コードギアス~反逆のルルーシュ~ 過去(?)に戻りし魔王   作:ダラダラ@ジュデッカ

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プロローグ

 一筋の光明を輝かせた、鋭く鋭利な剣を携えた仮面をつけた人物が迫りくる。

 

 雨のように降り注いでくる銃弾を異常なスピードで走って抜け、段々と距離を縮める。

 仮面の人物の標的となっているであろう白を基調とした人物―――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、目の前で起こっている光景に驚嘆の表情を隠せないでいた。

 

 ――――もっとも、それは表での顔。彼の内心では、全て計画通りに進んでいる事に対してほくそ笑む。

 

 死を恐れないのか、と問われればそうではない。それは自分に課せられた業であり、罰。

 

 自身が死ぬ事によってその業が、今まで行ってきた罪が晴れるなら安いもの。

 元々、この計画は男と目の前にいる仮面の下にいる人物、そして“魔女”と呼ばれし不老不死の少女の三人で編み出した計画でもある。

 

 神聖ブリタニア帝国、第99代唯一皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。

 

 彼が即位した事によって、世界は大きく変わった。激変したといってもいい。

 貴族制度の廃止、各エリアの開放、歴代皇帝陵の破壊、財閥解体など―――歴代皇帝が行ってきたものと全く反対の政治を強引とも取れる方法で敢行した。

 各エリア―――すなわち、ブリタニア帝国に植民地として従わされていた人々は、ルルーシュを正義の皇帝として崇め、慕った。

 逆に、ブリタニアの人々からは今まで築いてきた歴史や文化、更に当たり前と信じていたものを次々と壊され、非道な皇帝として歴史に名を刻み、憎まれた。

 そんな彼は旧皇帝派やかつて日本開放という志を元に戦っていた黒の騎士団と対峙。

 兄であるシュナイゼルは策を持ってギアスで従わせ、妹であるナナリーの意図を酌んだ上で彼らを屈服。遂には世界征服を完成させた。

 

 

 

 そして、今。

 

 

 世界の憎しみを全て自分に向けさせ、あえてその憎しみの現況を『ゼロ』という英雄に討たれる事によって完遂する計画、『ゼロレクイエム』というもので実現する。

 かつてはルルーシュ・ヴィ・ブリタニア…いや、ルルーシュ・ランペルージともいうべきか。その仮面を被り、世界に対して反逆を開始した。

 

 『ギアス』という力を受け取った事で、彼は“ゼロ”として立った。

 

 始めは妹が安全に暮らせる世界を作り出す事と並行し、母の死の真相を究明する為に戦った。

その為には他人は愚か、例え肉親であろうと、自分の忠実な駒として扱った。

 数々の犠牲を踏んだ上で、ルルーシュはここまで来た。分かりあっていた筈の親友とも対峙した。友の父を間接的に殺した原因ともなった。

 一度は挫折しかけたが、妹の為だけに戦っている訳ではないと教えられた事もあった―――。

 それを教えてくれた少女が、拘束されながらもルルーシュの真意を理解したかのように目を見開き、そしてルルーシュを見た。

 

 視線に気づいたわけではないが、彼女―――紅月カレンと目が合う。

目が合った瞬間、意地の悪そうな笑みを浮かべて彼女に返した。

 

『お前の考えている通りだ、カレン―――』

 

 カレンの瞳に涙が溜まる。ああ、最初から死ぬ気だったのだなとその時になって初めて気づいた。

 最初からその意を理解していれば。カレンは今頃どうしていたか。

 ルルーシュについたか? それとも、あえてその計画を止めるために敵として立ちはだかるか。

 ただ、どちらにしてもルルーシュは突き進んだだろう。

死ぬことを恐れず。この時を待ちわびたかのように、彼はその場にいたのだから。

 

(馬鹿よ……。ホント、馬鹿……)

 

