コードギアス~反逆のルルーシュ~ 過去(?)に戻りし魔王   作:ダラダラ@ジュデッカ

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第三話 勝利への道筋

 五機ほど撃墜した時であろうか、レール上を疾駆していた葉月の無頼の周囲に展開していたV-TOL機が旋回しながら次々に後退していく。

 V-TOL機が退いたという事実に葉月はほっと息を吐き、胸を撫で下ろした。

とりあえず、目先の危機は脱したか。葉月はエナジーの残量を確認しながらも、まだ油断できないと思い、周囲に気を配る。

 

(エナジーの残りは後二十五分……ぐらい。それが過ぎれば……)

 

 間違いなく、その時は最悪の事態が起きるのは間違いないだろう。

 今現在、葉月が所属しているレジスタンス“紅グループ”が保持しているナイトメアは葉月が搭乗しているこの無頼のみ。

 これが動かなくなってしまえば、ブリタニアに対する抵抗の手段を失う事――それは、武力に頼る事しか出来ない。それはささやかで小さな反逆であろうが――と同義であり、彼等からすれば不穏分子は即刻殺されてしまうしかない。

 それほど、ブリタニアの兵器は脅威だ。それに、やっとの思いで一機倒したとしてもどんどんと出てくるから質が悪い。

 

「……! あれって…」

 

 無頼のレーダー――もっとも、現役KMFとはいえ、初期型のKMFの計器を改造した物に過ぎないが――の反応を見て、葉月はハッとなって後方から迫ってくるV-TOL機の方に機体を向ける。

 通常の攻撃機とは少し違い、映るのはやや大き目のV-TOL機。横幅の広い、エイのようなずんぐりとしたフォルムが特徴だった。

 そして、エイの尾びれにあたる部分には、人型の機体――グラスゴーが張り付いている。

 

 輸送機―――! 敵も、とうとう本気を出して来たという事か。

 

「ナイトメア! くそっ、もう出来てきたのか!」

 

『各機、後は我々に任せろ』

 

『イエス、マイ・ロード!』

 

 外部スピーカーでV-TOL機に指示を出すと、後退を開始していたV-TOL機が今度こそ離脱していく。

 指示を出したグラスゴーは、V-TOL機が離脱するのと同時に、自機を運んでいたV-TOL機から離れ、真っ直ぐ降下してくる。

 降下してくるのは勿論、葉月が気が付いた通りにナイトメアフレーム“グラスゴー”。

おまけに一体は本来は漆黒のフレームなのにも関わらず、機体を青白く輝いており、グラスゴーでありながら専用のフレームなのだという事が分かる。

 つまりはエース機。それなりに本気を出してきたという事か。

 

「でも、降下なんてさせるもんですか!」

 

 葉月の無頼は、降下する前に叩こうとグラスゴーに対してスラッシュハーケンを射出する。

 しかし、そんな事などまるで読んでいたように、降下中のグラスゴーは腰部からスタントンファを抜き取り、スラッシュハーケンを弾き飛ばす。

 空中であのような動きを出来るのは、まず初期型のグラスゴー如きでは不可能。更に、パイロットである騎士の手腕も重なって出来た芸当であろう。

 まさか弾かれるとは思わなかった葉月は、コックピットの中で目を見開き、操縦桿をギュッと握りながら声を上げる。

 

「接近戦用の武器!? 初期型じゃない……!? 後期生産型か!」

 

『攻撃機はどうだったか知らないが、その程度で落ちるグラスゴー、そして……“レヴァル・フィニット”ではない!』

 

 グラスゴーのパイロット――レヴァル・フィニットが言い放つと同時に、地響きと共にグラスゴーが二体正面に着地する。

 その手には専用武器であるアサルトライフルが握られており、銃口は葉月の無頼に向けられているのが即座に分かった。

 

「まずい! 流石に銃火器相手じゃ……!」

 

『ふん、我がグラスゴーのコピー機風情が。ポンコツがオリジナルに勝てると思うな!』

 

 構えられていたアサルトライフルが一斉に火を噴く。

 葉月は咄嗟の判断で操縦桿を右に倒して機体を駆る。機体も同時に右に移動し、何とかライフルの直撃を回避する事には成功する。

 

