コードギアス~反逆のルルーシュ~ 過去(?)に戻りし魔王   作:ダラダラ@ジュデッカ

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第五話 成すべきこと

 

 インターネットというのは、本当に便利な代物だ、と個室に備え付けられたデスクトップを眺めていたルルーシュは改めて感じる。

 このような画期的なシステムを作成した人物には自分なりに敬意を込めたいが、今はそれどころではない。現状の情報収集が先決だった。

 

 今現在、ルルーシュはキュウシュウの南端である“カゴシマ租界”に身を置いている。

 

 “キリシマ”でブリタニア軍を退けてから早二日。服や金は、当然ギアスを駆使して調達した。

あまり褒められるものではない事は確かだが、それ以外に容易に手に入れる方法も少ない。

 皇族の服、そして歩兵の服は一応アタッシュケースの中に保管してある。

売り払っても別に構わないが、不審な目で見られる可能性も存在し、更には軍に通報されたら厄介だ。

それに、そのようなくだらない事が原因で事を更に荒げたくはない。考える時間もまた必要だと、ルルーシュはそう思っていた。

 もっとも、サザーランドを奪ったパイロットの事をもう少しうまい手で奪取すれば良かったと今更ながらに思う。

 これではシンジュクの出来事と同様であり、もっと冷静にギアスを行使するべきであったと悔やむ。そのような所までシンジュクと酷似させなくてもよいとは思うが、それも念頭に置いておくべきか。

 ともかく、今は―——。

 

(それで、この世界についてだが―——やはり、過去とそれほど代わり映えはしないようだな。つまり、並行世界。それでも大体の話ではあるが)

 

 並行世界とはいうが、ブリタニアの歴史、ナイトメアの開発経路、各エリアの情報など――それは全く持ってルルーシュの知っている通りの事であった。

 時期としてはシンジュク事変が発生する二か月前。つまり、エリア11総督のクロヴィス・ラ・ブリタニアは未だに存命であり、当然“ゼロ”も出現していないという事になる。

 そして、一番気になったのはこの世界における自分――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、ナナリー・ヴィ・ブリタニアが生きているという事かどうかだ。

 

(それで結果は……やはり、これも同様。公式的には死亡扱いか)

 

 あくまでも、“公式”である。実際の所は生きており、今の時期はブリタニアへの反逆を企てようとしているが、まだ時期ではないとそう思っている嘗ての“ルルーシュ・ランぺルージ”がこの世界にも存在するのだろう。

 しかし、全てが同じわけでもなかった。更に調べていくと、若干であるが違う点も見られる。

 

(極東事変の際、日本には厳島の奇跡の他にもう一つの奇跡……いや、イレギュラーが存在している。起こした人物は“三浦信三”。旧日本軍の軍人か)

 

 もう一つの奇跡というものは、ルルーシュの記憶にはない。それこそ、藤堂が起こしたものだ。

 この三浦信三という男は四国地方で指揮を執っていたようで、彼の獅子奮迅の活躍もあってか、日本は降伏が三日程伸びている。

 たった三日、といわれればそれまでだが、ナイトメアまで投入された地上戦で五日も耐え抜いた事は賞賛に値する。

 陸海空の全てにおいて主導権を握られていた本土決戦。全範囲からの攻撃に夜も眠れなかったであろうが、それを指揮して見せたのは立派な事だろう。

 厳島の奇跡を起こした藤堂もそうだが、これは三浦という人物の戦術眼も際立っている。

 藤堂、三浦――現在の日本人にとって、彼らはまさに奇跡の代名詞。この二人という人物がいるからこそ、日本の反抗は未だに途切れる事はないのかもしれない。

 

(他にも見えない所で微弱ではあるが、俺の知っている過去とは違う点もある。ナイトオブラウンズにおいては12人勢ぞろいしている、か)

 

 嘗てならば、若干の空席があったナイトオブラウンズ。それが今回においては12人全て揃っているという始末である。

 余程、シャルルに気に入られた者達がいたという事なのだろう。それだけにブリタニアに反逆するには厄介な相手に違いないのだが。

 

(そして、この世界で俺がやるべき事は……山済みだな)

 