 ルルーシュの考えている事も馬鹿らしかったが、何故そんな大掛かりの計画を自分に話してくれなかったのか。

 いや―――話せるわけないか、とカレンは悟る。それほど彼らの意思は固い。カレンが出張ったところで、所詮は。

 

(フッ……。今考えてみると、あっという間の人生だったな。ギアスを手にしてから此処まで……よく生きてこれたものだ)

 

 自分自身を嘲笑する。歩んできた記憶がルルーシュの脳裏にフラッシュバックされ、鮮明に思い出される。

 全ては『ギアス』という力から不老不死の少女と出会った時から始まった。それと同時に、あの時から全てが決まっていたのかもしれない。

 力を手にしてから、こうして死に絶えるこの瞬間まで。これまで歩んできた道のりに悔いはない。

 

 世界を壊し、世界を作る。

 

 もはや心残りはない。

 

 後は自分が仮面の人物『ゼロ』―――その仮面の下は、“親友”枢木スザクなのであるが―――によって殺されるのを待つのみ。

 

 ジェレミアを踏み台にし、『ゼロ』がルルーシュの目の前に降り立つ。

 ルルーシュはすかさず、隠し持っていた拳銃を『ゼロ』に向かって構えた。

 

「貴様!」

 

 銃口を向けるや、それはいとも簡単に弾き飛ばされる。

 拳銃は宙を舞い、もはやルルーシュには成す術はない。遂にその時が来たのだと――ルルーシュは今度こそ笑った。

 

 さあ、殺せ。お前の憎しみと世界中の怒りをこの場でぶつけろ!

 

 ユフィを殺された怨みを。俺の行いで死んでいった者達の怨恨を。今、此処で!

 

(俺を……殺せ、スザクッ!)

 

 

 

 

 

 

 

 だが。

 

 

 

 剣がルルーシュを刺し貫かんとした瞬間、突然ルルーシュの両目にギアスの紋章が突如として輝きを放つ。

 

「なっ……?」

 

『…なっ!?』

 

 ルルーシュ、そして『ゼロ』が共に声を漏らす。

 

 ギアスを封じていた筈のカラーコンタクトがとれた訳でもない。ただ、突然ルルーシュの両目にギアスの紋章が浮かび上がったのだ。

 『ゼロ』は、ルルーシュの両目を見て一瞬だけ手を止めた。いや、止まってしまったと言っても過言ではないだろう。

 

 だが、その行動が計画を歪ます原因となる事にはその時は気付きもしなかった。

 突如の事態で困惑するルルーシュだが、更に混乱する事が起こった。

 それは、ルルーシュとゼロの間にギアスの紋章が描かれた真紅の壁のようなものが出現し、それはルルーシュを囲むように出現したのだ。

 

 まるで、ギアス自身がルルーシュを守るような―――そんな奇妙な事態が発生していたのだ。

 

 壁は天まで上り、晴れ渡った青空を汚していく。まるで血のような深紅に染まり、不気味さが周囲を漂う。

 

(何だ……? これは、どういう事だ……?)

 

 突然の事態にルルーシュは思わず身を引く。

 『ゼロ』は、何とかルルーシュに近づこうと真紅の壁に対して斬り付けるが、壁はびくともしない。逆に剣が弾き飛ばされ、地表へと突き刺さった。

 剣を失った『ゼロ』は、ルルーシュを正面から見やる。そして、仮面の下から声が再び漏れてくる。

 

『ルルーシュ! これは……どういう事だ!?』

 

 まさか、こんなタイミングでルルーシュが裏切る筈が無い。

 計画を決めたのはルルーシュ自身でもあるし、ギアス能力にこんな発現は無い筈だ。

 想定外の事に弱いルルーシュであるが、ルルーシュは後ろに数歩下がった辺りで突如として顔を抑え始め、あまつさえクククと声を上げて笑う。

 そして、顔を上げるや、『ゼロ』をあざ笑うかのように見ながら強く言い放つ。

 

「ククク……ハハハ! こういう事もあろうかと、万全の策を用意しているのは至急当然の事だろう! 