「結構ギリギリ……。いや、ちょっとかすったかも」

 

『ほう、あの銃弾の中を回避するとは。これは面白い。……しかし!』

 

 ライフルが外れた事にレヴァルは感嘆するが、すぐさま追撃をかける。

 葉月の無頼にも銃器があれば良かったのだが、生憎この無頼は銃器を持ち合わせていない。

 元々は存在したのだが、この追撃戦の最中で破壊されてしまったのだ。KMFが出てくるとは分かっていたが、タイミングとしては中々最悪だ。

 

「このままじゃまずい! どうすれば……?」

 

 自分で酷く焦っているのが分かってしまう。

 操縦桿を握る手が微かに震える。これが実戦。戦地なのだという事を肌で理解している。

 何か手はないか、と葉月が必死に考えを巡らせるが、いい案というのは中々出てこない。

 そんな中でも、レヴァルの搭乗したグラスゴー、そしてもう一機が葉月を追い詰めんとばかりにグラスゴーで追ってくる。

 

「くそっ、振り切れないじゃない! もっと早く走ってよ、無頼!」

 

 ナイトメア相手にナイトメアは、妥当な手段とはいえ分が悪い。

 おまけに二対一の状況、此方は火気すらない状態だ。更に相手の方が此方よりも質もいい。正直に言えば勝ち目などない戦いなのだ。

 一方のグラスゴーも、ライフルを持っているとはいえ、何故か撃ってこない。

 こんな見晴らしのいい場所で撃たないのも疑問に思うが、即座に答えは出てしまう。相手側からすれば、葉月相手に遊んでいるのだろう。

 相手は火気すら持たないナイトメア。反撃しようにも接近するしか方法はない。そして、この状況下の中で考えられる手は少なく、また接近される心配はさほどない。

 よって、こうして追いかけ回されても有効な手を打てるはずなどなく、追いかけっこが始まっているという訳だ。

 葉月からすれば屈辱以外の言葉は見つからないが、追いかけている騎士――レヴァル・フィニット達にとっては格好の的でしかない。

 

『フッ。相手は逃げ腰か。撃墜する事など簡単な任務ではあるが』

 

『しかし、テロリストは重要なデータを奪ったとされています。下手に撃墜し、データを破壊されるような事態になれば……』

 

『分かっているさ、レーサ卿。だから、私がまずは奴の動きを止める。その後、貴殿がコックピットをこじ開けろ』

 

『パイロットの処遇は?』

 

『そんな者、即刻処刑だ。テロリストなど、生かしておく価値もない。いらないのだよ、この“エリア11”には―——イレヴンなどという存在は』

 

『イエス、マイ・ロード』

 

 レヴァルの方がレーサよりも位としては上なのだろう。後方のグラスゴーのパイロットは素直にその指示に従い、機体をやや後退させる。

 レヴァルは改めて葉月の無頼にライフルの照準を合わせようとするが、ふと横を見たときに、逃げるイレヴンの姿を目に捉える。

 

『ふん……。名誉ブリタニア人にもなれない惰弱なイレヴンも、生かしておく価値はない』

 

 今まで葉月の無頼に照準を合わせていたレヴァルだったが、何を思ったのかライフルを無頼ではなく、市街地の方に向ける。

 葉月は最初、その行動が分からなかったが、グラスゴーのパイロットの意図が分かると、声を荒げた。

 

「まさか―――止めて! その人たちは関係――」

 

『死ね、イレヴンよ。このレヴァル・フィニットの手に掛けられること、光栄に思うがいい!』

 

 向けられた銃口の先には、何の抵抗も出来ない一般の日本人の姿。

 レヴァルは躊躇なしに引き金を引くと、銃口が火を噴き、関係のない筈の日本人が次々撃ち抜かれ、殺されていく。

 とてもでは聞いていられないような悲鳴と叫び声が、葉月の耳に入ってくるようだった。

 瞬間、葉月の中で何かが燃え上がったかと思うと同時にこれ以上ない怒りが込み上げてくる。

 沸点はすぐさま限界を超え、臨界値を超える。気が付くまでもなく、葉月は操縦桿を動かして機体を反転させたかと思うと、今まで逃げていた自分が嘘のように無頼を突撃させていた。

