これは、むかしむかしのお話しです──。
ある所に、一人の男がいました。
洗練された雰囲気に、周りの皆は近寄り難く思っており、寡黙な姿を見て静かに怯えていました。
その男は大きな力を持っており、男と対になる男がいるにも関わらず、異質で不気味な彼はずっとずっと独りぼっちでした。
男一人だけ、皆とは違う製造方法で作られたのです。
ある所に、一人の神がいました。
その神は絶大な力を持っており、しかし大きな力を持っていることに一人絶望していたのです。
何故なら、神の大きすぎる力で、家族と言っても過言ではない人達を殺してしまったからです。殺したくて殺した訳ではありません。絶大な力をずっと隠し持っておくのには、身体の負担が大きすぎました。
──そう、力の暴走です。
意図してなく、力を発揮し、神は周り全てを焼き払ってしまったのです。
神は嘆き苦しみ、そして封印することに決めました。
封印の仕方には色々な方法がありました。その中でも、神は【──】の形状で封印することを選んだのです。神は誤った力の使い方をしてしまいましたが、本来であればその力は護る力でも扱えた筈です。
神は力を無くし、消える運命です。
その時が来ることは願いません。ただ、もしその時が来たのであれば、自分の力を、正しい使い方で使って欲しい。そう願いながら、神はその力のこもった【──】を人気のない場所へと隠しました。
ごめんね
そう一言呟いて消えていった神を男は見ていたのです。いつの間にか膨大な力には精神というものが宿り、考えれるようになりました。膨大な力故にそれは良かったと考えるのが妥当です。
大切な
寡黙な彼は今日とて待ち続けます。
いつか自分を使ってくれるであろう片割れに。いなくなっても、消えてしまっても、輪廻は巡り続けるのです。またいつか会える、そう信じて生き続けるのでした──。
***
「え、これ絵本だよね? 子供に読み聞かせるような内容じゃなくない?」
優しく、綺麗な声で私に絵本を読み聞かせてくれた彼岸さんが絵本を閉じながら言った。「なんか後味悪いなー」と微妙な顔をしているので、どうやら彼岸さんはお気に召さなかったらしい。
「私はこのお話大好きなので、何度も読み返していますよ」
「ええ、どこが面白いのか私にはさっぱりわからんよ…」
この絵本は実物を題材にした絵本だと聞いたことがある。ということは、どこかに彼がいるはずなのだ。いつか探してみたいとは思うけれど、到底私には扱えるような代物ではないだろうし、見つけたところでというものあって、中々乗り気になれないでいる。
「いやまあ、七緒が好きなら好きで別にいいんだけどね?」
目尻を下げて優しく微笑む彼岸さんを見て、やはりこの人は優しい人だと改めて私は感じた。
本来、今日という日は彼岸さんの少ない休暇だったらしい。そんな少ない休暇を私のために時間を割いてくれている彼女はお人好しの人であり、優しい人だ。
元々、今日は八番隊副隊長である矢胴丸リサさんと読書をする日だった。しかし、京楽隊長の仕事が一切終わっていないらしく、鬼のように目をつり上げたリサさんが私に断りを入れてきたのだ。
確かに楽しみにはしていたけれど、仕事ならば仕方の無いことだ。そうリサさんに伝えると、リサさんは悲しそうな顔をした後「別に我儘言ってもええんで」と頭を撫でてくれた。
我儘を言う気なんて毛頭ない。そんなことをしたってリサさんを困らせてしまうだけだから。でも、私も情けない顔をしていたのだろう。リサさんが慌てふためいて、そして何かを見つけたような顔をした。
リサさんの視線の先には、少し機嫌の悪い彼岸さんがいた。小声でブツブツと何かを言っており、よーく耳をすませて聞いてみれば、殆どが総隊長に対する恨み言だった。聞いてはいけないものだと悟った私は今の記憶を消去する。
「彼岸さん!!」
「…ん、あ、リサと七緒じゃん。どうしたの?」
リサさんや京楽隊長と縁があった私は、京楽隊長とは同期である彼岸さんとも縁があった。七緒と呼ばれるほどには気を許してもらっているらしく、いつも私を見かけると頭を撫でてくれる。完全に子供扱いされているけれど、それを伝えたところで「子供は子供らしくいなさい」と諭すように言うので、やはり浮竹隊長の同期なんだなと思い知らされる。背格好が私とほぼ変わらないじゃないかとかは言ってはいけない。うっかり漏らした京楽隊長が半殺しにあっていたから。