 それを纏めてみると、次のようになる。

 

 まず、第一に考えられるのは、シャルルやマリアンヌによる『嘘のない世界』を作る計画の阻止。つまりはラグナレクの接続の事だ。

 これを実現させる為にはコードが二つ必要とされる。一つはシャルルの手元――つまりはV.V.が握っているが、もう一つはC.C.が持っている。

 しかし、当初のC.C.の行動を見る限り、今の時点では彼らに協力することはあまり考えられない。いや、これはルルーシュが知らないだけで、本当はこの時点で協力する気だったのか。―――いや、ここでそのような考えを巡らせても致し方がないか。

この事に関しては、早急に手を打つ必要があるにしても、今は機ではない。

 それに、シャルルに近づくには黄昏の間に行く事が絶対条件。まずは神根島の遺跡を押さえる事の方が先であろう。

 という理由の元、シャルルがこの計画を実行するかはC.C.が鍵を握っている。とりあえずは頭に置きながらも、当面は捨て置く事にする。

 

 第二に、ギアス嚮団の殲滅。

 

 ルルーシュもそうだが、ギアスによって更なる悲劇が生まれるのは自身も経験している。

 与えられた力を憎んだ時もあった。それ以上に、この力が他者に使われたら――マオやロロのような――とんでもない効果や悲劇を撒きこす。

 ルルーシュとしてはあまり得ではないし、もうそのような悲劇を巻き起こしたくはない。

ギアスは本来ならば、この世界に存在してはならないもの。そう、ルルーシュ自身も感じている。

 嚮団の所在地は特定している。しかし、相手が中華連邦の中だと、どうしても手を出しにくいのも確かだ。それに、この世界でも同じ場所にあるかは甚だ疑問である。

 シャルルの計画もそうだが、V.V.も早急にどうにかしなければならない。その為にはコードが邪魔だ。それこそ、あの時はシャルルがコードを奪ってくれて助かったような気もする。

 嚮団を先に潰すか、それとも思考エレベーターを先に破壊するか。

 いや、まずは嚮団の方が先かもしれない。コードを使うものが新たに出現してしまえば、思考エレベーターの修復も容易になる。

 ならば、此方も当分の間は待つことにしよう。

 そもそも中華連邦に渡らなければならない事。そして、今回は前回の経験を活かし、手を打つことも出来る。

 無論、シャルル達を討ち取るのはルルーシュ自身がやらなければならない所業だが。

 

(そして次は……俺の身近にあった問題か)

 

 第三は、ニーナ・アインシュタインの研究の成果でもある――フレイヤの開発阻止だ。

現在においてもニーナはウランの核分裂とウラン濃縮の可能性についての研究を行っている。

 それが後の大量破壊兵器になるとは恐ろしい。それに、フレイヤが大量に生産されれば、必ず嘗てのシュナイゼルとの決戦の時のようになってしまう。

 

(ニーナの研究を止めさせる。……いや、他の方向に変更させるのが一番か。少し難しい気もするが、後の為を思えば、最善の策か)

 

 それに関してはトウキョウ租界に赴いた時に対処しよう、と決める。

 彼女の研究を変更させるのは至難の技に近いが、後々面倒な事になる前にどうにかしなければならない。

 そして次は、自分でも時期尚早と悟っていたブラックリベリオンの発端ともなったユーフェミアの虐殺行為、そして死である。

 

(ユフィ……)

 

 彼女を陥れたのは、ルルーシュ自身の責任だ。

 ユーフェミアの打ち出した行政特区日本というのは、目的や手段は違えどルルーシュの目指した国家と同じ。

 だが、所詮はブリタニアに作られた日本。そんなものなどに何の意味があるのだろうか。

 いや―——そもそも優しい世界とは、ユフィの目指した世界だったのかもしれないと、ルルーシュは思う。

 

 彼女とあのまま手を組んでいれば、あるいは。

 

(だが、ユフィを死なす訳にはいかない。確かに行政特区は魅力的だ。それでも…)

 

 悲劇のトリガーはユフィの死にある。彼女を死なす訳にはいかない。

 だが、彼女の作り出す行政特区は魅力であるが、それは毒でもある。ルルーシュとしては非常にまずいのは確か。

 一番面倒な課題になりそうだ、とルルーシュは内心で苦笑を浮かべた。

 