 

 恐怖も何もない。今の葉月にあるのは怒りのみ。

 

「―――こんのおおおおっ!!」

 

 機体越しに殺気が渦巻く。

 しかし、レヴァルはその殺気に気付きはしない。

 ただ、逃亡を続けていた無頼がランドスピナーから火花が飛び散るほどの急停止を行い、そして自分に向かってきた事だけに気付くだけだった。

 

『同胞が無残に殺されていくのを見ていられないか? しかし、その判断は非常に愚かだ』

 

 不適に笑みを浮かべ、レヴァルのグラスゴーは葉月の無頼に対してアサルトライフルを構え、動きを抑えるために脚部に向けて銃弾を放つ。

 だが、葉月はアサルトライフルの銃口が火を噴く前に操縦桿を倒し、素早く飛んでくる銃弾を回避した。その行動にはさすがのレヴァルも目を見張る。

 

『この至近距離で私が外した!? 馬鹿な、あり得ないぞ、こんな事は!』

 

 外れた事に驚き、情けなくも狼狽えるレヴァル。

 その間にも葉月はレヴァルのグラスゴーに接近し、その胴体に蹴りを入れる。

 

『な、何!?』

 

 不意を付かれた形と重なり、胴体に蹴りをくらったレヴァルの機体がグラッとよろめく。

 追撃とばかりに葉月はスラッシュハーケンを射出しようとしたが、後方から迫ってくるもう一機のグラスゴーに気付き、倒れるレヴァルの機体を尻目に其方の対処に向かう。

 

『レヴァル卿が怯むとは……。ならば、俺が行動不能に陥らせてやる!』

 

「うおおおおっ!」

 

 もう一機のグラスゴーも同様にライフルを構えるが、思ったよりも動きがいい事にパイロットはうまく照準を合わせられない。おまけに撃墜してもいけない事も重なっていた。

 自棄になって引き金を引くが、葉月の怒りに触発されたのか、無頼も通常では信じられない動きを見せている。その事にも目を見張り、同時にレーサは恐怖する。

 

『な、何だ、この機体は!?』

 

 刹那、葉月の無頼がグラスゴーの頭部を掴み、その勢いのままに地に押し倒す。

 地に押し倒された瞬間、物凄い衝撃がパイロットを襲った。

 衝撃の間にパイロットは強く目を閉じていたが、衝撃が収まると同時に目を開けたその時、眼前に映ったのは、その正面には葉月の薄赤色の無頼が俄然として存在している。

 

『くっ、ここまでか! 脱出を!』

 

 このままでは殺されてしまうと、パイロットは判断する。

 脱出しようとレバーを引くが、何度動かしても緊急脱出用のイジェクション・シートが射出される事はない。

 パイロットは更に動揺して何度もレバーを引くが、自分の後方からメリメリという何かが押し潰されるような音が耳に届く。

 それもその筈で、葉月はグラスゴーを押し潰している状態。当然、コックピットが射出される筈はなく、ただ押しつぶされるのを待つだけだった。

 

「潰れろぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

『う、うわぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 機体越しに音声が響く。そして、グシャリという音と共にその声は途切れる。

 おそらく、コックピットの中身が押し潰されたのだろう。機体も機能停止になり、ピクリとも動かなくなる。

 中身は―——想像するだけ無駄であろう。もはや見るに堪えない状況になっているであろうし、また見たいとはとてもではないが思えない。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 葉月は荒い息を吐きながら、残骸と化したグラスゴーを仰ぎ見る。

 無残にも転がっている、人形のようになってしまったナイトメア。当然、コックピットを押し潰したのだからパイロットはそれはもう無残な死に方だったのだろう。

 想像しただけで吐き気がする。そのパイロットを殺した葉月はなんともいえない表情へと変わっていたが、その瞬間に警告音が機体に響き渡った。

 

「後ろ……? まさか、さっきのナイトメア!?」

 

『油断したか! 愚かな!』

 

