拝啓 シロちゃんへ。 結婚してください──。   作:瑠威

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読者の皆様につかぬことをお聞きしますが、原作の流れって一心行方不明→海燕死亡で合ってますよね?
海燕死亡→一心行方不明だと、尸魂界でルキアと一心が顔を合わせることになりますので、現世に行った時に「貴方は志波隊長!! 何故、ここに…」ってなっちゃいますもんね。そうですよね??

ちなみにオマケは力つきました。需要があればこの話が全て完結したら番外編で書くかも。


第15話

 

「「「おはようございまァすっ!!!」」」

 

 

 二番隊隊舎に入った途端、野太い声が私を包んだ。隠密機動とは思わせないバタバタと足音をたてて、隊士達は呼んでもいないのに私の前に整列を始めた。

 時刻は朝の八時。他の隊は知らないが、基本的に二番隊には朝礼という堅苦しいものは無い。これは、どうやら夜一の代からなかったものらしいが、頼んでもいないのに隊士達は私の前に集合すると、勝手に朝礼を始めるのだ。何度か辞めさせようと思ったが、この朝礼の総指揮官は砕蜂だと聞いて、私は全てを諦めた。

 

 

「おはざっす、隊長!!」

「ああ…おはよう。ええと…まれ、まれ…煎餅くん」

「俺は、大前田(おおまえだ)日光太郎右衛門(にっこうたろうえもん)美菖蒲介(よしあやめのすけ)稀千代(まれちよ)っス!! 覚えてください!!」

「おけ、煎餅くんね」

 

 

 人の名前が思い出せないのは人としていけないことだと思う。少し前まで主人公の名前すら思い出せなくて、凄くモヤモヤしていたけれどそれも昔の話。そう! 思い出したのだ!! 主人公の名前はアレでしょ?林檎でしょ? なんか果物系の名前だったなって思ってピンと来た。

 この調子で煎餅くんのこのクソ長い名前を思い出そうと奮起するけれど、結局まれしか思い出せなくて、煎餅くんになってしまう。煎餅くんはどうやら私に名前を覚えて欲しいらしく、顔を合わせる度にこうして名乗ってくるのだ。そろそろ諦めて欲しい。私は覚えられる気がしない。京楽の本当の名すら思い出せないのに、煎餅くんの名前に構ってる暇は無いのだよ。

 

 

「ひとつもカスってねぇぇぇ…!」

「貴様、うるさいぞ大前田愚息!!」

 

 

 そして、いつもこの茶番を止めてくれるのは砕蜂である。止め方はもちろん物理であり、どこかのお下げな学級委員長が「そこの男子うるさいよ!」と優しく止めてくれる世界では無いのだ。

 完全に霊圧を消した状態で砕蜂は煎餅くんの後ろに回り込むと、そのまま後頭部を鷲掴みにし、顔面を地面に叩き込む。「うぼぼぼ!!」と悲鳴になっていない声を上げる煎餅くんは、果たして息ができているのだろうか。

 

 

「相変わらず朝から騒々しいな」

「あ、大前田副隊長。おはよう」

「おはよう。昔から下の名で呼んでくれて構わないと言っているだろうに…君も頑固だな」

「大前田副隊長と煎餅くんで大前田親子の区別はついてるんで、大丈夫」

 

 

 何かと長い茶番を見せられた隊士達を解放してやり、二番隊の朝は始まる。歩き出した私と大前田副隊長を見て「お供するっス!」とついてこようとした煎餅くんに「貴様は怠っている書類でも片付けておけ!!」と言う砕蜂の言葉と共に華麗な回し蹴りを食らって、遥か後方へと飛ばされていた。

 「大前田四席!!」と慌てて駆け寄る隊士達を横目で見た砕蜂は満足そうな顔をすると、清々しい笑みを浮かべ「お供します!!」と言った。…うん、好きにすればいいよ。断っても後が怖いし…。

 

 

「それにしても風の噂で聞いたよ。大変だったようだな」

 

 

 ルンルンな砕蜂には聞こえない声量で大前田副隊長は私に耳打ちした。クスクスと揶揄うような口振りで言う大前田副隊長は、明らかに私の反応を見て楽しんでいるようだった。

 大前田副隊長の言う「大変だったようだな」とは浮竹と私の恋仲説を指している。十三番隊であったあの出来事は、瞬く間に瀞霊廷に知れ渡り、私が二番隊の隊首室に帰ってきた頃には溢れかえる程の手紙が届いておいた。一体、どこの馬鹿がこのデマ情報に踊らされたのかと思い、手紙を分別していると、中には五大貴族の朽木家からも祝儀が届いていたのだ。驚きを通り越して呆れたのは記憶に新しい。しかも、話の中心に居るはずの浮竹は状況を全く理解しておらず、のうのうと笑っているし、いつの間にかクソジジイまでが祝宴を上げようと言い始める始末。もう頭が痛くなって尸魂界を終わらせてやろうかと考えた時もあったが、全て京楽が丸く収めてくれた。

 

 

「砕蜂の耳に入れないようこちらがどれだけ苦労したか」

 

 

 私に恋愛のれの字もないことを大前田副隊長は知っている。その大前田副隊長の指揮の下、二番隊はデマ情報に流されることはなかった。本当に助かる。有難い。出来る副官で良かった!