「すみません、実は」
リサさんが説明すると、こめかみをピクピクと動かした彼岸さんが代わりに仕事をやると申し出てくれた。しかし、リサさんはそれを受け入れることはなく、首を横に振る。
「ちゃんと見張れとらんかった私が悪いねん。せやから私がきちんと仕事させるわ」
「別にいいよ? 私が懲らしめるって」
「…彼岸さんには申し訳ないんやけど、今日は私の代わりに七緒と一緒にいて欲しいねん。こんなん言うても寂しいやろうし」
「七緒が私でいいって言うなら全然いいけど…」
そんなこんなで私は初めて彼岸さんと2人きりになった。最初は緊張していたけれど、子供の扱いに慣れているのか、いつの間にか緊張は解れており、今では仲良く談笑できる仲だ。
「でも、正直意外です」
「何が?」
「京楽隊長が彼岸さんはボクと同類、仕事しない仲間だと仰っていたので」
彼岸さんはよく総隊長にお叱りを受けていると噂になっているし、なんというか、仕事は好きではないとよく話していたりもしていたから、そうなのかなと京楽隊長の言葉を鵜呑みにしていた。
が、どうやらこの反応を見る限りそれは違うらしい。
「確かに仕事はしないけれど、それは総隊長に頼まれた仕事に限るだから」
「…いや、総隊長に頼まれた仕事ほど優先順位の高い仕事はないと思いますけど……」
「七緒、君の考えは間違っている」
「ええ…」
元々彼岸さんは死神になりたくてなった訳ではないらしい。成り行きで死神になり、辞めようにもやめれない雰囲気で仕方なく今も続けているとボヤいていたのを思い出す。
それ故に異様に総隊長を嫌っており、尸魂界の中では総隊長が絶対のこの世の中で、総隊長に反抗する唯一の異分子と言っても間違いはないだろう。
「…彼岸さんは何故死神を続けているのですか?」
「それ、昔に浮竹に同じことを聞かれたよ」
『元柳斎先生も無理矢理死神にしたわけじゃないことは彼岸も気づいてるんだろ? 辞めようと思えば辞めることだって出来た筈だ』
そう浮竹隊長は彼岸さんに聞いたそうだ。彼岸さんは困ったような顔をしていたので、聞いてはいけないものを聞いてしまったのかと私は慌てた。
「あの、別に言いたくないのなら…」
「辞めるにしては、仲良くなりすぎたんだよ」
「仲良く、なりすぎた…?」
遠い目をして、ここではないどこかを見つめている彼岸さんを見て、居なくなってしまうのではないかとふと不安になった。無意識に彼岸さんの死覇装の裾を掴んでいたらしく、私を安心させるように彼岸さんは私の頭を撫でた。
「彼岸さんは…死神になったことを後悔していますか?」
「後悔? …してないと言えば嘘になるかな。出来ることならずっと夢を見ていたかった。でもその夢はいつか醒める夢だから。嘆いたところで何も始まらないよ」
「じゃあ、わたしはもっと頑張らないとですね! もっと頑張って、後悔してないっていつか言わせてあげます!」
「…ふふ、ありがとう」
私が将来、死神になるにしろ、彼岸さんにもっと楽しいと思わせたいと思った。いつも楽しそうに見えて、そうではないと知った。彼岸さんは何か大きなものを抱えていたりするのだろうか。
「団子でも食いに行こーぜ!! 腹減った!!」
ニカッと少年のような笑みを浮かべる彼岸さんを見て、杞憂だと悟った私は差し出された手のひらに自分の手を乗せた。
──子供は好きだ
うそ、本当は嫌いだ。だって私の核を突いてくるから。
──子供は嫌いだ
うそ、本当は好きだ。いつ見ても愛くるしいのだから。
「誰も死なせたくないと思ってしまうのは私のエゴだと分かっているんだけどなあ」
オチある方がいい?それともない方?
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有(シロちゃんじゃない可能性もある)
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無