結衣Side
卒業パーティ以降段々ヒッキーといろはちゃんの距離が変わってきてる。
ヒッキーだってあんなの見せられちゃったら心動いちゃうよね。
奉仕部部室。
私とゆきのんがおしゃべりをし、少し離れたところでヒッキーが本を読んでいる。
いつもの光景だ。
コンコン。
部室の扉をノックする音が聞こえた。
雪乃「どうぞ」
部室の扉が開いた。いろはちゃんだ。
いろは「こんにちはー。」
雪乃「こんにちは、一色さん。」
結衣「やっはろー、いろはちゃん。」
挨拶をするといろはちゃんはヒッキーのところへ行った。
いろは「せんぱーい、コミュニティーセンターの近くに新しいカフェができたの知ってます?」
八幡「いや、初めて知った。」
いろは「私そこに行ってみたいんですよー。先輩って部活終わったら暇じゃないですかー。」
八幡「暇じゃないですかーってオレはまだ何も言ってないぞ。まあ、大体暇だけど。」
いろは「それはよかったです。じゃあ、終わったらそこでお茶しませんか?」
八幡「ん、いいぞ。じゃあ後で場所と時間の連絡をくれ。」
いろは「了解です♪ではまた~。」
いろはちゃんはヒッキーを誘うと生徒会室に戻っていった。
私とゆきのんは驚きを持ってそのやり取りを見ていた。
以前だったらヒッキーは絶対面倒くさがって絶対断ってた。
でもさっきは少しの躊躇もせずいろはちゃんの誘いに乗っていた。
私が誘ったらヒッキーは同じように応じてくれるかな?
私は今までのヒッキーとのやりとりを思い返した。
うん・・・、応じてくれてる・・・よね。
部活の終了時刻。
八幡「それじゃ帰るわ。」
ヒッキーは帰り支度をするといろはちゃんとの待ち合わせ場所に向かい、部室には私とゆきのんだけが残った。
雪乃「由比ヶ浜さん、私達も帰りましょうか。」
結衣「ねえ、ゆきのん、私達もお茶していかない?」
私は思いつめた表情でゆきのんを誘った。
ゆきのんは私の表情を見て何かを悟ったらしく承諾してくれた。
雪乃「ええ、いいわ。」
私とゆきのんはお茶をするため駅前のカフェに向かった。
私がゆきのんを誘ったのはヒッキーの話をするためだ。
ゆきのんは今の状況の事をどう思っているんだろう?
駅前のカフェ。
私達は飲み物を注文し、席で雑談していた。
私がしたかった話とは一切関係ない話ばかりだ。
話が途切れたところで私はゆきのんに本題を切り出した。
結衣「ねえ、ゆきのん。私ヒッキーに告白しようと思うんだ。」
ゆきのんは私の言葉に動揺している。
雪乃「ど、どうしたのかしら急に」
私は真剣な表情でゆきのんに話を続けた。
結衣「ゆきのん、気付いてる?最近のヒッキーといろはちゃんの距離。」
ゆきのんはちょっと落ち込んだ様子を見せた。
雪乃「えぇ、最近仲がいいわね・・・。」
結衣「ゆきのん、分かってる?いろはちゃんはヒッキーの事が好きなんだよ?」
雪乃「ええ、知ってるわ。」
ゆきのんは吐き捨てるように答えた。
結衣「私は今すごく後悔してる。どうしてもっと早くヒッキーに告白しなかったんだろうって。前はヒッキーの良さを知っているのは私だけだと思って多分それに甘えてたんだと思う。」
私は今の想いを切々とゆきのんに語った。
雪乃「由比ヶ浜さん・・・」
結衣「そうして何もしなかったらゆきのんやいろはちゃんまでヒッキーの良さに気付いて、気付いたらヒッキーの心がいろはちゃんに傾きかかってる。ううん、もう傾いているのかもしれない。」
話している間に涙が出てきた。
ゆきのんは黙って私の話を聞いてくれている。
結衣「でもこのまま何もしないままヒッキーと他の誰かが付き合うなんて絶対嫌。クラスだって4月から違うクラスになっちゃうかもしれない。だから私今ヒッキーに告白するの。ゆきのんはどうするの?」
ゆきのんは少し何かを考え、語り始めた。
雪乃「私は・・・、しないわ。それは彼の選択なんだから彼が決める事よ。それに・・・、私がもし比企谷くんと付き合ったりしたらまた彼に頼っちゃう・・・、彼に依存しちゃう・・・、私絶対ダメになっちゃう・・・。だからこれでいいの・・・。」
ゆきのんは目に涙を浮かべ諦めたように自分の想いを語った。
雪乃「でもね、由比ヶ浜さん、比企谷くんが付き合うとしたら、あなたがいいわ・・・。一色さんには悪いけど私はあなたがいい・・・。だから頑張って・・・。」
結衣「分かった。ゆきのんがそれでいいなら・・・。」
その日の晩。
私はヒッキーに電話した。
結衣「ヤッハロー、ヒッキー。」
八幡「おぉ、由比ヶ浜か。どうした?」
結衣「ねえ、ヒッキーデートしない?」
八幡「へっ。」
ヒッキーは突然の私の誘いに素っ頓狂な声を上げた。
結衣「ほら、ディスティニーランドで約束したじゃん。あれっ。」
八幡「あぁ・・・、あれな。・・・分かった。次の土曜でいいか?場所はどうする?」
ヒッキーやっぱり躊躇してる・・・。
きっといろはちゃんを意識してるんだろうな・・・。