 砕蜂は異常な敬愛を私に向けてきているので、私に恋人が出来たと知ったらどのような暴挙に出るかわからなかった。相手が浮竹なので、変な心配はしなくていいが、この勢いだと浮竹の暗殺まで企ててしまいそうという考えの元、このデマ情報を耳に入れないようにしたそうだ。

 

 

「まさかあんなデマ情報に踊らされるとは…総隊長も落ちたものよ」

「いやあ、あれはどう考えても彼岸をどこかの鞘に収めたかったんでしょ」

「おやおや、京楽隊長。朝から珍しいですな」

「えへへ、朝から七緒ちゃんが元気でねぇ。思わず逃げて来ちゃった」

 

 

 隊舎の柱に背もたれた京楽が「おはよ」とヒラヒラ手を振りながら私に話しかけてくる。いつの間に二番隊隊舎に…と思うものの、権力さえ使えば易々と入れるだろうし、私と同期ということもあって、二番隊は京楽に弱い。すぐに「わかりました!」と返事してしまうような純粋な馬鹿共が集まっているのだ。…本当にそれでよく隠密機動とかやってられるな。自分の隊ではあるけれど、謎で仕方ない。

 

 

「ちょっとさあ…彼岸、ボクのこと匿ってよ。この前助けてあげたでしょ?」

「はあ。…いいよ、隊首室来な」

「やーりぃ!」

「京楽…貴様っ!!!」

「ごめんね砕蜂ちゃん。今日の彼岸はボクが貰っていくよ」

 

 

 今にも噛みつかんとする砕蜂を大前田副隊長は羽交い締めにして止める。対して、そんな砕蜂を煽るかのように私の肩に手を置く京楽は本当に性格が悪い。このまま行くと、夜道に気をつけた方がいいルートまっしぐらである。ん、どうして夜道に気をつけた方がいいかって?そりゃ砕蜂に刺されるからに決まるでしょ。弍撃決殺は本当に怖いよ。死ぬからねマジで。

 

 

「ええ、そこは彼岸が砕蜂ちゃんに「私の大好きな京楽を殺さないで♡」って言うところじゃないの?」

「あまりにも調子に乗るならその息の根…私が責任もって止めることになるけれど」

「うん。ちょっと調子に乗って冗談が過ぎちゃったねごめんなさい」

 

 

 京楽を連れて隊首室に入ると、入ってすぐ右手にある本棚を弄る。ここには、二番隊の書類などが入っているのだが…少し手を加えたのだ。

 上から三段目。右から四番目の青い表紙をした本を押すと、その本はボタンのようになっており、本棚の左横の白い壁が自動ドアに切り替わった。自動ドアをくぐれば、そこからは下りの階段が続いており、京楽と共に下っていく。

 

 ここは言わば私達の隠れ家のようなもので、地下に張り巡らされた部屋は全て涅お手製のものだ。喜助が残していった多額の金を涅の前に見せびらかし、作らせたものである。地下の長い通路を5分程歩けば、十三番隊の雨乾堂にも繋がっており、浮竹も行き来可能な仕様になっている。

 

 この場を知っているのは私と京楽、浮竹と涅に念の為大前田副隊長にも教えている。緊急時に隊長格三人が見つかりません、なんて事態を防ぐためにだ。仕事さえしてくれれば私は何も言いますまいと言っていたので、最低限仕事は頑張ろうと思う。

 

 

「いやあ、八番隊も随分と悪知恵が働くようになっちゃってさぁ。ボクの傍に七緒ちゃんを置いておけば逃げられないってバレちゃったみたいなんだよね」

「…現在進行形で逃げてきてるやつが何言ってんだか」

「いやいや。これでも結構心を痛めてここにいるんだよ? ボクって演技上手いから中々そうは見えないだろうけど」

「あっそ」

「少しは興味を示してくれると嬉しいなあ彼岸ちゃ〜ん」

 

 

 そんな京楽の演技が上手い下手だと平行線を辿る下らない話よりも、私を早く鞘に収めたいというクソジジイの話に興味がある。アイツ…私の意思関係なしに何を考えている?

