拝啓 シロちゃんへ。 結婚してください──。   作:瑠威

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 ──大きく吼えた空は紫煙に包まれ
 何時になったら呼んでくれるのかと希うばかり

 ──気づいて欲しいと思う反面
 気づいて欲しくないと願ってしまうこの矛盾は何故なのだろう


 ──傷ついて──
 ──傷つかないで──


 ──嗚呼、今日も今日とて独り善がり


第12話

 

「はあ!? 遂に始解出来るようなったんか!! …変な嘘つくのはやめぇや」

「嘘じゃない!! 本当だもん!!」

「いい大人が「もん」て。分かりやすい嘘つくてどんだけ子供やねん」

「だから本当だっつってんだろーが!!」

「でっ!」

 

 

 何時だったかは忘れたけど、浮竹と始解が出来ないと話をしていた時、たまたまマコに聞かれてしまった。そこからは始解が出来ないことを何度か揶揄われたりしたものだが、結局のところ始解抜きでも体術や歩法方面では私の方が抜きん出ていたので、力でねじ伏せてきてやった。

 始解ができるようになったことを一応この馬鹿にも報告してやろうと思い、善意で報告してやったのに対し、その善意を悪意で返して来るマコは虚偽の報告だと疑ってくるのだ。せっかく教えてやったにも関わらずあまりにも嘘嘘とうるさいので、ケツをおもいっきり蹴ってやる。

 

 

「いたたた、オマエ…おもいっきり蹴りよったな…」

「私の足先に霊圧を流してマコを吹っ飛ばしても良かったんだけど」

「それはあかん!! 死んでまう!!」

 

 

 マコと初めて出会ったあの時を思い出したのだろうか。顔を真っ青にして首をブンブンと左右に振る。ユサユサと揺れる長髪がウザイことウザイこと。どれだけ主張したがるのその金髪。

 

 

「一度死んでそのウザったらしい髪でも切ってくれば?」

「なんで髪切んのに一度死ななあかんねん!!」

「あ、私が切ってやろうか? 間違えて首も切っちゃったらごめん」

「結局死ぬやんけ!!」

 

 

 髪と一緒で声も煩わしい。浮竹といい、最近の男は髪を伸ばすのがトレンドなんだろうか。…いや、少なくとも浮竹は最近の男ではないな。私は最近の女だけど。んー私と浮竹は同期だろけど、ここは私の心の安寧のためにも同期じゃないことにしよう。今からそう、同期じゃなくなりました! 誰がなんと言おうと同期じゃありません!! つーか女に年齢のことを気安く聞くんじゃないよ馬鹿者!! 私は前世で年齢間違えて平手打ち食らった馬鹿な男を見たからね!!! …私が言うのもなんだけど女って怖い生き物なんだよ(哲学)

 

 ちなみに、先程の「始解が出来るようになった」発言をマコに知らせる前に浮竹や京楽に伝えてきたんだけど、2人とも凄い驚きようだったよ。浮竹はさ「おお!! 遂に長年の願いが叶ったか!!!」なんて言ってさ、祝宴の準備始めちゃうの。いや、嬉しいよ? 嬉しいけどさ、始解で祝宴って…。卍解覚えた時は本当どうなるんだろう。あの喜びようだと本当とてつもないことをしてきそうで怖い。京楽もものすっごく喜んでくれてね。めちゃくちゃ高い酒を奢ってくれた。ほぼ祝宴と変わらないと思う。なんでこうも大人達は酒に結びつけたがるんだ…。いや、私酒強いし、好きだからいいんだけどさ。私女ぞ? もうちょっとプレゼントのしようがあったと思うんだマジで。

 

 もーさー、これ言い難いよね。実は「嘘でしたー」とか言ってみ? あの温厚な浮竹でも怒る結末が見えるよ…。やばい、死ぬかな私。殺されるかな私。まだ主人公に会えてないんだけど。名前思い出せないけど、一目は会ってみたいじゃん!!