 レヴァルのグラスゴーが手にしていたアサルトライフルが今度こそ葉月の無頼を捉える。

 実際、レヴァルは味方を囮として扱った。油断は隙を生む。葉月にも同様の事が言えるような状態だ。

 だからこそ、これは好機だった。レヴァルはグラスゴーのコックピット内で不適に笑みを浮かべ、引き金を引こうとする。

 もはや、任務など関係ない。エリートである自分を此処までコケにするような動きをしたテロリストが悪いのだ。

 データなど、今となってはどうだっていい。元々プライドの高いレヴァルは、ただ眼前の敵を殺せればそれでよかった。

 

『死ね、惰弱なイレヴン!』

 

 レヴァルが引き金を引こうとしたその瞬間―――。

 確かに、銃口から火が噴かれた。しかし、それはレヴァルのグラスゴーからではない。物陰に潜んでいた、何者かからだった。

 

『な、何だと!?』

 

 銃弾は葉月の無頼ではなく、レヴァルのグラスゴーに襲い掛かり、機体がダメージに耐えられなくなる。

 こんな事など想定外だったレヴァルは、これ以上は無理だと悟って脱出するべくイジェクション・シートを射出させる。

 弧を描くように宙を飛ぶ箱型のシートの中で、レヴァルは放心状態になっていた。

 致命傷を受けたわけではない。ただ、撃ってきた相手を見て呆然としていたのだ。

 

『馬鹿な……。誰だ、私の邪魔をした愚か者は!』

 

 戸惑いの原因は、廃墟に隠れるように存在していたナイトメア―――サザーランドが、味方である筈のレヴァルのグラスゴーを撃った事だった。

 おかげで折角の好機を潰す羽目になった。いや、考えてみればあれは本当に味方だったのか?

 いや、そんな筈はない。ならば、考えられることは二つ。

 

『裏切り者? ……いや、まさか―——我が軍の機体が鹵獲されているというのか…? もしそうなんのだとしたら、なんという愚かな事だ!』

 

 レヴァルは、シートの中で事実に気付く。だが、それを認めようとすることは、どうしても出来そうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の攻撃は、一体……?」

 

 いきなり敵機が撃墜された事に対し、葉月は機体の中で驚き半分、放心状態だったのが半分だった。

 レヴァルを撃ったのは、勿論葉月の無頼ではない。確かに撃墜したグラスゴーからアサルトライフルを奪えば放てる事は出来たが、そんな事など考える暇もなかった。

 ならば、一体誰がと周囲を見渡すが、葉月の周りには誰もいない。

 呆然としていても状況が変わることはない。葉月はぶんぶんと頭を振って、操縦桿を握りなおす。

 と、操縦桿を握った途端に、受信機から声が聞こえてきた。

 

『無事か、其処のパイロット』

 

「え……?」

 

 受信機からの声に、葉月はすぐに反応する。

 暗号コードは紅グループが使用しているものと同様。しかし、声の主は自分が知っている声とは誰とも一致しなかった。

 知らない声故に、葉月は当然警戒する。一体、何者が自分を助けたのか。敵か、それとも味方か?

それすらも判断し辛い状況故、自然と葉月の口調も強くなった。

 

「貴方、誰? 一体何者!?」

 

『助けてやったのに、その言い草は失礼極まりないな』

 

「助け……? まさか、さっきの銃弾って……貴方が?」

 

『そうだ、私がやったものだ。それはそうと、お前の機体はまだ動けるな?』

 

言われて、葉月はエナジーフィラーの残量を確認する。

 先ほどの戦闘で中々消費したが、それでもまだ稼働できるだけのエネルギーは残っている。もっとも、これ以上の戦闘を行えば、すぐさまエナジーがきれ、機体がお釈迦になるであろうが。

 

「……あと、十五分くらいならなんとか」

 

『そうか。ならば、ポイントP-04へと移動しろ。お前の仲間に、其処に待機するよう伝えている』

 

「な、なんでそれを……」

 

『いいから黙って指示を聞け。そうすれば、私は“お前たちを勝たせること”が出来る』

 

「勝つ……? そんな事なんて、出来る筈が……」

 

『私を信じろ。そうすれば、必ず勝てる』

 