(…そして第五だが、まずは基盤作りだな)

 

 第五として上げられるのは、黒の騎士団に代わる勢力の創造だ。

 扇グループも確かに使えたが、それ以上に先のテロリスト――紅グループの事である――も非常に魅力的だ。

 ルルーシュに代わる指揮官もおり、エース級ともいえるパイロットも存在する。他の面々については未知数だが、少なくともリーダーがいる事によって、大規模に崩れる心配はない。

 更に彼らがのし上がる為には、黒月以外の指揮官、そして人員だろう。それらを駆使すれば、地方の租界を攻略する事など容易い。

 もっとも、地方を潰したところで意味などない。基盤は基盤であるが、それはそれだ。

 

(まだ様子見の段階ではあるが、な。もう少し、使える人材がいるかどうかを見極めてからでも遅くはないか)

 

 しかし、前にコーネリアにやられたケースも少なからず存在する。

 自分の手足――指示通りに動ける存在は必要だ。大国に反逆を決意するなら尚更であろう。

 

「……と、大体はこんなものか」

 

 ある程度案を出して見た所、この五つが上げられた。

 無論、他にも課題は多々ある。それを一応抜粋しての課題。

 そして……もう一つやらなければならない事がある。これは今のルルーシュにしか出来ない事であるが、必然的に未来の知恵を使用する事につながる。

 

「……立ち上がるのに、なりふり構っていられないのも事実だな」

 

 ルルーシュのやろうとしている事、それは――ルルーシュ自身が使用していたナイトメア、蜃気楼やナイトメアのフロートシステムの一環である飛翔滑走翼の完成を急がせる事である。

 蜃気楼に関してはほぼガウェインの移植が元になっている。それこそ、電子解析システムであるドルイドシステムやハドロンショットなど、システムこそ存在するが、完成を見ていないシステムも多々存在する。

 だが、あれが存在すれば大きな戦力となる。それこそ、蜃気楼はルルーシュが一番必要だと感じるナイトメアでもあるのは確かだ。

 

(絶対守護領域に単独での作戦行動も可。紅蓮弐式は黒の騎士団に明け渡すとして―—ならば、此方はプロトタイプの一式を貰うとしよう。ピーキーな機体故、乗りこなせるパイロットはいないとの話ではあったが)

 

 しかし、カレンの愛機となる紅蓮弐式を独断で頂くわけにはいかない。あれは、それだけの必要な人材である。

 ならば、そのプロトタイプである一式を頂こうとルルーシュは考える。それを実行する為には、まずはキョウトからの信用を得なければならない訳なのだが。

 

(それから、黒の騎士団には悪いが、ラクシャータ・チャウラーは必要な人材だ。彼女も此方で確保させてもらおう)

 

 紅蓮の開発者であり、他にも様々な機体を開発した技術者、ラクシャータ・チャウラー。

 彼女の協力がなければ、これらを製作する事は事実上不可能だろう。

 技術者である故、こうした画期的なシステムの話を進めれば食いついてくるだろうし、興味をそそられない筈がない。

 

(後はインド軍区とパイプを持っているキョウトからラクシャータにつなげて貰うだけだ。

図面、システムの面は俺の方から説明すればいい。問題はどうやってキョウトと連絡を取るかだが……)

 

 ラクシャータに話をする前に、まずはキョウトに話をつけなければならない。

 老人達に借りを作るのは癪だが、これもまた必要な事。だが、桐原に信用される為には前回のように顔を出す訳にはいかない。

 同じ人間が二人アドと、知られてはならない。だからこそ、サザーランドを奪う時も注意を払うべきであったのだが、

 

(全く、面倒だな……。だが、自分の選んだ道でもある)

 

 反逆を企てる以上、面倒な事は尽きない。

 しかし、自分が目指す世界を作るため。皆が平等な社会を築き上げる為には、このくらいの労力も必要なのだろう。

 

(前はナナリーの為だった。だが、今は違う。ナナリーも含めて、人々が安心して明日を迎えられなければ意味がないんだ)

 