結衣「うん、いいよ。場所は○○遊園地とかどうかな?」
八幡「分かった。」
結衣「じゃあ、待ち合わせ場所とかは後で送るね。」
もしかしたらこれがヒッキーとの最後のデートになるのかもしれない。
でもヒッキーに私の想いを知って欲しい。
例えそれが叶わなくても・・・。
デート当日。
私はヒッキーと遊園地の最寄り駅で待ち合わせることにした。
私は30分前に待ち合わせ場所に来ていた。
また早く来すぎちゃった~、ヒッキーは大体時間通りなのに。
時間になるとヒッキーがやってきた。
八幡「わるい、待ったか?」
結衣「ううん、今来たところ。」
八幡「じゃあ、行くか。」
私達は待ち合わせると○○遊園地に向かった。
土曜日だけあってそれなりに混雑している。
結衣「私とヒッキーの二人だけで出かけるのってあの噂の件以来だね。」
八幡「そういやそうだな。」
結衣「ヒッキーがいろはちゃんと付き合ってるって噂されて、その噂を消すためにいろんな女の子と一緒に帰ったりデートしたりしたんだよね。」
八幡「お~、あの時は大変だったわ。土日も出勤ってどこのブラック企業だよって感じだったな。」
結衣「でもあれのおかげで学校内でのヒッキーの評判少し良くなったよね。文化祭実行委員の件とかで変な噂流れてたから逆に良かったかも。」
八幡「いや、なんか評判の方向性が微妙に間違ってる気がするんだが・・・。なんかオレがプレイボーイみたいだったじゃねーか。オレは葉山かよってな。」
結衣「ははは、ヒッキーって葉山君にあまりいいイメージ持ってないもんね。」
八幡「おう、奴はスクールカーストの頂点。オレはその底辺にいる男。所詮水と油よ。」
そんな話をしていると私達はいつの間にか遊園地に着いていた。
結衣「着いたね~。」
八幡「よっしゃ、じゃあ片っ端から乗っていくか。」
結衣「うん♪」
私達はメリーゴーランド、ジェットコースター、ティーカップ等々、次々に乗っていった。
楽しかった。
最近ヒッキーの事で悩んでいた事が吹き飛ぶくらい楽しかった。
こんな時間がずっと続けばいいのに・・・。私はそう思った。
気付くともう夕方になっていた。
八幡「なんかそろそろ暗くなってきたな。」
結衣「じゃあ、ヒッキー最後にあれに乗らない?」
私は観覧車を指差した。
指した先にはこの遊園地でどこから見ても目立つ大きな観覧車がそびえ立っていた。
八幡「おう、じゃあ、あれ最後にするか。」
私達は最後に観覧車の所に向かった。
日も落ちてきて観覧車はライトアップされていた。
結衣「わあ、綺麗だね。」
八幡「じゃあ、乗るぞ。」
私達は観覧車に乗った。
結衣「ねえ、ヒッキー覚えてる?私がはじめて奉仕部に依頼に行った時の事。」
八幡「どうした、急に」
結衣「私ね、サブレを助けてくれた人にお礼にクッキー作ろうと思ったんだけど、ほら私料理下手だからさ。うまくいかなくて奉仕部に行ったんだ。」
結衣「ゆきのんは一生懸命教えてくれたけどさ、私全然うまくできなくて・・・。それでヒッキーが斜め下の解決策を出してきてさ。」
八幡「あぁ、あれな。」
結衣「その後も色々あってさ。ヒッキーはいつも斜め下の解決策を出して解決していったよね。奉仕部の活動は楽しかったなー。」
八幡「あぁ、そうだな。」
結衣「でも、ずっとは続けられないよね・・・。」
八幡「まあ、今年は俺達も受験生だからな。」
結衣「そういう事じゃ・・、ないんだけどな・・・。」
私は座りなおしてヒッキーを真っすぐ見た。
結衣「あのね、ヒッキー。私は続けられないんだったら新しくまた始めたいの。花火大会の日、ヒッキーが家まで送ってくれた時、私が何か言おうとしたの覚えてる?」
八幡「ん、あぁ・・・。」
結衣「今その続きを言うね。ヒッキー、私ヒッキーの事が好き。もし今の関係を続けられないなら私ヒッキーとまた新しく始めたい。ダメかな・・・?」
ヒッキーは無言でしばらく何かを考えて、そして口を開いた。
八幡「オレも由比ヶ浜の事は大事に思っている・・・。けどすまん・・・、今由比ヶ浜とそういう関係を始めてしまうのは間違っている。今のオレはきっと・・・多分・・・そういう関係を始めたいと思い始めてしまっている人が別にいる・・・。」
ヒッキーは涙を流しながら応えてくれた。
本当に私の事を大事に思ってくれているのが伝わってきた。
それと同時に私は選ばれなかったのだというのも分かってしまった。
涙がどんどん溢れてくる・・・。
こうなることは分かっていたはずなのに・・・・。
結衣「そっか・・・、うん、知ってた・・・。知ってたけど、言わずにはいられなかった。答えてくれてありがとう・・・。最後に教えて・・・、ヒッキーの関係を始めたい人っていろはちゃん?」
私がそう尋ねるとヒッキーは小さく頷いた。
結衣「そっか、いろはちゃんか・・・。」
ちょうど観覧車がまわり終わった。
この日俺達はそこで解散した。