 妙に自信満々の態度でそういってくる声の主。

 正気か? この状況下の中、そのような言葉を今出すかと。

 しかし、声の主がいった“勝つ”という言葉―――それが、葉月に根強く印象に残る。

 あのブリタニアに勝利する――そんなこと、一体誰が想像しただろうか。

 圧倒的な国力に強大な軍事力。レジスタンスとして活動こそしているが、葉月だって分かっているのだ、今の現状というものが。

 いくら自分たちが反抗したところで、力の前には成す術もない。それは、これまで何度も見せつけられてきた。

 だが、声の縫いが言う“勝つ”という言葉―———信じていいものか迷ったが、葉月は今一度聞き直す。

 

「―――その言葉、信じてもいいのよね? 本気……だよね?」

 

『無論だ。ただ、お前達が私を信じれば、の話だが』

 

「……分かった。P-04ね」

 

『そうだ。物分りがよくて助かる。それから、君の仲間達にプレゼントを用意してある。彼らと合流した後に、また連絡しよう』

 

 用件だけ伝えると、声の主からの通信が途絶える。

 まだあまり信じられない葉月であったが、今はその声の指示に従うしかない。

 操縦桿を倒し、葉月の無頼は指定されたポイントに向かう為、ゲットーの中へと消えていく。

 

 様子を窺っていた、サザーランドのパイロット―――ルルーシュは、葉月の無頼を見送ったと同時に此方も移動を開始する。

 場所は、出来るだけ目立たない場所。そして、敵機に見つかる心配の少ない場所へと。

 

「さて、これからが本番だ。まずは評価試験、といった所か。……ますます、シンジュクの時と重なるが、今はこれでいい」

 

 しかし、先ほどの機体は彼女と被るとルルーシュは思う。

 ルルーシュの脳裏にちらりと、あの赤毛の少女が通り過ぎたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ、吉村?」

 

「あの声が言っていた通りです。貨物車の中にはナイトメアが積んでありました。数は全部で六機ほど」

 

「そうか……。正直に言えば半信半疑だったが、来て正解だったな」

 

 吉村という眼鏡の男の報告を聞き終えた後、貨物列車に目を向ける紅黒月。

 声の主――何処から知ったのかは分からないが、何処からともなく聞こえてきた謎の声――に指示されてきた場所は、ポイントP-04と呼んでいる場所。

 其処には貨物列車が護衛もなしに存在し、中にはブリタニアが輸送中であろう貴重なKMF『グラスゴー』が積んであった。

 おまけに護衛用なのか装甲車も三台ほど備わっており、これも有効な戦力として使うことが出来る。

 無論、解せない点は多々ある。一体、どんな魔法を使ったかは知らない。しかし、それを気にしている暇はなかった。

 

「これだけのナイトメアを戦力に出来るとは……随分といい贈り物をしてくれたものだ。

 ところで、葉月と田代の行方の方は?」

 

「田代はもうこっちに合流しています。葉月の方は……まだですね」

 

「……分かった。ナイトメアに搭乗する者は機体のチェックを済まさせておけ。あの声からの指示が来た瞬間、作戦開始だ」

 

「……本当に信じる気ですか、黒月さん?」

 

「ああ。それに奴は“勝てる”といった。勝つためならば、手段は選ばないさ。それに、形振り構っている場合じゃない」

 

「しかし、敵の罠とも……」

 

「信用に値する奴だろう。おそらくだが。それに、この状況で貴重なナイトメアを使ってまでこちらに罠を仕掛ける必要がどこにある」

 

「はぁ………。分かりました」

 

 観念したのか、吉村は黒月の傍から離れ、自分が搭乗するグラスゴーに向かって行く。

 黒月も同様にグラスゴーに向かっていくが、心配するのは妹――葉月のこと。

 

(無事でいればいいのだが……)

 

 その心配は、約10分後程に安堵の表情に変わるのだが、この時の黒月はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリシマゲットーの中心部よりも少し離れた場所に、ルルーシュのサザーランドは潜んでいた。

 建物の影に機体を隠し、ナイトメアの戦略パネル上に映っている味方――ブリタニアの方になる訳だが――のナイトメア、あるいは装甲車、更には歩兵が位置する光点を数える。

 

「展開しているナイトメアは、グラスゴーが十八機でサザーランドがこれを合わせて五機か。

 装甲車もおよそ十五。後は歩兵部隊だが……まずは大きいものを片付けなければな」

 