 ブリタニアを変えようならば、内部からしても悪くはない。

 しかし、今のルルーシュはイレギュラーに近い存在――本来ならば、この世界にいてはおかしい存在なのだ。

 それに、顔を出せば必然的に同一人物が二人いるという事がばれる。それだけは絶対にさけなければならない。

 

(再び被るしかないのだろうな。あの『仮面』を…)

 

 『ゼロ』としての仮面。ルルーシュの脳裏にそれが浮かんだ。

 しかし、今回は『ゼロ』として行動する訳にはいかない。

 それは、この世界におけるルルーシュの仕事だ。ならば必然的に名前を変えなければならない。

 

(全てを破壊し、創造する。だからこそ、俺は新たにこう名乗ろう……)

 

 

                    新たな名、その名は――

 

 

 

 

 

 

 

 カゴシマ租界政庁。

 

 各租界にそれぞれの政庁が存在し、此処で実質的に各租界の政策が取り決められている。

 このカゴシマ租界も同様であり、こうして政庁が存在する。トウキョウ租界とは違い、実質的な権限者は総督ではなく、各政庁に置かれた司令官になる訳だが。

 しかし、製作を決めた所でそれをすぐ実行出来るわけではない。政策の許可を取る為にはエリア総督の許可を取らなければならない。

 勝手に政策を実行する訳にはいかない。その点に関しては少々面倒な部分であるが、エリアのトップは総督である為に致し方がないのも事実だ。

 

 そのカゴシマ租界のトップ――ブラウン・クリストフは報告書を片手に持ちながらしかめ面を浮かべていた。

 報告内容は先のキリシマゲットーでの追撃戦。被害報告としては、ナイトメアが鹵獲分を合わせて二十一機を消失し、装甲車は二十五台、V-TOL機十二機。

 戦死者は歩兵を含めて二百名近く。大体は歩兵がやられたのだが、それでもただの追撃戦においては被害が甚大だ。

 今回のブリタニアの作戦目的は『奪取されたデータの回収』、という任務。

 対するレジスタンスの戦力は報告書ではナイトメア一機に、歩兵が使っていたとされるロケットランチャーや機関銃、爆薬が少々。これに関しては微々たるものでしかないだろう。

 無論、この程度の戦力で天下のブリタニアが危機感を抱く筈がない。確かにナイトメアが一機いるが、それも対した反抗が出来るわけでもない。

 だが、実際の被害はこうして甚大だ。一体、戦場で何が起こったというのか。

 

 報告書の内容を読みながらしかめ面を浮かべていたブラウンだが、その報告書を机の上に置き、目の前に控えている人物を見る。

 その人物は、このキリシマでの追撃戦に参加していたグリムズ・ソレイシィ少佐。怪訝そうにブラウンはグリムズを見ながら、口を開く。

 

「キリシマで一体何が起こったのだ、少佐?」

 

「報告書の通りです」

 

「……戦場で一体何が起こったのか、と私は聞いているのだよ、少佐…!」

 

 ブラウンの怒気がグリムズに伝わる。

 当事者でもあるグリムズに反論する余地などない為、グリムズは彼の眼を直視し、話始める。

 

「当初、我々は優位に事を進めていました。

ただし、ナイトメアが奪取されたデータを保持していると読み、まずはVTOL機にて追撃を開始。しかし、思ったよりも抵抗が激しく、我々はナイトメアを投入しました」

 

「……それで結果はあのざまか」

 

「急に…いえ、途端にレジスタンスの動きがよくなったのです。普通ならばナイトメアを奪取したところで、包囲網を簡単に切り崩せる訳がありません。しかし、敵はそれをやってのけました」

 

「……前線が崩壊したというのか?」

 

 ブラウンの言葉に、グリムズはゆっくりと頷く。

 

「その通りです。前線が混乱すれば、必然的に我々――上層部も混乱します。識別信号は味方のもの。しかし中身はテロリスト……一体誰がそんな事を予想したでしょうか」

 

「貴様等の慢心が原因ではないのか?」

 

「……たかが一機のナイトメアを追撃するという任務で、危機感が生まれるとお思いですか? 

