ロリでショタで30代の男の娘は好きですか?(IS編) 作:とんこつラーメン
一気に飛ばしたって意味不明になるだけですからね。
「お? 見えてきた見えてきた」
鞠絵が後部座席から顔だけを覗かせると、前方にはIS学園の校舎と思わしき建物の天辺付近が僅かに見えていた。
本来ならば、IS学園には専用のモノレールで行くのが普通なのだが、今回のように物資を運んだり、または様々な来客に備えて車両で入れるように専用の道路が作られていたり、またはヘリポートがあったりもする。
道路はともかく、ヘリポートの方は滅多に使用されることはないが。
「このまま行ってもいいのかしら?」
「大丈夫だぞ。前に仕事で何回か行ったことあるから、その辺の事は分かってる」
「よし。んじゃ、真っ直ぐ進むぞ」
スピードを保ちつつ鞠絵たちは一路、IS学園へと向かっていくことに。
視界に校舎が映っていた事もあってか、あっという間に学園まで辿り着く事が出来た。
「これ、どっから入ればいいんだ? 流石に校門から入るわけにはいかねぇだろうし……」
「ここにはちゃんと車両専用の入り口があって、中には大型車両専用の駐車場も完備してるんだ」
「流石はIS学園。金の掛け方にも隙がねぇや」
「同感ね。他にはどこにお金を掛けてるのかしら?」
「見える範囲全部だな」
「全部とは、どういう意味ですか? 姉さま」
「そのまんまの意味。校舎に各種施設。生徒や教員の為に用意された寮にもこれでもかと言わんばかりに金が掛けられてる。多分、オレやオータム、スコールは教員寮に入る事になって、マドカは生徒達の寮に入る事になるだろうな」
「むぅ…姉さまと離れるのは少し寂しいが…仕方がないか」
本当は多少の我儘ぐらい言いたいが、ここで自分勝手な事を言っても鞠絵を困らせるだけなのはマドカが一番よく理解している。
なにより、鞠絵の中の自分の評価を少しでも下げない為に、普段から頑張って良い子でいようと心掛けているのだ。
「オレがナビをするから、指示する方へと進んでくれ」
「了解だ。まずはどっちだ?」
「そこの角を右に曲がってだな……」
鞠絵の小さな指の向く方へとハンドルを切って進んでいく。
本人は真剣なんだろうだろうが、見ている者達には普通に小さな女の子が頑張っているようにしか見えていないので、なんとも言えない癒し空間となっていた。
・・・・・
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・・・
・・
・
鞠絵の指示のもとで進んでいくと、ようやく大型車両の駐車スペースへと到着。
他にも何台かのトラックやらトレーラーやらの大型車が駐車していて、すぐ傍には荷物の搬入口と思われる扉もある。
「あれ?」
「どうしたの?」
「あそこ……」
「「「ん?」」」
何かに気が付いた鞠絵が指をさすと、そこには腕組みをした状態で仁王立ちをしている千冬がいた。
どうやら、今までずっと鞠絵たちが…というか、鞠絵が来るのを待ち続けていたようだ。
「彼女も律儀ね……」
「いや…違うだろ?」
オータムには分かる。千冬は一刻も早く鞠絵に会いたいが故に、ああして駐車場でずっと待っていたのだと。
もし仮にオータムが彼女の立場でも、全く同じことをしたと言えるから。
「取り敢えず、どこか空いてる所に停めようぜ。話はそれからだ」
「賛成ね」
丁度、一番右端の所…搬入口に一番近い場所が空いていたので、そこで駐車をすることに。
慣れたハンドリングでトレーラーをバックさせ、きちんと停められた。
「お見事。やるなオータム」
「それ程でも…あるけどよ」
ここで自分を卑下しないのがオータムなのだ。
「よいしょ…っと。おーい、千冬~」
後部座席の扉を開いてからピョンと飛び降りると、千冬に向かって手を振りながらトコトコと歩き出す。
それに続くようにして、マドカ、オータム、スコールも一緒に降りてきた。
「よく来たな鞠絵。それから……」
彼の後ろにいる三人にも目をやって、複雑そうな顔をしながら呟いた。
「……お前達も」
「あら。私達は一括り?」
「何事も鞠絵が一番なんだろ?」
「う…うるさい……」
図星なのか、千冬は気まずそうに顔を逸らしながら顔を赤らめる。
「織斑千冬……」
「…こうして会って話すのは、初対面の時以来だな」
「そうだな」
千冬とマドカ。
この二人は単に顔や容姿が似ているという事だけでは片づけられない程に複雑な事情を抱えているのだが、その辺の事は既に鞠絵を挟む形で解決済みになっている。
流石に何もかもを無かった事には出来ないが、それでも無闇矢鱈と噛み付くような事はもう無いだろう。
「今更、私からは何も言う事は無い。今の私は『望月マドカ』であり、姉さまの妹なのだからな」
「あぁ…分かっているさ。だが、もし私が鞠絵と婚約をすればお前は義理の妹という事にはなるな?」