 そんなに取り乱すならそんな嘘言うなって話だけど、この嘘は今後のためにも必要な嘘だったんだよ…。どうして急にこんな嘘をついたのか疑問に思うだろう。これは完全に藍染対策である。

 

 今までは、藍染の始解を見せられそうになったらクソジジイの名前を使ったりして、あの手この手で何とか逃げてきたわけだけど、最近はそうにも行かなくなってきた。なので、これからは私の始解が「複数人近くにいると使えない」始解となった。こうなることで、基本的に私は虚討伐を1人で行うことになる。いや、こんなことしなくても私は基本一人で殺ること殺っちゃってるんだけど、念には念をってやつで一応ね。これをすることで、藍染と一緒に虚倒しに行くよーという重大イベントを潰すことが出来るのだ!! そうなると藍染の始解を見なくても大丈夫でしょ? まあ元々隊が違うので藍染と共に出撃なんて早々なことがない限りは大丈夫なんだけど…これは所謂フラグと言うやつなのでなかったことにする。

 

 

「始解てどない能力やねん」

「え、能力? それは、あの…アレだよ。ドーンでバーンみたいな」

「なんで急に語彙力なくすん。なんかやましいことでも隠しとんのか?」

 

 

 「例えばほんまは始解が使えんとかな」とマコに疑いの眼差しを掛けられているっ! あの、だからほら、あの…こう、クルクルドバーンてなって、ギューッグシャァァァだから!!

 

 

「ドーンでバーンはどこ行ったん?」

「それはクソジジイに吸い込まれました」

「いや、なんで急に総隊長!?」

「あーもー煩いな!! じゃあギュルルルギーン!!!でいいよ!!」

「結局全部違うんかい!!」

 

 

 …ったく、人の揚げ足しか取らないんだから。こんな長髪だからモテないんだよ。ひよりしかまともな女の子が構ってくれないんだ。随分とひねくれた性格してること。

 数分、私の始解の能力について揉めたりもしたが、このままここで道草を食ってると惣右介に怒られるわとマコはこの場を去った。

 

 そして、その数時間後私は後悔することになる。私もついて行けば、そう後悔したのだ。

 

 マコ達が、反逆者として尸魂界を追放された。

 

 

 

 

 気づいたのはマコ達の霊圧が感じ取れなくなった時。これまでのうのうと生きてきた私には完全に原作知識が抜けきっており「魂魄が消失した事件」という重要キーワードを耳に挟んでいながらも、違和感はあれど大して重大には扱っていなかった。

 完全に思い出したのはマコ達の霊圧が感じ取れなくなった今。ハッと思い出した私は一番隊隊舎から、マコ達の元へ向かおうとする。が、誰かに裾を捕まれ止められた。

 

 

「何処へ行こうとしている?」

 

 

 私の裾を掴んだのは小さな子供だった。赤い彼岸花の刺繍が入った甚平に闇のような漆黒の髪色。血溜まりのような彼の赤い瞳に私が映っている。

 

 

「何処ってマコ達を救けに──」

「それはわざわざ藍染に目をつけられると分かっていてしなくちゃいけないこと?」

「それは」

「怒りに身を任せてもあるのは破滅の道だって、君の足りない頭でも理解できるんじゃないの」

 

 

 マコ達を助けに行かなくちゃいけない、それだけが私の頭の中でグルグルと回っていて、目の前の少年が何を知っているのかとか何者だとかそんなのは一切なかった。

 

 

「それに、救けに行くならせめて斬魄刀は持っていかなくちゃ」

 

 

 少年のその一言で私は斬魄刀を持っていないことに気がついた。…別に始解ができるわけではないし、斬魄刀を持ち歩いていないのはいつものことだ。私にとっては何も可笑しくない。

 

 

「やっぱり君は馬鹿だね。これじゃ始解も出来ないはずだよ」

「なんでそれを…」

「見れば分かる。そんなんだから君は馬鹿で無能だと言われるんだよ」

 

 

 別に馬鹿でも無能でもなんだっていい。彼らが救けられさえするのなら、私は何にでもなろう。そう思えるぐらい、彼らは私の中で大切な人達なのだ。推しとかそんなの関係ない。ずっと隣で笑っていて欲しい大切な仲間。

 

 

「何度も同じことを言わせるな。今動くのは得策じゃないと言っている。…そこまで行きたいと言うのなら逝けばいい。ただし、君には尸魂界の糧となってもらうよ」

 

 

 そう彼は言うと、どこからか斬魄刀を取り出した。鞘から刀を抜き出し、刃先を私に向けている。どうやら彼は、是か非でも私をここから先に行かせない魂胆らしい。

 