 

 

「ほら、彼岸って昔からじゃじゃ馬でしょ? 今では落ち着いてきてる節はあるけれど、相変わらず山爺にはツンケンな態度取ってるし、山爺は山爺なりに心配してるんだよ。浮いた話も平子くんとか浮竹だし、もういっその事無理やりにでもくっつけちゃえっ!て魂胆なんでしょ」

「マコと浮いた話なんて出たこと──」

「彼岸が知らないだけで、意外とそういう話は浮上してるものだよ。瀞霊廷にいる者達はこういった噂話が好きなのさ」

 

 

 マコも浮竹も一度も恋愛感情を持って見たことは無い。マコは弄りがいのある後輩で、浮竹は優しく見守ってくれるお兄ちゃんみたいな感じでいつも接している。ちなみに京楽は…近所のおじさんだ。

 

 

「どいつもこいつもよけーなお世話なんだよ」

「まあ、親が子を心配するようなカンジなんでしょ」

 

 

 この話はもう終わりだと言うかのように、京楽は手をヒラヒラとさせると、京楽専用に作られた部屋へと入っていった。それを見届けた私はため息をついて、自分の部屋へ入っていく。バタンと音をたて、扉は閉まる。急に入ってこられても困るので、念の為に鍵をかけると、私は迷わず机に向かった。

 

 ここ最近、突きつけられる『現実』。

靄のかかった記憶と共に思い出せない原作知識。自分がどれだけ思い出せるのかというのも、そろそろ知らなくてはいけない時期になってきた。きっと、主人公達が尸魂界にやってくるのもそう遠くはない。

 

 白紙と向き合う私は、きっと周りに誰か居たのなら心配されるに違いない。顔が途轍もなく歪んでいることは私も理解している。なんというか、気持ちの持ちようなんだろうけど、気分が悪くなってきたような気がする。まあ、『気がする』なんだけど。

 

 

 黒幕、藍染。大丈夫、ここは覚えている。主人公は…苗字が思い出せないけど、名前は林檎とかそんな赤い果物系の名前だったハズ。物語の全ての始まりは、白哉坊…じゃなくて緋真さんでもなくて、緋真さんの妹が関わっている。名前は思い出せない。十三番隊に来ることだけは覚えているので、きっと何もなければ多分私とも関わるだろう。

 その妹ちゃんが何かを仕出かして尸魂界に戻ってくる。それを連れ戻すために主人公が尸魂界にやってくる──というのが序盤のストーリーだったハズだ。その後は藍染のせいで破面だ滅却師だと物語は段々難しくなっていったのだ。おかげでオツムの弱い私には、全く内容が理解出来ず「あ、シロちゃんゾンビになっちゃった!?」と子供が絵本を楽しむような感じで毎週BLEACHを楽しんでいた。そう、この原作知識も破面編が終われば無意味なものとなってしまう。だって破面編が終わった後のことなんて、主人公のお仲間のメガネくんが寝返って敵になり、シロちゃんがゾンビになったぐらいしか覚えてないもの。

 

 

「まあ、私が覚えていたからなんだ、って話なんだろうけど…」

 

 

 やっぱり転生したのなら原作知識フル活用からの無双!!をしてみたいものだ。でも、転生をしても結局は主人公には勝てないのよ。主人公補正は強すぎる。

 

 

「せめて、オサレな斬魄刀でも使ってみたいっっ!!」

 

 

 とりあえずは──急募:主人公補正。




 
〜もしも大前田副隊長よりも先に砕蜂が噂を聞いていたら〜


「そう言えば三席…聞いたっスか? …彼岸隊長、浮竹隊長と付き合ってるらしいんスよぉぉぉ」


 「俺の許嫁はどこ行っちまったんスかねぇ…」と嘆く稀千代は気づいていない。隣でワナワナと震える砕蜂に。いつスーパーサイヤ人になっても可笑しくないほど、砕蜂の怒りボルテージは上がっていく。


「おい…大前田愚息。それは確かな情報なんだな」
「そろそろ愚息って言うのやめてくれません?」
「浮竹を殺す」
「へ?」
「私の彼岸さんを盗ろう等、いい度胸だな。万死に値する」


 死覇装を靡かせ、去っていく砕蜂を見て稀千代は青ざめる。稀千代からしてみればただ、世間話をしたような感覚だったのだ、砕蜂からしてみればそうではなかったらしい。


「全隊に告ぐ。浮竹を(ころ)せ」


 邪魔者は要らない。その思考により、大前田副隊長には何も知らせず、砕蜂は副隊長と隊長を除く二番隊隊士に緊急招集命令を下した。
 まさか、自分の世間話がこんなにも重い自体になるとは思わなかった。どうにかして止めようと、思いはするものの、自分一人では砕蜂を止められないとも分かっている。隊長に伝えるか…?いや、告げ口したのがバレたら浮竹隊長の前に俺が殺される。砕蜂なら本当にやりかねないと稀千代は震えた。


「死にたくねぇ…けど、これを放置したら親父に殺される…」


 結局どっちに転んでも殺される。
 稀千代の苦悩は終わらない──。


 次回からは『稀千代の苦悩』が連載されるゾ。是非見てくれよなッ!!
※されません

オチある方がいい?それともない方?

  • 有(シロちゃんじゃない可能性もある)
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