「なっ…!?」
千冬の口から、まさかの爆弾発言にマドカは絶句する。
前々から彼女が鞠絵に対して非常に強い好意を抱いている事は知っていたが、もう結婚の事まで考えていたとは。
だが、そこに待ったを掛ける人物が約二名。
「あら…それはちょっと聞き捨てならないわねぇ~…?」
「だな…鞠絵を嫁にしたいと思ってるのは、お前だけじゃないんだぜ…?」
「ほほぅ…?」
千冬、オータム、スコール。
この三者の間でバチバチと激しい火花が散る。
一色触発5秒前。
誰かが止めなければ、この駐車場が戦場になってしまう。
そんな状況に待ったを掛けたのは、話に全く入っていけていない一番の当事者だった。
「ちょい待ち。まず、なんで男の俺が『嫁』なんだよ? 普通は婿だろうが」
「「「え? 何言ってんの?」」」
「それはこっちの台詞なんだけどね?」
こんなにも小さくて可愛いのが『婿』だなんて有り得ない。
白いタキシードなんかよりは、絶対にウェディングドレスの方が似合う。
というか、いつの日か必ず鞠絵に着させてやる。
この三人の数少ない共通認識であり、野望であった。
「それと、さっきから千冬の携帯が鳴ってるぞ。出なくてもいいのか?」
「な…何ッ!?」
鞠絵に言われてから、急いでポケットの中から携帯を取り出すと、画面には『学園長』の文字が。
向こうが切る前に取れて本当に良かった。
「も…もしもし?」
『もしもし? 織斑先生ですか? こちらから倉持技研のトレーラーが敷地内に入ってくるのが見えました。恐らくは望月博士たちが乗っているトレーラーでしょう。到着し次第、彼らを理事長室まで案内してくれますか? 幸いなことに、入学式までにはまだ少し時間があります。彼らに挨拶や礼などを言わないといけませんからね』
「わ…分かりました。すぐに案内します」
『頼みましたよ?』
通話が切れて、千冬はほっと胸を撫で下ろす。
千冬と言えど、轡木相手には受話器越しと言えども緊張をしてしまうのだ。
「…そんな訳だから、今から理事長室に案内する。着いて来てくれ」
「お前さんも苦労してるんだな……」
「まぁ…その…愚痴なら幾らでも付き合うわよ?」
「済まん……」
大人の女性同士だからこそ分かる奇妙な友情に、鞠絵とマドカは小首を傾げていた。
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・・・
・・
・
「ここが理事長室だ」
千冬に案内される形で校舎内へと入り、そのまま彼女の後に着いていく形で進んでいった先に現れたのは、近未来的なデザインの他の施設とは全く雰囲気の異なる、旧世代的な感じのクラシックな、手動で開くタイプの木製の扉であった。
「まるで、タイムスリップでもしたかのような場所だな……」
思わず鞠絵がそう呟いてしまうのも無理は無く、実際に他の三人も心の中では全く同じことを考えていた。
「織斑千冬です。望月博士たちをお連れしました」
三回ノックをしてから、千冬はゆっくりと扉を開ける。
室内には、机の上で肘をついた状態で微笑みながらこちらを見ている好々爺、IS学園理事長の『轡木十蔵』が座っていた。
「案内ご苦労様でした。そして……」
中へと入ってから、彼の前に並ぶようにして立った四人。
千冬は端の方へと移動して、話の邪魔をしないようにしている。
「ようこそいらっしゃいました、望月博士。スコールさんとオータムさん」
「久し振りだな、じーさん」
「私達は初めまして…ね」
「そうなるな」
この中で轡木と交流があるのは鞠絵だけで、スコールやオータムは出逢った事すらない。
マドカに至っては、正真正銘の初対面である。
「貴女が望月博士の妹さんですか?」
「は…はい! 望月マドカ…です」
いつもは強気なマドカも、轡木の無自覚に発せられるプレッシャーに冷や汗を掻きつつガチガチになっている。
この圧力を真正面から受けて平気な顔をしていられるのは、鞠絵以外には彼の両親しかいない。
「まずは、こうして来て下さったことに感謝します。自分でもかなりの無茶振りをしたと思っていたのですが…」
「気にすんなよ。その代りにこっちだって我儘を聞いて貰ったんだ。御相子だよ」
「…そうしていると、お若い頃の陸奥守博士を見ているようですね」
「親父の若い頃?」
「えぇ。そうやって笑っている姿なんて、特によく似ています」
「ふ~ん……」
軽く流してはいるが、本当は飛び跳ねたいぐらいに喜んでいる。
鞠絵にとって、両親は目指すべき人生の目標であると同時に、この世で最も尊敬している存在なのだから。
「さて…挨拶はこれぐらいにして、これからの事について話しましょうか」
軽く咳払いをしてから、轡木は放出していたプレッシャーを収め、この場にいる全員に楽な姿勢で構わないと言った。
「オレたちに教師をして欲しいって事だったけど、三人それぞれでどこかのクラスでも受け持つのか?」