 

「それに()()()()()()()だろう。ここで彼らを助けたら、これから先の戦いがキツくなることを」

「…」

「私情で動くな。ここで動いたら、彼らは救かるかもしれないが…それ以上の犠牲が出る。死なない彼らを救け、藍染に敗れるか。死なない彼らを見捨て、藍染に勝つか。君はどちらを選ぶ」

「それは」

「仮にも君は三席という重役だろう。どちらの命が重いのか、分からないわけが無い」

 

 

 全部、彼が言っていることが当たっている。が、焦っている時に正論をぶつけられても、苛立ちこそすれど、落ち着くことはなく、グルグルとどうやったらこの場を切り抜けられるか、頭で考えてしまう。

 しかし、血が上った頭では大していい策が浮かぶことなく、やるせない自分が嫌で思わず俯いてしまう。そんな彼は私を見て隠すことなく大きなため息をつくと、斬魄刀を鞘に収めた。

 

 

「君はいつまで未熟でいるつもりだ。ずっと子供のままではいられないことぐらい分かっているんだろう。救けられるものと救けられないものの区別ぐらい分かるはずだ。()()()()()()()()()()()からこそ、取捨選択は間違っちゃいけない」

「……」

「解ったのなら今は眠れ。安心しろ。起きれば総てが終わっていよう」

 

 

 私が憶えているのはこれが最後だった。急に身体が燃えるような痛みに襲われ、意識を無くした。

 

 次に目覚めた時は彼が言った通り総てが終わっていた。喜助も夜一も、マコもひよりも見当たらない。そう、本当に何も出来ることなく、終わっていたのだ──。




 
 「はあ」と疲れたようにため息をついた彼は気だるそうに短い前髪を掻き上げた。
 結局のところ、彼は一度鞘に収めた斬魄刀を抜いており、彼岸を気絶させた技も斬魄刀の技だったりする。

 全身、軽い火傷を負った彼女を見た彼は、少し悲しそうな顔をした後、自分よりも一回り程大きい彼岸を俵抱きとはいえ、抱えた。


「随分と未熟過ぎる。これでは──」


 その先の言葉は聞こえなかった。彼が声にして発しなかったからだ。
 さて、気絶した彼女をどうしようかと一瞬悩む彼だったが、今の尸魂界は混乱している。一番隊に侵入することも容易いだろう。そう彼は決断すると、()()()()()()()()()

 彼の予想通り、一番隊に侵入することは容易く、()()()()()()彼岸の部屋へと足を進める。
 わざわざ押し入れから彼女の布団を引っ張り出すと、丁寧にそれを敷き、彼女を寝かせる。

 そして、愛おしそうに彼女の髪を梳くと、彼は名残惜しそうにその場を後にした。

 ──嗚呼、疲れた。
 久しく力を使っていなかったせいか、酷い倦怠感が彼の身体を襲った。ここまで鈍っていたとは、正直、彼の中でショックが大きい。

 しかし、ここで力を使ってでも止めていなかったら、これから先がキツくなると彼は分かっていた。
 そう、彼は藍染が叛逆を起こすと知っていたし、平子達が仮面の軍勢(ヴァイザード)と呼ばれる者達になることも()()知っているのだ。

 彼の中で、誰が死のうと正直関係もなければ興味もない。ただ一人、紅山彼岸さえ、生きのびてくれるのなら何も望みはしない。たとえこの世の生あるもの全てが居なくなろうと、彼岸一人が生きのびてくれるのなら──。


「…いや、それは彼女が喜ばないか」


 真っ黒な雲に覆われ、星さえ見えない空模様を見て彼は自嘲の笑みを漏らした。まるで彼岸の内心を映しているかのようだと。


「それにしても随分と生きずらい世の中になったものだ」


 今の生を受けている者はこうして生きているのかと、少し物珍しそうに辺りを見渡す。が、すぐに興味が薄れたのか、彼は常世の闇と混ざり姿を消した。


 彼女が血溜まりのような赤だと称した彼のその瞳は、気高き炎のように紅く、そして強き意志を持っているようにも見えた。

 果たして、その意思は彼女に刃を向くのか──それはまだ誰にも分からないことだった。

オチある方がいい?それともない方?

  • 有(シロちゃんじゃない可能性もある)
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