 それに、向こう側の仲間も少ない状況です。上が喝を入れたところで、下は見向きもしませんよ」

 

「…………」

 

 そう言われれば、ブラウンも黙るしかない。

 敵戦力は、所詮一機なのだ。それこそ、もはや風前の灯火に近いような――そんな機体。

 危機感など、全く持って感じられないのは誰が見ても明らかだろう。

 

「……部隊の指揮を執っていたのは、少佐の上官だったな」

 

「キブ中佐です。見る限り、指揮官としては……どうかと思いましたが。上官故に此方も迂闊に口出しなど出来ないものでして」

 

「……そうか。後でギブ中佐には私の元に来るよう伝えろ」

 

「イエス・マイ・ロード」

 

 グリムズは内心でほくそ笑む。

 ブラウンの様子を見ている限り、今回の責任の全てはギブという指揮官が背負うという事になるだろうか。

 ギブという人物は極刑か、あるいは更迭処分が下されるに違いない。とりあえず、グリムズの目的が一つ適った訳だ。

 そして、グリムズにはもう一つ思うところがあった。それは、今回のデータ奪取に二個大隊を使用した理由である。

 ブリタニアの沽券なのだろうか、あるいは――奪取されたデータが猛毒だったかの二択であろう。

 グリムズとしては、以前は後者だと思っていたが、今になっては前者だと感づいていたが。

 

 事実、グリムズの考え通りブラウンにとってはデータの中身も勿論重要だが、今の彼の頭には今回の戦いで敗退したという事実の方が大きかった。

 今回の事案、トウキョウには既に伝わっており、一体どのような処分が下るだろうか。ブラウンも同様に極刑か、それ以上か。

 極刑の上など考えたくはないが、何としても挽回せねばならない。今更難しい事案であるが、それでもやるしかない。―——機会を与えてくれればの話であるが。

 

 そして、更なる問題もある。

 

 事件が起こった騒乱事態は既に抑えられている。しかし、“ブリタニアが殖民エリアのレジスタンスに負けた”という事実は語り伝えられていく事はもはや公になりつつある。

 そう考えたとき、ブラウンは奥歯を強く噛み締める。憤りを隠せず、報告を聞いた時は頭すら抱えた。

 クロヴィスの懐刀であるバトレー将軍に何度怒声や罵声を浴びせられた事か。おまけに事件の首謀者や関わった人物達も消息を掴めておらず、此度の戦いの真相は闇の中に近い。

 あれだけの正規軍を、いとも簡単に葬ってのけたレジスタンスグループ。危機感を感じられずにはいられず、ブラウンは力強く拳を握る。

 

「……少佐、もう下がっていいぞ」

 

「分かりました。ところで私に対する処分は考えられないので?」

 

「貴殿の判断は的確だ。寧ろ、あれ以上の被害を出す前に退いた手腕を認めよう」

 

「それはそれは。ありがとうございます」

 

 グリムズとしては、全く感謝の篭っていない言葉だった。

 しかし、怒りに燃えているブラウンにとって、グリムズの言葉などまるで耳に届いていなかった。グリムズは口元を軽く吊り上げたが、それ以上は何も言わなかった。

 そして、グリムズは退出しようとするが、扉の前で立ち止まる。

 

「ところで司令。再びゲットーに対して攻撃を仕掛けるのですか?」

 

「……暫くは静観だ。すぐにでも軍備を再編成して仕掛けたいところだが、まずはそれらの整備、情報操作から先だ。それにバトレー将軍からは『これ以上醜態を晒すな』とのお言葉も貰っている……!」

 

「ほう……。まあ、今キリシマに行ったとしても既に首謀者達はさっさと逃げていると思いますからね。妥当な判断かと」

 

「だが……」

 

「ん?」

 

「この恨みは必ず晴らす! 絶対にっ!」

 

「フフッ……。では、失礼いたします」

 

 ブラウンの言葉を聞くと、グリムズは軽く笑って部屋から退出していく。

 そんなグリムズなど、ブラウンにとってはどうでも良く、グリムズが出て行った瞬間、力強く机を叩く。

 

「ただの、テロリスト風情が……っ!」

 

 

 ブラウンの怒りが暫く収まる事はなかったという――

 

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