 戦術はほぼ完成している。そのほとんどが味方の識別信号を用いた奇襲作戦だ。これはシンジュクにて用いた作戦とほとんど同じである。

 ブリタニア側は敵機が一機だと認識している。その考えを利用し、テロリストが搭乗しているグラスゴー、あるいは装甲車、場合によって火気をぶつける算段だ。

 ――が、奪取できたナイトメアは、シンジュクの時より半数は少ない六機。装甲車が三台あるのはやはり大きかっただろう。

 

「まあ、戦法は奇襲だ。動ける機体が少ないのは少々厄介だが、だからといって戦略に問題はない」

 

 そして、コックピット内にあった時計――先程のパイロットが持っていたものだろうか――をチラリと見て、あの赤い無頼に通信を入れてから10分が経過した事を確かめる。

 あの場所からP-04までは5分とかからない。

 無頼にはエナジーフィラーを交換させるよう、先に連絡した方には伝えてある。

 あの無頼は陽動として使えるし、何より様子を窺っていたが、その動きから紅月カレンを思い出させるような、そんな感じに見て取れた。

 

(―――いや、技量はカレンの方が上だろうな。ただ、似ているだけ……か)

 

 かつて共に戦った少女の事を思い浮かべるルルーシュだったが、思い出に耽っている場合ではない。

 そして、ルルーシュは紅グループに連絡を送る。いよいよ、彼等の反抗が開始されるのだ。

 

(此処が本当に俺自身が知る過去なのかどうかは分からない。

 だが、もしも過去というのならば―———。それを確かめるためにも、こんなところで足を止める訳にはいかないのだよ)

 

 部隊を指揮するのは慣れている。

 “ゼロ”として、そして“皇帝ルルーシュと”して幾多の戦場を駆け巡ってきた。その経験は伊達ではなく、何度も勝利、あるいは敗北を経験している。

 そして、通信がつながる。通信相手は、最初に連絡した男のようだった。

 

「私だ。準備は万全だろうな?」

 

『ああ。ナイトメアの操縦に自信がない奴には起動パターン学習データを呼び出している。ある程度はオート操縦になるが、構わないだろうか?』

 

「その方が助かる。ブリタニアの騎士と戦うにはやりあうには少々不足だが……今回の戦い方ならば問題はないだろう」

 

 それなりに分かっている奴だ、とルルーシュは彼なりに感心する。

 そう簡単にナイトメアの操縦が出来ると思ってはいけない。知識がない者がナイトメアを動かす事など出来ないし、何より作戦に支障が出る。

 指示を出す前に実行しているとは、全体の事をよく理解している証拠だろう。レジスタンス側としては様子見という考えもあるが、それは置いておく。

 どうやらこの組織の結束は固いようであり、統率力もあるようだ。それならば話は早い。

 

「赤いナイトメアがいるだろう? そのナイトメアを陽動、かく乱に使用する。識別信号が唯一違う機体だからな」

 

『―――なるほど、そういう事か。ならば、指揮は好きに出してもらって構わない。俺達はお前の言うとおりに動く。そうすれば……勝てるのだろう?』

 

「フッ、当然だ。では、R1……赤いナイトメアは、北へ向かえ。まずは北方面から敵を崩す」

 

『はい!』

 

 本当に物分りがいい奴らだ。

 それに、通信相手の男はルルーシュの考えている事に気付いているようだった。奇襲戦法というのは単純に言うが、これも簡単に出来るものではない。

 しかし、本当にこの男は何者だ? とルルーシュは考えてしまう。

 こんな男が黒の騎士団に存在していれば、もっと楽に作戦は展開出来ていた筈だ。そう考えると、悔やまれてならない。

 

(黒の騎士団に入団していれば、高待遇で迎えてやれるほどの人材……だったのかもしれないな)

 

 確証がないので、まだ分からない。

 しかし、自分の考えている事を理解し、行動を開始してくれる人材は確実に必要だ。それこそ、この通信相手の男のように。

 

(案外いいグループに巡り合ったのかもしれないな、俺は)

 

 自らが嘗て出会った扇グループと似ているところは多々ある。しかし、彼等とはまた違う何かがあると、ルルーシュは指示をしながら思うのだった。

 

 

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