、片づけをしている間もその後も三田先輩が俺達の前に現れることはなかった。
どのみち壇上でみんなの前で発言してしまった以上否定も出来ないだろう。
俺達はこの難しい局面を乗り切ったのだ。
例年より早い卒業パーティを終えた俺には一つビッグイベントが待ち構えていた。
小町の受験結果の発表だ。
小町はオレと同じ総武高校を第一志望にしている。
小町はできた妹ではあるが、成績に関しては俺よりよくない。
総武高校に合格できるかどうかは結構微妙なラインだ。
オレは小町と一緒に登校したい。いや、多分一緒に登校してくれないけど・・・。
オレは結果発表の日までずっと不安な気持ちでいた。