こうなる事は最初から予測していたさ。残念だったな、ゼロ!」

 

『……! 君は……命が惜しくなったか!』

 

「ハハハ、その通りだ、【ゼロ】よ! 誰とて命は惜しい……。無論、私も同じだよ!」

 

『貴様!』

 

 声が漏れるのも構わず、『ゼロ』は叫ぶ。

 ルルーシュ自身も言いながら、内心で動揺している。こればかりは流石に予想できる自体ではない。

 だが、民衆が見ている手前、そういうしかないのだろう。それが皇帝という立場故なのだろうか。

 ゼロは何とかして壁を破ろうと拳を叩き込む。が、やはり壁は堅牢になっているのか、『ゼロ』の拳だけではビクともしない。

 その様子にルルーシュは更に高笑いを上げるが、段々と自分を取り巻く真紅の光が増徴しているのに少なからず気付いていた。

 これから自分がどうなるか。そんな事など分かる筈が無い。

 

 だが、ルルーシュはゼロを指差し、言い放つ。

 

「ハハハッ! 忘れるな、ゼロよ! 民衆よ! 私は必ず再起する!

 あらゆる手段を使い、この世界を……再び私のものとしてみせる! それまで…覚悟しておくのだな! 

 このルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがいる限り、お前たちに平穏はないのだ! クククク……ハハハハッ!」

 

 言い放った瞬間、ルルーシュの体は壁の中の光に包まれた。

 あまりの眩しさにルルーシュは思わず目を閉じたが、同時に口を微かに開かせるのが、『ゼロ』にはしっかりと見えた。

 

 あとは、頼むと。

 

『ルルーシュッ!!』

 

 周りが見ているのも厭わず、『ゼロ』―――枢木スザクは叫ぶ。

 

 だが、光が更に強くなり、いくら仮面をしていても防ぎきれるものではない。ゼロも自分の身を守る為に両手を前に出し、己の胴体を守る。

 

(ナナリー………。すまなかった……)

 

 光に包まれる瞬間、彼が思った事は最愛の妹の事。

 彼女もまた、消えゆくルルーシュに手を伸ばし叫んでいた。声こそ聞こえないものの、ルルーシュは安堵したように笑ったのだった。

 

 

 光が晴れた瞬間―――『ゼロ』の前には誰もいなかった。

 

 

 先程まで確かに存在していたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの姿は何処にもない。

それどころか、あれほど染まっていた空もすっかりと晴れ渡り、元の青空を取り戻していた。

 

『ルルーシュ……君は』

 

 呆然と立ち尽くす『ゼロ』。唖然とする民衆や処刑される筈だった黒の騎士団の面々や旧皇帝派の人間達。

 

 果たして悪逆皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは死んだのか。

 

 いきなり発現した現象もそうだが、彼の失踪の謎は極めて多く、分からぬことだらけだった。

 だが、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという世界を征服した皇帝は消えた。それだけは事実であった。

 しかし、最後にルルーシュが残した言葉―――“私は再び再起する”という不安を民衆は最後まで拭うことは出来なかった。

 そんな不安を拭えないまま、人々は訪れた安息の日々を静かに受け入れる事になる。

 実際、ルルーシュが今後表舞台に立つ事はなかった。彼の悪名は後世に渡るほどに悪化していき、史上最悪の皇帝と罵られる結果になった。

 次第にルルーシュという存在は時代の変化と共に忘れ去られていくが、彼が行った様々な試みは、後の世に大きく名を遺していくことになった。

 

 ともかく、世界は、皇帝ルルーシュの失踪という形で一時機の平穏を取り戻す。

 

 あの光の発現で彼は死んだのか。それとも何処かに隠れて機会を練っているのか。

 

 様々な憶測が流れたが、どれも正確に的を得ていなかった。

 

 果たしてルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは何処に行ったのか。

 

 

 

 

 それは、今後の話で語られていく事になる―――。

 

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