「それなんですが……」
ここで少し間を開けたことで、何か重要な事でも言うのかと身構える。
「望月博士には、担任ではなくてISの授業専門の教師として、様々なクラスで授業をして欲しいのです」
「それってつまり、普通の高校みたいに授業ごとに色んなクラスに行くって事か?」
「そうなります。可能であれば、全てのクラスで最低でも一回は授業をして欲しい…と思っていまして」
「一年だけじゃなくて、二年や三年もってことか?」
「はい。今や、ISに関わる人間であなたの名前を知らない人間はいませんし、こういう機会でもなければ博士の授業を受けるだなんて事は出来ませんから」
轡木の言う事も一理ある。
それに、色んな学年の授業をする事で、そこから得られることもあるかもしれない。
かなりのハードスケジュールにはなるかもだが、自分にとって損は無い。
「別にいいぞ?」
「そうですか。本当にありがとうございます」
まさかのOKサインに、言い出した轡木自身が一番驚いていた。
相当にハードな事になるのを承知の上での提案だったのだが、ほんの少しだけ考えてからの了承に、鞠絵の懐の厚さと自己探求心に感謝しかない。
「その礼と言ってはアレですが、学園側から色々と用意をさせて戴きました」
「用意?」
「まず、寮内に博士の自室兼研究室を作りました。二部屋を合体させる形で」
「おいおい…マジかよ」
「かなりの突貫工事ではありましたが、ご満足は頂けるかと」
自分一人を招き入れる為にそこまでするか?
轡木の本気度に鞠絵は脱帽するしかなかった。
「ですが、職員寮では空き部屋が無く、仕方なく生徒達の寮に部屋を作らざる負えなかったのですが……」
「別にそこら辺は気にしないよ。ちゃんと研究と寝泊りさえできれば文句は無いさ」
最悪、ちゃんと雨風さえ防げれば何も言わない。
過酷な環境でフィールドワークをしたことだって一度や二度じゃないし、ソロキャンをしてのんびりとする事も多々ある。
「次はスコールさんとオータムさんについてですが…」
「やっと私達ね。こちらはどうなるのかしら?」
「はい。スコールさんには一年四組の担任をやって貰い、オータムさんには副担任をして欲しいのです」
何をさせられるのか色々と予想は立てていたが、まさかの担任だとは思わなかった。
いや…本当は少なからず、その可能性も考慮はしていたが、確率は低いと考えていた。
なので、一つのクラスを任せると言われたスコールとオータムは内心で驚いている。
「クラス担任…ね。やってやれない事じゃないけど……」
「副担任か。まぁ…あたしにはそれぐらいが丁度いいか」
前の組織でも、オータムはスコールの補佐のような事をしていた。
それは倉持技研にいた時もそうだったし、その関係がIS学園でも続いただけの事だった。
「そして、マドカさん。貴女には一年一組…つまり、そこにいる織斑先生のクラスに編入させようと思っています。よろしいですか?」
「あの人のクラスに……」
幾ら、過去の事を払拭出来ているとはいえ、何の感情も抱いていない訳ではない。
だが、これは逆にいい機会だとも考える。
本当の意味で自分の心に決着をつける機会だと。
「分かりました。私はそれで構いません」
「…ありがとうございます」
轡木もマドカの事情は全て把握している。
だからこそ、今の彼女には敬意を持って接したい。
この歳で、自分自身の過去と心と向き合おうとしている彼女に。
「望月博士…いや、これからはもう『望月先生』ですね。先生方の事は入学式の舞台にて発表するつもりでいます。出席をお願いできますか?」
「発表ね~…。普通に発表するだけじゃダメなの?」
「博士のファンは学園内にも多いですから、顔を見せれば入学式も盛り上がるだろうと思いまして」
「別に入学式は盛り上げるようなイベントじゃないだろ……」
この親父の頭の中が全く読めない。
オータムはげんなりしながら轡木の事を見ていた。
「それでは、望月先生。スコール先生。オータム先生。これからよろしくお願いしますね」
「「「はい」」」
「特に望月先生には、例の二人目の男の子の事もお願いしますね? 先駆者として彼と話したり、導いてあげてください」
「わーってるよ。それもまたオレの仕事だしな」
基本的に女しかいないIS学園において、たった一人の男子生徒というのは非常に肩身が狭いだろう。
だからこそ、同性の鞠絵が心の支えになってあげないといけない。
これから本当に大変だ。
だけど、だからこそやり甲斐がある。
白衣の袖の中で小さく拳を握りしめながら、鞠絵はこれからの事に対して決意を固めた。
その後も簡単に事務的な話をしてから、鞠絵たちは理事長室を後にした。
部屋を出た直後に千冬とオータムとスコール、マドカの四人は思い切り息を吐いて安堵していたという。
次回は入学式からの原作突入…かも?